• 作成日 : 2025年5月1日

資金調達時の金利相場は?法人融資の金利を下げる方法も解説

資金調達時の金利は、融資先により異なります。同じ融資先でも、返済期間や返済能力、担保の有無などで金利は変わります。金利を抑えるためには、返済期間を短くするか、事業計画書を丁寧に作成するといった工夫が大切です。

本記事では、資金調達時の金利を決定する要素や抑える方法、金利のほかにかかる手数料について解説します。

資金調達時の金利とは

資金調達では、金利の確認が大切です。金利とは、借りた金額に対して発生する利息の割合を指します。例えば、100万円を金利3%で1年間借りた場合、3万円の利息が発生します。

金利は融資の種類や信用力などによって変わることが多く、金利により返済総額も変動するため、融資を受ける際は必ずチェックしなければなりません。

金利にはさまざまな種類があるため、まずはそれぞれの違いを確認しておきましょう。

調達金利と貸出金利の違い

調達金利とは、銀行が資金を調達する際に負担する金利です。これに対し、貸出金利とは銀行が顧客に貸し出す際の利子率を指します。貸出金利の水準は、景気や物価など、経済活動全般に大きな影響を与えています。

調達金利と貸出金利の差額で得る収益を「利ざや」と呼び、銀行など金融機関の収益源のひとつです。預金などで集めた資金に利ざやを上乗せし、融資を行って収益を上げています。

実質金利と表面金利の違い

資金調達の際は、表面金利とともに、実質金利の確認が必要です。表面金利は借入金に適用される単純な利息率であり、実質金利は表面金利に手数料やその他の費用を加えた総合的なコストを指します。そのため、実際の返済額を正確に反映するのは実質金利です。

表面金利が低い場合でも、手数料などが高ければトータルのコストは上がる可能性があります。資金調達で全体的な返済額を把握するためには、実質金利の確認が必要です。

固定金利と変動金利の違い

金利には、固定金利と変動金利という種類があります。金利が固定されるか変動するかという違いです。固定金利は借入期間中ずっと同じ利率が適用されるため、返済計画が立てやすいというメリットがあります。

変動金利は経済情勢等によって利率が変わるため、金利が低い時期に借りれば有利です。ただし、将来金利が上昇するリスクがあります。借入期間が比較的短い場合は変動金利が選ばれることが多く、長期間にわたって返済する場合は固定金利が選ばれる傾向にあります。

法人融資の金利相場

法人融資の金利相場は、融資先により異なります。

ここでは、融資先別の金利相場について解説します。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、民間金融機関の取り組みを補完し、 中小企業や小規模事業者などを支援する政策金融機関です。中小企業事業では、貸付期間ごとに適用金利の基準を定めています。

2025年3月現在の基準利率は、次のとおりです。

貸付期間基準利率
5年以内1.95%
5〜6年以内1.95%
6〜7年以内2.05%
7〜8年以内2.05%
8〜9年以内2.15%
9〜10年以内2.15%
10〜11年以内2.25%
11〜12年以内2.25%
12〜12年以内2.35%
13〜14年以内2.35%
14〜15年以内2.45%
15〜16年以内2.45%
16〜17年以内2.55%
17〜18年以内2.55%
18〜19年以内2.65%
19〜20年以内2.65%

これは、標準的な貸付利率です。適用利率は、担保の有無を含めた信用リスクに応じて変わるため、詳細は日本政策金融公庫にお問い合せ下さい。

銀行融資(プロパー融資)

銀行融資は、プロパー融資と信用保証付き融資で金利が異なります。

プロパー融資とは、信用保証協会の保証を受けずに、銀行と事業主が直接取引を行う融資です。借入金額や借入期間、審査の結果によって適用される金利が異なり、年1〜14%程度と幅があります。

金融機関は直接取引でリスクを負うことから、信用保証付融資よりも高めに設定されます。

銀行融資(信用保証付融資)

