- 作成日 : 2025年3月7日
銀行融資による資金調達がおすすめなケースは?メリット・デメリットや審査通過のポイントを解説
銀行融資は金利が低く、大型の資金調達が可能な手段です。ただし、審査基準が厳しく、時間もかかるため、資金調達の時期や目的に応じて判断する必要があります。
本記事では、銀行融資の基礎知識から審査のポイント、代替となる資金調達方法まで、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。
目次
銀行融資とは
銀行融資とは、銀行が法人や個人事業主に対して事業用資金を貸し出す制度です。融資を行う金融機関には、都市銀行・地方銀行・信用金庫・信用組合・ネット銀行などがあり、借り手は融資を受けた金額に利子を上乗せして返済する仕組みになっています。
種類
銀行融資には、主に以下の4つの種類があります。
- プロパー融資
- 信用保証協会の保証付き融資
- ビジネスローン
- カードローン
それぞれ、事業規模や目的に応じて最適な融資形態を選択する必要があります。なお、事業における「銀行融資」というと、プロパー融資と信用保証協会による保証付き融資を指すのが一般的です。
以下で、それぞれの融資について詳しく説明します。
プロパー融資
プロパー融資は、後述する信用保証協会の保証を利用せずに銀行が直接融資を行う方式です。金利が低く融資限度額の制限がないメリットがありますが、銀行が貸し倒れリスクをすべて負うため、審査は非常に厳格です。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会の保証付き融資は、全国信用保証協会連合会が保証人になったうえで銀行が融資を行う方法です。万が一返済が滞った場合は、信用保証協会が代位弁済を行います。そのため銀行にとってリスクがないため、比較的審査が通りやすいのが特徴です。
保証人が入る以外にも借入金額に応じて信用保証料を支払う必要がある、融資限度額があるなど、プロパー融資とは異なる点もいくつかあります。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、無担保・無保証人での申込みが可能な事業資金専用のローン商品です。審査から融資実行までのスピードが速く、必要書類も比較的少ない傾向があります。
一方で、融資限度額は数百万円から数千万円程度と比較的小さく、借入期間も短めです。金利もプロパー融資や信用保証協会の保証付き融資と比べて高めに設定されており、急な資金需要への対応向けといった性質が強い融資方法といえます。
カードローン
カードローンは事前に審査を受けて利用限度額を設定し、必要な時に随時借入・返済が可能な融資形態です。ATMでの借入や返済が可能で、手続きが簡単なのが特徴といえるでしょう。
ただし、金利は他の融資形態と比べて高く、多額の資金を長期的に利用したい場合には適していません。また事業用途での利用が制限される場合もあるため、利用前に条件を確認する必要があります。
融資を受ける流れ
一般的な銀行融資の流れを紹介します。
事前相談・申込み
はじめに融資の目的や必要額、返済計画などについて銀行担当者と詳細な打ち合わせを行います。この際、会社案内や決算書、事業計画書などの準備が必要です。
また、融資の種類(信用保証協会の保証を受けるかどうか)や条件についても相談し、融資プランを検討します。
必要書類の提出と面談
次に必要書類と面談が行われます。面談では、提出書類をもとに事業の状況や実績、借入希望額、返済期間などが確認されます。
特に自己資金の状況や融資金の使途、返済計画について具体的な質問がされるため、説明ができるよう準備が必要です。また、営業所や工場などへの実地調査が実施されるケースもあります。
審査
その後、銀行の担当者による審査が開始されます。審査では複数の担当者が関与し、支店長決裁で融資が決まるケースと本部決裁が必要となるケースがあります。
審査結果が出るまでには、2〜4週間程度かかるのが一般的です。
契約締結と融資実行
審査通過後は契約締結となり、指定口座に融資金が振り込まれます。申込みから着金までの全体の所要期間は通常1ヶ月〜1ヶ月半程度ですが、長ければ2ヶ月程度かかることもあります。
銀行融資で資金調達するメリット
銀行融資は、企業や個人事業主にとって重要な資金調達手段のひとつです。他の資金調達方法と比較して、以下のようなメリットがあります。
金利が低い
銀行融資の金利は一般的に1.5%程度からであり、他の資金調達方法と比較して低い水準傾向があります。
銀行は日本銀行から低金利で資金を調達できるほか、幅広い顧客基盤を活用して安定的な資金を確保しています。また、リスク管理体制が整っているため、貸し倒れリスクを抑えたうえで効率的に運営できることも、低金利を可能にしている理由のひとつです。
こうした背景から、事業資金の調達においてコストを抑えたい企業にとって銀行融資はメリットが大きいといえるでしょう。
限度額が大きい
