• 作成日 : 2025年9月16日

ピザ屋を開業するには?儲からないって本当?必要な費用や資格、オーナーの年収まで解説

自分の理想のピザを提供するお店を持つことは、料理好きにとって大きな夢の一つです。しかし、「ピザ屋は儲からない」「ピザ職人はきつい」といった声も聞こえてくる中で、夢への一歩を踏み出すには、正しい情報と現実的な計画が必要です。

この記事では、ピザ屋の開業に必要な費用や資格、気になるオーナーの年収、そして厳しい競争の中で成功を掴むための具体的な方法を詳しく解説します。

ピザ屋の開業は儲からないと言われる理由

「ピザ屋は儲からない」という話を耳にすることがあります。これは、いくつかの明確な要因が存在するためです。

熾烈な競争環境

現代の日本では、大手デリバリーチェーンからファミリーレストラン、冷凍食品に至るまで、様々な場所で手軽にピザが食べられます。このような厳しい競争環境の中で、新規参入した個人店が生き残るためには、他店との明確な違いを打ち出すことが求められます。価格競争に巻き込まれるのではなく、この店でなければ味わえないという独自の価値を提供できるかが、成功を左右します。

原価の高騰

ピザの主要な材料である小麦粉やチーズ、オリーブオイルなどの価格は、国際市況や為替相場の変動に影響されやすい傾向にあります。品質を維持しながら利益を確保するためには、適切な価格設定が欠かせません。しかし、単純に値上げをすると顧客離れにつながる可能性もあり、原価管理と価格のバランスを見極める繊細な経営判断が必要です。

ピザ職人のきつい労働環境

「ピザ職人はきつい」というイメージは、その労働環境から来ています。生地の仕込みから高温の窯での調理、長時間の立ち仕事など、体力的な負担は決して小さくありません。特に個人店の場合、オーナーが調理から接客、経営まで一人で何役もこなす場面が多くなります。このような労働環境を理解し、効率的な店舗運営の仕組みを構築することが大切です。

ピザ屋の開業形態とそれぞれの特徴

一口にピザ屋と言っても、その開業形態は様々です。自身のコンセプトや資金に合わせて最適な形態を選びましょう。

  • 店舗(イートイン)
    お客様が店内で飲食するスタイルです。雰囲気や接客も価値となり、客単価を上げやすい一方、内外装工事費や家賃が高くなる傾向があります。
  • デリバリー・テイクアウト専門店
    店内飲食スペースを持たず、配達や持ち帰りに特化したスタイルです。少ないスペースで開業でき、初期費用や人件費を抑えられるのがメリットです。
  • キッチンカー
    車両を改造して移動販売を行うスタイルです。イベント出店やランチタイムのオフィス街など、場所を変えて営業できる自由度の高さが魅力です。

ピザ屋を開業するための具体的なステップ

ピザ屋の開業準備は、思い立ってすぐにできるものではありません。

以下のステップに沿って、計画的に進めましょう。

1. コンセプトと事業計画の策定

どんなピザを、誰に、どのように提供するのか、お店の核となるコンセプトを固めます。例えば、地元の有機野菜を使う、特定のチーズにこだわる、親子で楽しめる、などです。その上で、売上目標、資金計画、利益予測などを具体的に記した事業計画書を作成します。

2. 資金調達

事業計画書をもとに、自己資金で不足する分を調達します。日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の制度融資、補助金・助成金の活用などを検討します。特に日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新規創業者にとっても活用しやすい制度です。

3. 物件探しと契約

コンセプトに合ったエリアで物件を探します。初期費用を抑えられる居抜き物件か、自由に設計できるスケルトン物件か、駅からの距離、周辺の競合などを考慮して慎重に選びます。

4. 必要な資格の取得と営業許可の申請

食品衛生責任者の資格取得や、保健所への飲食店営業許可の申請を行います。内装工事の設計段階で保健所に事前相談しておくと、滞りなくスムーズに準備が進められます。

5. 店舗の内外装工事と設備導入

コンセプトに基づいて店舗をデザインし、工事を行います。ピザ窯をはじめとする厨房機器や什器を搬入・設置します。

6. 仕入れ先の確保

ピザの味を左右する食材の仕入れ先を開拓します。品質、価格、納品ロットなどを比較検討し、安定供給が可能な業者を選びます。

7. スタッフの採用と教育

必要であれば、調理や接客を担当するスタッフを採用し、オペレーションのトレーニングを行います。

8. 宣伝・集客活動

オープン前からSNSやウェブサイトで情報を発信し、オープン時にはチラシ配布やレセプションなどを行い、お店の認知度を高めます。

ピザ屋の開業に必要な費用

ピザ屋の開業に必要な費用は、出店形式や規模によって金額は大きく変動しますが、ここでは一般的な個人店を開業する場合の費用の内訳を見ていきましょう。

初期費用

店舗を構えるための物件取得費(保証金、礼金など)と、お店のコンセプトを形にするための内装工事費は、初期投資の中で大きな割合を占めます。都心部か地方か、居抜き物件かスケルトン物件かによって、数百万円単位で費用が変わることもあります。

