- 更新日 : 2025年8月19日
資金調達を税理士に相談するメリットは?選び方や活用方法を解説
資金調達は、会社設立や新規事業の立ち上げにおいて欠かせません。しかし、制度の内容は複雑で、申請手続きには専門的な知識や経験が求められる場面も多くあります。自己判断で進めた結果、必要な制度を見落としたり、書類の不備で申請が通らなかったりするケースも少なくありません。
そこで頼りになるのが税理士の存在です。本記事では、資金調達に税理士がどのように関わり、どのような支援が受けられるのか解説します。
目次
資金調達とは
資金調達とは、事業を始めたり継続したりするために必要な資金を外部から確保することを指します。銀行や公的金融機関からの融資、補助金・助成金の獲得、出資による調達などが含まれます。
資金調達の重要性
資金調達は事業の成功を左右するといえます。なぜなら、製品やサービスの開発、設備の導入、人材の確保、販路開拓といった事業活動はすべて資金を土台にして動くからです。必要な資金を適切なタイミングで確保できなければ、せっかくのビジネスアイデアも実現できず、事業が停滞する原因になります。また、自己資金のみに頼る経営では、急な設備投資や事業拡大、予期せぬ出費などに対応しきれず、資金繰りが厳しくなることがあります。これにより、成長機会を逸したり、必要な投資を諦めたりするなど、将来の経営に影響を及ぼす判断を強いられるリスクが高まります。
安定した経営を維持しながら成長を目指すためには、自社に合った資金調達方法を選び、計画的に資金を活用することが不可欠です。
資金調達を自分だけで対応する場合にありがちな課題
資金調達は創業時においても重要なステップですが、すべてを1人で対応しようとすると時間も手間もかかり、見落としや判断ミスが起きがちです。専門家や支援機関に相談することで、こうした課題を回避しながら、効率的に進めることが可能になります。
書類作成に不安を抱える
資金調達には、事業計画書や資金繰り表、見積書など複数の書類を整える必要があります。これらは形式を整えるだけでなく、内容の説得力や数値の根拠も問われるため、初めての人にとっては大きなハードルになりがちです。専門的な知識がないまま一人で作成すると、数字に整合性がなかったり、融資担当者の意図に合わない記述になったりすることもあり、結果的に不採択の原因になります。相談相手がいれば、第三者の視点でチェックを受けたり、内容の補強のアドバイスを受けたりすることで、より確かな資料が整えられます。
情報不足で利用可能な制度を見落とす
資金調達の手段は多岐にわたりますが、公的な制度の内容は複雑で、しかも公募期間や条件が頻繁に変わる傾向があります。自力で調べようとしても、インターネット上には古い情報や不正確な記事も多く、正しい判断に時間がかかります。誰かに相談すれば、自社に合った制度を早期に見つけられて、申請のタイミングを逃すことも防げます。支援機関や税理士など、資金調達に関する制度に詳しい人とつながることで、情報収集と判断のスピードが大きく変わります。
判断や手続きに迷いが生じる
初めて資金調達に取り組むと、「どこに申請すればいいのか」「この支出は対象になるのか」など、細かな判断に迷う場面が続出します。自信がないまま進めると、必要な書類の抜けや不備に気づかず、申請後に修正を求められて時間をロスするケースもあります。相談できる相手がいれば、都度疑問を解消しながら進められるため、安心感が生まれ、結果として効率良く準備を進められます。
資金調達について税理士に相談するメリット
資金調達は、創業や事業拡大を進めるうえで避けて通れません。手続きや判断が複雑なため、専門家である税理士に相談することで多くの利点が得られます。ここでは、税理士に資金調達を相談するメリットを5つ紹介します。
融資書類の完成度が高まる
税理士は事業計画書や資金繰り表、売上予測資料など、融資に必要な書類の作成を専門的に支援できます。金融機関等が重視する視点を押さえて資料を整えるため、審査に通りやすくなると言えます。数値の根拠や将来の見通しを論理的に示せて、書類の信頼性が向上します。
最新の制度を把握できる
補助金や助成金、政府系金融機関の融資制度など、資金調達に関わる制度は毎年変わる傾向があります。税理士はこうした制度に日常的に接しており、自社に適した制度をタイムリーに教えてもらえる点が強みです。公募要領の読み解きや要件の確認も的確に対応してくれます。特に認定経営革新等支援機関として登録された税理士は、各種の制度について最新の情報を把握しています。
金融機関との交渉に強くなる
税理士は金融機関の融資審査に関する知見を持っており、面談対策や交渉の場での説明資料の作成支援も行っています。必要に応じて、税理士が金融機関と直接やり取りをするケースもあり、第三者による説明が信頼性を高める効果もあります。
