• 更新日 : 2025年12月1日

個人事業主の保育園審査時の必要書類は?就労証明書や入園審査のポイントなど解説

子どもを保育園に預ける際には様々な書類の提出が求められますが、個人事業主の場合、会社から証明をもらう代わりにどのような準備が必要なのでしょうか?

この記事では、個人事業主やフリーランスが子どもを保育園に入れるための手続きや必要書類、審査に通過するためのポイントなどについて詳しく解説します。

そもそも個人事業主は子どもを保育園に預けられる?

原則として、個人事業主やフリーランスでも子どもを保育園に預けることができます。なぜなら、保育園(保育所)は児童福祉法に定められた児童福祉施設であり、厚生労働省が管轄する施設だからです。保育を必要とする子どもに対し、養護と教育の面から保育を行うため、保護者の就労形態に関わらず、保育が必要と認定されれば利用可能です。

保育園の種類

保育園には、国の基準を満たした認可保育園のほか、地域型、認定こども園など多様な種類があります。主なものとして次のような施設があります。

  • 認可保育園
  • 地域型保育園(小規模保育事業、事業所内保育事業、家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業)
  • 認定こども園
  • 企業型保育園
  • 院内保育所 など

認可保育園とは、国の定める設置基準を満たしているため、国から補助金が支給されています。認可保育園は以下の2種類があります。

認可保育園の種類経営主体許可について
公営保育園都道府県や市区町村など子ども一人あたりの施設の広さや職員数などの基準をクリアし、知事による認可が必要
私立保育園社会福祉法人など

なお、法律上は「保育所」とされますが、自治体により「保育園」とされるところもあります。この記事ではすべて「保育園」として記載しています。

以下では、「認可保育園」のうち、「公営保育園」に入園するための手続きについて見ていきます。

保育園の入園審査は点数制

認可保育園の入園審査は、原則として家庭状況をポイント化した「点数制」によって行われます。

例えば、東京都港区の場合、まずお子さんの保育の必要性について、認定を受ける必要があります。保護者の就労が入所要件となる場合には、就労日数や勤務時間などを区の基準で指数化します。その指数に、世帯の状況、子どもの状況などの事情(調整指数)を考慮して、入園の可否が決定されます。

父の基準指数+母の基準指数+調整指数(世帯や子どもの状況)=世帯の合計指数

点数は、保護者の就労状況などを示す「基準指数」と、世帯の状況を示す「調整指数」の合計で決まります。

  • 基準指数:保護者の就労日数や勤務時間などの状況に基づいて決まる点数です。例えば、「週5日以上・1日8時間以上の就労(月160時間以上)」が最も高い点数(例:20点)、「週3日・1日4時間以上の就労(月48時間以上)」は低い点数(例:10点)など、自治体ごとに細かく定められています。
  • 調整指数:世帯の状況に応じて加点または減点される点数です。
    • 加点例:ひとり親世帯、兄弟姉妹がすでに在園している、生活保護世帯、保護者が病気・障害を有する場合など
    • 減点例:65歳未満の祖父母が同居しており保育が可能と判断される場合など

このように、同条件でも自治体の基準により差があると言えます。このポイントについては入園案内などに詳細が書かれていますので、各自治体ホームページの保育園入園案内などでご確認ください。

参考:令和8年度入園申込をされる方へのごあんない|港区ホームページ

個人事業主の保育園審査時の必要書類は?

個人事業主に限りませんが、保育園への入園審査に際してはいくつかの書類が必要です。ここでは東京都港区の例を参考に、提出が必要となる主な書類を解説します。多くの自治体では申請書類を自治体のホームページからダウンロードできるため、まずはチェックしてみましょう。

個人事業主の保育園審査時の必要書類
  • 就労証明書
  • 開業届のコピー
  • 確定申告書のコピー
  • 事業の実態を示すその他書類(契約書・通帳・許可書など)
  • 開業直後で上記書類がない場合の代替書類

就労証明書

保育園入園の申込みに際し、家庭の状況に応じた就労証明書の提出が求められます。就労証明書は、会社員などの場合は勤務先が作成しますが、自営業(個人事業主)の場合には、自筆の上、タイムスケジュールや仕事の実態がわかる資料を別途求められる場合があります。

就労証明書

出典:入園申込みに必要な書類(令和8年度入園申込み)|港区ホームページ、「就労証明書記入見本

開業届のコピー

開業届は、公的に事業を営んでいることの証明となります。就労証明書に加えて、客観的な就労実態を証明するために提出を求められます。これがないと点数が低くなったり、審査で不利になったりする可能性があるため、事業を開始したら速やかに提出しておくことが重要です。

確定申告書のコピー

確定申告書も、開業届と並んで事業実態と収入を証明する書類です。 現在の就労先で収入を得ていることが分かる最新の確定申告書として、提出が求められます。毎年必ず確定申告を行い、控えを保管しておくことが、保育園の申込みにおいて重要になります。

事業の実態を示すその他書類(契約書・通帳・許可書など)

上記の主要書類に加え、事業の実態を客観的に示すために、以下のような書類の提出を求められることがあります。

  • 履歴事項証明書・登記事項証明書(法人化している場合)
  • 営業許可書(飲食業や建設業など、許可が必要な業種の場合)
  • 請負契約書(クライアントとの継続的な契約を示すため)
  • 報酬等の振込が確認できる通帳(定期的な収入があることを示すため)

開業直後で上記書類がない場合の代替書類

開業したばかりで、まだ確定申告の実績がない、あるいは開業届をこれから出す、といった場合でも諦める必要はありません。その場合は、以下のような代替書類で実態を証明できるか、必ず事前に自治体の窓口に確認しましょう。