銀行融資のもうひとつのメリットは、借入限度額が大きいことです。事業規模や信用力によって異なりますが、条件が整えば数千万円から1億円以上の大規模な資金調達が可能です。
大きな限度額で融資を受けられることで、設備投資や事業拡大など、大規模なプロジェクトにも対応できるでしょう。また、複数の小口融資を一本化することで、管理が容易になり、総合的な金利負担も軽減できる可能性もあります。
銀行融資で資金調達するデメリット
銀行融資は低金利で大型の資金調達が可能な一方で、いくつかのデメリットもあります。以下で詳しく見ていきましょう。
審査に時間がかかる
プロパー融資、信用保証協会の保証付き融資の審査は、非常に慎重に進められます。新規での取引開始の場合、申込みから融資実行まで1ヶ月~2ヶ月程度の期間を要するのが一般的です。これは、複数の審査担当者による多角的な審査が行われ、さらに融資額が大きい案件では本部決裁が必要となるためです。
そのため、融資にスピード感を求めるのであれば、プロパー融資、信用保証協会の保証付き融資は向いていません。急ぎで融資を受けたい場合は審査機関が比較的短いビジネスローンが選択肢になるでしょう。
保証や担保が必要な場合がある
銀行は貸し倒れリスクを最小限に抑えるため、特に中小企業からの融資申請に対しては担保や保証人の設定を求めることが多くなっています。
不動産担保の場合、物件の評価や担保設定の手続きに時間とコストがかかります。また、経営者個人に対する連帯保証を求められることも多く、事業の失敗が個人の資産にも影響を及ぼす可能性が否定できません。
特に創業間もない企業や、財務基盤が弱い企業では、この担保・保証の要件が融資を受ける際の大きな障壁となることがあります。
銀行融資とその他の融資との違い
事業資金の調達方法は、銀行融資以外にもあります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に合った最適な調達方法を選択することが大切です。
以下で、銀行融資とそのほかの融資との違いについて紹介します。
日本政策金融公庫による融資との違い
日本政策金融公庫は、創業支援や小規模事業者向けの融資において積極的な姿勢を見せています。
銀行融資の難易度が高いとされる実績や担保が乏しい事業者でも、事業計画の内容次第で融資を受けられる可能性が高いのが特徴です。また、低金利であり、場合によっては銀行融資よりもさらに低い金利で融資が受けられることもあります。担保や保証なしに融資が受けられる制度がある点も、特筆ポイントといえるでしょう。
さらに、日本政策金融公庫には経営環境の変化に対応するセーフティネット貸付や、新たな事業分野に挑戦する企業を支援する新企業育成貸付など、さまざまな融資制度が用意されています。
信用金庫による融資との違い
信用金庫は、地域の会員同士が支え合う協同組織型の非営利法人であり、そもそもの仕組みが銀行と異なります。
信用金庫の融資対象は原則として会員(組合員)に限定されており、地域内の中小企業や個人事業主が主な取引先です。この地域密着型の運営方針により、地域経済の活性化を目的とした金融サービスが提供されています。
また、信用金庫は利益追求を第一義とせず、地域社会全体への利益還元を重視しています。そのため、メガバンクが行うような大規模な融資案件よりも、小規模事業者や個人事業主に対するきめ細かい支援が得意です。さらに、融資審査では事業計画や経営者の人柄など、定量的なデータだけでなく定性的な要素も評価される傾向があります。
一方で、銀行と比較すると融資限度額が小さいことや、営業地域が限定されている点がデメリットとなる場合もあります。
制度融資との違い
制度融資は、地方自治体、金融機関、信用保証協会の三者が連携して実施する融資制度です。地方自治体が主体となり、地域経済の活性化や中小企業支援を目的としている点が銀行融資との大きな違いといえるでしょう。
制度融資では地方自治体による利子補給で低金利を実現していることに加え、信用保証協会による保証で担保や信用力が不足している事業者でも利用しやすい仕組みになっています。保証料の一部または全額を、自治体が負担するケースもあります。
ただし、金融機関と信用保証協会の両方で審査が行われるため、通常の銀行融資よりも手続きが複雑になり、融資までの時間も長くなりがちです。
銀行融資の審査を通過するポイント
銀行融資の審査では、財務状況や事業計画、信用情報といった複数の要素が総合的に評価されます。ここでは、銀行融資の審査を通過するために押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
財務状況の健全性を確保する
財務状況の健全性は、銀行融資の審査で重視されるポイントのひとつです。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を通じて、企業が安定した財務基盤を持っているかが評価されます。
