- 作成日 : 2025年7月18日
子持ちの女性が起業するには?人気の働き方・支援制度・よくある悩みも解説
子育てをしながら働き方を見直す中で、「起業」という選択肢に関心を持つ女性が増えています。時間や場所に縛られない働き方、自分のペースでキャリアを築ける可能性、そして育児経験を生かせるビジネスなど、子持ち女性にとって、起業は現実的かつ魅力的な道となりつつあります。一方で、時間・資金・家族の理解といった不安や課題も少なくありません。
本記事では、子持ち女性が起業を選ぶ理由や人気の業種、直面しやすい壁と乗り越え方、支援制度などを解説します。
目次
子持ちの女性が起業を選ぶ理由とは?
子育て中の女性が起業という道を選ぶケースが増えています。その背景には、収入確保にとどまらず、働き方や自己実現に対する深い思いがあります。ここでは、子持ち女性が起業に踏み切る理由を紹介します。
家庭との両立を実現しやすい働き方ができる
子育てと仕事の両立は、多くの母親にとって切実な課題です。雇用された立場では勤務時間や場所の制約があり、急な子どもの体調不良などに対応できず、周囲に気を遣う場面も少なくありません。起業であれば、自身の裁量でスケジュールや業務内容を調整できるため、家庭の事情に柔軟に対応できます。子どもが保育園に行っている時間帯や寝た後など、限られた時間でも効率的に働ける環境を整えられることが、起業という選択を後押ししています。
自分のスキルや経験を活かせる
妊娠・出産を機にキャリアを中断した女性の中には、これまで培ったスキルや専門知識を活かしたいと考える人が多くいます。再就職で自分に合う条件の職場が見つからない場合、自ら事業を立ち上げることは有効な手段です。また、育児そのものがビジネスのヒントになることもあります。たとえば、子育ての中で感じた不便を解消する商品やサービスを提供するなど、自身の体験を価値に変える動きが広がっています。
子持ちの女性起業家に人気の業種とは
子持ちの女性が起業で選ぶ事業分野は、時間や場所にとらわれず、在宅で始められるビジネスに人気が集中しています。以下では、選ばれることの多い4つの業種・働き方についてご紹介します。
オンライン販売・小規模ECビジネス
ネット環境さえあれば誰でも始めやすいのが、オンライン販売やECビジネスです。近年はフリマアプリや無料のネットショップ作成ツールが充実しており、スマートフォンひとつで販売をスタートすることが可能です。仕入れ、撮影、出品、発送などの作業はすべて在宅で行えるため、保育園の送迎や子どもの昼寝時間など、育児のスキマ時間を活用して運営できます。
また、ハンドメイド作品や育児グッズなど、「ママ目線でのアイテム」が多くの共感と需要を集めています。たとえば子ども服のリメイク品、名入れグッズ、知育おもちゃなどが人気を博しており、自身の子育て経験を商品企画に活かせるのもこの分野の強みです。固定費を抑えてスタートできるうえ、軌道に乗れば自社ブランドとして拡大する可能性もあるなど、成長性にも期待が持てます。
フリーランスのライター・デザイナー
パソコン一台で完結するフリーランス業も、子育て中の女性にとっては魅力的な働き方です。ライター業では、専門知識がなくてもブログ記事や商品紹介文などから始められ、文章力やマーケティング知識を磨けば徐々に高単価の案件に挑戦できます。納期にゆとりがあれば、子どもとの生活リズムに合わせた作業スケジュールも立てやすいという利点があります。
一方、デザイン業やイラスト制作も同様に人気です。グラフィックデザインやWebバナー制作、SNS用画像作成などは、クラウドソーシングサイトを通じて受注できるため、初心者でも挑戦しやすい環境が整っています。案件のやり取りは基本的にチャットやメールで完結するため、移動の手間もなく、子どもが近くにいる環境でも安心して仕事に取り組めます。
育児経験を活かしたサービス
自身の子育て経験をダイレクトに仕事に活かせるサービス業も、多くのママに選ばれている分野です。たとえばベビーシッターや一時預かりなど、育児に関連した仕事では、自分がこれまでに積んできた知識や感覚が信頼につながります。保育士資格や子育て支援員のような公的資格があれば、活動の幅をさらに広げることができます。
また、自宅を活用して子ども向けの英語教室やリトミック教室、工作教室などを開業する例もあります。小規模であっても地域に密着したビジネスはニーズが高く、口コミやSNSを通じて少しずつ利用者が増えていく傾向にあります。さらには、子育て中のママ同士をつなぐコミュニティ運営や情報発信を通じて、セミナー講師やコンサルタントとして活動を広げる人も出てきています。
スキルシェア・在宅アシスタント業務
会社勤務時代の経験や専門スキルを活かし、在宅で業務を請け負う「スキルシェア」型の働き方も注目されています。たとえば、事務職や経理経験がある方は、オンライン秘書や事務代行サービスとしての業務委託に取り組むケースがあります。Zoomやチャットツールを使えば、全国の企業とつながり、在宅のまま専門性を発揮することが可能です。
時間単位で働ける仕事が多いため、「午前中の2時間だけ」「保育園から帰るまでの間に数件の作業をこなす」といった柔軟なスタイルが実現できます。在宅アシスタント向けの求人やマッチングサイトも充実しており、自分の得意を活かして働きたいと考えるママにとっては、新たな可能性を切り開く手段となっています。
