- 作成日 : 2025年4月24日
清掃業で創業融資を受けるには?事業計画書の書き方や審査のコツを解説
清掃業での創業融資は、新規事業立ち上げに必要な資金を調達する重要な手段です。日本政策金融公庫の融資制度を活用し、事業計画書の作成や審査のポイントを押さえることで、スムーズな資金調達が可能になります。本記事では、清掃業における創業融資の具体的な方法や注意点を詳しく解説します。
目次
清掃業で創業融資を受けるには?
清掃業の創業融資は、開業に必要な設備投資や運転資金を確保するための重要な資金調達手段です。特に、日本政策金融公庫が提供する融資制度を活用することで、自己資金が不足している場合でもスムーズに資金を確保できます。ここでは、日本政策金融公庫の創業融資制度の種類や概要について解説します。
日本政策金融公庫の「創業融資」
清掃業で創業融資を受けるには、日本政策金融公庫の融資制度を活用できます。新規事業の立ち上げや運転資金の確保を目的とした制度で、清掃業の開業資金として利用しやすい点が特徴です。日本政策金融公庫の創業融資には、「新規開業資金」という枠組みがあり、事業の特性や創業者の状況に応じた支援枠が設けられています。
新規開業資金の種類
- 一般の新規開業資金:すべての新規創業者が対象
- 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連):女性・35歳未満の若者・55歳以上のシニアの創業を支援
- 新規開業資金(再挑戦支援関連):廃業歴があって再創業する場合に適用
- 新規開業資金(中小企業経営力強化関連):中小会計を適用または運用予定の企業が対象
これらの制度は、清掃業を含むさまざまな業種で利用可能です。
新規開業資金の概要
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金10年以内(再挑戦支援関連は15年以内)
- 金利:基準金利から条件に応じて優遇あり(女性、若者/シニア起業家支援関連は特別利率が適用される場合もあり)
新規開業資金は、清掃業でも活用メリットが多くあります。清掃用具や車両といった設備資金、人件費や広告費などの運転資金として利用できる上、長期返済により月々の負担を軽減できます。また、条件を満たせば低金利での資金調達も可能です。このように、新規開業資金は清掃業の創業を強力にサポートします。
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(再挑戦支援関連)
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
清掃業で創業融資を受ける自己資金の目安
2024年4月の制度改正により、日本政策金融公庫の新規開業資金では自己資金の要件が撤廃されました。しかし、融資審査では自己資金の有無や金額が依然として重要な判断材料となっています。
自己資金の目安としては、一般的に融資希望額の10%~30%が望ましいとされています。例えば、300万円の融資を希望する場合、30万円~90万円の自己資金があると審査で有利に働く可能性があります。
ただし、この目安は絶対的なものではありません。特に、清掃業は比較的低コストで開業できる業種であり、最低50万円~100万円程度から開業が可能とされています。一方で、開業後の運転資金も考慮すると、300万円程度の資金があればより安定した事業スタートが期待できます。
自己資金がない場合の対策
自己資金がないと、開業資金のすべてを借入で賄うことになり、金融機関は事業計画の実現性や返済能力を厳しく審査します。また、計画的に資金を準備していないとみなされることもあるため、他の要素で信用力を補う工夫が求められます。
わかりやすく、金融機関に対して前向きな印象を与えられるのが「取引先との契約書の提示」です。すでに発注や契約が決まっている場合、安定した売上の見込みがあることを示す強力な証拠となり、融資審査で有利に働きます。 次に重要なのが、精緻な事業計画の作成です。収益の見通しを明確にし、事業の実現可能性を具体的なデータや市場分析を用いて示すことで、金融機関の信頼を得られます。
また、みなし自己資金の活用も有効です。開業準備のために支払った費用(設備投資や広告費など)を自己資金として計上することで、資金管理の計画性を示し、金融機関に好印象を与えられます。例えば、すでに購入した清掃機材や広告費の支払い記録を提出すれば、開業準備の進捗や事業の本気度を証明でき、審査でプラスに働く可能性があります。
自己資金がゼロでも、計画的な準備と具体的な証拠を示すことで、融資の可能性を高められます。取引先との契約書を最優先で準備し、それを補強する形で事業計画の精度向上やみなし自己資金の活用を進めるとよいでしょう。
清掃業で創業融資を受ける流れ
清掃業で創業融資を受ける際には、日本政策金融公庫への相談から返済開始まで一連の流れを把握することが重要です。
①日本政策金融公庫に相談
まずは、日本政策金融公庫に事前相談を行い、融資制度や必要な準備について確認します。相談はオンライン、電話、または最寄りの支店で可能です。相談時には、事業内容や必要資金の使途を説明できるようにしておくとスムーズです。また、この段階では正式な審査は行われませんが、融資の可能性や準備すべき事項について情報を得られます。
②事業計画書、必要書類の準備
