• 作成日 : 2025年8月29日

本屋を開業するには?必要な資格、費用、仕入れ方法などを未経験者にも簡単に解説

「いつか自分の本屋を開きたい」本好きなら一度は抱く夢ではないでしょうか。しかし、インターネットの普及やライフスタイルの変化により、書店業界が厳しい状況にあるのも事実です。全国の書店数はこの20年で半減し、「本屋開業は厳しい」という声も多く聞かれます。

一方、独自のコンセプトを掲げた小さな本屋や、カフェや雑貨店を併設した新しいスタイルの書店が、次々とオープンし、多くの人々を惹きつけています。

この記事では、本屋開業を取り巻く厳しい現実から、未経験の方が夢を実現するための具体的な手順、必要な資格や費用、そして儲かる本屋になるための成功戦略までわかりやすく解説します。

本屋開業を取り巻く厳しい現実

全国の書店数は、2008年の約17,000店から2023年には約10,000店まで減少し、書店のない市区町村は2024年の調査時点で全国の26〜28%程度に及んでいます。書店の倒産・休廃業は2023年は合計67社で、10年連続で開業数を上回る状況が続いています。

本屋経営が困難とされる最大の理由は、利益構造にあります。書店の粗利益率は一般的に25~30%程度とされています。例えば、定価1000円の本なら仕入れ値が700〜750円と、利益率が決して高くありません。

さらに深刻なのは、コスト上昇への対応ができない点です。人件費や賃料が上昇している一方で、再販売価格維持制度により書店の粗利率は固定化されるため、コスト上昇を販売価格に転嫁できないという構造的な問題が経営を圧迫しています。

本屋開業の3つのスタイル

本屋を開業するには、主に3つのスタイルが考えられます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分のコンセプトや資金計画に合ったものを選びましょう。

1. 実店舗

店主のこだわりを前面に出した書店や、特定のジャンルに特化した専門店など、実際に店舗を構えるスタイルです。地域の人々と直接交流できるのが最大の魅力ですが、物件取得費や内装費など、初期費用が高くなる傾向があります。

2. ネットショップ(オンライン書店)

実店舗を持たず、インターネット上だけで本を販売するスタイルです。全国の顧客をターゲットにでき、家賃や内装費がかからないため、初期費用を大幅に抑えられるのが大きなメリットです。在庫管理や配送システムの構築が重要になります。

3. 複合型店舗(ブックカフェなど)

カフェや雑貨、宿泊施設などを併設するスタイルです。書籍販売以外の収益源を確保できるため、経営が安定しやすいというメリットがあります。例えば、ブックカフェを営業する場合、書籍の売上に加えて飲食の売上が見込めます。

ただし、飲食店営業許可、古物商許可、宿泊業を伴う場合は旅館業営業許可など、業態に応じた具体的な許認可の取得が必須となります。

本屋開業までのステップ

本屋開業を成功させるためには、計画的な準備と段階的な実行が不可欠です。以下の手順に沿って進めることで、リスクを最小限に抑えながら開業を実現できます。

1. コンセプトを明確にする

まず「どんな本屋にしたいか?」をとことん突き詰めることが、成功の第一歩です。旅がテーマの書店、料理本だけを集めた書店など、コンセプトが明確であるほど他店との差別化が図れます。ターゲットとなる顧客層や、その人たちにどんな時間・体験を提供したいかを具体的にイメージしましょう。

2. 事業計画を策定する

コンセプトが決まったら、詳細な事業計画書を作成します。市場調査や売上予測、必要な資金計画などを具体的に数値化することで、計画の実現可能性を客観的に検証します。この事業計画書は、後の資金調達の際にも不可欠な重要書類となります。

3. 資金調達を行う

事業計画に基づいて、開業に必要な資金を準備します。自己資金だけで不足する場合は、日本政策金融公庫からの融資や、地方自治体が設けている補助金・助成金制度の活用を検討しましょう。近年では、コンセプトに共感した人々から支援を募るクラウドファンディングも有効な手段です。

4. 仕入先を確保する

本の仕入先を確保することも重要な準備です。新刊を扱う場合は取次(出版物を書店に卸す会社)との契約が一般的ですが、出版社と直接取引する方法もあります。中古本を扱う場合は、古書組合が運営する市場に参加したり、個人から買い取ったりするのが主なルートです。

5. 物件を探し、契約する

実店舗を構えるなら、コンセプトに合った立地と物件を探します。理想の店の雰囲気に合うことはもちろん、人通りや周辺の客層を調査し、家賃が経営を圧迫しないかを慎重に検討することが重要です。

6. 必要な資格取得と法的手続き

開業に必要な資格の取得と法的な手続きを進めます。特に中古本を扱う場合に必須の「古物商許可」は、申請から取得まで1〜2ヶ月かかるため、他の準備と並行して早めに警察署で手続きを始めましょう。税務署への開業届の提出も忘れてはいけません。

7. 店舗準備と運営開始

内装工事や商品陳列、レジシステムの導入など、開店に向けた最終準備を行います。並行してSNSで開店情報を発信したり、プレオープンイベントを企画したりして認知度を高め、グランドオープンに備えましょう。

本屋開業に必要な資格

新刊書籍のみを扱う場合、特別な資格は必要ありませんが、事業として営む以上、適切な手続きが求められます。

開業届

開業届の提出は必須の手続きです。事業開始から1ヶ月以内に税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。開業届の提出により、所得税の優遇措置や屋号での銀行口座開設などのメリットが得られます。