ただし、すべての税理士が金融機関と交渉をしているわけではないため、予めよく業務内容を聞いておきましょう。
申請ミスや手続きの負担が軽減される
資金調達には多くの書類提出や期限管理が求められます。税理士に相談すれば、提出物の不備や抜け漏れを防げて、手続きに伴うストレスも減らせます。経営者は事業の立ち上げや営業活動に集中できるようになります。
調達後の資金管理も相談できる
資金を調達した後も、税理士は資金使途の記録や経理処理、節税の観点からのアドバイスなどを提供します。補助金の事後報告書作成や帳簿処理など、経理・税務の面でも一貫した支援が受けられるのは、税理士に相談する大きなメリットといえるでしょう。
税理士が対応できる資金調達関連のサポート項目
ここでは、税理士が資金調達の場面でどのような対応をしてくれるのかを解説します。
事業計画書や資金繰り表の作成
融資申請では、金融機関が審査の際に重視する書類として「事業計画書」や「資金繰り表」があります。税理士に相談すれば、これらの書類の作成を専門的な視点からサポートしてもらえます。事業内容の整合性や収益の見通し、投資回収の見込みなど、金融機関が評価するポイントを的確に押さえた内容に仕上げることができます。自力で作成する場合に比べて、信頼性のある資料が準備できるため、審査の通過率を高める効果が期待できます。
また、資金繰り表では、月次の収支バランスや資金残高の推移を正確に予測する必要がありますが、過去の財務データや業種ごとの傾向を踏まえた数字の調整も税理士が助言できます。現実的で説得力のある資金計画に仕上がることで、融資担当者の印象を良くすることにもつながります。
金融機関との面談対策や交渉
税理士は、融資申請後に予定される金融機関との面談に向けた対策にも対応しています。面談では、創業の動機や売上の見込み、資金使途などを問われますが、事前に質問の意図や回答のポイントを事前に把握しておくことで、説得力のある説明が可能になります。税理士は過去の経験から、金融機関が重視するポイントを熟知しているため、模擬面談や想定問答の形式で事前練習を行うこともできます。
さらに、税理士が事前に金融機関と接点を持っている場合、事業者本人だけでは伝えきれない補足説明や信用の裏付けを担ってくれることもあります。税理士が金融機関との信頼関係を構築している場合、その専門性や客観性が、事業者の信用力を補完し、融資交渉を円滑に進めるうえで有利に働くことがあります。これは、多くの金融機関が税理士の作成資料を信頼性の高い情報源として参考にしていることからも伺えます。
ただし、税理士はあくまで間接的な支援をすべきとされますので、直接的な交渉はよく考えるべきでしょう。
補助金・助成金の申請書類作成や情報提供
税理士は融資だけでなく、補助金・助成金の申請においても対応が可能です。補助金申請では、事業の目的や成果指標、スケジュールなどを細かく記述する必要があり、応募者が準備するにはハードルが高いと感じることもあります。税理士は申請書の構成や文面の修正、添付資料の整備に関して実務的な支援ができ、書類全体の完成度を高めてくれます。
また、国や自治体が発表する補助金制度の内容や募集時期は頻繁に変わるため、自力で最新情報を把握するのは困難です。資金調達に詳しい税理士であれば、現在利用できる制度を紹介してもらえるだけでなく、自社にとって適切かどうかの判断材料も提供してくれます。採択後の経費報告や成果報告など、補助金に伴う事後の手続きも支援対象に含まれる場合があり、申請から交付後まで安心して任せられます。
ただし、厚生労働省が管轄する助成金については、社会保険労務士の専門領域であり、税理士はあくまで補助的な業務となりますので気を付けましょう。
記帳・税務処理のアドバイス
創業直後は、日々の会計処理や税務手続きも資金繰りに密接に関わってきます。たとえば、資金調達後の支出管理や税務上の処理方法についても、税理士に相談することで適切なアドバイスが得られます。経費と資産の振り分けや、節税に配慮した資金の使い方なども、税理士の専門分野です。融資を受けた後の資金の運用や、帳簿上の正しい処理を行うことで、次回以降の融資や助成金申請時にも不利にならない財務体制が築けます。
また、記帳ミスや納税漏れがあると、金融機関の信用を損なうリスクもあるため、資金調達の視点からも初期段階で税理士を巻き込んだ会計体制の整備が望ましいといえます。資金の流れを見える化し、経営者自身が数字を正しく把握できるようになることは、長期的な経営安定にもつながります。
資金調達に強い税理士の選び方
ここでは、実績や制度の知識、人柄など、信頼できる税理士を選ぶための視点を解説します。
資金調達支援の実績を確認する
