- 更新日 : 2025年8月22日
シニア起業の際に利用できる補助金や助成金は?対象者や融資金額、申請方法を紹介
シニアの起業では、さまざまな補助金や助成金が使えます。しかし補助金や助成金にはどのような制度があるか、実はよくご存じない方も多いでしょう。
補助金や助成金には、国の制度と自治体の制度があります。本記事ではシニア起業で利用できる制度や、補助金・助成金の正しい選び方などを詳しく紹介します。
目次
シニア起業で申し込める補助金や助成金
シニアが起業する際には補助金や助成金、融資制度などを活用することで起業時の資金繰りを楽にできます。補助金にはさまざまな制度がありますが、大きく国が提供している制度と自治体が提供している制度に分かれます。
また、起業時に民間の銀行から融資を受けるのは困難といわれますが、シニア向けの特例融資制度の利用が可能です。シニアの起業は一般の起業に比べ、各種制度を利用すれば資金負担を軽減できます。ここでは国や地方自治体が提供している補助金を紹介します。
国の制度
国が提供している補助金の制度には、次のようなものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
小規模事業者持続化補助金とは、規模の小さな事業主が自社の経営を見直したうえで、持続的な経営ができるような体制を整えることを支援する補助金です。制度の概要は次の通りです。
| 対象 | 従業員が20人以下(サービス業の場合は5人以下)の法人・個人事業・特定非営利活動法人 |
|---|---|
| 補助金額 | 200万円(通常枠は50万円) ※インボイス特例を満たせば50万円の上乗せ |
| 補助対象経費 | 機械装置費・広告費・ウェブサイト関連費・開発費・委託外注費・リースレンタル料など ※自動車やパソコン・文房具などは対象外 |
| 補助率上限 | 2/3以内 |
| 申請方法 | 商工会へ電子もしくは郵送で申請 |
| 実施期間 | 経済産業省、中小企業庁 |
ものづくり補助金は賃上げやインボイスへの対応など、環境の変化に対応するために必要な
省力化や新たなシステム開発などを行う事業者を補助する制度です。主な制度の概要は次の通りです。
| 対象 | 資本金や従業員数など一定の基準を満たした中小企業や小規模事業主 |
|---|---|
| 補助金額 | 最大1億円 |
| 補助対象経費 | 機械装置・システム構築費・原材料費など |
| 補助率上限 | 2/3以内 |
| 申請方法 | 電子申請 |
| 実施期間 | 経済産業省、全国商工会連合会、日本商工会議所 |
自治体の制度
自治体が提供している補助金の制度には、次のようなものがあります。
- 創業助成金(東京都)
- シニア・女性起業家支援資金利子補給金
東京都では都内の開業率のアップを目的として、創業助成金の制度を提供しています。一定の内容を満たした創業者などが利用できます。制度の概要は次の通りです。
| 対象 | 都内で創業する個人、もしくは創業5年未満の事業者 |
|---|---|
| 補助金額 | 400万円 |
| 補助対象経費 | 事業費・人件費・委託費 |
| 補助率上限 | 2/3以内 |
| 申請方法 | 申請書を提出 |
| 実施期間 | 東京都 |
和歌山市では起業するシニアや女性を応援するために、利子補給の制度を提供しています。起業する女性・シニアが日本政策金融公庫などから借入をした場合の、借入利子の半分を負担してくれます。
| 対象 | 和歌山市内で起業する女性・シニア(55歳以上) |
|---|---|
| 補助金額 | 借入金利子の1/2 |
| 補助対象経費 | 日本政策金融公庫、国民生活事業の借入の利子 |
| 申請方法 | 申請書を提出 |
| 実施期間 | 和歌山市 |
シニア起業で補助金や助成金を利用すべきケース
シニアが起業する際には、基本的には使える補助金や助成金は利用すべきです。起業後数年は資金繰りが不安定になることは多いですが、補助金や助成金を活用すれば資金を少しでも安定させられるでしょう。
補助金や助成金は融資と違って、返済する必要はありません。そのため利用できる制度はできるだけ利用することで、資金面が楽になります。ただし申請すれば必ず利用できる助成金と違って、補助金の場合は審査に通過する必要がある点には注意しましょう。
