• 更新日 : 2025年11月25日

【テンプレ付】代表者住所の法人登記の方法は?変更の書き方を解説

法人の代表取締役の住所は登記事項であり、住所が変わった日(住民票の転入日等、客観的に確認できる日)から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。これは会社法で定められた義務で、怠ると代表者個人に100万円以下の過料が科され得ます。迅速な対応が求められます。

しかし、どのような場合に手続きが必要で、どんな書類を準備すればよいかわかりにくい点も少なくありません。この記事では、法人の代表者住所の法人登記が必要になる具体的なケースや申請手続きの流れ、必要書類、そして登記を忘れた場合のリスクまで、わかりやすく解説します。

法人登記における代表者とは誰のこと?

株式会社において、法人登記で住所の登録が義務付けられている「代表者」とは、会社を代表する権限を持つ取締役、すなわち代表取締役を指します。

代表取締役の氏名と住所は、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、一般に公開されます。これは、会社の代表者の身元を明確にし、取引の安全性を確保するための重要な仕組みです。そのため、代表取締役に選ばれた人の住所は、必ず登記しなければなりません。

「取締役」全員の住所登記は不要

代表権のない取締役や監査役は氏名のみが登記事項で、住所は登記事項ではありません。したがって、これらの役員が引っ越しをしても住所変更登記は不要です。住所の登記が求められるのは代表取締役に限られます。

代表者住所の法人登記が必要となるケースは?

代表取締役の住所に変更があったすべてのケースで、法人登記が必要です。具体的には、以下のような状況が該当します。

  • 代表取締役の引っ越し
    代表取締役が個人の住居を移転し、住民票の住所を変更したとき。
  • 新たに就任した代表取締役の住所を登記するとき
    会社設立時や、代表取締役が交代した際に、新しい代表者の住所を登記するとき。
  • 住居表示の実施・変更
    市区町村の区画整理などにより、行政上の町名や地番が変更されたとき。この場合、本人の意思とは関係なく住所が変わるため、登記が必要です。(この場合の登録免許税は非課税です)

なぜ代表者住所の登記が必要なのか?

代表取締役の住所が登記事項とされているのは、主に「取引の安全」を確保し、会社の責任の所在を明確にするためです。

代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為を行う権限を持つため、その身元と送達先の公示が重要です。登記された住所が古いままだと、訴状などの重要書類が届かず不利益を被るおそれがあり、正確な公示は取引先・金融機関にとっても信頼の前提になります。

代表者住所の法人登記は住民票の住所と一致させる必要がある?

原則として、登記する住所は住民票に記載された住所と一致させるのが安全です。もっとも、法律上の「住所」は生活の本拠(民法22条)であり、実態としてどこが生活の中心かで判断されます。

代表取締役の住所変更登記では、住民票や個人の印鑑証明書の添付は原則不要です。ただし、就任登記など他の手続きでは別途必要となる場合があります。書面申請の場合は、申請書へ会社の届出代表者印での押印、またはオンライン申請で電子署名を付与します。

では、単身赴任などで実際に生活している場所と住民票の住所が異なる場合はどうなるのでしょうか。

法律上の「住所」とは、「生活の本拠」を指します。これは、単に寝泊まりしている場所ではなく、その人の生活の中心となっている場所のことです。

  • 一時的な単身赴任の場合
    週末帰宅等により生活の本拠が元の住所と客観的に認められるなら、その住所を登記事項の住所として差し支えありません。
  • 生活の拠点が移った場合
    実態としての本拠が移ったなら、住民票を新住所へ異動し、それに合わせて登記上の住所も変更するのが望ましい対応です。

重要な通知が届かないリスクや、金融機関での手続きなどで本人確認の不一致が生じることを避けるためにも、住民票と登記の住所は可能な限り一致させて運用するのが安全です。

代表者住所の変更登記手続きはどのように進める?