中古本販売の場合

中古本を扱う場合は、法的な許可が必要になります。中古本を販売する場合は「古物商許可」が必要です。管轄する警察署を経由して、都道府県の公安委員会に申請する必要があります。

古物商許可の取得には一定の時間がかかるため、開業スケジュールに余裕を持って申請することが重要です。申請から許可取得まで通常1~2ヶ月程度を要します。

複合型店舗の場合

本屋と他の業態を組み合わせる場合、それぞれの業態に応じた許可が必要になります。

カフェ併設の場合には、飲食店営業許可と食品衛生責任者の資格(各都道府県の食品衛生協会の講習会受講が必要)が求められます。

宿泊施設併設の場合はより複雑な許可が必要です。旅館業営業許可と温泉利用許可(該当する場合)の取得が必要になります。

本屋開業に必要な費用

本屋開業にかかる費用は、店舗形態や規模によって大きく変動します。現実的な資金計画を立てるために、具体的な費用項目を確認していきましょう。

実店舗開業の場合

実店舗での本屋開業には相当な初期投資が必要です。規模や地域により異なりますが、実店舗を構える本屋の開業資金は、坪単価100万円以上と高額になることも珍しくありません。

運転資金も開業前に十分検討する必要があります。テナント料は立地により大きく変動し、アルバイトなどの人件費もかかります。光熱費・通信費は月10〜20万円、商品仕入れ代は売上の約80%が目安となります。

ネットショップ開業の場合

実店舗と比較して大幅にコストを抑えることができるのがネットショップでの開業です。ネットショップ・ECサイトによる本屋の開業資金の目安は、数十万円〜数百万円程度です。

ネットショップの場合、店舗賃料や大規模な内装費が不要な分、システム構築や在庫管理、配送体制の整備に費用を集中できるメリットがあります。

儲かる本屋を開業するための戦略

厳しい業界だからこそ、収益を確保し、長く愛される店にするための戦略が重要になります。成功している書店に共通する5つの戦略をご紹介します。

1. 独自のコンセプトで徹底的に差別化する

成功の鍵は、大型書店やオンラインストアにはない独自の価値を提供することです。例えば、入場料制で本の世界に浸れる「文喫」のように、明確で強いコンセプトが熱心なファンを惹きつけます。あなたの「好き」を突き詰めた、真似できないお店作りを目指しましょう。

2. 本+αの複合経営で収益源を増やす

書籍販売だけで十分な利益を確保するのは難しいため、収益源の複線化を図ることが安定経営に繋がります。利益率の高いカフェや、本と親和性のある雑貨・文具などを組み合わせることで、客単価の向上と集客力の強化が期待できます。

3. 地域コミュニティの拠点となる

地域に根ざし、人々が集うコミュニティスペースとしての役割を担うことも有効な戦略です。読書会や作家のトークイベント、ワークショップなどを開催して地域住民との交流を深めることで、単なる「本を売る場所」から「なくてはならない大切な場所」へと価値を高められます。

4. SNSを活用してファンを作る

InstagramやX(旧Twitter)などのSNSは、コストをかけずに店の魅力を発信できる強力なツールです。新入荷の案内だけでなく、店主の思いや選書の背景にある物語を丁寧に発信することで、お店のファンを増やしていきましょう。

5. オンラインストアを併設する

実店舗を構える場合でも、オンラインストアを併設すれば商圏を全国に広げられます。お店のファンになったけれど遠方で来店できない顧客にも本を届けることができ、安定した収益基盤の構築に貢献します。実店舗とオンラインの相乗効果で、経営の安定化を図りましょう。

本屋開業後の仕入れ方法

本屋開業後にどうやって本を確保するかは、経営を左右する重要なポイントです。新刊と古本、それぞれに主要な仕入れ方法があり、特徴が異なります。

新刊の仕入れ方法1. 取次(とりつぎ)経由

取次とは、出版社と書店の間に立つ卸売業者のことです。取次と契約することで、様々な出版社の本をまとめて仕入れられ、物流や支払いを一本化できるのが最大のメリットです。一方で、利益率はやや低めになる傾向があります。

新刊の仕入れ方法2. 出版社との直接取引

出版社と個別に契約し、本を直接仕入れる方法です。取次を介さないため利益率が高くなる傾向があり、出版社との関係性を深められるメリットがあります。ただし、出版社ごとに契約や精算が必要になるため、取引先が増えると管理が煩雑になります。

古本の仕入れ方法1. お客様からの買取

店頭でお客様から直接本を買い取る、最も基本的な方法です。買取価格を自分で決められるのがメリットですが、常に良質な本が集まるとは限らないため、他の方法と組み合わせることが一般的です。

古本の仕入れ方法2. 古書市場(古書交換会)

全国の古書店同士が本を売買する、業者専門の市場です。専門的な古書や珍しい本が見つかる可能性がある一方、参加するには古物商許可や組合への加入が必要な場合があります。

情熱と戦略で、あなただけの本屋を開業しましょう

本屋開業は確かに厳しい業界環境にありますが、適切な準備と戦略があれば不可能ではありません。成功の鍵は、明確な差別化コンセプトの確立、固定費の徹底的な抑制、そして地域コミュニティとの密接な関係構築にあります。

本屋開業を検討される方は、まず小規模から始め、段階的に事業を拡大していく慎重なアプローチを取ることをお勧めします。厳しい現実を理解した上で、それでも「地域に必要な書店を作りたい」という強い想いがあれば、成功への道筋は必ず見えてくるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事