特に、自己資本比率や流動比率といった指標が重要視される傾向があり、自己資本比率が高いほど、企業が外部からの借入に依存せず安定していると見なされます。また、流動比率が200%以上であれば、短期的な支払い能力が十分であると判断されやすいでしょう。
個人事業主では、税金や社会保険料の未払いがないことも審査における重要ポイントになります。
事業計画の具体性と実現性
事業計画書は、銀行に対して将来の事業展望や収益性を示す書類です。銀行融資の審査において重要度が高い書類のひとつで、市場分析や競合分析、収益予測などが盛り込まれた現実的かつ実現可能な内容である必要があります。
売上目標や収益計画は、過去の実績や市場データに基づいて設定し、その根拠を明確に示すことが求められます。
また、事業計画書は単なる数字の羅列ではなく、経営者自身の熱意やビジョンを伝える役割がある点も認識しておきましょう。銀行はこの計画書から「この事業は成功する可能性が高い」と感じられるかどうかを判断します。そのため、説得力ある資料作成が不可欠です。
信用情報と取引実績
信用情報と取引実績も、銀行融資の審査に大きな影響を与える項目です。支払い遅延や未納がある場合、それだけで融資審査に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、日頃から信用情報を健全に保つことが大切です。
また、銀行との取引実績も評価対象になります。長期的な取引関係や過去の融資返済実績はプラス材料となり、新規取引よりも審査がスムーズになる傾向があります。
銀行融資が難しい場合に検討すべき資金調達方法
銀行融資は審査のハードルが高く、融資が受けられないケースもあるかもしれません。その場合は、以下に挙げる資金調達方法を検討することをおすすめします。
公的融資
公的融資は、国や地方自治体が提供する低金利または無利子の融資です。先述した日本政策金融公庫や自治体による制度融資が代表例であり、中小企業や個人事業主を対象にした支援策として広く利用されています。銀行融資が難しい場合の第一選択肢といえるでしょう。
公的融資には、担保や保証人が不要なものも多くあります。ただし、申請から融資実行までに時間がかかるため、その点を考慮して計画を立てる必要があります。
資産の売却
保有している不動産や有価証券、不要な設備などの資産を売却して現金化する方法もあります。使っていない土地や建物があればそれらを売却することで、一時的にまとまった資金を調達できるでしょう。
また、「リースバック」という手法を利用すれば、不動産を売却した後も賃貸借契約を結んで引き続き使用できるため、事業への影響を最小限に抑えられます。ただし、売却した資産は再取得が難しいため、慎重な判断が必要です。
投資家を頼る
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから出資を受けるのも、事業用資金を調達するひとつの方法です。投資家は事業の将来性や成長性を重視するため、現実的で説得力のある事業計画書が求められます。また、エンジェル投資家の場合は経営アドバイスや人脈の提供といった付加価値も期待できるでしょう。
一方で、返済義務がない代わりに株式の一部を譲渡するため、将来的に経営への関与が強くなる可能性があります。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛金(売掛債権)を早期に現金化する手法です。ファクタリング会社に売掛債権を譲渡することで、最短即日で現金化が可能となります。
この方法では、自社の信用力ではなく売掛先の信用力が重視されるため、赤字決算や債務超過でも利用しやすい点がメリットです。ただし、手数料が高額な傾向があり、長期間の利用は資金繰りの悪化につながるリスクがあります。
助成金・補助金
助成金や補助金は返済不要の公的支援制度であり、新規事業や設備投資、人材育成など特定の目的に対して給付されます。
助成金は要件を満たせば高い確率で受給できますが、補助金は採択制であるため競争率が高い場合があります。また、多くの場合後払いとなるため、一時的な自己資金の確保も必要です。申請には事業計画書や財務諸表など多くの書類が求められるため、専門家への相談も検討するとよいでしょう。
銀行融資はハードルが高いがメリットも大きい
銀行融資は審査のハードルが高い傾向があるものの、その分得られるメリットも大きいといえます。説得力のある事業計画書の作成や健全な財務状態の維持など、できる限りの対策をしたうえで審査に臨みましょう。
また、銀行融資が難しい場合には、公的融資やファクタリング、助成金・補助金などの代替手段を検討することで、事業を支える選択肢も広がります。それぞれの特徴を理解し、自社に最適な方法を選ぶことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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