• 作成日 : 2025年7月18日

女性が起業するメリットは?向いているビジネス・支援制度・始め方を解説

「もっと自分らしく働きたい」「家庭や育児と両立しながら収入を得たい」と考える女性にとって、起業は有力な選択肢のひとつです。近年は社会の変化や支援制度の充実により、女性が起業しやすい環境が整ってきています。本記事では、女性が起業するメリットや向いているビジネス分野、起業準備の基本ステップ、直面しやすい課題と乗り越え方、活用できる支援制度でを紹介します。

女性の起業が注目される社会的背景

これまで男性が多くを占めていた起業の世界において、近年は女性起業家の存在が大きくなりつつあります。社会の変化や制度の整備が後押しとなり、女性が自らビジネスを立ち上げるケースが増加しています。ここではその背景と今後の展望について詳しく見ていきます。

女性起業家は増加傾向

かつては男性が中心だった起業の分野において、女性の進出が目立ってきました。日本政策金融公庫の調査によれば、新規開業者のうち女性の割合は約25.5%に達し、過去最高を記録しています。

出典:~「2024 年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要~

さらに帝国データバンクによると、2024年時点で国内企業の女性社長比率は8.4%にまで上昇しており、着実に経営者層に女性が増えつつある状況がうかがえます。

出典:女性社長比率は 8.4%過去最高ながら低水準続く

社会制度の整備と時代の変化が背景

このような変化の背景には、社会全体で進む女性活躍の推進が強く影響しています。育児休業制度の整備やテレワークの普及といった柔軟な働き方が広がり、働き続けやすい環境が整ってきたことが、起業という選択を後押しする要因となっています。これにより、家庭と両立しながらキャリアを築きたいと考える女性にとって、起業はより現実的な道になりつつあります。

世界との比較と政府の取り組み

一方で、日本の女性の起業活動水準は依然として低い傾向です。GEMの最新の報告書によると、新規の起業活動を行っている女性の割合は以下の通りです。

  • 米国: 約13%
  • 英国: 約10%
  • 日本: 現時点での公開情報では、直接的な女性のTEA率の数値は確認できませんでしたが、全体的な起業活動の活発度や女性起業家への社会支援の状況などから、米国や英国と比較して低い傾向にあることが示唆されています。

出典:
Global Entrepreneurship Monitor 2023-2024 United States Report

United Kingdom 2023/2024 National Report
これはジェンダーギャップなどの構造的な制約が影響しているためです。こうした現状を受け、政府は、女性起業家のさらなる活躍を後押しするため、2023年に「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)」を閣議決定しました。

この方針では、特に政府が支援するスタートアップ企業選定プログラムである「J-Startup」における女性起業家の割合を20%以上とすることを目指すなど、具体的な目標が掲げられています。社会全体の意識変化と制度的支援の広がりにより、今後はさらに多くの女性が起業に挑戦しやすい時代へと進んでいくでしょう。

女性が起業するメリットとは

女性が自らビジネスを始めることで得られるメリットは多岐にわたります。収入の確保にとどまらず、働き方の自由や自己実現、経済的自立、女性ならではの視点を活かした社会貢献など、人生全体の充実にもつながります。ここでは、起業によって得られるメリットを4つの観点から解説します。

柔軟な働き方とワークライフバランスの実現

女性にとっての大きなメリットの一つが、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が可能になる点です。子育てや介護といった家庭の事情を抱える場合、会社勤めでは難しい時間の調整が、起業によって自らの裁量でできるようになります。たとえば、自宅でオンライン講座を開講し、家事との両立を実現している女性もいます。家庭の都合で再就職が難しい状況でも、起業という選択肢を選ぶことで、社会とのつながりや収入の確保を両立する女性が増えてきています。

