- 作成日 : 2025年7月18日
40代の起業はもう遅い?不安を乗り越える成功戦略と支援制度を解説
40代での起業は「もう遅いのでは」と感じる方も多いかもしれません。しかし、統計データや実例を見れば、40代はむしろ起業の中心世代であり、経験や人脈、資金力を活かしやすい適齢期です。
本記事では、40代から起業する際のメリットや不安への対策、成功しやすい業種、活用可能な支援制度について解説します。
目次
40代からの起業は遅くない
40代での起業に不安を感じるケースも少なくありませんが、実際には起業家の多くが40代で新たな挑戦をしています。社会経験や経済的基盤を活かせるこの年代は、むしろ起業に適したタイミングといえます。
起業家の平均年齢と40代の割合
近年の調査によると、起業家の中心世代は40代であることが明らかになっています。
帝国データバンクの調査(2025年発表)によると、2024年に新設された法人の代表者の起業時平均年齢は48.4歳となり、2000年代以降で最も高い水準に達しました。
出典:2024年「新設法人」動向調査|株式会社 帝国データバンク[TDB]
また、起業者の年齢構成を年代別に見ると、起業時点での代表者年齢は40代が全体の32.0%を占め、最も多い世代となっています。
また、20・30代の若年層の起業が伸び悩む傾向が見られる一方で、40代を中心とした中堅世代が起業を牽引している状況です。
例えば、日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査によると、40代の開業者割合は37.4%、平均年齢は43.6歳と示されており、中高年層の起業が活発化している傾向が裏付けられています。
統計的にも、40代での起業はむしろ自然な流れであり、年齢を理由に諦める必要はありません。
40代の強みである経験・人脈・資金力を活かせる
40代は、これまでのキャリアで得た実務経験や専門知識を最大限に活かすことができる世代です。業界の構造や顧客の傾向、トラブルへの対応力など、若い世代にはない実践的な知見を備えており、事業を安定的に運営する力があります。
加えて、長年の勤務を通じて築いた人脈は、起業初期の顧客獲得や提携先開拓において強力な武器になります。
また、経済的にも40代は比較的安定している人が多く、自己資金を用意しやすいほか、金融機関や投資家からの信用も得やすい年代です。日本政策金融公庫の融資制度では、「女性、若者/シニア起業家支援資金」があり、55歳以上のシニア層を含む一定の条件を満たす創業者に低金利枠が設けられています。40代の起業家は対象外であるものの新規開業・スタートアップ支援資金は活用可能です。、これまでの職歴や信用が資金調達において有利に働くこともあるでしょう。
さらに、40代は交渉力や対人スキルにも長けており、取引先やパートナーから信頼を得やすい点も大きな利点です。年齢を重ねたからこそ持てる落ち着きや判断力は、経営者としての信頼性につながります。
こうした多面的な強みを持つ40代は、起業においても有利な立場にあると言えるでしょう。年齢を懸念材料とせず、むしろ武器として捉えることで、より前向きなスタートが切れるはずです。
40代の起業におすすめの業種・アイディア
40代で起業を目指す場合、経験や人脈、資金などを活かせる分野を選ぶことが成功の鍵となります。ここでは、未経験でも参入しやすく、比較的安定した需要があるおすすめの業種や起業アイディアを紹介します。
スキルや経験を活かす「コンサルティング・講師業」
これまでのキャリアで培ってきた専門知識やマネジメント経験を活かすなら、コンサルタントやビジネス講師といった業種が有力です。たとえば、営業経験があるなら営業研修、管理職経験があるなら人材育成や組織マネジメントの指導といった形で、法人向けにサービスを提供できます。起業にあたって大きな初期投資が不要で、パソコンとネット環境があればスタートできる点も魅力です。副業として始めて徐々に実績を積み、フリーランスや法人化を目指すステップも取りやすく、40代の独立には適した分野と言えるでしょう。
時間に融通が利きやすい「オンラインビジネス」
テクノロジーの進化により、自宅にいながらできるオンラインビジネスも広がっています。ブログやYouTube、ECサイト運営、オンライン講座の販売などは、初期費用が少なくリスクが抑えられる上に、全国・全世界を相手にビジネスを展開できる可能性があります。たとえば、趣味で続けていた料理や英語、DIYの知識を教材として販売することで、収益化が可能です。また、近年では「ランサーズ」や「クラウドワークス」などの外部サービスを活用して、専門性を生かした副業的な収入から始めることもできます。40代のライフスタイルに合わせて、柔軟な働き方ができる点も支持される理由です。