補助金などを利用する際に注意したいのは、補助金を得ること自体が目的となってしまわないようにすることです。補助金を受けるためには一定の要件を満たして審査に通過する必要があります。そのため補助金を得やすくするために事業計画を変更するなど、目的と手段が逆転してしまうケースがあります。
その結果身の丈に合っていない設備を購入してしまい、何年もほこりをかぶってしまうケースも少なくありません。あくまで、事業を軌道に載せるための支援であることを認識しておきましょう。
シニア起業で使える日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫では、「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」という融資制度があります。
| 対象 | 新たに創業する方、または事業開始後おおむね7年以内で、女性もしくは35歳未満か55歳以上の方 |
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 資金使途 | 新たに創業するため、または事業開始後に必要な設備資金および運転資金 |
| 返済期間 | 設備資金20年(据置期間5年以内) 運転資金10年(据置期間5年以内) |
| 借入利率 | 特別利率 |
対象者
新しく事業を始める方だけでなく、すでに事業を始めていてもおおむね7年以内であれば対象になります。ただし、新しく事業を始める方は、適正な事業計画を作成しており、さらに計画を遂行する能力がある方という条件が付いています。
55歳以上のシニアだけでなく、35歳未満の若者や女性の起業家もこの制度を利用できます。融資を利用する際には、創業計画書を提出して、審査を受ける必要があります。
融資金額と返済期間
融資金額の上限は7,200万円ですが、運転資金で利用する場合は4,800万円が上限になります。
返済期間は設備資金で最長20年、運転資金で最長10年での利用が可能です。一般的に金融機関から借入する場合、運転資金は5年程度が多いため長い期間で借りられる点が特徴です。
申請方法
融資を利用するための流れは、下記の通りです。
- 電話や支店窓口で相談
- インターネットでの申し込み
- 担当者との面談
- 融資決定
- 契約手続き
- 融資実行
【事業資金相談ダイヤル】
0120-154-505(受付時間:平日9時~19時)
電話だけでなく支店の窓口や、オンラインでの相談も可能です。面談で相談する場合は、事前に予約が必要なため注意しましょう。また、商工会議所などでも相談できます。
申し込みはインターネットから行います。申し込みが終わると審査が始まりますが、担当者との面談をしなければなりません。融資資金の使い道や事業計画をヒアリングされたり、店舗や工場などを見られたりする場合もあります。また、このとき代表者の資産や負債も確認できる資料が必要です。
無事審査に通過したら、契約の手続きを行い登録した金融機関の口座に資金が振り込まれます。
参考:新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)|日本政策金融公庫
シニア起業で使える地方公共団体の制度融資
東京都では都内で若者やシニアの開業をサポートするために、特別な融資制度を提供しています。「女性・若者・シニア創業サポート2.0」という名称の融資制度で、概要は下記の通りです。
| 対象 | 女性、または39歳以下か55歳以上で、都内で新たに創業する方、もしくは事業開始後5年未満(女性は7年未満)の方 |
|---|---|
| 融資限度額 | 1,500万円以内(女性は2,000万円以内) |
| 資金使途 | 設備資金、運転資金 |
| 返済期間 | 10年以内(据置3年以内) |
対象者
融資制度の対象となるのは、都内で創業計画があるか創業後5年未満で女性、もしくは39歳以下の若者か55歳以上のシニアです。ただし女性の場合は創業後7年未満の方までも、対象です。また事業内容は、地域の需要や雇用を支える事業が対象となります。
融資金額と返済期間
融資金額の上限は1,500万円ですが、女性の場合は2,000万円まで利用できます。ただし運転資金だけの利用の場合は750万円(女性は1,000万円)が上限で、借り換えには利用できません。返済期間は10年以内で、借入資金の内容などによっては元金の返済を最大3年間据え置くことが可能です。
申請方法
融資を申請する流れは下記の通りです。
- 事務局へ申し込み
- 創業専門家との事前相談
