• 更新日 : 2024年4月23日

法人とは?株式会社などの種類や個人事業主との違いを簡単にわかりやすく解説

法人とは、法律によって「人」としての権利や義務を認められた組織のことです。私たち人間である「個人(自然人)」とは別個の存在として法律上扱われ、法人名義での契約や資産の保有が可能になります。法人には株式会社や合同会社、NPO法人などさまざまな種類があり、設立方法や目的が異なります。

本記事では、法人の基本的な意味から、個人事業主との違い、主な法人の種類と特徴、法人化(法人成り)のメリット・デメリット、検討すべきタイミングまで詳しく解説します。

法人とは?

法人とは?

法人とは、法律によって「人」としての権利や義務を認められた組織のことです。法律上、「人(=権利の主体)」は、私たち人間である「個人(自然人)」と、法律によって人格を与えられた「法人」の2種類に分けられます。

法人は「法人格」という権利や義務の主体となる資格を持っており、法人名義で契約を結んだり、資産(物やお金)を保有したり、さらには裁判の当事者となったりすることが可能になります。

この法人格は、法律の定めるところに従い、設立の登記などの法的な手続きを経て取得することができます。法人は、定められた基本規則(定款など)に基づいて特定の目的を持って活動します。

法人と個人事業主の違いは?

個人事業主と法人の最も大きな違いは、権利義務の主体が誰かという点です。

  • 法人:権利や義務の主体は法人そのものです。経営者とは法的に独立した存在とみなされ、法人の財産は経営者個人のものではなく、法人の債務は原則として法人の財産から支払われます。
  • 個人事業主:権利や義務の主体は経営者個人です。事業上の契約や債務はすべて経営者個人のものとなり、事業が失敗した場合は個人の私財も含めてすべての責任を負います(無限責任)。

また、個人事業主は、法人設立のような複雑な手続きは不要で、税務署に「開業届」を提出するだけで事業を始められます。

法人個人事業主
権利義務の主体法人そのもの経営者個人
事業を始める手続き定款作成、法人登記、必要書類の準備、許認可申請など開業届の提出
資本金必要(1円以上)不要
設立手続きに必要な費用株式会社の場合 約22万円~不要
支払う税金法人税、法人住民税消費税、法人事業税所得税、住民税、消費税、個人事業税
社会的信用高い法人より低い
責任の範囲会社形態により有限責任(株式会社・合同会社の場合、出資額の範囲内)無限責任(事業の債務すべて)

法人と会社・企業の違いは?

「企業」「法人」「会社」は似ていますが、指し示す範囲が異なります。最も広いくくりが「企業」で、経済活動を行う主体の総称です。「法人」はその中で法律により法人格を与えられた組織を指します。「会社」は法人のうち、会社法に基づいて設立登記を行う営利法人で、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4類型が該当します。

関係性としては「企業(経済活動主体の総称)>法人(法律上の人格を持つ組織全般)>会社(会社法に基づく営利法人)」とイメージすると分かりやすいでしょう。

  • 企業:法人・個人事業主にかかわらず、経済活動を行っている組織や団体、個人などを広く指す言葉です。
  • 法人:企業という大きなくくりの中で、法律によって法人格を認められている組織です。
  • 会社:会社法に基づいて設立登記を行っている営利法人のことです。株式会社・合名会社・合資会社・合同会社が該当し、これらはすべて法人です。
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法人の種類

法人は、その目的や設立根拠によって大きく「公法人」と「私法人」に分けられます。

「私法人」とは、国や地方公共団体などの「公法人」に対置され、私人による設立行為に基づき、民法・会社法などの私法により成立する法人を指す実務上の総称です。

さらに私法人は、利益の分配を目的とするか否かで「営利法人」と「非営利法人」に分類されます。

「営利法人」と「非営利法人」に分類

私法人(営利法人)

