- 更新日 : 2026年2月3日
放課後等デイサービスを開業する流れは?立ち上げに必要な資格や費用、助成金も解説
障がいのある子どもたちの成長を支える放課後等デイサービスは、社会的に意義のある事業です。しかし、安定した経営のためには質の高いサービスの提供と法令遵守が必要です。
この記事では、放課後等デイサービスの開業を志す方へ向けて、具体的な立ち上げの流れ、必要な費用と資格、そして活用できる助成金について、失敗しないためのポイントを交えながら解説します。
目次
放課後等デイサービスの現状
事業を始める前に、まずは放課後等デイサービスの役割と、それを取り巻く経営環境を正しく理解することが大切です。
そもそも放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスは、児童福祉法に定められた障害児通所支援事業の一つです。学校に通う障がいのある子ども(6歳〜18歳)を対象に、放課後や夏休みなどの長期休暇中、生活能力向上のための訓練や社会との交流促進などを提供します。
単なる預かりサービスではなく、子どもたち一人ひとりの特性に合わせた個別支援計画を作成し、それにもとづいた専門的な支援を行うことで、子どもたちの自立促進と大切な居場所づくりを担っています。
放課後等デイサービスの経営が厳しいと言われる背景
共働き世帯の増加や発達障がいへの認知度向上に伴い、放課後等デイサービスの事業所数や利用者数は近年増加傾向にあります。一方で、「経営が厳しい」という声も少なくありません。その背景には、主に3つの要因が挙げられます。
- 競合施設の増加
需要の高まりと共に新規参入が相次ぎ、利用者獲得競争が激化しています。 - 頻繁な法改正と報酬改定
特に2024年度の報酬改定では、専門性の高い支援の評価が強化されるなど、支援の質がより一層問われるようになりました。質の低い事業所は淘汰される傾向が強まっています。 - 専門人材の不足
質の高いサービスを提供するための専門職(児童発達支援管理責任者や児童指導員など)の採用が難しく、人材確保が経営の大きな課題となっています。
放課後等デイサービスの経営者の年収
放課後等デイサービスの経営者収入は、事業所の規模や経営状況に大きく左右されます。小規模な事業所を1か所運営する場合、役員報酬は年間数百万円程度となるケースが多いとされています。
サービス内容の工夫や加算取得、複数事業所の展開により1,000万円を超える例もありますが、収益が不安定な事業所では十分な報酬を得られないことも少なくありません。
放課後等デイサービスを開業するまでの流れ
放課後等デイサービスの開業準備は多岐にわたります。ここでは、事業計画の策定から指定申請まで、開業の具体的な流れを5つのステップで説明します。
1. 事業計画の策定
最初に、事業の理念や提供するサービス内容、ターゲットとする利用者の層、地域のニーズ分析、収支計画などを盛り込んだ事業計画書を作成します。この計画書は、後の資金調達や事業運営の根幹となる重要な指針です。
2. 法人設立
放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく指定を受ける必要があるため、個人事業では開業できません。株式会社、合同会社、NPO法人、社会福祉法人、医療法人など、法人格の取得が必須です。事業方針や資金計画に応じて、適切な法人形態を選択しましょう。
各法人形態には設立費用や申請手続き、運営ルールに違いがあるため、自身の事業方針に合った形態を選ぶ必要があります。設立には一定の準備期間を要するため、早めの行動が重要です。
3. 物件の選定
事業所の物件は、建築基準法・消防法を遵守し、加えて児童福祉法施行規則で定められた設備基準を満たす必要があります。具体的には、指導訓練室、事務室、相談室、トイレなどの整備が必須です。特に指導訓練室は、利用定員1人あたり2.47㎡以上の面積を確保することが省令で求められており、自治体によっては独自に「3㎡/人」などの上乗せ基準を設けている場合があります。また、送迎の利便性や保護者のアクセスのしやすさ、バリアフリー対応など、法令以外の観点も含めた立地選びが、利用者確保において重要です。
4. 人員基準を満たすスタッフの採用
放課後等デイサービスでは、管理者(常勤1名)、児童発達支援管理責任者(常勤1名)、および児童指導員または保育士(常勤換算で2.5人以上)を配置することが、児童福祉法施行規則で義務付けられています。そのうち少なくとも1名は常勤専従職員でなければなりません。
特に、児童発達支援管理責任者は、個別支援計画の作成やモニタリングを担う事業運営の要であり、一定の実務経験と指定研修の修了が必須です。適格な人材を確保するため、早期かつ計画的な採用活動を進めることが重要です。
5. 指定申請書類の作成と提出