やりがいと自己実現を得られる

自分のアイデアや価値観を形にできることも、起業ならではの魅力です。ビジネスを通じて社会に貢献したい、自分の力を試したいという思いから、起業に踏み切る女性が少なくありません。地方で起業し、地元女性に雇用を創出して地域活性化に貢献している事例もあります。収入を得るだけでなく、「誰かの役に立っている」という実感が得られることで、日々の仕事にやりがいを持てるようになります。こうした自己実現の場として、起業は大きな意味を持つのです。

経済的自立と収入アップのチャンス

自ら収入を生み出せるようになることで、経済的に自立できる点も起業の重要な利点です。会社員であれば収入の上限はある程度決まっていますが、ビジネスが軌道に乗れば、売上や利益は自分次第で伸ばすことができます。副業から始めて本業以上の収入を得て独立したケースや、主婦が起業して家計を支えている事例もあります。また、自分自身の稼ぎで生活できることは、精神的な自信にもつながり、「自分の人生を自分で選び取っている」という実感が得られるでしょう。こうした経済的な安定は、女性にとって長期的な安心にもなります。

女性ならではの視点や強みを活かせる

起業において、女性ならではの感性や視点が活かせる点も大きな強みです。美容・健康・子育て分野では、自身がユーザーとしての経験を持つことから、細かなニーズを捉えた商品やサービスの開発が可能になります。自分が欲しかった商品を形にして成功した女性起業家の事例は数多く存在します。また、女性同士のネットワークを通じて、情報共有や助け合いの環境が築かれるのも特徴です。SNSや起業家コミュニティ、オンラインサロンの活用により、共感とつながりを軸にビジネスを拡大しているケースも増えています。さらに、女性が少ない業界に参入することで、新鮮さや多様性が評価されやすく、新市場の開拓にもつながっています。

女性におすすめ!起業のメリットが大きいビジネス分野とは

女性ならではの共感力や繊細な視点、生活者としての実感は、起業の分野において大きな武器となります。日常生活の課題やニーズに密着した市場では、女性の感性がそのままビジネスの強みとなることが多いです。ここでは、女性起業家が活躍しやすい代表的なビジネス分野を紹介します。

美容・健康・ライフスタイル分野

美容や健康、ライフスタイル関連の分野は、女性の感性が活かされやすい領域のひとつです。自分自身が消費者でもあるため、使い心地や見た目、安心感などへの感度が高く、細やかなニーズに気づきやすい傾向があります。たとえば、肌トラブルの実体験をきっかけにオリジナルのスキンケア商品を開発したり、産後の身体ケアをテーマにしたオンラインフィットネスを展開した女性起業家の事例もあります。

この分野は、商品の機能性だけでなく、ブランドの世界観や信頼感が選ばれるポイントになるため、共感性や丁寧な発信力に長けた女性起業家にとってチャンスの多い市場です。SNSとの親和性も高く、低資金からの立ち上げも可能であるため、個人起業でも成果を出しやすい分野です。

子育て・教育・ファミリー支援系ビジネス

出産や育児を経験した女性が、実体験をもとに起業するケースも増えています。育児の中で感じた不便や不足に着目し、それをサービスや商品として提供することで、多くの共働き世帯や子育て世代の共感を得られます。たとえば、忙しい親の代わりに送迎を行うサービス、共働き家庭向けの時短レシピアプリ、親子イベントの運営などが代表的です。

また、知育玩具の開発やオンライン家庭教師、保育士経験を活かした子育て相談サービスなど、教育分野も女性の経験と感性が生かされる分野です。社会課題に寄り添う姿勢が評価されやすく、行政や企業との連携が進めやすいのも特長です。

共感型サービスとコミュニティ運営

女性は人とのつながりを重視する傾向があるため、共感型ビジネスやコミュニティ型のサービスとも相性が良いです。自身の経験を語ることで他者の共感を集め、それをコンテンツや講座、コンサルティングに昇華させている女性起業家は少なくありません。たとえば、ライフスタイルの提案を中心にしたブログやオンラインサロンの運営、キャリアや起業の相談に応じるオンライン講座などが挙げられます。