金融機関が重視するのは、事業計画の具体性と収益見通しです。融資申請時には、以下の書類を準備する必要があります。詳細は日本政策金融公庫のウェブサイトをご確認ください。
- 創業計画書(必須):事業のビジョンや計画を明記。公庫サイトからDL可。
- 借入申込書(必須)
- 本人確認書類(必須)
- 見積書:設備資金を申し込む場合
その他、法人の場合は履歴事項全部証明書、許認可証等が必要となる場合があります。
③創業融資の申し込み
必要書類を揃えたら、日本政策金融公庫の窓口、オンライン、または郵送で融資申請を行います。申請後、担当者による書類審査が行われます。申請時には、事業の概要や資金用途を説明できるように準備しておきましょう。また、必要に応じて、追加書類の提出を求められることがあります。
④面談
書類審査後、日本政策金融公庫では必ず融資担当者との面談が行われます。この面談では、事業計画書に基づき、事業の実現可能性や返済能力について詳しく確認されます。また、取引先との契約書や発注書があれば、安定した収益見込みを示す証拠として審査で有利に働きます。
ここでは、事業計画の数字(売上見込みや収益計画)について、自分の言葉で具体的に説明できるよう準備しておくことが重要です。特に清掃業の場合、過去の業務経験や市場動向への理解度について質問されることもあるため、しっかりと準備しましょう。
⑤融資決定の連絡
面談後、融資の可否は通常2週間程度で通知されます。融資が認められた場合、提示された融資条件(借入額、金利、返済期間など)を確認しましょう。認められなかった場合、その理由を確認し、事業計画の改善を行うことで、再申請の可能性があります。
⑥契約書類の到着と返送
融資が決定すると、契約書類が送付されるため、必要事項を記入し、期限内に返送します。 契約書の内容を十分に確認し、不明点があれば金融機関に相談しましょう。 印鑑登録証明書や住民票の提出が必要な場合があるため、事前に準備しておくとスムーズです。
⑦公庫による融資金の振り込み
契約手続きが完了すると、日本政策金融公庫から指定口座に融資金が振り込まれます。融資金は必ず事業計画書に基づいた用途で活用し、不適切な使用は避けてください。
⑧融資金の返済
融資の返済は、契約時に設定されたスケジュールに基づき、融資金が振り込まれた後に開始されます。新規開業資金の場合、元金の返済を猶予する据え置き期間を設定できる場合があり、創業初期の資金繰りを安定させるために活用することが可能です。
清掃業向け創業融資に提出する創業計画書の書き方
清掃業で創業融資を受ける際、創業計画書(事業計画書)の完成度は審査の重要なポイントで、金融機関に対して事業の具体性や収益性、返済能力を証明する重要な書類です。特に、清掃業は競争が激しく、事業の差別化や市場分析の精度が求められます。
ここでは、審査に通る創業計画書の書き方のコツを解説します。また、具体的なフォーマットや記入例については、以下のリンク先で詳細な情報を提供していますので、あわせてご参照ください。
ハウスクリーニングの事業計画書・創業計画書のひな形、事業計画書の書き方は、以下の記事をご参照ください。
清掃業の事業計画書(創業計画書)の書き方
清掃業で創業融資を受けるためには、事業計画書に金融機関が求める情報を的確に盛り込むことが重要です。ここでは、審査で重視される主要な項目を紹介します。
- 創業の動機・目的
- 清掃業に関連する経験やスキルを具体的に記載し、事業の成功につながる要素をアピール。(例:「清掃業界で10年以上の経験があり、専門性を活かして独立。法人向けの定期清掃サービスを展開予定。」)
- 起業準備の進捗状況を明確にする(例:機材購入、営業活動、顧客開拓の実績など)。
- 取扱商品・サービス
- 清掃サービスの内容を具体的に記載(例:「オフィス清掃」「エアコンクリーニング」「ハウスクリーニング」など)。
- ターゲット顧客層と市場調査の結果を示す(例:「共働き世帯向けに定期清掃サービスを提供し、利便性を強調」)。
- 競合との差別化要因を明記(例:「天然洗剤を使用し、健康志向の顧客にアプローチ」)。
- 売上計画と資金計画
- 具体的な売上予測を記載(例:「1件15,000円×月20件=月間売上30万円」)。
- 設備資金と運転資金の内訳を明確にする(例:「清掃機材購入費50万円、広告費30万円」)。
- 借入希望額と返済計画を記載(例:「融資希望額300万円、5年間で返済予定」)。
- 事業の成長戦略
- 競争の激しい業界での差別化戦略を明示(例:「法人向け定期清掃契約の獲得を目指す」)。
- 長期的な成長計画を示し、金融機関に事業の将来性を伝える。
清掃業向け事業計画書(創業計画書)テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、ハウスクリーニング向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。清掃業向け事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。
清掃業で開業時に検討できる助成金・補助金
清掃業を開業する際、助成金や補助金を上手に活用することで、事業の安定化や成長を実現できます。ただし、これらは後払いが一般的であり、事業開始時には自己資金で進める必要があるため、この点に留意しなければなりません。