信用保証付き融資は、信用保証協会が融資の保証を行う融資を指します。信用保証協会とは、中小企業者等の金融を円滑にするために設立された公的機関です。事業主が資金調達を受けやすくすることを目的に、信用保証を行います。

信用保証付きの銀行融資の金利は年1〜3%程度で、プロパー融資と比較するとかなり低金利です。

ただし、事業主は信用保証を利用する場合、信用保証協会に対して信用保証料の支払いが必要になる点に注意が必要です。信用保証料の金額は、利用者の経営状況などから決まります。

信用金庫の融資

信用金庫は地域に密着した金融機関で、主に中小企業・小規模事業者向けの融資を行っています。顧客との距離が近く、親身になって相談にのってもらえるのが特徴です。

ただし、融資は自社所在地のエリアにある信用金庫での申し込みが必要であり、エリア対象外の事業主は利用できません。

金利は業種や規模によって異なり、一般的には2〜6%程度が相場です。

推定調達金利の推移

推定調達金利とは、企業が金融機関から資金を調達する際に発生する金利の平均値です。企業の資金調達コストや資金繰り状況を把握する指標として用いられます。

2023年度の推定調達金利は1.03%となっています。近年、金利は低下の傾向にあり、2015年度から2021年度までには、2017年度から2018年度を除いて低下が続いていました。1%を下回ったこともあります。しかし、2022年度以降は上昇に転じ、4年ぶりに1%を上回りました。

資金調達時の金利が決定する要素

資金調達時に金利を決定する要素は、主に次の4つです。

  • 返済期間
  • 返済能力
  • 担保の有無
  • 個人の信用状況

それぞれ、詳しくみていきましょう。

返済期間

融資で設定される金利は、契約時に決める返済期間によって変わります。返済期間が長くなるほど金利も高くなる傾向があります。期間が長いほど、金融機関が貸したお金を回収できなくなるリスクも高くなるためです。

返済期間が短ければ金利も低くなる可能性がありますが、毎月の返済の負担が大きくなります。

また、返済期間は審査によって決まり、借り手が自分で決められるわけではありません。

返済能力

審査では貸したお金に利息をつけて返済してもらえるか、返済能力が重視されます。返済能力は会社の決算書における具体的な数字をもとに判断され、金利にも影響します。安定した経営を続けていることが確認されれば、返済能力が高いと判断されるでしょう。

赤字が続いているなど経営状況が悪い場合は返済能力が低いと判断されやすく、金融機関のリスクが大きいことから金利も高くなります。

担保の有無

金利は契約時に担保を設定するかどうかでも変わります。担保とは、万が一返済ができなくなった場合に備えるための仕組みです。

担保には保証人を設定する人的担保と、有価証券や不動産など特定の財産に設定する物的担保があり、担保を設定するかどうかは金融機関や融資の種類によって異なります。

借入金が返済不能となった場合、金融機関は担保権を実行して返済にあてることになります。担保があることで貸倒れのリスクが下がるため、無担保の場合と比べて金利は低くなるでしょう。

個人の信用状況

個人の信用状況も金利を左右する要素です。まず、信用情報機関に登録されている信用情報を照会し、クレジットカードやローンの契約情報、返済状況などを確認します。また、事業の継続性や財務状況などもチェックした上で、信用度が高いと判断されれば金利が低くなります。

一方、信用度に問題があると判断された場合は、高めの金利を適用されるか、審査に通らない可能性もあるでしょう。

資金調達時の利息の計算方法

資金調達したお金は、元金に利息を加えて返済します。その際の利息の計算には2つの方法があり、いずれを選ぶかにより毎月の返済額や返済総額が変わります。

ここでは、利息の計算方法をみていきましょう。

元利均等返済

元利均等返済とは、毎月支払う金額が一定となる計算方法です。元金に利子を含めて毎月一定の金額を返済します。返済額は毎月変わりませんが、返済が進むほど元金が減って利息も減り、その分元金の返済額が多くなるという仕組みです。

毎月均一の金額を支払うため、資金計画の見通しを立てやすいでしょう。返済初期から手元に現金を残せることもメリットです。ただし、返済のはじめは利息の占める割合が多く、借入残高の減り方は遅くなります。

