• 作成日 : 2022年2月18日

法人とは?種類や個人事業主との違いについて解説!

法人とは法律により、自然人とは別に権利義務を認められた存在のことです。法人には株式会社や合同会社、NPO法人などさまざまな種類があり、設立方法もそれぞれ異なります。

法人は株式会社を代表とする法人と公法人に分かれ、公法人は地方公共団体や社会福祉法人、一般社団法人などが代表的です。

本記事では法人の意味や個人事業主との違い、会社・企業との違いについて説明し、主な法人の特徴や設立方法について紹介します。

法人とは?

法人とは、法律により自然人と同じ権利義務を認められた組織のことです。法人は株式会社や合名会社など、さまざまな種類があります。

事業は法人を設立せず、個人事業主として行うことも可能です。ここでは、法人と個人事業主との違いや、会社・企業との違いについても紹介します。

個人事業主との違いは?

起業する場合、法人を設立せずに個人事業主として経営するという選択もできます。個人事業主は法人のような設立手続きを必要とせず、税務署に「開業届」を提出するだけです。

ちなみに、開業届を提出せずに個人で仕事をしている場合はフリーランスと呼ばれ、税務上の扱いは個人事業主と変わりありません。

法人と個人事業主の違いについて、表にしました。

法人
個人事業主
事業を始める手続き
定款作成、法人登記、必要書類の準備、許認可申請など開業届の提出
資本金
必要不要
設立手続きに必要な費用
株式会社の場合25万円程度不要
支払う税金
法人税
法人住民税
消費税
法人事業税
所得税
住民税
消費税
個人事業税

会社・企業との違いは?

法人以外に「会社」や「企業」という呼び方があります。「会社」とは、会社法に基づいて法人登録を行っている営利法人のことです。株式会社・合名会社・合資会社・合同会社などがこれに該当します。

「企業」は法人・個人事業主にかかわらず、経済活動を行っている組織や団体、個人などを広く指す言葉です。法人は企業という大きなくくりの中で法人格を認められている組織であり、「企業>法人>会社」という関係が成り立ちます。

個人事業主が法人成りするメリットは?

個人事業主は資本金の必要がなく、面倒な設立手続きや登記費用がかからないのがメリットです。しかし、法人成りすることで得られるメリットも少なくありません。

まず、法人成りすることで対外的な信用が高まります。個人事業主は法人と比較すると取引先からの信用を受けづらく、融資を受ける際も不利になりやすいのがデメリットです。

また、個人事業主の所得にかかる所得税は累進課税が適用され、ある程度所得が高くなると法人よりも税率が高くなります。法人化することで節税効果も期待できるでしょう。

法人成りによる節税効果はこれだけではありません。自身に給与を支払うことができ、「給与所得控除」を適用できます。家族への給与支給もできますが、定期同額給与であれば経費に計上することも可能です。

法人では退職金の支給もできます。毎月の給与を下げて退職金を多く支払ったほうが、所得税や社会保険料を安くすることも可能です。退職金にも所得税が課せられますが、優遇措置が設けられており、80万円以下なら全額控除されて税金は発生しません。

年度の収支で赤字が出た場合、翌年に繰り越しをして節税ができる仕組みがあります。個人事業主の場合、青色申告であれば3年の繰り越しで所得税や住民税の節約が可能です。

これが法人であれば、9年間(平成29年4月1日以後に開始する事業年度で生じた欠損金の場合は10年)の繰り越しができ、法人税や法人地方税に適用できるというメリットがあります。

個人事業主の法人成りについては、以下の記事も参考にしてみてください。

法人の種類は大きく分けて3種類

法人は大きく私法人と公法人に分けられ、私法人は営利法人と非営利法人に分けられます。株式会社や合同会社は私法人の中の営利法人であり、非営利法人はさらに組合などの中間法人と財団法人などの公益法人に分類されます。

私法人(営利法人)、私法人(非営利法人)、公法人

ここでは、私法人(営利法人)、私法人(非営利法人)、公法人という3種類の法人について見ていきましょう。

私法人(営利法人)