  • 物件取得費
    家賃の6ヶ月〜10ヶ月分が目安です。
  • 内装工事費
    居抜き物件なら数十万〜300万円程度、スケルトン物件なら1,000万円以上かかることもあります。
  • 厨房設備・調理器具費
    ピザ窯は、電気式、ガス式、薪窯など種類によって価格や性能が大きく異なります。安いものでも数十万円、本格的な薪窯では数百万円以上します。その他、ミキサー、冷蔵庫、調理台、皿、カトラリーなどを含め、150万円〜400万円程度を見込んでおくと良いでしょう。

運転資金

店舗を開業しても、すぐに経営が軌道に乗るとは限りません。開業直後から数ヶ月間、売上が安定しなくても家賃や人件費、材料の仕入れ費などを支払い続けられるように、運転資金を準備しておくことが不可欠です。一般的には、月間経費の3〜6ヶ月分を用意しておくと、心に余裕を持った経営ができます。

ピザ屋の開業に必要な資格と手続き

飲食店を開業するには、法律で定められた資格の取得と公的な許可が必要です。ここでは、最低限必要となる資格と手続きについて解説します。

食品衛生責任者

飲食店を営業する場合、各店舗に必ず1名、食品衛生責任者を置くことが義務付けられています。この資格は、各都道府県が実施する講習会を受講することで取得できます。調理師や栄養士などの国家資格を持っている場合は、講習会を受けずに食品衛生責任者になることが可能です。

飲食店営業許可

店舗の所在地を管轄する保健所に対して、飲食店営業許可の申請を行う必要があります。申請の際には、店舗の図面を提出し、施設が定められた基準を満たしているかどうかの検査を受けます。内装工事を始める前に、設計段階で保健所に相談しておくと、手戻りなくスムーズに手続きを進めることができます。

その他の届出

収容人数が30人以上の店舗では、消防署から防火管理者の選任を求められるケースもあります。自身の店の営業形態に合わせて、必要な手続きを確認しましょう。

ピザ屋の売上と年収の目安

開業を目指す上で、ピザ屋オーナーの年収がどれくらいになるのかは、大きな関心事です。お店の売上や利益率によって大きく変わるため一概には言えませんが、具体的な数字をシミュレーションすることで、目標設定が可能です。

ピザ屋の一日の売上モデル

例えば、客単価2,000円、席数15席のお店を考えてみましょう。平日のランチタイムに1回転、ディナータイムに1.5回転すると仮定します。この場合のピザ屋の一日の売上は、(15席 × 1回転 + 15席 × 1.5回転) × 2,000円 = 75,000円となります。ここにテイクアウトやデリバリーの売上が加わります。週末や祝日には、さらなる売上増加が見込めます。

オーナーの年収モデル

飲食店の営業利益率は、業態や立地、運営状況によって異なりますが、経済産業省の調査結果によると、飲食店全体の平均的な営業利益率は8.6%です。仮に月間の売上が200万円の場合、営業利益の目安としては16万〜20万円、年間ではおよそ192万〜240万円程度となります。ここから借入金の返済や税金などを差し引いた額が、オーナーの実質的な手取りになります。

店舗規模の拡大や複数店舗の展開などにより、年収1,000万円を超えるケースも存在しますが、綿密な経営戦略と安定した集客力が求められます。

オーナーの年収を上げるポイント

オーナーの年収を上げるには、売上を伸ばすか、経費を削減するかの二つの方向性があります。客単価を上げるためのセットメニュー開発、リピーターを増やすための会員制度、フードデリバリーサービスの活用などが売上向上の施策です。同時に、食材ロスの削減や水道光熱費の節約といった地道なコスト管理も、利益を確保する上で欠かせません。

ピザ屋の開業に成功するための戦略

厳しい市場環境の中でも、多くの顧客から支持され、安定した経営を続けている個人店には、いくつかの共通する特徴があります。

コンセプトの明確化

成功している個人店は、誰に、何を、どのように提供したいかというコンセプトが非常に明確です。例えば、地元の有機野菜をふんだんに使った健康志向のピザや、ワインと一緒に楽しむ大人のための本格ナポリピッツァなど、お店の個性を打ち出しています。これにより、ターゲット顧客にメッセージが届きやすくなります。

地域に愛される店づくり

個人店にとって、地域住民との良好な関係構築は経営の安定につながります。店主の顔が見えるコミュニケーションを大切にし、地域のイベントに参加するなど、地道な活動を通じて、地元に欠かせないお店としての地位を築いていくことが大切です。常連客の存在は、売上の土台となるだけでなく、何よりも大きな支えとなります。

夢のピザ屋開業を成功させるために

この記事では、開業ピザ屋というテーマで、開業を取り巻く現実から成功のための具体的なステップまでを解説しました。儲からない、きついといった側面があるのは事実ですが、それは競争の激しい飲食業界全般に言えることです。

大切なのは、その理由を正しく理解し、事前に入念な準備と計画を立てることです。開業費用や必要な資格といった初期段階のハードルをクリアし、明確なコンセプトのもとで地域に根差した店づくりを進めていけば、個人店ならではの強みを発揮して、多くの顧客に愛される繁盛店を築くことは十分に可能です。この記事で得た知識を元に、あなただけの理想のピザ屋を開業するという夢に向かって、着実な一歩を踏み出してください。


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