法人設立、物件確保、スタッフ採用が完了したら、事業所を管轄する都道府県知事等に対し、障害児通所支援事業所としての指定申請を行います。申請には、事業計画書、定款・登記事項証明書、従業員の資格証の写し、建物の賃貸契約書や平面図、消防関係法令適合通知書など、多くの書類が必要です。書類不備は受理されず開業が遅れる原因となるため、事前相談で確認しておくことが推奨されます。申請から指定が下りるまでには通常2〜3か月程度を要するため、スケジュールには十分な余裕を持たせることが重要です。
放課後等デイサービスの開業に必要な資格
ここでは、放課後等デイサービスの経営者に求められる資格と、事業所に配置が義務付けられている専門職の資格について整理します。
経営者に求められる特定の資格はない
実は、放課後等デイサービスの経営者になるために、特定の資格は必須とされていません。年齢や学歴、実務経験に関わらず、誰でも経営者になることが可能です。ただし、児童福祉法に定められた欠格事由に該当する者は経営者になれません。
経営を成功させるためには、福祉分野の知識や人材マネジメント・財務管理のスキルを身につけておくことが望ましいでしょう。また、経営者が管理者や児童発達支援管理責任者を兼務する場合には、それぞれの職種で定められた資格・経験要件を満たす必要があります。
人員配置基準で定められた専門職の資格
事業所を運営するには、国が定める人員配置基準を満たす必要があります。必ず配置しなければならない主な専門職と必要な資格は以下の通りです。
- 児童発達支援管理責任者
福祉・教育・医療等の分野で一定期間の実務経験を有し、厚生労働省が定める「児童発達支援管理責任者研修(基礎研修・実践研修)」を修了していることが必須となる、個別支援計画の作成を担う中核的専門職です。 - 児童指導員
社会福祉士、精神保健福祉士、小・中・高・幼稚園の教員免許を持つ者、または大学で社会福祉学・心理学・教育学・社会学を専修して卒業した者、さらに高卒以上で児童福祉事業に2年以上従事した者などが該当します。 - 保育士
国家資格である保育士資格を有する者が該当し、児童指導員と同様に配置基準を満たす人員として算定されます。
これらの有資格者を、常勤換算で2.5人以上配置し、そのうち1名は常勤専従とすることが、指定を受けるための絶対条件です。
放課後等デイサービスの開業に必要な費用
放課後等デイサービスの立ち上げ費用は、物件の規模や立地によって大きく異なります。
初期費用
主な内訳は以下の通りです。
- 法人設立費用
定款認証や登記にかかる費用 - 物件取得費
敷金、礼金、保証金、仲介手数料など - 内外装工事費
設備基準を満たすためのリフォーム費用 - 消防設備設置費
消防法の基準を満たすためのスプリンクラーや火災報知器の設置費用 - 備品・教材購入費
机、椅子、パソコン、療育に使う教材やおもちゃなど - 送迎用車両購入費
利用者の送迎を行う場合に必要な費用
運転資金
開業時には、運転資金の確保も欠かせません。運転資金には、人件費、家賃、水道光熱費、通信費、送迎用車両の維持費などが含まれます。
放課後等デイサービスの報酬は、国民健康保険団体連合会(国保連)から支払われますが、請求から入金まで1〜2か月程度かかる場合があるため、少なくとも3か月分程度の運転資金を確保しておくと安心です。
放課後等デイサービスの開業時の資金調達方法
放課後等デイサービスの立ち上げでは、公的な制度を活用することで初期投資の負担を軽減できます。
融資
自己資金だけでは不足する場合、融資を受けるのが一般的です。特に日本政策金融公庫の創業融資は、比較的低い金利で資金を調達できるため、多くの事業者が利用しています。融資を受ける際は、事業計画書の作り込みが非常に重要になります。
助成金・補助金
国や自治体が提供する助成金・補助金を利用できる場合があります。代表的な例として、厚生労働省の人材確保等支援助成金、中小企業庁の小規模事業者持続化補助金、自治体の創業支援補助金や福祉人材確保補助事業などが挙げられます。いずれも対象要件や申請時期、補助率が異なるため、窓口に早めに相談・情報収集を行うことが重要です。
放課後等デイサービスの開業で失敗しないためのポイント
残念ながら、すべての放課後等デイサービスが成功しているわけではありません。ここでは、開業で失敗しないために、特に注意すべき3つのポイントを解説します。
明確な事業コンセプトと他施設との差別化
競合施設が増える中、ただ預かるだけのサービスでは利用者に選ばれにくくなっています。音楽療法に特化する、運動療育に力を入れる、プログラミング教育を取り入れるなど、自社の強みを明確にした事業コンセプトを打ち出すことが重要です。地域のニーズを調査し、どのような子どもに、どのような支援を提供したいのかを具体化することで、他施設との差別化を図りましょう。
人材の確保と定着への取り組み
質の高いサービスは優秀なスタッフによって支えられます。しかし、福祉業界は常に人材不足が課題であり、採用後の定着も大きな課題です。働きがいのある職場環境の整備、適切な労働条件の提示、キャリアアップ支援などを通じて、スタッフが長く働きたいと思える仕組みづくりが、サービスの質の維持・向上に直結します。
集客および保護者との関係構築
