• 更新日 : 2025年11月25日

カードローンがあると創業融資は無理?審査への影響と対策を解説

カードローン残高があっても創業融資を受けられる可能性はありますが、審査が厳しくなる点は否めません。なぜなら、個人の返済能力や資金管理の計画性が厳密に評価されるため、カードローンの利用自体が評価に影響を与えるからです。

特に、これから起業する方にとって、ローン残高は自己資金の不足や高い返済負担と見なされがちです。

本記事では、カードローンの利用が創業融資の審査にどう影響するのか、カードローンと創業融資の根本的な違い、そして融資を実現するための具体的な対策を詳しく解説します。

カードローンがあると創業融資の審査は厳しくなる?

カードローンの利用履歴や残高があると、創業融資の審査において、申込者の資金管理能力や返済能力を判断する材料として厳しく評価されます。

その理由は、金融機関が審査の際に信用情報機関を通じてカードローンの契約状況や返済履歴を把握できるためです。特に、返済の遅延や複数のカードローン契約がある場合、返済能力への懸念が高まり、審査のハードルは格段に上がります。

なぜ審査で不利になるのか?

創業融資の審査担当者は、個人の信用情報を照会することで、カードローンの契約状況や返済履歴を確認します。

その上で、以下のような懸念を抱く可能性があります。

  • 個人の返済能力への懸念
    カードローン残高は個人の負債です。この負債額が大きいと、事業から得られる収益で、事業融資の返済と個人の負債の両方をまかなう必要があり、「返済負担率」が高いと判断されます。これは返済遅延のリスクと見なされ、審査で不利に働きやすくなります。
  • 資金管理の計画性への疑念
    なぜカードローンを利用する必要があったのか、その背景も問われます。生活費の補てんなど、計画性のない支出が原因と判断された場合、「事業の資金繰りも計画的に行えないのではないか」という印象を与えかねません。特に、消費者金融からの借入がある場合、より厳しい目で見られる傾向があります。
  • 自己資金の評価低下
    創業融資では、事業のために自分で準備した資金(自己資金)が非常に重視されます。たとえ預金があっても、その一方でカードローン残高があれば、実質的な自己資金は預金額から負債額を差し引いて評価されることがあります。

融資の際は借入があることを申告すること

借入の事実を隠して申し込むのは絶対に避けましょう。金融機関は審査の際に信用情報の照会を行うため、既存の借入状況は必ず確認されます。虚偽の申告があれば、その事実自体が大きなマイナス要因となり、信頼性を大きく損ないます。たとえ残高があっても、その事実を正直に申告し、なぜ借入が必要だったのか、そして今後どのように返済していくのかを誠実に説明することが、審査担当者からの信頼を得る上で不可欠です。

カードローンがあっても創業融資を受けるための対策

カードローン残高がある状態で創業融資の審査に臨む場合、不利な状況を覆すための具体的な準備と説明が不可欠です。以下のステップで対策を進めましょう。

STEP1:信用情報を開示し自身の状況を正確に把握する

まずは、ご自身の信用情報が現在どのような状態になっているか把握することが大切です。信用情報機関に本人開示請求を行い、登録されている契約内容、返済状況、残高を確認するのもよいでしょう。

日本には主に以下の3つの信用情報機関があり、金融機関はいずれか、または複数に加盟しています。

信用情報機関主な加盟会員開示請求方法
CICクレジットカード会社、信販会社インターネット、郵送
JICC消費者金融会社スマートフォンアプリ、郵送
KSC銀行、信用金庫インターネット、郵送

万が一、自分では気づいていない延滞情報などが登録されていた場合は、内容を確認し、誤りがあれば訂正を申し立てましょう。実際に延滞があった場合は、完済してから一定期間(通常5年程度)を経過しないと融資を受けるのは難しいため、早めに状況を把握しておくことが重要です。

参照: 自分の信用情報を確認する|CIC
参照: 開示を申し込む|JICC 日本信用情報機構
参照: 本人開示の手続き|KSC 全国銀行個人信用情報センター

STEP2:可能な限りカードローン残高を減らす(完済が理想)

審査の申し込み前に、できる限りカードローンの残高を減らしておくことは有効な対策です。理想は完済ですが、難しい場合でも一部返済を進め、月々の返済額と残高を圧縮することが望ましいでしょう。