- アドバイザーの支援による事業計画書の作成
- 金融機関に融資申し込み
- 金融機関による審査
- 融資実行
「女性・若者・シニア創業サポート2.0」を申し込むには、まず事務局に連絡をします。事務局による創業の支援や事業計画書の作成支援を経た後に、金融機関へ融資申し込みという流れです。
この際金融機関も事務局から紹介してくれるため、始めてでも心配ありません。実際の審査は作成した事業計画書をもとに、金融機関が行います。審査に通過したら金融機関と融資手続きを行い、融資が実行されます。
経営に関するサポート
「女性・若者・シニア創業サポート2.0」では低金利で融資が受けられるだけではなく、経営に関するサポートが受けられる点が特徴です。融資前には業種別や事業計画書のセミナーに参加できるだけでなく、専門家による無料相談も行ってくれます。
また金融機関へ提出する事業計画書の作成も、面談形式でアドバイスを行ってくれます。融資実行後も経営ノウハウを持ったアドバイザーの、経営相談を受けることが可能です。さらに無料で税理士による決算書作成アドバイスを受けられるなど、手厚いサポートを受けられます。
専門家のアドバイスによって販路開拓やビジネスマッチング、人材紹介などが受けられるため、事業が安定しない創業期には非常に役立つサポートだといえるでしょう。
大阪府制度融資「開業・スタートアップ応援資金」
大阪府では「開業・スタートアップ応援資金」という名称で融資制度を提供しています。この制度は開業する方を対象にしていますが、シニアの場合は利率が低くなっている点が特徴です。
| 対象 | 事業を開始する方、事業を開始して5年未満の方 |
|---|---|
| 融資限度額 | 3,500万円 |
| 資金使途 | 設備資金、運転資金 |
| 返済期間 | 10年以内 |
| 借入利率 | 1.4%(シニアは1.2%) |
対象者
この融資を利用できるのは、これから事業を開業する方か開業して5年未満の方です。対象者は幅広いですが、女性・若者・シニア・UIJターンの方は通常1.4%の利率が1.2%に優遇されます。
それぞれの条件は次の通りです。
- 女性:事業主が女性
- 若者:事業主が受付時点で35歳未満
- シニア:事業主が受付時点で55歳以上
- UIJターン:受付時の1年以内に東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県)に住んでいた方が、府内で創業をする場合
融資金額と返済期間
融資金額の上限は3,500万で、返済期間は10年が上限です。事業開始前、もしくは事業開始後2ヶ月未満の場合は、開業に必要な1/10の自己資金が必要になる点には注意しましょう。
申請方法
こちらの融資をする場合は、下記の受付窓口で申し込みが可能です。
- 大阪府 商工労働部 中小企業支援室 制度融資グループ
- 大阪信用保証協会
- 各市町村の中小企業金融担当課
- 取扱金融機関
申し込みには事業計画書や申込人概要、納税証明書など多くの書類が必要になるため、下記より確認するようにしましょう。
シニア起業で適切な補助金・助成金を選ぶには
シニアの起業では補助金や助成金をできるだけ活用すべきですが、補助金や助成金には数多くの種類があります。多くの制度の中から適切な制度を選択するためには、事業規模に見合った制度を選択することが重要です。
また適切な制度を選択するためには、各種制度の申請条件や対象となる経費を事前に確認するようにしましょう。事業規模や事業内容にあっていない制度を選択してしまうと、事業計画などにそぐわずかえって負担になってしまうかもしれません。
また制度の内容だけでなく、各種制度の申請プロセスも確認して負担なく利用できる制度を選びましょう。
シニア起業では補助金・助成金を有効活用しよう
シニアの起業する際には、さまざまな補助金や助成金、有利な融資制度が利用できます。創業時は資金繰りが不安定になりがちなため、各種制度を利用することで資金繰りを安定させられるでしょう。
各制度を利用する場合には、事業規模や業種にあったものを選びましょう。また、補助金を受けることが目的になってしまうと、かえって事業の負担になってしまう場合もあるため注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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