営利法人とは、組織の活動で得た利益を、構成員(株式会社の場合は株主など)へ分配することを目的とした私法人です。

営利法人は、会社法で定められた株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類のみです。これらを総称して「会社」と呼びます。

私法人(非営利法人)

非営利法人は、構成員への利益分配をしないことを基本とする私法人です。

ここでいう「非営利」とは、利益を上げてはいけないという意味ではなく、得た利益を法人の活動目的の達成のために使い、構成員(理事など)へ配当しない、という意味です。

非営利法人の代表的な形態として、一般社団法人・一般財団法人(一般法人法)、特定非営利活動法人(NPO法人)(特定非営利活動促進法)、社会福祉法人(社会福祉法)など、個別の法律に基づいて設立される法人があります。

なお、「公益法人」と呼べるのは、一般社団法人または一般財団法人が行政庁から公益認定を受けた場合のみで、NPO法人や社会福祉法人は公益的な活動を行う場合でも、公益認定法上の「公益法人」には含まれません。

また、過去に用いられていた「中間法人」という区分は、2008年の制度改正で廃止され、現在は一般社団法人・一般財団法人の制度に統合されています。

公法人

公法人とは、国家または公共の事務を担うことを目的として、法律に基づき設立される法人の総称です。独立行政法人(造幣局、国立公文書館など)、特殊法人(NHK、日本年金機構など)がこれにあたります。

なお、地方公共団体(都道府県・市区町村)は「法人格」を持ちますが、会社や一般法人とは異なり、地方自治法に基づく地方公共団体という公的主体であり、一般の法人と区別されます。

営利法人の特徴・設立方法

法人の種類によって、特徴や設立方法は異なります。ここでは、代表的な営利法人である株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、そして現在は設立できない有限会社(特例有限会社)について、その特徴と設立方法を解説します。

株式会社

株式会社

株式会社は、株式を発行して出資者(株主)から資金を集め、その資金で事業を行う営利法人です。

最大の特徴は、出資者(株主)が負う責任が出資額の範囲内に限定される「有限責任」である点です。また、所有(株主)と経営(取締役など)が分離している点も特徴ですが(所有と経営の分離)、経営者自らが出資して一人株主となる(所有と経営が一致する)設立も可能です。

設立には定款認証や登記申請が必要です。所要期間は、認証予約や払込、登記審査の状況・不備の有無により変動します。

株式会社の設立方法
  1. 会社の基本事項(商号、目的、本店所在地など)を決める
  2. 定款を作成する
  3. 公証役場で定款認証を受ける(電子定款も可)
  4. 資本金を払い込む
  5. 登記に必要な書類(登記申請書、就任承諾書など)を作成する
  6. 法務局で設立登記を行う

参考:株式会社の設立手続き|起業マニュアル|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

合同会社(LLC)

合同会社(LLC)

合同会社(LLC)は、2006年の会社法改正で導入された、営利法人(持分会社)の一種です。

最大の特徴は、株式会社と同様に「有限責任」でありながら、設立手続きが簡便で費用も安く(約10万円前後)、経営の自由度が高い点です。原則として、出資者(法律上の社員)自身が経営も行います(所有と経営の一致)。

合同会社は、株式会社と異なり、公証役場での定款認証が不要なため、最短で1週間前後での設立も可能です。

合同会社(LLC)の設立方法
  1. 会社の基本事項を決める
  2. 定款を作成する(紙または電子)
  3. 資本金を払い込む
  4. 登記に必要な書類を作成する
  5. 法務局で設立登記を行う

合同会社については以下の記事でも紹介しています。

合名会社

合名会社は、出資者全員が「無限責任社員」で構成される営利法人(持分会社)です。

無限責任とは、会社の債務に対し、出資額に限られず、個人の私財をもってでも全額を弁済する責任を負うことを意味します。この点が、有限責任である株式会社や合同会社との決定的な違いです。

