• 更新日 : 2025年11月25日

海外で起業・事業展開する際の創業支援とは?補助金や融資を解説

海外での事業展開や日本での起業を考える際に活用できる、多様な公的創業支援制度があります。これらの制度は、資金調達、情報収集、ネットワーク構築といった、起業家が直面する課題を多角的にサポートします。特に、ジェトロ(日本貿易振興機構)や日本政策金融公庫などが提供するプログラムは、海外進出を目指す日本企業にとって心強い味方となるでしょう。

また、外国人起業家向けには「スタートアップビザ」や東京都をはじめとする自治体の補助金制度など、日本での事業立ち上げを円滑にする支援が整備されており、国内外の挑戦を後押しする体制が整っています。

この記事では、海外での創業や日本での起業に利用できる支援制度について、具体的なプログラムや活用ポイントをわかりやすく解説します。

海外での創業・事業展開を支援する主な制度は?

日本から海外へ事業を展開しようとする企業や起業家を対象に、国や関連機関が様々な支援制度を提供しています。情報提供や専門家によるアドバイス、資金調達、現地でのネットワーク構築まで、事業の段階に応じたサポートが用意されています。

経済産業省による支援

経済産業省は、スタートアップの海外進出を後押しするため、米国・シリコンバレーをはじめとする世界各地に拠点を設けるなどの取り組みを進めています。スタートアップが海外で成長し、日本の経済活性化に貢献することを目指して、情報収集やネットワーキング、M&AやJV(共同事業)市場へのアクセスなど、多面的な支援を行なっています。

J-Startupプログラム:

「世界で戦い、勝てるスタートアップ」の創出を目指し、官民一体で集中支援を行うプログラムです 。選定された企業は、政府の海外ミッションへの参加、国内外の大規模イベントへの出展支援、各種補助金における優遇措置などを受けられます 。また、「J-Startup Local」として地方自治体とも連携し、地域の有望なスタートアップへの支援も強化しています 。

参照:J-Startupプログラム|経済産業省
参照:スタートアップ・新規事業|経済産業省

ジェトロ(日本貿易振興機構)の支援プログラム

ジェトロは、海外展開を目指す日本企業、特にスタートアップに対して幅広い支援プログラムを提供しています。

グローバル・アクセラレーション・ハブ(Global Acceleration Hub):

海外進出や海外での資金調達を目指す日系スタートアップに対し、現地のビジネス環境に関するブリーフィング、メンタリング、コワーキングスペースの無償提供などを行う支援拠点です。

J-Bridge(Japan Innovation Bridge):

日本企業と海外のスタートアップ等との国際的なオープンイノベーション創出を目的としたビジネスプラットフォームです。デジタル分野やグリーン分野を中心に、技術協業、共同研究、資本提携、JV(ジョイントベンチャー)などの実現を支援しており、登録企業数・会員数も拡大しています。

起業家派遣プログラム「J-StarX」:

日本のスタートアップ起業家を、アメリカやヨーロッパなどのイノベーション拠点へ派遣するプログラムです。現地の起業家やベンチャーキャピタルから、経営に必要な知識やノウハウを直接学ぶ機会を提供し、グローバルなネットワーク構築を支援します。地域起業家向けのコースも用意されています。

越境EC支援「ジャパン・モール事業」:

在庫リスクを抑えつつ、実質費用を低くして、海外のECサイトへ日本の商品を販売できる公的な支援制度です。ジェトロを通じて物流を構築し、海外販路開拓の第一歩をサポートします。

参照:グローバル・アクセラレーション・ハブ(GAH) | JETRO
参照:連携・協業のためのビジネスプラットフォーム(J-Bridge) | JETRO
参照:海外における起業家等の育成プログラム ―J-StarX― | JETRO
参照:ジャパン・モール事業 海外におけるEC販売プロジェクト | JETRO

JICA(国際協力機構)の起業支援

JICAは、開発途上国での協力経験や現地で培った知見を持つ人材を対象に、それらを活かしてビジネスを創出する取組みを支援しています。

海外協力隊起業支援プロジェクト「BLUE」

JICA海外協力隊の経験者が、帰国後に社会課題解決を目的としたビジネスを立ち上げる際の支援プログラムです。現地で培った経験やネットワークを活かした事業プランの具体化をサポートし、社会起業家としての実践的なステップを後押しします。

参照:JICA海外協力隊起業支援プロジェクト「BLUE」 | JICA

その他の公的機関によるサポート

上記以外にも、中小企業の海外展開を後押しする公的機関があります。

中小企業基盤整備機構(中小機構)によるハンズオン支援

海外展開を目指す中小企業に対し、計画策定から現地での事業展開までを一貫して支援します。海外現地の事情に詳しい専門家(コーディネーター)が、市場調査、現地企業のリストアップ、具体的な商談のアポイントメント取得まで、個別の課題に応じた実践的なサポートを提供しています。

参照:海外展開・取引を拡大したい | 中小企業基盤整備機構

東京商工会議所、東京信用保証協会

海外展開を目指す事業者向けに、相談窓口の設置や公的支援機関・金融機関との連携によるマッチング提供といった支援を行っています。

参照:海外展開支援のご案内 | 東京信用保証協会

海外展開で利用できる補助金や融資には何がある?