また、女性同士のつながりを活かしたマッチングサービスやネットワーク支援も、起業テーマとして注目されています。誰かの「困った」に寄り添い、「あったらいいな」を形にすることで、感性が価値に変わる好例です。

女性の起業準備で押さえておきたい基本ステップ

起業には夢や情熱だけでなく、現実的な計画と綿密な準備が必要です。初めての起業では、どこから手を付けるべきか迷うこともあるでしょう。ここでは、女性が起業を成功させるために押さえておきたい基本的な準備ステップを段階ごとに解説します。

ステップ(1)ビジネスアイデアの整理と市場ニーズの確認

まず最初に行うべきは、ビジネスアイデアの明確化です。自分の得意なことや情熱を注げる分野をもとに、「どんな商品・サービスを、誰に、どのように届けるのか」を言語化していきます。その際には、自己満足にならないよう、ターゲットとなるユーザーのニーズや悩みを具体的に調べてみましょう。

SNSや検索エンジンでキーワードを探す、アンケートを実施する、同業者のサービスを体験するなどの方法を通じて、マーケットに本当に必要とされているかを検証します。困っている人の声に耳を傾けながら、自分のアイデアが現実的に機能するかを確認することが大切です。

ステップ(2)ビジネスモデルと開業資金の設計

市場ニーズの確認ができたら、次はビジネスモデルの設計に進みます。どのように売上を生み出し、どのくらいの費用がかかるのかを整理します。必要な設備、広告費、人件費などをリストアップし、資金計画を立てることで、事業の見通しがつきやすくなります。

資金面では、自己資金だけでなく、融資や補助金の検討も重要です。日本政策金融公庫や自治体の創業支援制度では、女性起業家向けの低金利融資や助成金が用意されています。早めに情報収集し、利用条件や申請スケジュールを把握しておくとスムーズに資金調達を進められます。

ステップ(3)法的手続きと環境整備

ビジネスモデルが固まったら、事業形態の選定と開業手続きに進みます。個人事業主として始めるのか、法人(株式会社など)を設立するのかによって、必要な手続きや税金、社会保険の取り扱いが変わります。開業届の提出や、必要な許認可の取得も忘れずに確認しましょう。

あわせて、事業用の銀行口座の開設、名刺やWebサイト、ロゴの作成、販促物の準備など、ブランドづくりの第一歩も進めておくと安心です。自宅を拠点にする場合でも、業務スペースや設備の整理を行い、集中できる環境を整えることが重要です。

ステップ(4)人脈づくりと情報収集

最後に、起業準備段階でぜひ取り組んでおきたいのが、情報収集とネットワークづくりです。各地の商工会議所、中小企業支援センター、女性起業家支援団体などでは、セミナーや個別相談を実施しています。先輩起業家の話を聞くことで、自分に足りない視点や現実的な課題に気づくことができます。

また、起業家同士のコミュニティやSNSグループに参加することで、孤独を感じることなく、励まし合える仲間と出会うことができるでしょう。起業は一人で完結するものではありません。事前の準備段階から支援機関や周囲の人を積極的に活用しながら、着実に第一歩を踏み出していきましょう。

女性が起業すると直面しやすい課題

女性が起業するうえで、多くのメリットがある一方で、見過ごせない課題も存在します。こうした課題を事前に理解し、対策を講じることは、持続的かつ安定的なビジネスの運営に欠かせません。ここでは、女性起業において直面しやすい課題について整理します。

ワークライフバランスの維持が難しい

起業直後は事業を軌道に乗せるため、長時間働かざるを得ないことも多く、育児や家事と仕事を両立させるのが難しくなるケースがあります。会社員時代であれば利用できた育児休暇や産休制度が、起業後には対象外になることもあり、結果的にすべてを自分で抱え込む形になってしまう場合もあります。休息時間が取れない状態が続くことで、体力的にも精神的にも消耗してしまうリスクがあるため、あらかじめ家族との役割分担や外部サービスの活用など、サポート体制を整えておくことが重要です。