代表取締役の住所変更登記は、必要書類を作成し、本店所在地を管轄する法務局へ申請する流れで進めます。申請は窓口・郵送の書面に加え、オンラインでも可能です。以下は、株式会社の場合における書面での手続きを記載しています。

  • STEP1:必要書類の作成
    代表者の住所変更登記は原則「株式会社変更登記申請書」だけで足ります。住民票等の添付は不要です。代理申請なら委任状を添付します。記載例・様式は法務局の公式ひな形を参照してください。
  • STEP2:登録免許税の納付(収入印紙の準備)
    登録免許税は資本金1億円以下=1万円/1億円超=3万円です。郵便局や法務局内売店で購入した収入印紙を、A4白紙(登録免許税納付用台紙)に貼付します。貼り付けた印紙は消印しません。申請書本体に直接貼るのではなく、台紙を添付します。
  • STEP3:書類の提出
    書類が整ったら、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。なお、登記完了後の受け取りを郵送希望する場合は、返信用封筒(切手貼付)を同封します。

    • 窓口提出:書類の不備をその場で確認してもらえるため安心です。
    • 郵送提出:封筒の表に「登記申請書在中」と朱書きし、普通郵便ではなく、配達状況が確認できる簡易書留またはレターパックなどがおすすめです。
  • STEP4:登記完了の確認
    申請後、1週間から2週間程度で登記が完了します。完了後は、登記事項証明書を取得し、代表者の住所が正しく変更されているかを確認しましょう。

代表者住所の変更登記に必要な書類は?

現任の代表取締役の住所変更登記で必要な書類は、原則「株式会社変更登記申請書」のみで手続きが可能です。会社の状況によっては追加書類が必要になるケースがあります。

原則として必要な書類

書類名補足
① 株式会社変更登記申請書住所変更登記に必要な申請書

状況によって必要となる書類

追加で必要な書類補足
委任状司法書士等へ代理申請を依頼する場合に必要(書面委任状なら会社届出の代表者印で押印)
登録免許税納付用台紙書面提出の場合、変更にかかる必要な額の印紙を貼付
市町村長の証明書など住居表示の実施・市町村合併・地番変更など行政起因の表記変更の場合に添付

なお、住民票や個人の印鑑証明書は、住所変更登記では原則不要です。申請方法がオンラインの場合は、電子署名・電子納付が利用でき、書面での押印・印紙納付と取扱いが異なります。

参照:商業・法人登記の申請書様式|法務局

代表者住所の変更登記申請書の書き方

株式会社の変更登記申請書を作成する際の主要な項目の書き方を解説します。以下は、株式会社の場合における書面での手続きを記載しています。

1. 商号・本店

登記事項証明書の表記どおりに商号・本店所在地を正確に記載します。

2. 登記の事由

「代表取締役の住所変更」と記載します。

3. 登記すべき事項

変更内容を具体的に記載します。原因年月日は、実際に住所が変わった日(住民票の転入日等、客観的に確認できる日)を記載します。

  • 「役員に関する事項」
  • 「資格」代表取締役
  • 「住所」東京都千代田区千代田1番1号
  • 「氏名」法務太郎
  • 「原因年月日」令和7年4月1日住所移転

※登記すべき事項は、テキスト形式で作成したものをCD-Rなどに保存して提出することも可能です。

4 .登録免許税

「金10,000円」(資本金1億円超は「金30,000円」)と記載します。収入印紙は申請書本体に直接ではなく「登録免許税納付用台紙」に貼付し、申請者側での消印は不要です。

5. 添付書類

本人申請で代表者の住所変更のみなら原則は不要です。代理申請(司法書士等)の場合は委任状を添付します。また、住居表示の実施・地番変更・市町村合併など行政による表記変更に該当する場合は、市町村長の証明書(例:住居表示実施証明書)を添付します。

6. 申請人

本店所在地・商号を記載し、続けて変更後の代表取締役の住所・氏名を記載します。書面で会社が申請する場合は法務局届出の代表者印を押印します。代理申請では申請人欄は代理人(司法書士等)を記載します。

代表者住所の登記申請の期限と費用はどのくらい?

