- 作成日 : 2025年2月27日
芸能人の法人化とは?個人事務所設立のメリット・デメリットや流れを解説
芸能人の中には売れっ子になったタイミングなどで、これまでお世話になった芸能事務所から独立して個人事務所または会社を立ち上げる方もいらっしゃいます。
本記事では、芸能人が個人事務所・会社を設立する理由や法人化の流れ、成功させるためのポイントについてご紹介します。
目次
芸能人の法人化とは?
芸能人の法人化には、「個人事務所を設立して芸能活動を続ける」「芸能以外のビジネスを行う会社を設立する」という大きく2つのパターンがあります。実際にこのパターンがどのようなことなのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
個人事務所を設立して芸能活動を続ける
まず、よくあるパターンとして挙げられるのが、芸能事務所やプロダクションを辞めて個人事務所を設立するというケースです。芸能事務所やプロダクションはタレントの育成や営業活動、仕事の割り振り、スケジュール管理などを行ってくれますが、個人単位となるとマネジメントを自分一人で行うか、あるいは自分が雇ったスタッフにしてもらうのが一般的です。
また、仲間の芸能人や先輩、後輩と一緒に退所してマネジメントを行う、あるいは複数の芸能人と共同で法人を設立するケースもあります。
芸能以外のビジネスを行う会社を設立する
会社を設立して芸能活動以外の事業を始められる芸能人の方もいらっしゃいます。知名度を活かしたビジネスをすることが可能です。例えば、飲食店やサロンを開業する、アパレルブランドを立ち上げる、本や漫画、絵本などを出版するといった事例があります。また、芸能活動で得た収入を個人投資家として活動し、自身で会社を興したという方もいらっしゃるようです。
芸能人が個人事務所の設立で法人化を検討するタイミング
芸能人が法人化するタイミングは、人それぞれ異なります。一通り芸能界の状況がわかってきた、人脈が構築できた、知名度が上がってきて仕事が獲得できるようになってきた、安定的に収入が得られるようになってきたといったタイミングで独立を考えられる方もいるようです。
また、ギャラや仕事の割り振り、運営方針について納得のいかないことがあったとき、不祥事やトラブルなど事務所で問題が発生したときなどをきっかけに独立される方もいると言われています。
芸能人が個人事務所を設立して法人化するメリット・デメリット
芸能人の法人化にはメリットもあればデメリットもあるため、それを踏まえたうえで今後どうしていくか考えていくことが重要です。ここからは法人化のメリット・デメリットについて考えていきましょう。
メリット
メリットとして挙げられるのが、仕事の自由度が高くなることです。芸能事務所に所属している場合、事務所が獲得した仕事をこなすというスタイルになります。中には気が乗らない仕事をせざるを得ないケース、忙しくて休養が取れないケースがあるかもしれません。自分で事務所を設立することによって自身のペースで、芸能以外の活動も含めてやりたい仕事をできるようになります。
また、独立することで収入アップする可能性もあるでしょう。芸能事務所に所属している場合、依頼元から支払われる出演料から事務所の取り分が差し引かれ、芸能人にギャラとして支払われます。個人で事務所を運営する場合、基本このようなマージンは発生しません。
芸能人の方は個人事業主として芸能事務所と契約しているケース(※業務委託契約)もありますが、このような場合、個人事業主には最大で45%(※4,000万円を超えた場合)の所得が課せられます。一方、法人化すれば法人税が適用対象となるため、税率が23.2%(※年間所得800万円を超えた場合)です。特にギャラが多い方は大きな節税効果が得られるでしょう。
(※税率は2025年1月時点の情報)
デメリット
芸能事務所に所属している芸能人は、事務所が営業やマネジメントを行うため、自身の芸能活動に専念できます。一方で、芸能人が事務所やプロダクションから独立した場合、芸能活動と並行して、自ら営業活動やマネジメントにも対応しなければなりません。特に人脈がない状態で独立をすると、仕事が激減してしまうリスクもあります。