元金均等返済

元金均等返済とは、毎月支払う返済額のうち、元金の返済額が均一となる計算方法です。一定額の元金に利息分を加えた金額を返済するため、返済額は毎月異なります。返済が進むほど利息分の支払いが減り、元金と利子の合計額も少なくなります。

元金の減り方が早いため、同じ返済期間という条件では元利均等返済よりも利息の支払総額が少ない点がメリットです。ただし、支払い開始時の返済額が大きく、負担が重くなるというデメリットがあります。

利息の計算方法を選ぶときは、毎月の負担は大きくても返済総額が少ない方がよいか、毎月の支払いの負担はできるだけ抑えたいかなどの観点から、よく検討するようにしましょう。

資金調達時の金利を下げる方法

資金調達時の金利はさまざまな要素で変動しますが、できるだけ低くすることが返済の負担を抑えるポイントです。

金利を下げるためには、いくつかの方法があります。

詳しくみていきましょう。

返済期間を短くする

返済期間を短くすることで、適用される金利を下げることができます。例えば、前に紹介した日本政策金融公庫の中小企業向けの基準利率の場合、返済期間が5年以内であれば年1.95%です。一方、返済期間が19〜20年以内であれば年2.65%となり、返済期間が長いほど金利が高くなります。

また、利息は借り入れた元金と金利、借入期間によって計算されるため、適用される金利に関わらず、返済期間が短くなれば利息の支払総額は減少します。

信用格付けを上げる

融資の審査で大きな判断材料となっているのが「信用格付け」です。格付けは決算書の分析結果や、財務状況・収益力・資金繰りなどによる評価と、経営者の姿勢や経営方針といった定性評価(数値化できない要素に対して行う評価)の2つによって決められます。

この格付けを上げることで審査に通りやすくなるだけでなく、金利を下げる効果も期待できるでしょう。

信用格付けを上げるためには、自己資本比率を増やす、決算書の作成は税理士に依頼するといった方法が挙げられます。

また、会社だけでなく事業主の借入状況なども判断材料になるため、個人の信用状況が悪くならないよう気をつけましょう。

事業計画書を作成する

事業計画書も、融資の可否や金利を決める際の判断材料になります。事業計画書は、今後の収益計画と、どのように具体的な行動を起こしていくのかを示す書類です。

決算書の内容が良くない場合でも、事業計画書で収益性や将来性をアピールできれば、金利を下げられる可能性があります。資金の必要性や返済の実現性について、数字を使いながら記載し、説得力のある事業計画書を作成してください。

複数の金融機関を比較する

金利や融資条件は、金融機関によって異なります。そのため、少しでも有利な条件で資金調達するためには、複数の金融機関を比較して選ぶとよいでしょう。

複数の金融機関と取引をすれば、金融機関と金利について交渉する材料になります。少しでも融資先を増やしたいと考える金融機関は、金利を下げてでも融資を獲得しようとする可能性があるでしょう。

資金調達時は金利だけでなく手数料もかかる

資金調達で融資を受ける際は、金利とあわせて一定の手数料がかかることも把握しておきましょう。

手数料は、資金調達に際して発生する費用であり、主に次のものが挙げられます。

  • 融資手数料
  • 保証料

融資手数料は、金融機関の審査や書類作成、事務手続きなどにかかる費用です。保証料は、信用保証付きの融資を受ける際に発生します。

手数料が多くなる場合、金利が低くても実際に支払う金額は高くなる可能性があるため、手数料を加えた「実質金利」を確認することが必要です。

資金調達では金利をチェックしよう

資金調達における金利相場は融資先や借入期間、金額などで異なります。金利によって返済総額は変わるため、融資を受ける際はチェックが必要です。

有利な金利で資金調達するためには、信用格付けを上げるほか、収益性や将来性をアピールする事業計画書の作成が効果的です。

今後の事業経営について見通しを立て、説得力のある計画書を作成して資金調達を成功させましょう。


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