設立方法は以下の通りです。

合名会社の設立方法
  1. 会社の基本事項を決める
  2. 定款作成を行う(認証は不要)
  3. 出資金を準備する(金銭以外の出資も可)
  4. 登記に必要な書類を作成する
  5. 法務局で設立登記を行う

合資会社

合資会社は、「無限責任社員」と「有限責任社員」の両方で構成される営利法人(持分会社)です。

無限責任社員は会社の債務全額に無限責任を負いますが、有限責任社員は出資額の範囲内でのみ責任を負います。設立方法は合名会社とほぼ同じですが、定款には両方の社員種別を明記する必要があります。

有限会社

有限会社は、2006年施行の会社法により、現在は新たに設立することができません。

2006年以前に設立された有限会社は、法律上「特例有限会社」として存続しており、会社法上は株式会社として扱われます。手続きを踏めば、通常の株式会社に移行することも可能です。

有限会社から株式会社への移行については以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

非営利法人の特徴・設立方法

次に、非営利法人の代表的な組織形態について、その特徴と設立方法を解説します。

NPO法人(特定非営利活動法人)

NPO法人は、「特定非営利活動促進法」に基づき、特定の非営利活動を行うことを目的とした非営利法人です。

非営利活動とは、特定非営利活動促進法で定める「特定非営利活動」を指し、法律の別表に掲げられた20分野の活動(例:保健、医療又は福祉の増進を図る活動 等)をいいます。。設立には、所轄庁(都道府県や政令指定都市)による認証が必要で、審査期間も含めると設立までに時間がかかるのが特徴です。税制上の優遇措置が与えられる場合があります。

参考:内閣府NPOホームページ

設立の流れは以下の通りです。

NPO法人(特定非営利活動法人)の設立方法
  1. NPO法人の概要(目的、事業、役員構成など)を決める
  2. 設立趣旨書、定款、事業計画書などの申請書類を作成する
  3. 所轄庁に設立認証を申請する
  4. 申請書類の縦覧(2週間)
    ※申請書類が一般に公開され、誰でも閲覧できる期間のことです。
  5. 縦覧終了後、所轄庁が「2カ月以内」に認証・不認証を決定
  6. 法務局で設立登記を申請する(認証から2週間以内)
  7. 登記完了後、所轄庁にへ登記事項証明書等を提出する

以下の記事で、NPO法人の詳細を説明しています。

一般社団法人

一般社団法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づく営利を目的としない非営利法人であり、事業目的に制限がないのが特徴です。

設立には2名以上の社員(法人の構成員)が必要で定款を作成し、公証人の定款認証を経て、設立登記により成立します。組織としては、最高意思決定機関である社員総会と、業務を行う理事の設置が必須です。

設立の流れは、以下の通りです。設立に要する期間は1〜4週間ほどと、比較的短期間で設立できるのが特徴です。

一般社団法人の設立方法
  1. 社員2名以上で定款を作成する
  2. 公証人役場で定款認証を受ける
  3. 設立時理事・監事の選任など、設立書類を作成する
  4. 法務局で設立登記を申請する

一般財団法人

一般財団法人は、「財産」に対して法人格が与えられる非営利法人です。

設立者が拠出する300万円以上の財産が設立の必須要件となります。営利は目的としません。設立には理事3名、評議員3名、監事1名の計7名以上の役員が必要で、意思決定機関である「評議員会」と業務執行機関である「理事会」の設置も必須です。

一般財団法人の設立方法

設立の流れは、以下の通りです。

  1. 設立者(1名以上)が定款を作成する
  2. 公証役場で定款認証を受ける
  3. 拠出する財産(300万円以上)を履行する
  4. 設立時評議員、設立時理事、設立時監事を選任する
  5. 設立時理事、設立時監事が設立手続の調査をする
  6. 法務局へ設立登記申請をする

一般財団法人については、以下の記事も参考にしてください。

社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉事業(特別養護老人ホームの運営や訪問介護サービスなど)を行うことを目的として設立される非営利法人です。