また、助成金や補助金は、国や地方自治体が提供する返済不要の支援制度ですが、各制度には特定の要件があります。要件を満たすことが受給の条件となるため、事前に確認が必要です。
ここでは、清掃業開業後に利用可能な代表的な助成金・補助金を紹介します。各制度の詳細や変更の可能性もあるため、最新情報をチェックし、事業に合った支援を選んで慎重に検討しましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や個人事業主を対象に、販路開拓や業務効率化を支援する補助金です。2025年度は「一般型」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」の4つの類型に整理されました。
この補助金において、一般的な清掃業では、ホームページ制作や広告宣伝、清掃機材の導入などが補助対象経費です。一般型(通常枠)の場合、補助上限は50万円(インボイス特例適用で最大100万円)、補助率は2/3(赤字事業者は3/4)です。
また、創業後3年以内の事業者には「創業型」枠があり、補助上限が200万円(特例で最大250万円)となる場合もあります。申請には商工会議所や商工会の支援を受けながら経営計画を作成し、電子申請または郵送で提出しますが、郵送申請は減点調整の対象となるため電子申請が推奨されています。
参考:中小企業庁 小規模事業者持続化補助金(通常枠)
参考:中小企業庁 小規模事業者持続化補助金(創業型))
IT導入補助金
清掃業では、顧客管理システム(CRM)や予約管理システム、会計ソフトなどの導入が対象です。通常枠では補助率1/2、補助額5万円~450万円ですが、インボイス枠では小規模事業者に対し最大4/5の補助が出ます。
申請にはgBizIDプライムアカウントの取得やSECURITY ACTIONの実施が必要です。IT導入支援事業者と連携し、自社の課題に合ったITツールを選定・導入することで、清掃業の業務効率化や生産性向上、セキュリティ強化に繋げられます。
参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 IT導入補助金2025
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、従業員の職務関連スキル向上を目的とした職業訓練を実施する事業主を支援する制度です。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成され、2025年度は「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」など6つのコースが設けられています。
対象となる訓練には、OFF-JTやOJT、e-ラーニングなどがあり、デジタル人材育成やリスキリング支援など時代に即したコースも用意されています。助成率は最大75%で、申請には職業能力開発推進者の選任や訓練計画の作成・届出が必要です。この制度を活用することで、企業は人材育成コストを抑えつつ、生産性向上や競争力強化を図れます。
中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、中小企業が人手不足を解消し、生産性を向上させるために、IoTやロボットなどの省力化製品を導入する際に支援する制度です。作業の自動化や業務効率化を目的とした設備投資に活用でき、特に労働集約型の業種に適しています。
補助率は1/2以下で、従業員数に応じて補助上限額が異なり、最大で1,500万円まで支給されます。この補助金は、企業の付加価値向上や賃上げの促進を目的としています。
参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業省力化投資補助金
地方自治体の助成金・補助金
地方自治体では、地域の経済活性化や雇用促進を目的とした独自の助成金・補助金制度を提供しており、清掃業も活用できる可能性があります。例えば、新規創業を補助するものとして「さっぽろ新規創業促進補助金(札幌市)」は、創業時に必要な登録免許税や定款認証手数料相当額を補助します。
また、東京都の「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」は、非正規雇用から正規雇用に転換した従業員を支援するための中小企業向けの助成金です。
各自治体では、事業拡大や業務効率化を支援する補助金制度が用意されています。助成対象や申請要件は自治体によって異なるため、公式サイトなどで最新情報を確認してください。
参考:札幌市 さっぽろ新規創業促進補助金、東京都 正規雇用等転換安定化支援助成金を充実
清掃業の創業融資を有効活用しよう
清掃業で創業融資を受けるには、設備資金や運転資金の確保が可能で長期返済や低金利のメリットがある日本政策金融公庫の新規開業資金の活用が有効です。
審査では、精緻な分析をふまえた事業計画書が重要です。取引先との契約書の提示などがあることで、融資の承認を得やすくなります。
創業時は、これらの制度を活用し、計画的な資金調達を進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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