税理士を選ぶうえで最初に確認したいのは、資金調達の支援実績です。創業融資に対応した経験が豊富な税理士は、事業計画書の作成や融資面談への対策に関して、実践的なアドバイスが可能です。ホームページに支援実績や成功事例が掲載されているかを確認し、どの程度の件数や金額の融資を支援してきたかを把握することが大切です。「創業融資に強い」「融資実績多数」といった表記があれば、信頼できる指標になります。
補助金・融資制度への知識と情報感度を確認する
補助金や助成金、公的融資制度は種類が多く、年度ごとに内容や条件が変更されます。そのため、常に最新情報を把握している税理士に相談することで、使える制度を適切なタイミングで提案してもらえる利点があります。事務所のサイトに補助金や融資に関するコラムがあるか、情報発信が定期的に行われているかも判断材料になります。
情報感度が高く、常に最新の制度情報を追っている税理士は、自社に適用可能な補助金や融資制度を適切に提案してくれる可能性が高まります。これにより、見落としを防ぎ、より多くの選択肢から最適な資金調達方法を検討できるようになります。
認定経営革新等支援機関かどうかを確認する
税理士が国の「認定経営革新等支援機関」に登録されているかどうかもチェックポイントです。認定経営革新等支援機関とは、中小企業の経営支援に一定の実績と専門知識を持つと認められた事業者であり、特定の融資制度を利用する際にはその支援が必要になる場合もあります。
たとえば日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」などを利用するには、認定経営革新等支援機関による事業計画の指導及び助言が求められます。保証料の減免措置など、資金調達時の優遇措置が受けられる制度もあるため、対応可能な税理士かを事前に確認しておきましょう。
相談のしやすさや人柄も重視する
実績や知識が豊富であっても、相談しづらい相手では継続的な支援を受けることが難しくなります。資金繰りの相談は経営に直結する重要なテーマであるため、信頼関係が築ける税理士かどうかも大切な要素です。初回相談の際の対応や説明の丁寧さ、質問への理解力などを通じて、人柄や相性を見極めることが望まれます。気になる点があれば遠慮なく質問し、自分に合うと感じられる税理士を選ぶようにしましょう。
税理士に資金調達の相談を依頼する費用・タイミング
資金調達を税理士に依頼する場合、事前に費用や相談開始のタイミングを把握しておくことで、スムーズかつ安心して支援を受けられます。ここでは依頼時に知っておきたいポイントを整理します。
費用は契約形態によって異なる
税理士に資金調達支援を依頼する際の費用は、顧問契約の有無や依頼の内容によって変動します。すでに顧問契約を結んでいる税理士であれば、創業融資のサポートが顧問業務の範囲内で提供されたり、追加費用が発生しても成功報酬のみ(融資額の2〜5%程度)にとどまったりと、費用が優遇される場合があります。
一方で、スポットで単発の依頼をする場合には、着手金として数万円、加えて融資実行額に対する成功報酬が必要になるのが標準的です。また、補助金や助成金の申請支援については、獲得額の15〜30%程度の報酬が設定されるケースもあり、融資に比べてやや高めに見積もられる傾向があります。
いずれの場合でも、税理士と契約書をきちんと取り交わすことが重要であり、資金調達に関する記載がわかりやすいことがポイントです。
相談はできるだけ早い段階で始める
資金調達の相談は、融資申請の直前ではなく、事業計画の策定段階から始めるのが理想です。税理士に早期相談を行うことで、自己資金の目安、資金繰りのシミュレーション、制度選びの助言など、多面的なサポートを受けられます。創業時は他の手続きも多くなるため、直前の準備では抜け漏れが生じやすくなります。早い段階から税理士の知見を取り入れて準備を進めれば、申請の精度が上がり、結果として審査の通過率も高めることが可能です。計画性を持って進めるためにも、相談のタイミングは早めを意識しましょう。
資金調達を成功させるために税理士の活用を検討しよう
資金調達は自己流で取り組むことも可能ですが、融資や補助金の制度は複雑であり、判断や手続きのミスが思わぬ機会損失につながることもあります。税理士に相談すれば、制度の選定から書類作成、面談対策、調達後の資金管理まで、幅広い支援を受けることが可能です。成功確率を高めながら、経営者自身は事業に集中できる体制を整えられるのが依頼する利点です。資金繰りに不安がある方は、早めの段階で税理士への相談を検討してみることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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