- 作成日 : 2025年8月29日
弁護士が独立開業するには?年収やポイントを解説
弁護士のキャリアにおける大きな選択肢の一つ、「独立開業」。ご自身の専門性を活かし、より地域や社会に貢献したいと考える一方で、収入面や経営面の不安から、なかなか一歩を踏み出せないでいる方も少なくありません。
「独立後の年収は、実際どのくらい見込めるのか?」 「成功する弁護士と、そうでない弁護士の違いはどこにあるのか?」
この記事では、そんな独立を検討するすべての弁護士が抱く疑問に答えるべく、年収の実態や、開業を成功させるために押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します。
弁護士の開業とは?
弁護士の開業について、独立開業のタイミングから収入面まで基本的な情報をお伝えします。
弁護士の開業とは、法律事務所に勤務していた弁護士が独立して、自身の法律事務所を設立することを指します。これまで勤務弁護士として経験を積んできた法律のプロフェッショナルが、経営者として新たなスタートを切る重要な転機といえるでしょう。
独立開業した弁護士は、法律相談から訴訟代理、契約書作成、企業法務まで幅広い法律業務を自身の判断で行えるようになります。また、案件の選択や料金設定、営業方針なども自由に決められる点が大きな特徴です。
弁護士が開業するタイミング
多くの弁護士は司法修習を終えて法律事務所に就職した後、3年から10年程度の実務経験を積んでから独立開業を検討します。この期間は個人の能力や専門分野、資金状況によって大きく異なります。
早期開業を選ぶ弁護士は、司法修習終了後2〜3年で独立するケースもあります。一方で、特定の専門分野で十分な経験を積みたい場合や、大手法律事務所でキャリアを重ねたい場合は、10年以上勤務してから開業することも珍しくありません。
開業タイミングの判断材料として、実務経験の蓄積、人脈の構築、資金の準備状況、家族の理解などが重要な要素となります。
開業している弁護士の割合
日本弁護士連合会の統計によると、全弁護士の約6割が法律事務所の経営者または共同経営者として活動しています。残りの4割は勤務弁護士として法律事務所に所属するか、企業内弁護士として活動しています。
この割合は地域によって差があり、東京や大阪などの大都市圏では勤務弁護士の割合が高く、地方都市では開業弁護士の割合が高くなる傾向があります。
弁護士が開業した場合の平均年収
開業弁護士の年収は事務所の規模や取扱業務、地域によって大きく異なります。日本弁護士連合会の調査では、開業弁護士の平均年収は900万円〜1,600万円程度と幅があります。
開業初年度は300万円程度からスタートする弁護士も多く、軌道に乗るまでに数年を要するケースが一般的です。一方で、特定の専門分野で高い評価を得ている弁護士や、大きな案件を継続的に受任している弁護士は、年収2,000万円以上を得られるケースもあります。
収入の安定性という観点では、勤務弁護士と比較して開業弁護士は変動が大きく、経営努力によって収入が左右される点に注意が必要です。
弁護士の開業に必要な準備
独立開業を成功させるための具体的な準備項目について詳しく解説します。
事務所の場所と設備の準備
まず重要なのが事務所の立地選びです。交通の便が良く、依頼者がアクセスしやすい場所を選ぶことが基本となります。駅から徒歩圏内で、できれば1階または2階の視認性の高い場所が理想的です。
事務所の広さは、開業時の予算と将来の拡張計画を考慮して決定します。最低限必要なのは、面談室、執務スペース、書類保管スペースです。面談室は依頼者との相談内容が外部に漏れないよう、防音性に配慮した設計が求められます。
設備面では、電話・FAX・インターネット環境の整備が不可欠です。また、法律データベースへのアクセス環境、コピー機、シュレッダー、金庫なども必要な設備として準備しておきましょう。
人材の確保
開業当初から事務員を雇用するかどうかは、予算と業務量を考慮して判断します。事務員がいることで、電話対応や書類作成、スケジュール管理などの業務を任せられるため、弁護士は法律業務に専念できるメリットがあります。
