• 作成日 : 2025年3月4日

開業届を出していない個人事業主は経費計上できる?確定申告や開業前の経費についても解説

開業届を提出していない個人事業主は、確定申告の際に経費を計上しても問題ありません。しかし、開業届を提出していないことがネックになるケースもあります。開業届を提出しなくても影響がないこと、反対に影響があることについて解説します。

開業届とは?

開業届とは、一般的に、開業する際に税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」のことをいいます。新たに、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかの事業を開始した場合に提出する書類です。提出期限は、事業開始の日から1カ月以内とされています。

開業届の書き方や提出するメリットなどはこちらの記事で詳細を確認いただけます。

開業届を出していない個人事業主は経費計上を利用できる?

所得税の計算上、収入金額から必要経費を差し引いた金額を所得金額といいます。所得金額を計算する上で、必要経費を収入金額から控除できるかどうかに開業届の提出は要件となっていません。開業届を提出していない個人事業主でも、確定申告の事業所得などの計算において、必要経費を計上することができます。

開業届を出していない個人事業主もインボイスを発行できる?

インボイス制度の開始以降、適格請求書(インボイス)を発行できる事業者は、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者に限られます。今後、段階的に、事業者はインボイスを発行しない個人や事業者からの仕入税額控除を受けられなくなるため、取引先との円滑なやり取りを継続するために、個人事業主が適格請求書発行事業者に登録するケースもあります。

適格請求書発行事業者に登録するには、税務署での登録申請手続きが必要です。税務署で審査が行われたあと、登録の公表や登記簿への記録が行われます。適格請求書発行事業者の登録では、開業届の提出の有無は要件になっていません。そのため、開業届を提出していなくても登録を受けることができ、登録が確認できれば個人事業主もインボイスを発行できます。

開業届を出していない個人事業主も確定申告は必要?

開業届の提出の有無にかかわらず、確定申告が必要な要件にあてはまる場合は、開業届を提出していなくても確定申告が必要です。

確定申告が必要になる要件

個人事業主の場合、以下の計算により残額が発生する場合は、納めるべき所得税があるため、所得税の確定申告が必要です。

 (各種所得の合計額-所得控除)×所得税の税率-税額控除=所得税の額

例えば、確定申告をする人が広く適用できる所得控除に「基礎控除」があります。納税者の合計所得金額が2,500万円以下である場合に利用できる控除です。納税者の合計所得金額が2,400万円以下の場合は、48万円を一律で控除できます。基礎控除を考慮すると、事業所得が48万円を超える場合は、確定申告が必要になる可能性があります。

確定申告について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。

個人事業主は開業届を出す前の経費を計上できる?

個人事業主の必要経費の計上に、開業届の提出の有無は関係しないと説明しました。開業届を提出していない場合と同様、開業届提出前の経費についても、経費計上は認められています。

開業日前に開業の準備のために支出が発生する場合もあるでしょう。事業開始日前に発生した費用については、事業のために支払われたものであれば、数カ月から1年さかのぼって経費として認められます。この場合、開業に要した費用は、まとめて開業費として計上します。

個人事業主が計上できる経費の上限や経費計上できるものについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

個人事業主が開業届を出すメリット

開業届を提出していない場合でも、経費計上やインボイスの発行などは認められます。開業届の提出は本当に必要なのでしょうか。開業届を提出することによる主なメリットを紹介します。

青色申告特別控除が受けられる

開業届を提出することで、青色申告を選択できるようになります。

個人事業主が選択できる申告の方法は2種類あり、白色申告と青色申告から選択できます。青色申告は、複式簿記による記帳が必要になるものの、さまざまな特典を利用できるのが特徴です。代表的なものに、青色申告特別控除があります。事業所得や不動産所得、山林所得から、最大55万円(電子申告または電子帳簿の場合は65万円、山林所得については10万円が限度)を控除できる制度です。

青色申告を選択するには、開業届を提出し、青色申告の承認申請をしなければなりません。

個人事業主としての証明に利用できる

税務署に対して保有個人情報の開示請求をすることにより、税務署に対して個人が提出した申告書などの内容を確認できます。1カ月程度の時間がかかりますが、写しの交付を請求することも可能です。過去に、税務署に対して書類を提出した事実や書類の写しにより、個人事業主であることの証明に役立てられます。

屋号で銀行口座を開設できる

個人事業主は、個人名での銀行口座のほか、屋号で銀行口座を開設できます。銀行口座をビジネス用に作成するメリットは、個人の取引とビジネス上の取引を明確に分けられることです。屋号で開設することで、取引先からの信頼感にもつながります。

小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済は、会社員の退職金に相当するような制度です。毎月掛金を拠出することで、将来の廃業や退職に備えます。小規模共済に加入する際には、確定申告書の控えが求められます。開業したばかりで確定申告書の控えがない場合は、電子申告により受付日時や番号が印字された開業届などで代替可能です。開業届を提出しておくことで、早期に小規模企業共済に加入できます。

開業届は開業日から1カ月経過しても提出できる?

開業届は、開業から1カ月以内と提出期限が定められています。しかし、提出期限を過ぎたとしても何らかの罰則が発生するわけではありません。開業から1カ月以上経過していても開業届は提出できます。提出していないことに気づいた段階で、速やかに税務署に提出しましょう。

開業届を提出していなくても個人事業主の経費は認められる

個人事業主が開業する場合、管轄の税務署に開業届を提出する必要があります。しかし、提出がなかったからといってペナルティが発生するわけではありません。確定申告の際の経費計上にも影響はなく、開業届を提出していなくても経費計上は認められます。


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