特に、消費者金融系のカードローンは銀行系に比べて金利が高く、資金繰りに苦しい印象を与えやすいことから、審査での心証が良くない傾向にあります。複数の借り入れがある場合は、金利の高いものから優先的に返済を進めるのが合理的です。

STEP3:自己資金をしっかり準備する

創業融資の審査では「どれだけ本気で事業の準備をしてきたか」が問われます。コツコツと貯めてきた自己資金は、その熱意と計画性を示す最も分かりやすい証拠です。カードローン残高があっても、それを上回る自己資金があれば、不利な印象を和らげられる可能性があります。

STEP4:説得力のある事業計画書を作成する

残高が残ってしまう場合でも、その状況をふまえて事業が成功し、きちんと返済できることを事業計画書で論理的に示します。

  • カードローン利用理由の説明
    なぜカードローンを利用したのか、正直かつ合理的に説明できるように準備しましょう。例えば、「急な医療費のため」「自己投資である資格取得費用のため」といったやむを得ない理由であれば、浪費と見なされるリスクをある程度下げられます。
  • 緻密な収支計画と返済計画
    事業の売上や利益の見込みを具体的に示し、そこから融資金とカードローンの返済を両方行っても、無理なく事業継続と生活ができることを数字で証明します。現実的で説得力のある返済計画は、審査担当者の懸念を払拭する材料となり得ます。

STEP5:専門家(税理士など)に相談する

創業融資に詳しい税理士や中小企業診断士など、融資支援の経験豊富な専門家に相談することも有効です。専門家は、金融機関の視点をふまえた事業計画書の作成を支援してくれたり、適切な融資制度の活用を一緒に検討してくれたりします。

そもそもカードローンと創業融資の違いは?

カードローンと創業融資は、どちらも「お金を借りる」という点は共通していますが、最も大きな違いは「何のためのお金か」という資金使途です。カードローンは原則として生活費や個人的支出など自由な用途で利用できるのに対し、創業融資は事業を始めるための資金に限定されます。

そのため、審査で重視される点も大きく異なります。

比較項目カードローン創業融資
主な目的個人の生活費、教育費、医療費など(事業資金としての利用は原則不可)事業に必要な設備資金や運転資金
利用できる人個人、個人事業主創業予定の個人、創業者、法人
審査のポイント個人の信用情報(勤務先、年収、他社借入、過去の返済履歴など)個人の信用情報に加え、事業計画書、自己資金額など

このように、創業融資の審査では、個人の返済能力だけでなく「事業の将来性」や「起業への準備状況」なども含めて総合的に評価されます。

創業資金に事業用カードローンを使うのはどうなのか?

創業融資の審査を待てない場合や、急な資金需要が生じた際に、事業者向けカードローンなどの利用を検討するケースもあるでしょう。

ただし、これらは一般的な創業融資とは目的や仕組みが異なり、審査のスピードや使途の自由度が高い一方で、金利が高めに設定される傾向があります。異なる特徴を持つため、メリットとデメリットを正しく理解した上で、利用を慎重に判断する必要があります。

事業用カードローンのメリット:スピードと手軽さ

事業用カードローンを活用する最大のメリットは、そのスピードと手軽さにあります。

  • 迅速に資金調達できる:
    申し込みから融資実行までの期間が短く、数日〜1週間程度で資金を得られるケースもあり、急な支払いに対応できます。
  • 利用限度額内で自由に借入できる:
    一度契約すれば、設定された利用限度額の範囲内で必要な時に何度でも借り入れが可能です。
  • 幅広い用途に利用できる:
    運転資金や設備資金など、事業に関する幅広い用途に利用できます。

事業用カードローンのデメリット:高金利と資金繰りの圧迫

事業用カードローンは手軽に利用できる反面、安易な利用は将来の資金繰りを圧迫する要因にもなりかねません。

  • 金利が高い:
    日本政策金融公庫の創業融資が年利2~4%程度であるのに対し、事業用カードローンは総じて金利が高めに設定されており、年利10%を超えることも少なくありません。
  • 借入限度額が低い:
    創業融資に比べて、設定される利用限度額は低めになるのが一般的です。開業直後は数百万円以下に制限されていることも多く、まとまった設備投資などには不向きな場合があります。
  • 将来の公的融資審査への影響:
    カードローンの借入残高が多いと、後で日本政策金融公庫などの低利な融資を申し込む際に返済負担が大きいと判断され、審査で不利に働く可能性があります。

