• 更新日 : 2025年8月28日

起業したいけどお金がない!自己資金なしで起業する方法

「起業したいけれど、十分な資金がない」「自己資金がゼロでも起業は可能なのか」こうした悩みを抱える方は多いでしょう。結論から申し上げると、自己資金がなくても起業は可能です。ただし、適切な知識と戦略が必要になります。

この記事では、自己資金なしでも利用できる融資制度から融資以外の資金調達方法まで、起業を実現するための方法を詳しく解説します。

自己資金なしでも起業はできる?

起業における自己資金の必要性と、資金がない場合の起業可能性について詳しく説明します。

起業における現実的な状況

法人設立自体は資本金1円からでも可能であり、個人事業主として開業する場合は開業費用もほとんどかかりません。つまり、法的な観点から見れば自己資金なしでも起業は可能です。

しかし、実際に事業を運営していくには、業種にもよりますが一定の資金が必要になります。日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均約24%となっており、多くの起業家が融資などの外部資金も活用していることがわかります。

自己資金なしでも融資を受けられる制度

2024年4月から、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金において「自己資金要件」が撤廃されました。これまで創業資金の1/10以上の自己資金が必要でしたが、緩和により、無資金でも申込み可能になりました。

ただし、自己資金がない場合でも融資を受けられる可能性はありますが、融資される金額が希望額から減額される可能性があることは理解しておく必要があります。一般的に、創業融資の融資額の目安は自己資金の3倍から4倍程度とされているためです。

成功の鍵となる要素

自己資金がない状況でも起業を成功させるためには、以下の要素が重要になります。

まず、説得力のある事業計画書の作成です。市場調査に基づいた実現性の高い計画と、具体的な返済計画を示すことで、金融機関からの信頼を得られます。

次に、既に決まっている契約や大口取引先の存在をアピールすることです。事業開始直後から安定した売上が見込める状況であれば、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性が高まります。

また、現在働いている会社と同業での独立開業の場合、業界経験と専門知識があることから、審査において有利に働く傾向があります。

自己資金とは

創業融資における自己資金の定義と、認められる資金の範囲について詳しく解説します。

自己資金の基本的な定義

創業融資における自己資金とは、事業に投入する予定の資金を意味します。原則として事業に使用する予定のない資金は自己資金に含まれず、運転資金や設備資金などの事業に使用する予定の資金を指しています。

自己資金は金融機関の担当者が融資の可否を決める重要な判断材料のひとつです。自己資金があることで、創業者の事業に対する熱意や自信の表れと見なされ、金融機関も創業者の事業に信頼を寄せやすくなります。

自己資金として認められるもの

通常の預貯金

最も一般的な自己資金は、通帳に記録された預貯金です。重要なのは、コツコツと自己資金を貯めた記録が通帳に残っていることです。創業融資では、自己資金の審査を行う際に通帳で金銭の流れを確認するため、計画的に資金を準備したことが分かれば、事業の計画性に対する信頼が増します。

親族からの贈与

親族や友人知人などからの返済義務のない援助金は、金融機関によっては自己資金として認められます。ただし、贈与であることを証明する書類が必要になる場合があります。

みなし自己資金

融資を受ける前に、創業準備ですでに使った自己資金は「みなし自己資金」として認められます。これには、設備購入費、店舗改装費、商品仕入れ費、広告宣伝費、研修費などが含まれます。

退職金や保険解約返戻金

退職金や生命保険の解約返戻金なども自己資金として認められます。ただし、これらの資金については出所を証明できる書類(源泉徴収票、保険会社からの証明書など)を用意する必要があります。

