- 更新日 : 2025年11月25日
創業融資の相場はいくら?融資額や金利の目安を解説
創業融資で借りられる金額の相場は、正式に公表されておりません。日本政策金融公庫の2024年度の調査によると、開業時の資金調達における金融機関等からの借入平均額は780万円です。ただし、これはあくまで平均値であり、より実態に近い数字をとるならば、開業費用の中央値は580万円も参考となるでしょう。融資額は自己資金の3倍程度が一般的な目安とされ、事業内容や経験によって大きく変動します 。
この記事では、公的な調査データを基に、創業融資の融資額や金利の相場、審査で考慮されるポイント、融資を受ける際の注意点をわかりやすく解説します。
目次
創業融資の相場はいくら?【2024年度調査データ】
創業時の資金調達における金融機関からの融資(借入額)の平均額は約780万円です。これは、開業時に調達した資金総額の平均1,197万円ののうち、およそ65%を占めています 。(日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」より)
平均融資額は780万円、自己資金は293万円
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達の内訳は「金融機関等からの借入」が平均780万円(全体の65.2%)、「自己資金」が平均293万円(全体の24.5%)であり、この2つを合わせると全体の約9割を占めます。
調査対象は、2023年4月〜9月に日本政策金融公庫から融資を受けた新規開業企業です。
なお、平均値は一部の高額な融資によって引き上げられる傾向があるため、より実態に近い開業費用の中央値である580万円も参考にするとよいでしょう 。
実際に、開業費用が「500万円未満」のケースが41.1%と4割以上を占めていることからも、多くの事業がこの規模でスタートしていることがわかります 。
自己資金の3倍が借入額の目安
創業融資の借入額は、自己資金の3倍程度が一般的な目安とされています。
例えば、自己資金を200万円準備した場合、600万円程度の融資が期待できる可能性があります。金融機関は、自己資金を創業者自身の熱意や計画性、リスク管理力を図る材料とみなす場合もあり、融資審査では自己資金額が大きな評価ポイントになります。
「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の自己資金の平均額は293万円でした。これを3倍にすると約879万円となり、先に述べた平均借入額780万円と近い水準になります。融資を希望する際は、まず目標額の3分の1の自己資金を準備することから始めましょう。
運転資金の目安は月商の3ヶ月分
運転資金の必要額は、月間売上予測の3ヶ月分が一つの目安とされています。なお、人件費比率が高い業種や在庫負担が重い業種では、より手厚い見積もりが必要になる場合があります。
事業を開始してもすぐに売上が安定するとは限りません。売上がなくても家賃や人件費などの支払いは発生するため、事業が軌道に乗るまでの資金として、最低でも3ヶ月分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。事業計画を立てる際には、この点をふまえて必要な運転資金を算出し、融資希望額に含めましょう。
開業費用の平均は985万円、中央値は580万円
2024年度調査によると、開業費用の平均額は985万円でした。
ただし、平均値は高額案件に影響されるため、より実態を反映する中央値の580万円も合わせて確認する必要があります。
実際、開業費用のうち「500万円未満」で開業するケースが41.1%と4割以上を占めています 。この結果から、多くの事業が1,000万円未満の比較的コンパクトな資金計画で開業していることがわかります。
創業融資の相場はあくまで参考値
創業融資の相場データを参考にする際、平均融資額や開業費用は、あくまで多様な業種や事業規模の平均値であり、ご自身の事業にそのまま当てはまるとは限りません。
例えば、大規模な厨房設備が必要な飲食店と、パソコン一台で始められるITコンサルティングでは、必要な初期投資額は全く異なります。平均値に惑わされることなく、自身の事業計画に基づいて必要な資金額を見積もることが大切です。
創業融資の金利の相場はどれくらい?