設立には、事業を行うための資産(土地、建物、資金など)が必須であり、所轄庁(都道府県知事や指定都市・中核市などの市長など)による認可が必要です。社会福祉事業のほか、法律で定められた範囲の公益事業や収益事業を行うことも可能です。

設立は、以下の流れで行います。

社会福祉法人の設立方法
  1. 設立準備会を立ち上げ、事業計画・資金計画を作成する
  2. 定款を作成し、役員(理事6名以上、監事2名以上)や評議員(7名以上)を内定する
  3. 所轄庁と事前協議を重ね、設立認可を申請する
  4. 社会福祉審議会の審査を経て、所轄庁より認可を受ける
  5. 法務局で設立登記を行う

社会福祉法人の内容については、以下の記事もチェックしてみてください。

学校法人

学校法人とは、私立学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学など)の設置・経営を目的とする非営利法人です。

設立には、教育活動に必要な校地、校舎、設備、運営資金などの財産を有していることが必須であり、所轄庁(文部科学大臣または都道府県知事)による「寄附行為」(株式会社の定款にあたる根本規則)の認可を受ける必要があります。

医療法人

医療法人とは、病院、診療所、または介護老人保健施設などの開設・経営を目的とする非営利法人です。

医師または歯科医師が常時勤務する診療所(または病院)であることが前提で、最高意思決定機関として「社員総会」を置きます。設立には、都道府県知事(または保健所設置市の市長など)の認可が必要です。

公益社団法人・公益財団法人

公益社団法人・公益財団法人とは、一般社団法人または一般財団法人のうち、「公益性」が特に高いと認められた法人です。

まず一般社団/財団法人を設立した後、公益目的事業(学術、技芸、慈善など23分野)を行うことを主たる目的とすることについて、行政(内閣府または都道府県)から「公益認定」を受けることで公益社団法人・公益財団法人に移行できます。

認定を受けると、公益目的事業に関する所得が非課税になるなど、税制上の大きな優遇措置が受けられます。

個人事業主が法人成りするメリットは?

個人事業主は資本金の必要がなく、面倒な設立手続きや登記費用がかからないのがメリットです。しかし、法人化することで得られるメリットも少なくありません。

対外的な信用が高まる

法人成りする最大のメリットとして、まず対外的な信用が高まる点が挙げられます。

法人は登記を行うことで情報が公開され、取引先や金融機関から信用を得やすくなります。個人事業主は法人と比較すると取引先からの信用を得づらく、融資を受ける際も不利になりやすいのがデメリットです。

節税効果が得られる

法人化により、多様な節税効果が期待できます。個人事業主の所得にかかる所得税は累進課税が適用されるため、ある程度所得が高くなると法人税率のほうが税率が低くなるためです。

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

法人成りの節税効果はこれだけではありません。自身に給与(役員報酬)を支払うことで「給与所得控除」を適用できます。家族への給与も、業務の実態があれば経費に計上可能です。

法人では退職金の支給も可能です。退職金にも所得税は課されますが、税制上の優遇措置が設けられています。

赤字の繰り越し期間が長くなる

赤字の繰り越しとは、赤字が出た年度の損失を、翌年以降の黒字と相殺できる節税の仕組みです。個人事業主(青色申告)が赤字を繰り越せる期間は3年間ですが、法人は10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)繰り越すことができ、よりも長く節税効果を活かせるメリットがあります。

個人事業主の法人成りについては、以下の記事も参考にしてください。

個人事業主が法人成りするデメリットは?