  • クライアントとの継続的な業務委託契約書
  • 発行した請求書の控え
  • 事業所の賃貸借契約書(自宅外に事務所がある場合)
  • 事業用WebサイトのURL
  • 事業計画書

個人事業主が保育園の入園審査で不利になる点

個人事業主やフリーランスは、会社員と比較して就労実態の客観的な証明が難しく、入園のハードルとなる場合があります。自治体によっては審査基準が会社員より厳しくなる可能性もあるため、早めの準備が大切です。

主な懸念点は以下の通りです。

  • 就労時間の不安定さ:会社員のように「月160時間」といった固定の就労時間を証明しにくい場合があります。特に在宅で仕事をしていると、勤務時間と私生活の区別が曖昧と見なされ、点数が低く見積もられる(例:内職扱いや時短勤務と同じ区分にされる)可能性があります。
  • 事業の継続性の証明:開業したばかりで確定申告の実績がない場合、事業が継続的であることの証明が難しくなります。

個人事業主が保育園の入園審査に通過するためのポイント

個人事業主が入園のハードルを越えるためには、就労実態を客観的に証明する書類についての徹底した準備がポイントとなります。

  • 就労時間を明確にする:就労証明書や申告書には、具体的なタイムスケジュール(例:月曜〜金曜 9:00-17:00、うち休憩1時間、実働7時間×週5日=月140時間)を詳細に記載します。
  • 書類を完璧に揃える:必要な書類を漏れなく準備します。特に「開業届」や「確定申告書」は事業実態の強力な証明になります。
  • 自治体に事前相談する:自身の状況(開業直後、在宅勤務など)で、どの書類があれば点数が最大化されるかを、役所の保育課窓口で事前に相談しましょう。
  • 事業所を自宅外に構える:もし可能であれば、自宅とは別に事務所を借りる(賃貸契約書を提出する)と、在宅勤務よりも就労実態が認められやすくなる場合があります。

個人事業主は認可外保育所や預かり保育の活用もおすすめ

認可保育園の審査に落ちて保留通知を受け取った場合でも、すぐに諦める必要はありません。以下の対策を検討しましょう。

  • 認可外保育所:国の認可基準は満たしていませんが、自治体独自の基準を満たしている施設もあります。保育料は認可保育園より高額になる傾向がありますが、「幼児教育・保育の無償化」による補助金(上限あり)の対象となる場合があります。
  • 預かり保育:認定こども園や幼稚園が、正規の教育時間の前後に子どもを預かる制度です。こちらも無償化の対象となる場合があります。

個人事業主の保育園申請についてよくある質問

最後に、個人事業主の保育園申請についてよくある質問とその回答をまとめました。

開業直後でも子どもを保育園に預けられますか?

はい、開業直後で確定申告の実績がない場合でも、諦める必要はありません。開業届はもちろん、事業の実態を示す書類をできる限り集めてアピールしましょう。

具体的には、クライアントとの継続的な業務委託契約書 、発行済みの請求書控え 、事業用WebサイトのURL 、事業所の賃貸借契約書 、事業計画書などが有効です。 就労証明書には月160時間就労見込みなど、今後の予定を記載し、その根拠となる契約書などを添付します。 不安な点は必ず事前に自治体に相談しましょう。

育休明けに開業する場合も保育園に預けられますか?

はい、会社員時代の育児休業を終え、復職と同時に個人事業主として開業する場合も、基本的には開業直後のケースと同様の準備が必要です。

この場合、会社員としての復職ではなく、「個人事業主」としての新規の保育申請となります。育休明けの「復職」枠ではなく、「新規」枠での審査となる点に注意が必要です。 復職(開業)予定日を就労証明書に明記し、開業届の控えや、すでにあればクライアントとの契約書などを提出し、事業開始の実態を示せるよう準備します。

確定申告で保育園の保育料は経費にできますか?

いいえ、原則として保育園の保育料は経費にできません。

これは、保育料が事業を行うために直接必要な費用(必要経費)ではなく、個人の生活に必要な費用(家事費)とみなされるためです。

個人事業主も幼児教育・保育の無償化の対象ですか?

はい、個人事業主も条件を満たせば「幼児教育・保育の無償化」の対象となります。

  • 認可保育園・認定こども園:3歳から5歳児クラスの子どもの利用料は原則として無償となります。
  • 認可外保育所・預かり保育:無償化の対象となるためには、お住まいの自治体から保育の必要性の認定を受ける必要があります。 個人事業主も就労証明書などを提出してこの認定を受ければ、認可外保育所は月額3.7万円まで 、幼稚園の預かり保育は月額1.13万円まで (※金額は一例)、利用料の補助が受けられる場合があります。

ただし、無償化の対象は原則として利用料(保育料)のみであり、給食費、通園送迎費、行事費などは別途実費負担となることが一般的です。

個人事業主の保育園審査は早めの準備と書類提出を

認可保育園に入園する際には、個人事業主も会社員と同様に保育の必要性を証明する書類(就労証明書など)が必要です。

保育園には認可、認可外、認定こども園などいろいろな種類があり、入園の仕組みや幼児教育・保育の無償化の適用も異なります。

入園審査や継続利用のためには、家庭の状況や就労実態を「代替書類」なども活用して正確に記載し、変更があれば連絡することで信頼性を高めておきましょう。

提出書類には細かなことも記載するため、作成に時間がかかりますので早めに準備しておきましょう。


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