- 更新日 : 2025年9月3日
法人登記の相談はどこがいい?無料窓口から専門家まで特徴を比較
法人登記に関する相談先は、無料で相談できる法務局から、手続き代行まで依頼できる司法書士などの専門家まで多岐にわたります。どこに相談すればよいかは、会社の状況や相談したい内容によって異なります。
自社だけで悩まず、適切な相談先を選び、スムーズな手続きを行いましょう。
この記事では、法人登記の相談ができる窓口のそれぞれの特徴や費用、どのようなケースに適しているかを、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
法人登記の相談先は目的別に選ぶ
法人登記の相談先は、何を目的とするかによって異なります。費用をかけずに基本的な疑問を解消したいのか、専門的なアドバイスや手続きの代行まで依頼したいのか、自社のニーズに合わせて相談先を選びましょう。
法務局
登記申請を直接受け付ける国の機関です。全国の法務局やその支局に設置されている「登記相談コーナー」では、登記申請書の書き方や必要な添付書類など、手続きの形式的な部分について無料で相談できます。
ただし、個別の事案に対する法的な判断や、書類作成の代行は行っていません。あくまで手続きの方法を教えてくれる場所ととらえましょう。
出典:法務局|法務省
市役所・区役所などの地方自治体
多くの市区町村では、産業振興課などの部署が創業者向けの相談窓口を設けています。登記そのものの専門的な相談はできませんが、地域の創業支援制度の案内、補助金・助成金の情報提供、専門家相談会の紹介など、起業に関する幅広いサポートを受けられます。
まず何から始めればよいかわからない、という段階で訪れるのに適した場所です。
商工会議所・商工会
地域の事業者を支える公的な経済団体です。多くの商工会議所や商工会では、会員向けサービスの一環として、司法書士や税理士といった専門家による無料相談会を定期的に開催しています。具体的な登記手続きの相談から、経営に関するアドバイスまで受けられることが多い、非常に頼りになる相談先です。
よろず支援拠点
国が全国に設置している、中小企業・小規模事業者のための無料経営相談所です。コーディネーターがさまざまな経営課題に対応しており、会社設立の手続きについても相談が可能です。
登記の専門家ではありませんが、課題を整理し、必要に応じて適切な専門家につないでくれる役割を担っています。
日本政策金融公庫
政府系の金融機関であり、創業融資の相談が主な役割です。融資の相談と一緒に、事業計画の立て方や創業にあたっての注意点など、起業に関する全般的なアドバイスを受けられます。
全国に支店があり、創業に関するセミナーなども頻繁に開催しているため、資金調達とあわせて情報収集する際に役立ちます。
司法書士
書類作成から申請まで、複雑で手間のかかる手続きをすべて任せたい場合は、登記申請手続きの専門資格である司法書士に依頼するのが確実です。費用はかかりますが、専門的な知見からアドバイスがもらえ、ミスなく迅速に手続きを完了できます。
特に、事業の許認可が関わる場合や、法的な論点が含まれる場合には専門家の力が頼りになります。
法務局での法人登記に関する無料相談
法人登記において身近な相談先が、手続きの申請先でもある法務局です。全国各地に設置されており、無料で相談できる窓口があるため、多くの人が利用しています。ここでは法務局の相談サービスについて詳しく見ていきましょう。
法務局の登記相談コーナーとは?
全国の法務局やその支局・出張所には、登記手続きに関する相談に応じる「登記相談コーナー」が設置されていることがあります。ここでは、登記申請書の様式や添付書類、手続きの進め方といった形式的な内容について、職員から無料でアドバイスを受けられます。
多くの法務局では、相談は予約制となっています。たとえば、東京法務局では電話での事前予約が必要です。相談時間は1回20分以内など制限があるため、聞きたいことをあらかじめまとめておくとよいでしょう。
出典:登記手続のご案内|東京法務局
出典:よくあるご質問等<商業・法人登記関係>|法務局
電話での登記相談はできる?