自己資金として認められないもの

融資直前の大きな入金

融資直前に多額の資金が一括で振り込まれている場合、資金の出所が不明確で「見せ金」と判断され、自己資金として認められないケースが少なくありません。

返済義務のある借入金

人から借りたお金や消費者金融からの借入金は、本人が所有するお金とは認識されないため、自己資金とは認められません。

タンス預金

通帳に記録されていない現金は、出所が不明なため自己資金として認められない場合があります。自己資金は必ず通帳に記録を残すことが重要です。

自己資金なしで受けられる起業融資

自己資金がない場合でも利用可能な融資制度について具体的に解説します。

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金

2024年4月から開始された新規開業・スタートアップ支援資金は、自己資金要件が撤廃された画期的な制度です。

融資条件
  • 融資限度額:最大7,200万円(運転資金は最大4,800万円)
  • 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内
  • 担保・保証人:原則不要
  • 対象者:新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方

特別利率の適用条件

女性、35歳未満の方、55歳以上の方が創業する場合は、特別利率での融資を受けることができます。

地方自治体の制度融資

各地方自治体でも、地方自治体・金融機関・信用保証協会の3機関が連携した制度融資を実施しています。

東京都中小企業制度融資「創業」の例
  • 融資限度額:設備・運転資金合わせて3,500万円以内
  • 返済期間:設備資金10年以内、運転資金7年以内
  • 金利:固定金利:年1.7%~2.2%以内、変動金利:短期プライムレート+0.4%

地方自治体の制度融資は、比較的ハードルが低く、金利も優遇されている場合が多いため、積極的に活用を検討しましょう。

民間金融機関の創業融資

銀行や信用金庫などの民間金融機関でも、自己資金なしで受けられる創業融資があります。ただし、民間金融機関の場合は審査の難易度が高く、信用保証協会の保証がついていることが条件となるケースが多いです。

主な民間金融機関の創業融資例
  • きらぼし銀行「創業サポートローン」:500万円以内
  • 城南信用金庫「創業・起業者向け協調融資」:5,000万円以内
  • 横浜信用金庫「創業支援融資」:500万円以内

これらの融資を受けるためには、妥当性があり将来性も見込める綿密な事業計画書の作成が必要です。

自己資金なしで融資を受けるポイント

自己資金がない状況で融資審査を通過するための具体的なポイントについて解説します。

事業計画書の質を高める

自己資金がない場合、事業計画書の質が融資成功の鍵となります。以下の要素を含む包括的な計画書を作成しましょう。

市場分析と競合調査

対象市場の規模、成長性、顧客ニーズを具体的なデータで示します。競合他社の分析を行い、自社の差別化ポイントを明確にしましょう。

詳細な資金計画

初期投資、運転資金、月次の収支計画を具体的な数字で示します。売上予測は保守的に見積もり、複数のシナリオを用意することで信頼性を高めます。

返済計画の明示

借入金の返済スケジュールを明確に示し、事業収益からどのように返済していくかを具体的に説明します。

業界経験とスキルのアピール

現在働いている会社と同業での独立開業の場合は、これまでの経験と専門知識を積極的にアピールしましょう。業界での実績、保有資格、顧客とのネットワークなどは、事業成功の可能性を高める重要な要素です。

既存顧客や契約の確保

融資申し込み時点で既に決まっている契約や大口取引先がある場合は、積極的にアピールしましょう。実現可能性の高い売上見込みを提示することで、返済能力があると判断され、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性が高まります。

保証人や担保の検討

自己資金がない場合は、信頼できる保証人を立てることや、担保を提供することで融資を受けやすくなる場合があります。ただし、リスクも伴うため、慎重に検討する必要があります。

複数の金融機関への相談

一つの金融機関で断られても、他の金融機関では審査が通る可能性があります。日本政策金融公庫、地方自治体の制度融資、民間金融機関など、複数の選択肢を検討しましょう。

自己資金なしで融資を受ける注意点

自己資金なしでの融資にはリスクも伴うため、以下の注意点を理解しておきましょう。

融資額の制限

自己資金がない場合、融資される金額が希望額より少なくなる可能性があります。通常の創業融資では自己資金の3倍から4倍程度が融資額の目安とされているため、自己資金がゼロの場合は融資額も限定的になる可能性があります。