融資を受ける際に融資額と並んで気になるのが金利です。金利は返済総額に直結するため、少しでも低い方が望ましいでしょう。ここでは、融資を受ける機関ごとの金利相場を解説します。
日本政策金融公庫の金利の目安
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、融資制度や担保の有無によって金利が異なりますが、無担保で融資を利用する場合、金利は年1.40%〜4.30%が目安です。一方、有担保で利用する場合は金利が低めに設定されており、年0.95%〜3.90%が目安となります。(2025年10月現在)
女性、若者、シニアなど特定の要件を満たすことで、基準利率よりも低い特別利率が適用される優遇制度もあります。
最新の金利については、必ず公式サイトで確認してください。
制度融資(自治体・金融機関連携)の金利目安
制度融資は、地方自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度です。
制度融資は、自治体が利子の一部を負担してくれる「利子補給」や、信用保証協会への保証料を補助してくれる制度があるのが大きな特徴です。これにより、創業者本人の負担を大きく軽減できます。
例えば、東京都では「女性・若者・シニア創業サポート2.0」を実施しており、女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)を対象に、固定金利年1%以内、融資限度額1,500万円以内(女性2,000万円以内)といった有利な条件で融資を受けられる可能性があります。(2025年10月現在)
金利や条件は各自治体によって異なるため、事業所の所在地を管轄する自治体のウェブサイトや窓口で確認しましょう。
民間金融機関(銀行)の金利目安
創業段階では信用保証協会の保証付き融資が中心です。表示金利は商品・地域・保証の有無で幅が出ます。一方、プロパー融資(銀行が直接リスクを負う融資)は創業直後だとハードルが高めです。
ノンバンク等のビジネスローンは審査が比較的速い反面、金利は商品により中〜高水準になる傾向があるため、総返済額とキャッシュフローへの影響を慎重に試算しましょう。
創業融資で希望額を借りるにはどうすればいい?
創業融資で希望する金額を借り入れるためには、「事業計画の妥当性」「自己資金」「事業経験」の3つのポイントを押さえることが重要です。金融機関はこれらの要素を総合的に評価し、融資の可否や金額を決定します。それぞれのポイントで具体的に何をすべきかを理解し、準備を進めましょう。
説得力のある事業計画を策定する
融資担当者が納得できる、具体的で実現可能性の高い事業計画を策定しましょう。
事業計画書は、「借りたお金を何に使い、どのように利益を上げて返済していくか」を説明するための設計図です。売上や利益の予測には客観的な根拠を示し、仕入計画や販売戦略、資金繰りの見通しなどを具体的に記載する必要があります。
金融機関の担当者は、事業の将来性だけでなく、創業者自身の経営者としての資質も見ています。特に収支計画では、希望的観測ではなく、客観的なデータに基づいた堅実な売上予測を立て、無理のない返済計画であることを示しましょう。
十分な自己資金を計画的に準備する
自己資金は、希望融資額の3分の1以上を目安に、計画的に準備することが大切です。
自己資金の額やその準備期間は、創業者自身の事業への熱意や計画性を示す重要な指標です。毎月一定額を貯蓄してきた履歴は、創業者が必要な資金を計画的に準備できる人物であること、つまり自己管理能力が高いことの客観的な証拠となります。
この金銭感覚は、そのまま事業運営における資金管理能力の信頼性にもつながるため、評価される傾向にあります。融資審査では通帳の履歴を数ヶ月から1年分確認されることが多いため、突然の大きな入金はすぐに「見せ金」と判断されてしまいます。
事業に関連する経験をアピールする
開業する事業に関連する業界での斯業経験(起業しようとしている事業と同じ業界・分野での仕事の経験)は、審査で高く評価される傾向にあります。
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業者のうち83.1%が現在の事業に関連する仕事の経験を持っています。
同じ業界での経験は、その事業の強みや弱み、商習慣、顧客ニーズなどを深く理解していると捉えられ、事業計画に書かれている販売戦略や売上予測の信憑性が高まります。
創業融資の相場をふまえ現実的な資金計画を
開業時の資金調達における金融機関等からの借入平均額は780万円で、一つの目安にできるでしょう。大切なのは、自身の事業計画に根ざした適切な資金を調達し、着実に事業を成長させることです。そのためには、十分な自己資金の準備、事業経験の棚卸し、そして説得力のある事業計画書の作成が欠かせません。
多くの先輩創業者たちが資金調達と販路開拓に苦労しながらも、事業に高い満足感を得ています。この記事で解説した相場やポイントをふまえ、しっかり準備をして創業融資の相談にのぞんでください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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