法務局では、窓口での対面相談だけでなく、電話での相談も受け付けています。登記手続きに関する一般的な問い合わせであれば、「登記電話案内室」などで対応してもらえることがあります。
ただし、電話では具体的な書類を見ながらの相談ができないため、あくまで一般的な案内に限られます。個別の具体的な案件について、判断を求めるような相談はできません。複雑な内容の場合は、予約のうえで窓口に出向くのが確実です。
法務局の相談でできること・できないこと
法務局の相談窓口はあくまで中立的な立場です。そのため、できることとできないことが分かれています。
- どのような登記手続きが必要かの一般的な案内
- 登記申請書の書き方や様式の案内
- 必要な添付書類の種類についての説明
- 登記手数料(登録免許税)の金額
- 個別の事案で「この内容で登記が通るか」という判断
- 定款の内容が法的に問題ないかなどの実質的な審査
- どの専門家に依頼すればよいかといった紹介
- 申請書類の作成代行
法務局の相談窓口では、申請書類の形式や必要書類、登記手数料の説明といった“手続きのやり方”について案内を受けられます。ただし、「登記が通るかどうか」の判断や、定款の内容の法的妥当性の審査、個別事例の法的助言などは対応外であるため、専門家の相談が必要です。
東京法務局など、法務局の管轄の探し方
自社の所在地を管轄する法務局がどこなのかは、法務局のウェブサイトで簡単に調べられます。たとえば、東京都港区に本店がある会社なら、「東京法務局 港出張所」が管轄となります。
各法務局のウェブサイトには、登記相談の予約方法や受付時間などが掲載されています。訪問する前には、必ず最新の情報を公式サイトで確認するようにしてください。
出典:東京法務局 不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧|東京法務局
専門家への法人登記相談
法務局の相談だけでは解決しない専門的な内容や、手続きそのものを任せたい場合には、専門家への相談を検討します。法人登記に関連する専門家は複数あり、それぞれに得意分野が異なります。
司法書士:登記申請の専門家
法人登記の申請代理は、司法書士の独占業務です。会社設立、役員変更、本店移転、増資、解散・清算など、あらゆる法人登記手続きの相談から書類作成、申請代行までを一貫して依頼できます。登記のプロフェッショナルとして、定款の内容チェックや類似商号の調査など、手続き全般を安心して任せられるのが最大のメリットです。
行政書士:許認可申請もあわせて相談
行政書士は、官公庁に提出する書類作成の専門家です。会社設立に伴い、建設業や飲食業などの許認可が必要な事業を始める場合、その許認可申請とあわせて定款作成などの設立準備をサポートしてもらえます。
ただし、登記手続きは司法書士の独占業務とされており、行政書士に依頼する場合も、登記申請は連携する司法書士に引き継ぐ形となります。
税理士:設立後の税務まで見据えて相談
税理士は税務の専門家です。会社設立時の資本金の額や役員報酬の設定など、設立後の税務や資金繰りを見据えたアドバイスを受けられるのが特徴です。多くの税理士は司法書士と連携しており、設立手続きからその後の税務顧問までワンストップでサポートしてくれるケースも少なくありません。
弁護士:法的なトラブルの可能性がある場合に相談
弁護士は法律問題全般の専門家です。株主間の対立や事業承継にともなう複雑な問題など、将来的に法的な紛争に発展する可能性がある登記手続きについては、弁護士に相談するのが適しています。契約書のリーガルチェックや、法的なリスク管理の観点からアドバイスがもらえます。
専門家への相談費用
専門家への相談は、初回無料としている事務所も多くあります。ただし、具体的な書類作成や手続き代行を依頼する場合は、当然ながら費用が発生します。費用の目安は以下のとおりです。
専門家 | 相談内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
司法書士 |
|
|
行政書士 |
| 許認可申請: 5万円~(内容による) |
税理士 | 設立相談+税務顧問契約 | 顧問契約料に含む場合あり |
弁護士 | 法律相談 | 30分5,000円~ |
※上記は一般的な目安であり、手続きの難易度や会社の規模によって変動します。別途、登録免許税などの実費が必要です。
法人登記の相談前に準備しておきたいこと
どの相談先を選ぶにしても、相談時間を有効に活用するためには、事前の準備が大切です。いきなり相談に臨むのではなく、以下の点を整理しておくだけで、話がスムーズに進み、より的確なアドバイスを得られます。
設立する会社の基本情報を決めておく