金利や条件の不利

自己資金がない場合、金利が高くなったり、返済期間が短くなったりする可能性があります。また、保証人や担保を求められるケースもあります。

返済負担の重さ

自己資金なしで多額の融資を受けた場合、事業が軌道に乗るまでの返済負担が重くなります。十分な返済計画を立て、無理のない借入額にとどめることが重要です。

見せ金の使用は厳禁

自己資金を多く見せるために、一時的に資金を借りて通帳に入金する「見せ金」は違法行為です。発覚した場合は融資が受けられない可能性もあります。

事業の実現可能性の厳格な審査

自己資金がない場合、金融機関は事業の実現可能性をより厳格に審査します。楽観的な計画ではなく、現実的で保守的な事業計画を立てることが重要です。

融資以外の資金の集め方

融資以外にも様々な資金調達方法があります。これらを組み合わせることで、より安定した資金調達が可能になります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達する方法です。返済義務がなく、マーケティング効果も期待できる魅力的な手段です。

購入型クラウドファンディング

商品やサービスを提供することで支援を募る方法です。新商品の開発資金調達と同時に、市場のニーズを確認できるテストマーケティングの効果もあります。

代表的なクラウドファンディングのプラットフォームとしては、CAMPFIRE、Makuake、READYFORなどが挙げられます。手数料は一般的に調達額の12%~20%程度です。

寄付型クラウドファンディング

社会貢献性の高い事業の場合、リターンを求めない寄付型クラウドファンディングも有効です。NPO活動や地域活性化事業などで活用されています。

補助金・助成金の活用

国や地方自治体では、起業を支援する様々な補助金・助成金制度を設けています。これらは原則として返済不要の資金であり、積極的に活用を検討しましょう。

代表的な起業支援補助金
  • ものづくり補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • IT導入補助金
  • 事業再構築補助金

多くの補助金は後払い制度のため、一時的に自己資金での支出が必要になることに注意が必要です。

エンジェル投資家からの出資

事業計画に魅力があり成長性が高い場合は、エンジェル投資家からの出資を受けることも可能です。資金だけでなく、経営に関するアドバイスやネットワークも提供してもらえる場合があります。

ファクタリング

既に売掛金がある場合は、ファクタリング会社に売掛債権を売却することで、早期に資金化することができます。ただし、手数料が高めに設定されているため、緊急時の資金調達手段として検討しましょう。

親族・知人からの借入や出資

信頼できる親族や知人からの借入や出資も重要な資金調達手段です。ただし、必ず契約書を作成し、返済条件や出資条件を明確にすることで、後のトラブルを防ぎましょう。

ビジネスコンテスト

優秀なビジネスプランであれば、ビジネスコンテストで賞金を獲得したり、投資家とのマッチング機会を得たりすることができます。多くの自治体や企業が主催するコンテストがあるため、積極的に応募してみましょう。

お金がなくても方法次第で起業は可能

自己資金なしでの起業を成功させるためには、戦略的なアプローチが必要です。単一の資金調達方法に頼るのではなく、複数の方法を組み合わせることで、リスクを分散し、より安定した事業基盤を築くことができます。

まず、事業の特性と資金需要を正確に把握しましょう。初期投資が少なく済むサービス業やIT関連事業であれば、比較的少額の資金調達でもスタートが可能です。一方、製造業や飲食業など初期投資が多く必要な業種では、より多くの資金調達が必要になります。

次に、段階的な成長戦略を検討しましょう。最初は小規模でスタートし、事業が軌道に乗ってから規模を拡大するアプローチを取ることで、初期の資金需要を抑えることができます。

また、メンターやアドバイザーの活用も重要です。経験豊富な起業家や専門家からのアドバイスを受けることで、資金調達の効率化や事業成功の確率を高めることができます。

最後に、常に複数の資金調達手段を準備しておくことです。一つの方法がうまくいかなかった場合でも、代替手段があることで事業継続が可能になります。起業は不確実性の高い挑戦ですが、適切な準備と戦略があれば、自己資金がなくても成功への道筋を描くことができるのです。


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