私法人とは、私的な社会活動を目的に、私人の設立行為で成立する私法上の法人です。そのうち、営利法人とは構成員への利益分配を目的とした法人のことを指します。構成員とは法人を構成する人であり、株式会社の場合は株主がこれに該当します。

営利法人は、会社法で規定する「会社」、すなわち株式会社、合名会社、合資会社、合名会社の4つです。

株式会社以外の3つは持分会社と呼ばれ、持分会社は会社を設立した出資者が利益配分についての決定権を持ち、業務を遂行します。一方、株式会社は出資者と経営者が一致するとは限りません。出資した株主へ利益を還元することを目的に、経営者が業務を遂行します。

私法人(非営利法人)

私法人のうち、非営利法人は構成員への利益分配を目的としない法人です。非営利法人でも事業で利益をあげますが、その収益は​​​​社員の給与や団体の活動目的を達成するために使われ、構成員である理事や監事などに分配されることはありません。

非営利法人は公益を求める法人と中間法人に分けられます。

公益法人は公共の利益を図ることを目的とした法人で、財団法人や社団法人、社会福祉法人、NPO法人が代表的です。

中間法人には、管理組合や同業者団体、互助会などが挙げられます。

地方公共団体などの公法人

公法人は、広く国または公共の事業を行うことを目的とする法人のことです。地方公共団体や独立行政法人、特殊法人などが挙げられます。

地方公共団体は、都道府県や市町村単位で行政活動を行う行政機関で、普通地方公共団体と特別地方公共団体に分けられます。

独立行政法人とは、国の各省庁が担当する政策を行う部門から、事務・事業の一部を分離・独立させた法人です。造幣局や国立公文書館などが挙げられます。

特殊法人とは法律により設立され、法律により業務内容を規定された法人です。業務の性質が企業的な経営手法に馴染むことから設立されたもので、日本放送協会や日本年金機構などがこれにあたります。できる限り経営の自主性を認めながらも、国家的責任を担保するために、特別な監督下に置かれています。

主な法人の特徴・設立方法

同じ私法人、公法人であってもそれぞれに特徴があり、組織形態は異なります。ここでは、株式会社など代表的な法人の特徴と設立方法について見てみましょう。

株式会社

株式会社は株式を発行して資金を集め、事業を行う法人です。出資した株主から経営を委託された者が取締役となり事業を行うほか、経営者自ら出資して一人株主となる設立も可能です。

設立は、以下の手順で行い、設立登記まで3週間ほどかかります。

STEP.1会社の基本事項を決める
STEP.2定款を作成する
STEP.3公証役場で定款の認証を受ける
STEP.4登記に必要な書類を作成する
STEP.5設立登記を行う

株式会社の設立は、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。

合同会社(LLC)

合同会社は、2006年に施行された新会社法で導入された組織形態です。株式会社に比べて設立の手続きが簡単で、法定費用も半分程度で設立できます。

株式会社では出資者である株主が会社経営を取締役に委任し、取締役が業務を執行するのに対し、合同会社では出資者自身が業務執行権限を持ち、会社の業務を行うのが特徴です。

合同会社の設立手続きは、以下のような流れで行います。

STEP.1会社の基本事項を決める
STEP.2定款を作成する
STEP.3登記に必要な書類を作成する
STEP.4設立登記を行う

株式会社のように公証人の認証が必要なく、1週間程度で設立登記が可能です。

合同会社については以下の記事でも紹介しています。

合名会社

合名会社は、無限責任社員だけから成る会社組織です。有限責任が出資した金額の範囲で責任を負うのに対し、無限責任は会社の債務に対し全責任を負います。会社の破産などで生じた負債は、私財を使ってでも返済しなければなりません。

設立方法は以下の通りです。

STEP.1会社の基本事項を決める
STEP.2出資金を準備する
STEP.3損益の分配割合を定める
STEP.4業務執行社員・代表社員を選任する
STEP.5定款作成を行う
STEP.6登記申請を行う

定款の作成などは株式会社と同じですが、定款には無限責任社員を明記することが必要です。

合資会社

合資会社は無限責任社員と有限責任社員から成る会社です。無限責任社員は合名会社と同じく会社の債務に対し最後まで責任を負いますが、有限責任社員は出資額の範囲でのみ責任を負います。