子持ちの女性起業家にありがちな課題と解決策
ここでは、女性起業家が抱えることの多い課題と対策を紹介します。
時間の確保が難しい
子ども中心の生活では、まとまった作業時間を持つことが難しく、仕事に集中する時間が限られてしまいます。特に育児と家事を両立しながらの事業運営は、心身ともに負担となりやすく、時間配分に悩む声が多く聞かれます。
解決策:スモールスタートと外部サービスを活用する
無理のない規模から事業を始める「スモールスタート」は、育児とのバランスを取りやすい方法です。また、経理や事務作業などの業務は、外部の専門家やオンラインアシスタントに依頼することで、自分の時間を確保しやすくなります。家族と家事の役割分担を見直し、ベビーシッターや家事代行サービスを併用すれば、時間的な余裕が生まれやすくなります。
資金面に不安を抱えやすい
育児世代は生活費や教育費の負担があるため、起業に必要な資金を用意するのが難しいという不安を抱えがちです。
解決策:公的制度や民間支援を組み合わせて活用する
国や自治体が実施する創業補助金や小規模事業者持続化補助金は、返済不要な支援として活用できます。さらに、日本政策金融公庫の女性向け融資制度や自治体の制度融資は、無担保・低金利での融資が可能であり、創業計画の具体性や実現可能性が重視され、融資条件は男性と同等とされています。また、クラウドファンディングやビジネスコンテストを活用して、共感を得ながら資金を調達する方法も有効です。
人脈を築きにくく孤立しやすい
育児中は行動範囲が限られ、ビジネスの相談相手や顧客とのつながりを築く機会が少なくなります。また、起業に対して家族の理解が得られないと、精神的にも孤立感を感じやすくなります。
解決策:起業コミュニティや家族との対話を大切にする
ママ起業家向けの交流会やオンライン勉強会に参加することで、同じ立場の仲間とつながることができます。情報交換や励まし合いが孤立感の解消につながり、モチベーションの維持にも役立ちます。さらに、家族には事業計画や収支見込みを丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。顧客との人脈については、SNS発信や地域イベントへの出店を通じて少しずつ信頼を築いていくとよいでしょう。
子持ちの女性の起業を支援する制度・補助金
子育てと両立しながら起業を目指す女性にとって、公的な融資や補助金制度の活用は、資金面・環境面の大きな支えになります。ここでは、主要な制度を紹介します。
女性、若者/シニア起業家支援資金(日本政策金融公庫)
新たに創業する女性を対象に、低利かつ長期で資金を借りられる融資制度です。設備資金・運転資金の両方に対応しており、融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)。返済期間も長く設定されているため、起業初期の資金負担を軽減できます。審査では事業計画書の内容が重視されるため、しっかりと準備して申し込むことがポイントです。
小規模事業者持続化補助金<一般型>
販路開拓や業務効率化にかかる費用の一部を、国が補助してくれる制度です。ホームページ制作費、広告費、専門家への相談費用、新商品開発に伴う販路開拓などが対象となり、補助上限額は通常枠で50万円ですが、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠といった特別枠を適用する場合は200万円、さらにインボイス特例を適用する場合は上記の補助上限額に一律50万円が上乗せされます。創業前の準備には使えませんが、起業後の成長を支援する制度として人気があります。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)
東京都で起業する女性や年度末時点で39歳以下の男性を対象に、設備費や広報費などの一部を助成する制度です。
- 事業所整備費・店舗賃借料:助成対象と認められる経費の3/4以内
- 実務研修受講費:助成対象と認められる経費の2/3以内
広報戦略や事業内容に社会性が求められるため、しっかりとビジネスの意義を言語化することが重要です。
女性・若者・シニア創業サポート2.0(東京都)
創業期に資金繰りの支援を受けたい場合に活用できる、東京都の制度融資です。提携金融機関からの融資と併せて、専門家のサポートを受けながら事業を進める体制が整っており、女性起業家の実績づくりにも適しています。低金利で返済計画も立てやすいことから、起業家に支持されています。
地方創生起業支援金(全国各地)
地方で新たに起業する人に向けて、最大200万円の補助金が支給される制度です。対象地域に一定期間定住し、地域の課題解決につながるビジネスを行うことが条件となります。子育てをしながら自然の多い地域で働きたいという希望を持つ女性にとって、U・Iターン起業のきっかけになります。
両立支援等助成金(厚生労働省)
仕事と育児・介護の両立を支援するための助成金制度です。起業後に従業員を雇う場合、自社内で育休取得促進や働きやすい職場づくりに取り組むと、その費用の一部が助成されます。不妊治療支援、男性育休の環境整備など複数のコースがあり、働く親に配慮した経営に活用できます。
起業した場合、子供は保育園に入園できる?