事業所の存在を知ってもらわなければ利用者は集まりません。ウェブサイトやSNSでの情報発信、地域の相談支援事業所や学校との連携、見学会の実施など、積極的な広報活動が不可欠です。利用開始後は、保護者とのこまめな情報共有や相談対応を通じて信頼関係を築くことが何よりも大切です。保護者の満足度が高い事業所は、口コミによって新たな利用者の獲得にもつながります。
先輩起業家に聞く!放課後デイサービスの開業と運営のポイント
ここまでは一般的な開業の流れや要件について解説してきましたが、実際の現場ではどのような点にこだわって準備を進めればよいのでしょうか。今回は、フランチャイズ本部での立ち上げ経験を経て、ご自身で独立開業・運営を成功させている株式会社Buddy 代表取締役の松木 涼馬 様に、現場目線での「開業と運営の秘訣」を伺いました。

1. 内装は「設備」ではなく「広告宣伝」と捉える
開業時、多くの人が悩むのが内装への投資バランスです。しかし松木様は「内装こそ最大の集客ツール」だと語ります。
「サービスの内容や療育の質は、実際に通ってみるまで目に見えません。だからこそ、見学に来た保護者の方がパッと見た瞬間に『ここなら通わせたい』『ここなら安心だ』と感じられる空間作りが重要です。 殺風景な施設よりも、明るく清潔感のある施設の方が選ばれやすいのは当然のこと。私は内装費を単なる設備投資ではなく、長期的な『広告宣伝費』の一部だと捉えて、しっかり予算をかけました」
この戦略が功を奏し、見学時の印象が決定打となって契約につながるケースが多いそうです。
2. 資金調達のリアル。「自己資金500万」がひとつの目安
内装や設備にこだわる分、初期費用はかかります。そこで重要になるのが融資の活用です。
「初めての開業だと借入を怖がる方もいますが、手元のキャッシュ(運転資金)を残すためにも公庫(日本政策金融公庫)などはフル活用すべきです。 私の感覚としての目安ですが、現場経験があり、自己資金を500万円程度しっかり貯めていれば、1,000万円以上、場合によっては2,000万円近くの融資を受けられるイメージがあります。資金繰りに余裕を持つことが、心の余裕、ひいては経営の安定につながります」
ギリギリの資金で焦るのではなく、潤沢な手元資金を確保しておくことが、冷静な経営判断を支える土台となります。 確実に融資を通すためにも、自分だけで悩まずベンチャーサポートなどの創業融資に強い専門家に相談し、プロのサポートを受けながら準備を進めるのが近道です。
3. 「従業員ファースト」が巡り巡って「利用者満足」になる
人材不足が叫ばれる福祉業界ですが、株式会社Buddyでは『従業員ファースト』を掲げ、定着率を高めています。
「経営者が一番大切にすべきなのは、実は利用者様以上に『従業員』だと考えています。なぜなら、現場で子供たちと接するのは彼らだからです。 従業員が待遇に不満を持っていたり、疲弊していたりすれば、良い療育は提供できません。逆に、従業員が楽しく安心して働ける環境があれば、自然とサービスの質が上がり、子供たちの笑顔が増え、結果として保護者の方の満足度も上がります。 だからこそ、毎年の昇給や退職金制度の整備など、待遇面での環境づくりには妥協しません」
「スタッフが辞めない」という安定感は、保護者にとっても大きな安心材料となり、結果として施設の信頼獲得へと還元されていきます。
4. 経営者自身が「会社の顔」となり最前線へ
集客において、ポータルサイトやSNSはあくまで「入り口」。契約を決めるのは、その後の対応だと松木様は強調します。
「問い合わせからの契約率は、ほぼ100%を維持しています。その秘訣は、最初の問い合わせ対応や見学対応を、施設長任せにせず『社長(経営者)』が自ら行うことです。 経営者が自らの言葉で熱意を持って施設の想いを伝え、保護者の方の不安に寄り添う。これだけで信頼度は段違いに上がります。 軌道に乗るまでは、社長自身が会社の『顔』として最前線で汗をかくこと。これが高稼働率を維持する一番の近道だと思います」
経営者の熱意が直接伝わることで、他施設との差別化を図り、高い成約率を実現している好例です。
準備を徹底し、地域に貢献できる事業所を目指しましょう
放課後等デイサービスの開業は、子どもたちの未来を支える、やりがいに満ちた仕事です。その一方で、厳しい経営実態も存在します。成功のためには、事業の社会的な役割を深く理解した上で、綿密な事業計画を立てることが全ての出発点となります。
開業までの流れ、必要な資格と人員、そして立ち上げ費用と資金調達の方法を正確に把握し、一つひとつのステップを着実に進めていきましょう。経営が厳しいという現実を直視し、失敗のリスクを避けるためには、他施設との差別化、人材育成、地域との連携が不可欠です。この記事で解説した内容を参考に、計画的な準備を進め、地域社会に貢献できる質の高い事業所の実現を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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