また、芸能活動以外の事業を行う場合には、倒産リスクも考えておきましょう。芸能人は知名度がある分有利と思えるかもしれませんが、顧客のニーズに合っていないなどの理由で事業を凍結せざるを得ない可能性もあります。特に飲食店やサロンなどの初期投資が必要なビジネスは、綿密な事業計画を立て、資金調達したうえで準備を進めましょう。
芸能人が個人事務所を設立して法人化する流れ
芸能人が個人事務所を設立するには主に以下のような流れになります。
①事業計画の作成
まずはどのような事業を行うのか、どのような事務所を開設するのか、売上や経費はどれくらいになるのかといった事業計画を立てましょう。しっかりと計画を立てておくことで安定的な経営につながります。
②資金調達
自己資金で足りない分は銀行で融資を利用する、出資を受けるなどして資金調達を行う必要があります。審査があるので、借入ができるまで申込みから手続きまで数週間程度必要です。また、審査の際には事業計画書の提出が求められるため、特に資金調達をする場合は事業計画の作成を必ず行いましょう。
③オフィス準備
どこに事務所を開設するのかを検討しましょう。一人で運営されるのであれば自宅の一室に事務所を構えることも一つの手です。スタッフを雇う場合、または複数の芸能人が所属する場合は、物件を提供しなければならない可能性もあるため、デスクやOA機器など事務所に必要な備品類もそろえましょう。
④法人登記手続き
法人を設立する際には法務局で法人登記手続きを行う必要があります。登記申請書、定款、資本金の払込みを証する書面、役員就任承諾書などの必要書類を準備しましょう。
芸能人が法人化を成功させるポイント
芸能事務所に限らず、行き当たりばったりの経営はうまくいきません。例えば、個人事務所であれば、取引先や仕事を確保する件数、詳細な運営の3つを明確にしましょう。この取り組みは、自身の今後の芸能活動の方針を決めることにもつながります。可能であれば自身のマネジメントにとどまらず、複数のタレントを在籍させる、タレント志望者の育成事業を行うことで、事務所のさらなる拡大が望めるでしょう。
芸能以外の事業を行う場合は、芸能界で培った知名度やイメージ、得意分野、ポジション、人脈をフルに活用しましょう。例えば、グルメの番組に出ているのであれば飲食店、普段からファッションセンスに定評あればアパレルブランドを立ち上げると、信頼性が高まるとともに顧客を獲得しやすくなります。
芸能人が法人化する際の注意点
独立は失敗するリスクも大きいと言われています。個人事務所を立ち上げるのであれば、独立後にどれくらい仕事が獲得できるのか、どうやって営業活動をしていくのか、自分以外に目玉となるタレントがいるのか(※複数人で独立する場合)といったことを検討しておきましょう。
特に日本の芸能界は大手事務所やプロダクションが影響力を持っています。例えば、放送局との交渉力が強いとされる大手と競合する場合、個人で仕事を獲得となるとハードルが高くなる可能性が高いでしょう。状況により、独立して一気に仕事がなくなるという事態も想定されます。知名度や人脈があまりない状態で独立するのは、危険と言えるでしょう。
芸能以外の事業を行う場合は、本当にそのビジネスが儲かるかどうかを検討する必要があります。いくら芸能人として知名度が高かったとしても、市場のニーズがない、肝心の商品やサービスの品質が低いと顧客はすぐに離れるでしょう。初期投資が必要なビジネス、物を仕入れたり、在庫を持ったりする必要がある事業の場合、どんぶり勘定で経営を続けると経費ばかりがかかってしまって赤字になりかねません。
芸能人の独立・法人化は慎重に考えよう
芸能界は非常に夢がある世界です。売れっ子になれば自分で事務所を設立したり、ビジネスを始めたりなど、さらに稼げるチャンスもあります。その一方で、独立して一気に仕事が減ってしまった、事業に失敗して借金返済に追われたというケースもあるようです。
「売れっ子になったら独立したい、今よりも稼ぎたい」というは思いがあっても、一度立ち止まって「独立後にどうなりたいか」を冷静に考えてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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