子育て中に起業を考える女性にとって、「保育園に入れるのかどうか」は大きな不安要素です。結論から言えば、起業していても保育園への入園は可能です。ただし、会社員と比べて必要な書類や審査基準が異なり、自治体によっては入園の難易度が高い場合もあるため、事前の準備と情報収集が大切です。
自営業・フリーランスも「就労」として認められる
保育園の入園は、「家庭で保育が困難であること(=保育の必要性)」が認められるかどうかで判断されます。自営業や個人事業主であっても、就労の実態があると判断されれば、勤務先に所属していなくても「就労扱い」となります。つまり、起業して働いていれば、保育園入園の対象にはなります。
認可保育園では証明書類の準備が必要
会社員は勤務先が発行する「就労証明書」を提出しますが、起業した女性は自ら就労状況を証明する必要があります。提出書類の例としては、開業届の写し、事業計画書、仕事のスケジュール表、仕事場の写真などが挙げられます。収入実績が必要な自治体では、確定申告書や請求書も求められる場合があります。
自治体によって基準が異なるため相談が重要
審査基準や必要書類は自治体によって異なるため、起業前後に市区町村の保育課に早めに相談することが不可欠です。また、事業開始直後で実績が乏しい場合は「求職中」扱いで一時的に入園できる場合もあります。その際は一定期間内に収入や就労状況の証明を求められることもあるため、スケジュール管理にも注意が必要です。
子持ちの女性の起業と扶養の関係
起業しても一定の条件を満たせば扶養に入ることは可能です。ただし、収入額や働き方によっては扶養から外れることもあり、扶養内での起業には注意点が伴います。ここでは税制上・社会保険上の扶養について説明します。
税制上の扶養:年収103万円以下で扶養対象
配偶者の扶養に入っている場合、扶養される側の「合計所得金額」が48万円以下の場合です。給与所得者の場合は給与収入103万円以下に相当しますが、個人事業主の場合は給与所得控除がないため、「所得(売上-経費)」が48万円以下であれば、配偶者控除の対象となります。
年間売上が150万円でも、経費が102万円かかっていれば所得は48万円となり、配偶者控除の対象です。扶養内で働き続けたい場合は、起業計画において経費や収入見込みをしっかり把握しておくことが大切です。
社会保険上の扶養:年収130万円が目安
一方、健康保険や年金に関する「社会保険上の扶養」では、税制上の扶養とは異なる基準が適用されます。
また、扶養の判定は「将来見込み年収」で行われるため、月収ベースで108,333円を超える収入が継続すると見なされれば、即座に扶養から外れることもあります。たとえ初年度の収入が少なくても、今後の見込みが高ければ扶養外と判断されるケースもあるため、注意が必要です。
起業初期は「扶養のまま」も可能だが将来的には見直しを
起業して間もない時期は収入が安定しないため、当面は扶養に入ったまま事業をスタートするという女性も多くいます。事業が軌道に乗って収入が増えてきた段階で、扶養から外れた上で保険料や税金の自己負担を行う形に移行するのが一般的です。
その際には、青色申告の活用や各種控除の最適化など、節税対策をしながら収支バランスを保つ工夫が必要です。事業拡大を目指すのであれば、扶養の枠にこだわりすぎず、長期的な目線でキャリアと収入の設計を考えることが望ましいと言えるでしょう。
子持ち女性の起業は「柔軟な働き方」と「自己実現」の手段になる
子育て中の女性が起業を選ぶ理由には、家庭と両立できる働き方、自分のスキルの活用、そして将来の安定収入への備えがあります。人気の業種は在宅で始められるEC、フリーランス業、育児経験を活かしたサービスやスキルシェアなどです。時間・資金・人脈などの課題にも直面しますが、スモールスタートや支援制度の活用、周囲の協力で乗り越えることが可能です。今あるスキルや育児で培った経験が、誰かの役に立つ立派な資源になるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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