法人成りにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。

参考:個人事業から法人成りした場合のデメリットについて教えてください。|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

設立・運営の手間と費用がかかる

法人を設立するには、手間と法定費用がかかります。株式会社の場合は約20万円前後、合同会社でも約10万円前後の法定費用(登録免許税など)が必要です。

また、場合によっては、設立後も株主総会や取締役会の開催、議事録の作成といった法律で定められた運営の手間が発生します。法人を解散する際にも登記などの費用が必要です。

社会保険への加入が義務付けられる

法人化すると、社長1人であっても社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられます。保険料は会社と個人で半分ずつ負担するため、会社の法定福利費が増加します。関連する事務手続きの負担も増えます。

赤字でも税金が発生する

法人の場合、事業が赤字であっても法人住民税の「均等割」を支払う義務があります。税額は資本金や従業員数に応じて決まり、例えば東京都23区では年間約7万円がかかります。

参考:総務省|地方税制度|法人住民税

経理・事務負担が増加する

法人の税務申告は、個人事業主の確定申告よりも非常に複雑になります。適切な会計帳簿の作成や、複雑な法人税の申告書作成が必要となるため、経理・事務の負担が大幅に増加します。多くの場合、税理士に依頼する必要があり、その費用も発生します。

個人事業主が法人成りを検討すべきタイミングは?

法人成りする明確なタイミングは決まっていませんが、一般的に以下のような時期が目安とされています。

課税所得が一定額を超えたとき

一般的に、課税所得が800万円から900万円を超えると、法人化を検討する目安とされます。

個人事業主の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります。この目安の所得を超えると、個人の税率(所得税+住民税)よりも法人の税率の方が低くなる可能性が高まり、法人化した方が節税につながるケースが多くなります。

年間売上高が1,000万円を超えたとき

2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えたタイミングも、法人成りを検討する主要な目安です。

個人事業主は、この基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となり納税義務が発生します。

このタイミングで法人成りすると、資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、設立から原則2期目まで消費税の納税が免除されるため、節税につながる場合があります。

ただし、インボイス制度の導入により、免税事業者でいることが取引上の不利になる場合もあるため、売上規模・取引先の状況・課税と免税の損益試算を総合して判断することが重要です。

個人事業主の法人成りの相談先は?

個人事業主が法人成りを具体的に検討する際は、目的に応じて専門家や公的機関に相談することをおすすめします。節税シミュレーション、登記手続きの代行、融資相談など、内容によって適切な相談先が異なります。

専門家

  • 税理士・公認会計士:節税のシミュレーション、法人成りすべきかの判断、設立後の税務・会計顧問、設立届出書の作成支援などを行います。なお、税務代理・申告書作成・税務相談は税理士の独占業務であり、公認会計士は監査が独占業務です。
  • 司法書士会社設立の登記申請手続き(独占業務)を担う専門家です。定款や議事録などの必要書類の整備を支援し、法務局への登記まで一貫して対応します。
  • 行政書士:定款の作成・認証(電子定款対応)や、事業に必要な許認可の申請手続きの専門家です。
  • 社会保険労務士(社労士):設立後の社会保険・労働保険の手続きや、厚生労働省管轄の助成金申請の専門家です。
  • 弁護士:契約書の作成や法的なトラブル回避など、法律全般の相談が可能です。

公的機関

  • 商工会議所・商工会:創業や経営に関する幅広い相談に対応しています。
  • 法務局:登記申請書の書き方など、登記手続きに関する相談ができます(書類作成の代行は不可)。
  • 税務署:設立届出書の書き方や税金に関する一般的な相談ができます。
  • 日本政策金融公庫:創業時の融資(資金調達)に関する相談ができます。
  • よろず支援拠点:国が設置する経営相談窓口で、幅広い相談に対応しています。

法人の種類や設立方法を理解しよう

法人とは、法律によって「人」としての権利義務を認められた組織のことです。

法人には、営利を目的とする営利法人(例えば株式会社や合同会社)から、非営利を目的とする非営利法人(例えばNPO法人や一般社団法人)、さらには公的な役割を担う公法人(例えば独立行政法人)まで、非常に多くの種類があります。

それぞれ特徴、設立方法、責任の範囲、税制などが大きく異なります。特に個人事業主から法人成りを検討する場合は、ご自身の事業所得や将来の展望を踏まえ、メリット・デメリットを十分に比較し、最適な形態を選ぶことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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