安定したニーズがある「介護・福祉関連ビジネス」
日本は急速に高齢化が進んでおり、介護・福祉分野の市場規模は今後も拡大が見込まれます。40代での起業であれば、デイサービスや訪問介護といった在宅支援系の事業に参入する例も増えています。業界未経験であっても、フランチャイズを活用すれば初期研修や運営支援を受けながらスタートできる仕組みが整っています。また、介護に直接携わらなくても、高齢者向けの配食サービス、送迎支援、シニア向けIT教室など周辺ビジネスも広がっており、自分の得意分野と組み合わせた事業展開も可能です。
地域密着で始めやすい「小規模飲食・移動販売」
「いつか自分の店を持ちたい」という夢を実現したい方にとって、飲食業も選択肢の一つです。ただし、大型店舗を構えると初期投資が大きくなるため、まずはキッチンカーやテイクアウト専門の小規模業態からスタートする方法も視野に入れましょう。最近では、空き店舗を活用した間借り営業や週末限定営業など、低リスクで飲食を試せる方法も増えています。SNSを使った集客とも相性が良く、地域密着型のブランドづくりに挑戦する人が増えています。
長期的に育てられる「教育・学習支援ビジネス」
教育関連の分野も、需要が安定している業種の一つです。個別指導塾や習い事教室、キャリア支援講座など、子どもから大人までを対象とした学びの場は地域ニーズに応じてさまざまに展開できます。特に近年は、プログラミング教育や英会話、探究学習といった新しい教育分野も注目されており、柔軟なカリキュラム設計が求められています。40代の起業であっても、フランチャイズ本部や教育系企業から運営ノウハウやカリキュラムの提供を受けながらスタートできるため、未経験からでも参入の道が開かれています。教育への関心が高い方、子育て経験を生かしたい方にとっては、やりがいも大きなビジネスです。
40代の起業で感じがちな不安と対策
40代で起業を考えるとき、多くの人が家族や経済、スキル、体力など、若い頃にはなかった不安に直面します。しかし、こうした不安には現実的な備えと工夫で対処することができます。ここでは主な不安と対策について解説します。
家庭・経済面での不安
40代は子育てや住宅ローン、生活費など家族に関わる責任が大きい世代です。収入が不安定になることへの懸念は当然ですが、まず必要なのは家族の理解と協力です。起業を決めた時点で配偶者や家族に早めに相談し、事業の計画やリスクを共有しておくことで、不安は分散されます。
次に、綿密な資金計画を立てることが重要です。起業に踏み出す際は、最低でも1〜2年は生活を支えられるだけの資金と、運転資金を確保しておくことが推奨されます。これは、事業が軌道に乗るまでの期間における経済的な安定性を確保するためです。不足する部分は公的融資制度や補助金の活用を検討しましょう。
また、固定費を抑える経営方針や、生活コストの見直しもリスク回避には効果的です。副業からスタートし、一定の収入基盤ができてから独立する「段階的な起業」も、40代に適した戦略といえます。
スキル・キャリア面での不安
「自分に本当に起業ができるのか」「今のキャリアを手放して後悔しないか」といった不安もよく聞かれます。ですが、40代は豊富な職務経験に支えられたビジネススキルと専門知識を備えた世代です。過去の経験を活かせる分野を選べば、未経験の若手よりも有利に起業を進められるケースが多くあります。
また、不安な部分については、独立前に学び直しや資格取得を進めるのが有効です。オンライン講座やリスキリング支援を活用すれば、時間の制約がある中でも効率よくスキルアップが可能です。
加えて、得意でない分野は信頼できるメンバーの協力を得る、または外部専門家に委託するなど、無理に一人で抱え込まない体制を作ることが鍵です。副業やプロボノで事前に市場の感覚を養うのも、本番でのリスクを減らす一助となります。
最後に、失敗した場合の備えも冷静に考えておく必要があります。40代での再就職は簡単ではないため、最悪のケースを想定したリスクヘッジ(業務委託契約の並行維持や資格保有の継続など)をしておくと安心です。
体力・健康面での不安
体力の衰えを感じ始める40代にとって、「起業後の過密スケジュールに耐えられるか」は大きな不安です。ただし、健康管理を怠らなければ、大きな支障なく乗り越えることができます。
まず、規則正しい生活と体調管理の習慣化が基本です。睡眠、食事、適度な運動を起業準備段階から意識して取り入れることで、事業開始後のコンディション維持に役立ちます。実際に運動や瞑想を日常に組み込み、パフォーマンスを保つ経営者も多くいます。