一部の信用金庫やネット銀行では、事業者を対象とした「創業カードローン」や「創業資金向けビジネスローン」を提供している場合があります。これらの商品は、一般的なビジネスローンに比べて条件が緩やかで、融資までの手続きが簡便な場合がありますが、金利が比較的高く設定されていることが多いため、返済負担や総返済額に注意が必要です。

創業時の資金調達でまず検討すべき公的融資は?

個人事業主や中小企業が創業時に資金調達を考える際、最も頼りになる選択肢の一つが日本政策金融公庫からの融資です。民間の金融機関に比べると金利が低めであり、無担保・無保証人で利用できる制度があるため、実績のない創業者にとって心強い味方となります。

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」とは

日本政策金融公庫が提供する「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした代表的な創業融資制度です。

この制度は、創業者が必要とする設備資金や運転資金を比較的長い期間、低めの金利で借り入れできるのが大きな特徴です。

カードローン残高がある場合でも、事業計画の妥当性や将来性をしっかりと示すことができれば、創業融資を受けられる可能性は十分にあります。原則として担保や保証人は不要で、融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)と、創業者にとって使いやすい制度といえるでしょう。

項目内容
対象者新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
資金の使いみち事業開始時や事業開始後に必要となる設備資金・運転資金
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
担保・保証人原則不要
返済期間設備資金20年以内、運転資金10年以内
利率(年利)基準利率:年2.80%~4.30%(条件により特別利率が適用される)※2025年11月時点

参照:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫

消費者金融からの借金がある場合

「消費者金融からの借金があると公庫の審査は絶対に通らない」と思い込んでいる方もいますが、一概にそうとは限りません。重要なのは、借入額の大きさやその利用目的、そして返済状況です。返済が遅延していないことが確認できれば、借金があっても審査に通る可能性は十分にあります。

もちろん、借金がない状態が望ましいのは言うまでもありません。借金があるからといってすぐに諦めるのではなく、まずは公庫の窓口で相談してみることをおすすめします。

民間金融機関(銀行・信用金庫)の創業融資とは?

銀行や信用金庫などの民間金融機関も、創業融資制度を取り扱っています。これらの機関は、日本政策金融公庫とは異なる視点で審査を行うため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。

信用保証協会の保証付き融資が基本

民間の金融機関が創業融資を行う場合、その多くは「信用保証協会」の保証を付けることが条件となります。これは、万が一申込者が返済不能になった場合に、信用保証協会が金融機関に代位弁済を行う制度です。

このため、審査は「金融機関」と「信用保証協会」の双方で行われます。当然、個人の信用情報は厳しくチェックされ、カードローンの残高や利用状況は審査に大きく影響します。特に延滞履歴がある場合は、保証を得ることが極めて困難になるでしょう。

参照: 初めての融資と信用保証|全国信用保証協会連合会

相談しやすいのは地域の信用金庫

メガバンクなどに比べて、地域に根差した信用金庫や地方銀行は、親身に相談に乗ってくれる傾向があります。特に、事業を行う地域の信用金庫であれば、地域経済の活性化を支援する目的から、創業者の支援に積極的な場合があります。

カードローンの残高があるといった個別の事情についても、事業計画の将来性や経営者の人柄などを総合的に評価し、柔軟に対応してくれる可能性も考えられます。まずは、取引のある、あるいはこれから取引を考えている地域の金融機関に相談してみましょう。

カードローンがある場合の創業融資は周到な準備を

カードローンの利用履歴があっても、創業融資の可能性がなくなるわけではありません。ただし、審査が厳しくなる傾向にあるため、融資を受けるためには計画的な準備が不可欠です。

まずは、自身の借入状況を正確に把握し、返済計画を見直すことが最初のステップです。その上で、説得力のある事業計画を立て、日本政策金融公庫などの公的機関へ相談しましょう。高金利な借入に頼る前に、着実な準備を進めることが、事業を軌道に乗せるための重要な取り組みとなるでしょう。


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