事務員を雇用する場合は、法律事務所での勤務経験がある人材を選ぶことが望ましいでしょう。法律用語や手続きに慣れている人材であれば、即戦力として活躍が期待できます。
営業・集客の準備
開業前から営業活動の準備を進めることが重要です。まず、これまで築いてきた人脈を整理し、開業の案内を送付する準備を行います。元同僚、先輩弁護士、司法書士、税理士、不動産業者など、紹介元となり得る関係者へのアプローチを計画的に進めましょう。
ホームページの作成も欠かせない準備の一つです。事務所の所在地、取扱業務、弁護士のプロフィール、料金体系などを明確に記載し、依頼者にとって分かりやすい情報提供を心がけます。
また、法律相談会への参加や、地域の商工会議所などでのセミナー開催なども有効な集客方法として検討できます。
弁護士の開業費用
独立開業に必要な初期投資と運営費用について具体的な金額を示します。
初期費用の内訳
事務所の賃貸借契約には、敷金・礼金・仲介手数料・前払い賃料が必要です。都心部の20坪程度の事務所であれば、月額賃料20万円から50万円が相場となり、初期費用として100万円から250万円程度を見込んでおく必要があります。
内装工事費用は、既存の設備をどの程度活用できるかによって大きく変動します。簡易な間仕切り工事や照明設備の追加程度であれば50万円から100万円、本格的な内装工事を行う場合は200万円から500万円程度を想定しておきましょう。
事務機器の購入費用として、パソコン、プリンター、コピー機、電話・FAX、シュレッダー、金庫などで100万円から200万円程度が必要です。リースを利用すれば初期費用を抑えることも可能です。
運営費用の見積もり
毎月の固定費として、事務所賃料、光熱費、通信費、各種保険料などがあります。20坪程度の事務所であれば、これらの合計で月額30万円から60万円程度を見込んでおくことが必要です。
人件費については、事務員1名を雇用する場合、給与・社会保険料・福利厚生費を含めて月額25万円から35万円程度が相場となります。
その他、法律データベースの利用料、弁護士会費、研修費用、営業交際費なども継続的に発生する費用として計上しておきましょう。
開業資金の目安
以上の費用を総合すると、弁護士の開業には最低でも500万円から800万円程度の資金が必要となります。余裕を持った事業運営を行うためには、1,000万円から1,500万円程度の資金を準備しておくことが望ましいでしょう。
資金調達の方法としては、自己資金のほか、日本政策金融公庫の創業融資、銀行の事業性融資、親族からの借入などが考えられます。
弁護士の開業の流れ
独立開業の手続きを時系列で整理し、スムーズな開業を実現するための具体的なステップを説明します。
開業準備期間(開業6か月前〜)
開業の半年前から準備を始めることが理想的です。まず、事務所の立地調査と物件探しを開始します。複数の候補を比較検討し、賃貸借条件や周辺環境を慎重に評価しましょう。
同時に、事業計画書の作成も重要な準備の一つです。開業後の売上予想、費用計画、資金調達計画などを具体的に数値化し、金融機関への融資申請に備えます。
各種手続きの実行(開業3か月前〜)
事務所の賃貸借契約を締結した後、内装工事や設備の設置を進めます。工事期間中は、電話・インターネット回線の開通手続きや、法律データベースへの加入手続きも並行して行います。
税務署への開業届出書の提出、青色申告承認申請書の提出、都道府県税事務所への事業開始等申告書の提出なども、この時期に完了させておきましょう。
開業届について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
営業活動の開始(開業1か月前〜)
事務所の準備が整った段階で、本格的な営業活動を開始します。開業案内状の発送、ホームページの公開、各種士業との連携強化などを計画的に進めます。
地域の弁護士会や法テラスへの登録手続きも、この時期に完了させておくことが重要です。
開業後の対応
開業後は、継続的な営業活動と業務品質の向上に努めます。定期的な収支管理と事業計画の見直しを行い、必要に応じて戦略の修正を図りましょう。
また、開業後も継続的な研修や勉強会への参加を通じて、法律知識のアップデートと人脈の拡大を図ることが長期的な成功につながります。