また、若い頃のように無理を重ねるのではなく、効率を重視した働き方やITツールの活用、若手のサポートを得るなど、自身の負荷を軽減する工夫も必要です。判断力や持久力といった40代の強みを活かすためには、健康は事業成功の基盤と捉え、定期健診や医師との相談も欠かせません。
不安を完全にゼロにすることは難しくても、備えることで「確信ある挑戦」へと変えることができます。起業という大きな一歩を、安心して踏み出すための準備を怠らないようにしましょう。
40代の起業を支援する制度
40代からの起業をためらう理由の一つに「資金や制度のサポートが若年層向けではないか」という不安があります。しかし、国や自治体は中高年の起業も積極的に支援しており、制度を正しく活用すれば準備のハードルを下げることが可能です。
国の補助金・助成金制度
かつて厚生労働省が実施していた「生涯現役起業支援助成金」は、40歳以上の起業家が人材を雇用する際の費用を最大200万円まで助成するもので、中高年起業家支援の象徴的制度でした(現在は廃止)。この制度の存在からも、中高年の起業に対する注目と期待の高さがうかがえます。
現在でも、多くの自治体が独自に創業支援補助金やシニア起業支援事業を展開していますので2例紹介します。
東京都「創業助成金」
東京都中小企業振興公社は、都内で創業する個人や創業5年未満の企業に対し、「創業助成事業」として最大400万円の助成金を提供しています。賃貸料や広告費、備品導入費などが補助対象とされ、事業開始時の経済的負担を軽減します。
川崎市「女性・若者・シニア起業家支援資金」
川崎市では、「川崎市中小企業融資制度」の「創業支援資金」として、女性、若者(30歳未満)、シニア(50歳以上)を対象にした融資制度を設けています。市内に事業所を置く中小企業者に、運転資金と設備資金を合わせて最大3,500万円の融資を低金利で提供しており、対象者には保証料率の優遇などの措置があります。
資金調達面での優遇措置
日本政策金融公庫では、「新規開業・スタートアップ支援資金」という融資制度を設けています。このうち「女性、若者/シニア起業家支援資金」として、55歳以上のシニア層を含む特定の条件を満たす起業家に対し、低金利かつ無担保での融資を行う特別枠が提供されています。 40代の起業家も、職歴や信用が評価されやすく、資金調達において有利に働くことがあります。
また、各地の信用保証協会では、創業者向けに保証付き融資を提供しており、これにより金融機関からの借り入れがスムーズになることがあります。さらに、創業計画の策定支援や融資相談を専門に扱う窓口が設置されており、個別の事情に応じたアドバイスを受けることが可能です。
全国信用保証協会の「創業関連保証」
全国信用保証協会が提供する「創業関連保証」は、個人で起業する場合や法人設立から5年未満の事業に利用できる制度です。保証対象額は最大3,500万円で、事業計画書を提出すれば融資が可能です。「再挑戦支援保証」や「スタートアップ創出促進保証制度」といった他の創業支援保証制度と併用した場合も、これらを合わせた保証限度額は合計3,500万円が上限となります。
出典:創業をお考えの方 | 一般社団法人 全国信用保証協会連合会
東京都信用保証協会「創業経営者保証不要型」
東京都が金融機関と連携して提供する制度融資には、東京都信用保証協会の「創業経営者保証不要型」などがあり、最大3,500万円の融資が利用できます。保証人や物的担保が不要な点もメリットです。
こうした制度をうまく活用すれば、資金繰りに対する不安を大きく軽減できます。創業時の資金調達制度に関する知識は、起業準備を円滑に進める上で不可欠な要素の一つです。。補助金と融資、それぞれの特性を理解し、無理のない資金計画を立てることが、安定した起業の第一歩となるでしょう。
40代の今こそ新たな一歩を
40代での起業は「遅い」どころか、豊富な経験と人脈、そして成熟した判断力を備えた最適なタイミングです。統計や事例が示すように、多くの起業家が40代でビジネスを興し成功を収めています。政府の支援制度も充実し、不安要素への対策法も整っています。あとはご自身の熱意と準備次第です。同世代のチャレンジが日本経済に新風を吹き込み、自身の人生にも豊かな実りをもたらすことでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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