資金調達のハードルが高い

女性起業家は、金融機関や投資家から資金調達を行う際に、不利な立場に置かれることが少なくありません。これは、投資先としての信頼性が疑われているというよりも、男性中心のネットワーク構造の中で女性が十分な情報や人脈にアクセスしづらい現実があるからです。資金不足が原因で、ビジネスを始められなかったり、拡大の機会を逃してしまうこともあります。近年ではクラウドファンディングの活用や、女性専用の補助金制度・創業支援策も整備されてきており、これらを積極的に活用する姿勢が求められます。

ロールモデルが少ない

「自分にできるのだろうか」という不安を抱く女性が多い背景には、身近に成功した女性起業家が少ないという現状があります。男性に比べて女性の起業事例はまだまだ限られており、ノウハウや経験談を共有できるメンターに出会う機会が限られているのが現実です。しかし最近では、女性起業家同士をつなぐコミュニティや、オンラインでの勉強会も充実してきており、孤独を感じずに活動できる環境が広がりつつあります。

女性の起業を後押しする支援制度

女性が安心して起業に踏み出せるよう、近年は国や自治体、支援団体による制度が着実に整備されてきました。ここでは、女性起業家が活用できる公的制度や地域の支援についてご紹介します。

公的融資制度や補助金

起業に際して重要となるのが資金調達です。政府系金融機関である日本政策金融公庫では、「女性、若者/シニア起業家支援資金」という制度を設けており、女性が新たに事業を始める際に低金利・長期返済で資金を借り入れできる仕組みとなっています。設備投資や運転資金に利用可能で、無担保・無保証での融資も相談できます。

また、経済産業省が所管する「小規模事業者持続化補助金」では、広告宣伝費やECサイト構築費などを対象に、補助が受けられます。この補助金にはいくつかの特別枠があり、その中の「創業型」では、特定創業支援等事業の支援を受けた事業者を対象に、最大200万円の補助が受けられます。補助金は年数回公募され、特定の条件を満たせば、創業間もない時期から申請することが可能です。

さらに、スタートアップ期に活用できる「IT導入補助金」や、革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資等に使える「ものづくり補助金」など、事業内容に応じた制度を組み合わせて活用することも可能です

地域ごとの支援プログラムと創業サポート

国の制度に加えて、各自治体も女性の起業支援に力を入れています。例えば東京都が実施する「TOKYO創業ステーション」では、女性起業家への支援にも力を入れており、「Startup Hub Tokyo 丸の内」をはじめとした各拠点では、無料の個別相談、セミナー、事業計画の添削などを受けることができます。

他にも、神奈川県では、創業やベンチャー支援のポータルサイトを通じて、県内の女性起業家を支援する各団体の情報をまとめて紹介しています。。大阪市では「大阪産業創造館」にて女性向け起業セミナーや起業塾を定期的に開催しています。

地方でも支援が進んでおり、北海道の札幌市では「札幌市特定創業支援等事業」という枠組みを通じて、、創業補助金に加え、女性向けの起業セミナーやコワーキングスペースの利用支援が行われています。

自分らしい未来をつくるために、身近な一歩から始めてみよう

「自分らしく働きたい」「家庭と両立しながら収入を得たい」という思いを持つ女性にとって、今はまさに起業に踏み出しやすい時代です。柔軟な働き方や自己実現、経済的な自立など、女性が起業するメリットは想像以上に大きく、多くの女性たちがすでに一歩を踏み出しています。資金や家庭との両立など不安もあるかもしれませんが、今は女性向けの支援制度やネットワークが整っており、挑戦を後押ししてくれる環境がしっかりと用意されています。


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