設立方法は合名会社と同じで、定款には無限責任社員と有限責任社員の明記が必要です。

有限会社

有限会社とは、現行法上特例有限会社とされ、法律上株式会社の一部と扱われます。

有限会社は2006年施行の会社法により新規設立ができなくなり、それまでに設立された有限会社は株式会社に変更するか、「特例有限会社」として存続するかのどちらかを選ぶことになりました。

有限会社から株式会社への移行については以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

参考:東京中小企業家同友会事務局/新会社法改正のポイントと対応(2006年11月)

NPO法人

NPO法人は私法人の非営利法人のうち、公益法人に属する組織形態です。「特定非営利活動促進法」に基づき法人格を認められた非営利活動団体で、さまざまな優遇措置が与えられています。

非営利活動は「保健、医療または福祉の増進を図る活動」など20項目の活動内容が規定され、そのうちのひとつでも該当すれば設立が可能です。

設立には所轄庁に必要書類を提出して認証を受ける手続きが必要で、設立登記までは時間がかかります。

設立の流れを見てみましょう。

STEP.1NPO法人の概要を決める
STEP.2申請書類を作成する
STEP.3所轄官庁に設立認証を申請する
STEP.4申請書類の縦覧期間として約2カ月
STEP.5申請内容の審査として約2カ月
STEP.6設立認証が決定する
STEP.7設立登記を申請する
STEP.8所轄官庁へ設立登記完了届出書を提出する

以下の記事で、NPO法人の詳細を説明しています。

一般社団法人

一般社団法人は営利を目的としない非営利法人で、事業目的に制限はありません。「人が集まることによって設立できる」と法律に規定されており、2名以上の社員で設立することが必要です。社員で構成する「社員総会」と理事を置くことが必要で、定款の定めにより、理事会や監事、会計監査人を置くことができます。

設立の流れは、以下の通りです。

STEP.1定款の作成
STEP.2公証人役場で定款の認証を受ける
STEP.3設立書類を作成する
STEP.4設立登記を申請する

設立に要する期間は1〜4週間ほどと、比較的短期間で設立できるのが特徴です。

一般財団法人

一般財団法人は営利を目的としない非営利法人で、「財産」に対して法人格が与えられている組織形態です。設立時には300万円以上の財産を拠出しなければならず、設立時には、理事3名、評議員3名、監事1名の計7名が必要最低人数とされ、理事会と評議員会の設置も必要とされています。

設立の流れは、以下の通りです。

STEP.1定款を作成する
STEP.2公証役場で定款の認証を受ける
STEP.3拠出する財産を履行する
STEP.4評議員、理事、監事を選任する
STEP.5理事、監事が設立手続の調査をする
STEP.6法務局へ設立登記申請をする

一般財団法人については、以下の記事も参考にしてください。

社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として設立される法人です。社会福祉事業とは、特別養護老人ホームなどを運営する第一種社会福祉事業と、訪問介護やデイサービスを提供する第二種社会福祉事業に分かれます。社会福祉事業のほか、公益事業や収益事業を行うことも可能です。

設立は、以下の流れで行います。

STEP.1設立準備会を立ち上げ、事業計画を作成する
STEP.2定款を作成する
STEP.3所轄官庁の認可を受ける
STEP.4設立登記を行う

社会福祉法人の内容については、以下の記事もチェックしてみてください。

法人の種類や設立方法を理解しましょう

法人とは権利義務を認められた組織のことで、大きく分けて、私法人(営利法人)、私法人(非営利法人)、公法人の3種類があります。株式会社はこのうち、私法人(営利法人)にあたるものです。
法人はそれぞれに特徴があり、設立方法も異なります。記事も参考に、法人とはどのようなものか理解しておきましょう。

よくある質問

法人とは?

法律により、自然人以外で権利義務を認められた組織のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主との違いは?

個人事業主は法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人で、法人とは法人格を取得しているか否かが異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主が法人成りするとどのようなメリットがある?

社会的信用が高くなり、節税効果が得られるなどいくつかのメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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