登記申請は、代表取締役の住所が変更となった事実が生じた日(住民票の転入日等、客観的に確認できる日)から2週間以内に申請する必要があります。費用は登録免許税で、資本金によって異なり資本金が1億円以下なら1万円、資本金1億円超は3万円です。

申請期限は「2週間以内」

会社法915条1項により、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更登記を申請する義務があります。起算日は住所変更の事実が生じた日(住民票の転入日など)を目安にしてください。

登録免許税は資本金により異なる

登記申請時には、登録免許税を国に納付します。

  • 資本金が1億円以下の会社:1万円
  • 資本金が1億円を超える会社:3万円

印紙納付の場合、申請書の本紙ではなく「登録免許税納付用台紙」に貼付し、申請者側で消印はしません。オンライン申請の場合は電子納付ができます。

もし代表者住所の登記を忘れたらどうなる?

正当な理由なく変更登記の申請期限(2週間)内に申請しないと、代表者個人が100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法976条)。過料は行政上の秩序罰で、刑事罰の「罰金」とは異なり前科はつきません。気づいた時点で速やかに申請しましょう。

この登記事項に変更が生じたのに、会社法915条1項の期限内(原則2週間以内)に変更登記を申請しなかった状態を「登記懈怠(とうきけたい)」といいます。

過料(かりょう)のリスク

会社法976条は、会社法に基づく登記を怠った場合に代表者個人へ100万円以下の過料を定めています。会社の経費にはならず、代表者個人の負担です。

参照:会社法 第九百七十六条 過料に処すべき行為|e-GOV

会社の信用への影響

登記情報は誰でも閲覧できるため、長期間情報が更新されていないと、金融機関や取引先から「管理体制が整っていない会社」と見なされ、信用に影響が出るおそれもあります。融資の審査などで不利に働く可能性も考えられます。

代表者住所の法人登記変更後の他の手続きは?

法務局での登記が完了した後も、いくつかの手続きが必要です。特に、融資を受けている場合や許認可事業を行っている場合は、関係各所への届出を忘れずに行いましょう。

金融機関での手続き

金融機関へも住所変更関連の届け出が必要になる場合があります。日本政策金融公庫や信用保証協会を利用している場合、契約条項上、代表者や保証人の住所等に変更があれば速やかに届出が求められます。

必要書類は金融機関・保証協会ごとに異なりますが、登記事項証明書の提出を求められるのが一般的です。なお、代表取締役住所の非表示措置を選択していると、追加の本人確認資料を求められる場合があります。

許認可に関する手続き

代表者または役員の住所が届出事項に含まれる許認可では、変更届が必要です。制度により様式や期限が異なるため、各所管の最新案内を確認してください。例えば古物商許可では、法人役員の住所変更は変更届出の対象で、住民票等の添付が必要とされています。

税務・社会保険関係の手続き

税務・社会保険関係の手続きも必要になる場合があります。

  • 税務(税務署):代表者の変更、本店所在地の変更、納税地の異動などは届出が必要ですが、法人の代表者の「住所のみ」の変更について、国税庁の「異動事項に関する届出」では明示的な提出義務項目に含まれていません。
  • 社会保険(年金事務所):法人の場合、社会保険に関して、事業所の所在地または名称に変更があった場合に、事実の発生日から5日以内に提出する必要がありますが、代表者個人の住所変更については、届出の対象に記載はありません。

上記は代表者個人の住所のみが変わったケースの原則です。本店所在地の移転、代表者自体の交代、納税地の異動などがある場合は、別途それぞれの手続き・期限・添付書類が発生します。

代表者住所の法人登記は2週間以内の手続きが必須

代表者の住所は、会社の信用を裏付ける重要な登記事項です。引っ越しなどで住所が変わった際は、会社法に基づき、2週間以内に法人登記の変更手続きを行わなければなりません。

手続き自体は他の登記に比べてシンプルですが、怠ると過料というペナルティが科される可能性があります。代表者の住所に変更があった際は、この記事を参考に、迅速かつ正確に手続きを進めましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事