弁護士が開業するメリット・デメリット
独立開業の利点と注意点を客観的に分析し、判断材料を提供します。
開業のメリット
経営の自由度の高さ
独立開業することで、取り扱う案件の選択、料金設定、営業方針などを自由に決定できます。自分の専門分野に特化した事務所運営や、理想とする法律サービスの提供が可能になります。
収入の上限撤廃
勤務弁護士として給与に上限がある環境から、努力次第で収入を大幅に増やせる環境に変わります。大型案件の受任や継続的な顧問契約の獲得により、高収入を実現する可能性があります。
働き方の自由度
出勤時間や休日の設定、業務の進め方などを自分の裁量で決められます。家族との時間を重視した働き方や、効率的な業務運営による時間の有効活用が可能になります。
専門性の追求
特定の分野に特化した専門性を深めることで、その分野におけるエキスパートとしての地位を確立できます。専門性の高さは差別化要因となり、競争優位性の源泉となります。
開業のデメリット
経営責任の重さ
法律業務だけでなく、事務所運営、人事管理、財務管理などの経営業務も担う必要があります。これらの業務に不慣れな場合は、専門家のサポートを受けることも必要になります。
収入の不安定性
案件の獲得状況によって月々の収入が大きく変動するため、資金繰りの管理が重要になります。開業初期は特に収入が不安定になりがちで、生活費の確保にも注意が必要です。
営業活動の必要性
継続的な案件獲得のために、営業活動を継続する必要があります。法律業務以外の時間を営業に割く必要があり、時間管理のスキルが求められます。
設備投資とランニングコスト
事務所賃料、設備費、人件費などの固定費が継続的に発生します。収入が少ない月でも、これらの費用は支払う必要があるため、資金計画の重要性が高まります。
成功する弁護士開業のポイント
弁護士として独立・開業するには、法律知識や経験だけでなく、経営者としての視点や準備も重要です。以下に、開業を成功させるための主なポイントを紹介します。
明確なコンセプトとターゲットを設定する
まず、自身の得意分野や経験をもとに、「何の専門家として」「どんな顧客層に」「どの地域で」サービスを提供するかを明確にすることが大切です。たとえば、離婚・相続に特化した個人向け、あるいは中小企業向けの法務支援など、差別化できる分野を絞ることで、集客力が高まります。
信頼されるブランド作り
弁護士業は“信用商売”です。事務所名、ロゴ、Webサイト、名刺などに一貫性を持たせ、誠実かつ信頼できるイメージを築くことが重要です。また、ブログやSNSを通じて情報発信を行うことで、潜在的な依頼者に自身の専門性をアピールできます。
集客戦略の構築
開業当初は知名度が低く、紹介も限られます。そのため、Web広告、SEO対策、ポータルサイトへの掲載など、オンライン集客にも力を入れる必要があります。地域密着型のチラシ配布やセミナー開催など、オフライン施策も有効です。
適切な資金計画
事務所賃料、人件費、広告費、システム導入など、初期費用と運転資金の計画は慎重に行いましょう。少なくとも半年分の運転資金を確保しておくと安心です。
顧客満足とリピートの意識
一人ひとりの依頼者と丁寧に向き合い、説明責任を果たすことで、口コミや紹介につながります。小さな信頼の積み重ねが、事務所の安定経営を支えます。
弁護士の独立開業を成功させて次のステージへ
この記事では、弁護士の独立開業における年収の実態から、成功に不可欠なポイントまでを解説しました。
独立開業は、大きな裁量権と収入アップの可能性を秘めた魅力的な選択肢である一方、その道のりは決して平坦ではありません。成功を掴むためには、弁護士としての高度な専門性に加え、「経営者」としての視点が不可欠です。
ご自身の強みを活かした専門分野の確立、積極的なマーケティングによる集客戦略、そして堅実な資金計画など、これらを地道に実践することが、安定した事務所経営の礎となります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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