相談の際には、会社の基本的な情報をそろえておきましょう。すべて確定している必要はありませんが、以下のような項目について案を用意しておくと、相談が具体的になります。
- 会社名(商号):会社名の候補をいくつか考えておく
- 本店所在地:会社の住所をどこにするか、候補地を決める
- 事業目的:どのような事業で利益を上げる会社なのか、具体的に書き出す
- 資本金の額:事業を始める元手として、いくら用意するかを考える
- 発起人(出資者)と役員の氏名・住所:誰が会社の経営を行うか(役員)を決める
相談したい内容を具体的にまとめておく
会社設立にあたって、何に困っていて、何を知りたいのかを箇条書きでよいので書き出しておきましょう。相談相手も的確に答えやすくなります。
- 「株式会社と合同会社、どちらの形態が自分の事業に適しているか」
- 「資本金の額は、いくらに設定するのが税金面で有利か」
- 「許認可が必要な事業だが、定款の事業目的にどう記載すればよいか」
- 「役員は自分一人でも会社を設立できるのか」
- 「役員が辞任する場合、どのような手続きが必要か」(変更の場合)
特に法務局のような時間制限のある相談では、質問を具体的にしておきましょう。
登記事項証明書や定款を準備する(設立済みの場合)
すでに設立済みの会社が役員変更や本店移転などの変更登記について相談する場合は、最新の「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「定款」を準備しましょう。会社の現状が正確にわかるため、より具体的なアドバイスにつながります。
自分で法人登記を変更する場合の相談ポイント
専門家に依頼せず、自分で法人登記の変更手続きに挑戦する人も増えています。コストを抑えられる一方で、すべて自己責任で行うことになるため、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
自分で手続きするメリット・デメリット
自分で手続きを行う最大のメリットは、専門家への報酬がかからないため、費用を登録免許税などの実費のみに抑えられる点です。また、手続きを自分自身で経験することで、会社法や登記に関する知識が深まるという側面もあります。
一方、デメリットは、慣れない書類の作成や情報収集に多くの時間と手間がかかることです。もし書類に不備があれば、法務局に何度も足を運ぶことになりかねません。その結果、本業に支障が出てしまっては本末転倒でしょう。
書類作成でつまずいた時の相談先
自分で書類を作成していて不明な点が出てきた場合、まずは法務局のウェブサイトで申請書の記載例を探してみましょう。多くの手続きについて、ひな形や詳しい解説が掲載されています。
それでも解決しない場合は、前述した法務局の登記相談コーナーを利用するのが有効です。ただし、あくまで形式的なチェックに限られるため、根本的な部分でつまずいた場合は、スポット(単発)で相談に応じてくれる司法書士を探してみるのも一つの手です。
オンライン申請(GビズID)での注意点
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、自宅やオフィスからオンラインで登記申請ができます。
このシステムを利用するには、「GビズIDプライム」の取得が必要です(法人代表者のマイナンバーカードでの電子署名などを含む)。事前準備に数日~1週間程度かかるため、余裕を持って手続きを進めるとよいでしょう。
オンライン申請は法務局に出向く手間が省けて便利ですが、パソコンの環境設定や電子署名の準備など、事前に行うべきことがあります。システムの使い方でわからないことがあれば、専用のヘルプデスクが用意されているので、そちらに問い合わせてみましょう。
出典:初めてご利用になる方へ|登記・供託オンライン申請システム
適切な相談先を見つけてスムーズな法人登記をしよう
法人登記は、会社にとって重要な手続きであり、その内容は会社の信用の基礎となります。手続きに関する疑問や不安が生じたとき、相談できる窓口は法務局、司法書士、税理士、オンラインサービスなど、さまざまです。
無料で一般的な情報を得たいのか、費用をかけてでも専門的なサポートや代行を依頼したいのか、自社の目的や状況をふまえて、最適な相談先を選ぶことが大切です。
特に、法務局の無料相談窓口は、自分で手続きを進めるうえで心強い味方になりますが、その役割と限界を正しく理解して活用する必要があります。
それぞれの相談先の特徴を把握し、上手に利用することで、時間や労力の負担を減らし、正確でスムーズな法人登記を実現できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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