海外展開や日本での起業には多額の資金が必要です。公的機関が提供する補助金や融資制度をうまく活用することで、資金調達のハードルを下げることができます。

日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」

海外への事業展開や、それに伴う国内事業の再編を目指す企業を対象とした融資制度です。海外支店や子会社の設立、海外企業のM&A、輸出入に関わる運転資金など、幅広い用途に利用できます。比較的低い金利で長期の借入が可能な場合があり、企業の事業計画や財務状況に応じた柔軟な返済スケジュールを設定できるのが特徴です。

参照:海外展開・事業再編資金(企業活力強化貸付) | 日本政策金融公庫

経済産業省の補助金・助成金

経済産業省は、スタートアップや中小企業の海外進出を後押しするため、様々な補助金・助成金制度を設けています。例えば、海外の展示会への出展費用を補助する制度や、海外市場調査・事業化にかかる費用を助成する制度などがあります。公募期間が限られているため、経済産業省や関連機関のウェブサイトを定期的に確認することが重要です。

中小企業海外展開支援施策一覧:

海外展開を目指す中小企業のために、各段階を支援するさまざまな官庁や公的機関の施策が用意されています。。

オープンイノベーション促進税制:

事業会社やCVCが、オープンイノベーションに向けてスタートアップへ出資する場合、出資額に対して最大25%が所得控除されます 。海外のスタートアップへの出資(1件あたりの出資額が5億円以上)も対象となります。

参照:中小企業海外展開支援施策一覧 | 経済産業省
参照:オープンイノベーション促進税制|経済産業省

海外創業・日本進出を成功させるためのポイントは?

海外創業には多様な支援制度を効果的に活用し、事業を成功に導くために、情報収集、ネットワーク構築、専門家の活用を意識的に進めましょう。

情報収集:公的機関のセミナーや相談窓口を活用する

まずは、正確な情報を得ることが不可欠です。ジェトロ(日本貿易振興機構)や中小企業基盤整備機構、各自治体では、海外展開や起業に関するセミナーを定期的に開催しています。これらのイベントに参加することで、制度の最新情報や現地の市場動向を効率的に収集できます。また、専門の相談員に直接質問できる窓口も設けられているため、自社の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けるとよいでしょう。

ネットワーク構築:派遣プログラムや現地コミュニティに参加する

ビジネスは人とのつながりから生まれます。「J-StarX」のような派遣プログラムや、現地のコワーキングスペース、商工会議所などが主催するイベントに積極的に参加し、人的ネットワークを構築することが成功の鍵となります。現地での人脈は、ビジネスパートナーや顧客の紹介につながるだけでなく、不測の事態が起きた際の支えにもなり、事業の安定化に大きく貢献します。

専門家の活用:現地の法律や商習慣に詳しい専門家と連携する

海外での事業運営や日本での会社設立には、現地の法律、会計、労務に関する専門知識が欠かせません。自社だけで対応しようとせず、現地の弁護士や会計士、コンサルタントといった専門家と早期に連携することが重要です。公的機関のプラットフォームなどを通じて信頼できる専門家を探し、適切なアドバイスを受けながら事業を進めることで、法的なリスクを回避し、スムーズな事業運営が可能になります。

日本での創業を目指す外国人向けの支援とは?

海外から日本へ進出し、ビジネスを立ち上げようとする外国人起業家を支援する制度も充実しています。在留資格の取得支援をはじめ、資金調達、経営アドバイス、生活面のサポートまで、幅広い支援が整備されています。

在留資格に関する支援「スタートアップビザ」

「スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)」は、外国人起業家が日本で起業準備のために在留を認められる制度です。 通常、外国人が日本で起業する場合、「経営・管理」の在留資格取得が必要ですが、そのためには事務所の確保や資本金の準備など高いハードルがあります。

スタートアップビザは、各自治体から事業計画の認定を受けることで、最長1年間(自治体によっては6カ月)の在留資格が認められ、その間に起業準備を進めることができます。自治体によって最長2年まで認められる例(福岡市など)もあり、適用可否や在留期間は自治体の基準・審査によって異なります。

参照:外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)について | 経済産業省

東京都による外国人起業家支援の例

東京都は「Invest Tokyo」を掲げ、外国人起業家や海外企業の誘致を行っています。

  • 外国企業支援・起業家支援
    外国人起業家や海外企業が東京で事業展開する際のバックアップを行っています。ビジネスコンシェルジュ東京などで無料の相談が可能です。
  • 外国人起業家の資金調達支援事業
    創業5年未満の外国人起業家向けに、最大1,500万円の資金調達を支援する制度があります。初期投資の負担を軽減し、事業の早期立ち上げを後押しします。
  • 金融創業支援ネットワーク
    海外の金融事業者向けに、法人設立登記、在留資格申請、住居確保など、創業や生活の立ち上げに関するサポートを英語で提供しています。

参照:外国人起業家のための資金調達サポート | 東京都

各自治体のアクセラレータープログラム

東京都の「X-HUB TOKYO」や横浜市の「スタートアップポートヨコハマ」など、各自治体が独自のアクセラレータープログラムを運営しています。これらのプログラムでは、事業計画のブラッシュアップ、資金調達の支援、専門家によるメンタリングなどを包括的に提供し、スタートアップの成長を加速させます。

参照:海外進出支援プラットフォーム X-HUB TOKYO | 東京都
参照:スタートアップポートヨコハマ|横浜市

多様な海外創業支援を理解し、事業成長へつなげよう

海外での創業や日本での起業を成功させるためには、公的機関が提供する多様な支援制度を正しく理解し、自社の状況に応じて戦略的に活用することが求められます。日本から海外へ挑戦する企業には、ジェトロの派遣プログラムや日本政策金融公庫の融資制度が、海外から日本へ進出する起業家には、スタートアップビザや東京都など自治体による補助金が力強い支援となります。これらの制度は、資金調達の課題を解決するだけでなく、貴重な情報や人的ネットワークを得る機会も提供します。自社に合った制度を見つけ出し、専門家とも連携しながら、グローバルな事業展開への確かな一歩を踏み出しましょう。


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