• 更新日 : 2025年3月27日

コワーキングスペースで法人登記はできる?手続きや費用、選び方を解説

コワーキングスペースでも、運営会社の許可を受けることで法人登記は可能です。コストをかけずにビジネスをスタートでき、対外的な信用を得やすいというメリットがあります。ビジネスチャンスを広げることもできるでしょう。

本記事では、コワーキングスペースの法人登記をするメリットや向いている人、手続きの流れなどを解説します。

コワーキングスペースでも法人登記は可能

コワーキングスペースを法人登記することに法律上の問題はなく、運営会社が許可をしている場合であれば法人登記は可能です。

ここでは、コワーキングスペースとシェアオフィスやバーチャルオフィスとの違いを解説します。

一般的な賃貸オフィスとの違い

コワーキングスペースとは、カフェスペースのような空間にさまざまな人や企業が共有して利用するオフィスのことです。オープンな空間でワークスペースを複数人で使うという特性があります。一方、賃貸オフィスは企業や個人事業主などが専有して使用する、独立したスペースが一般的です。

そのほかの大きな違いとして、次のような点を挙げられます。

  • 契約形態や期間の違い
    ・コワーキングスペースでは通常、月額制や時間単位での利用が可能であり、契約期間の柔軟性も高い。
    ・賃貸オフィスでは2年以上の長期契約を交わすことが多い。
  • 初期費用やランニングコストの違い
    コワーキングスペースは、家具やWi-Fi、OA機器などがすでに整備されており初期投資を抑えることが可能。
    ・賃貸オフィスでは敷金・礼金、内装工事費などの初期費用で大きな負担が発生しやすい。
  • カスタマイズ性の違い
    ・コワーキングスペースは既存の設備をそのまま利用するため、カスタマイズの幅が狭くなることがある。
    ・賃貸オフィスは、レイアウトやデザインを比較的自由にカスタマイズしやすい。
  • コミュニティ形成の違い
    ・コワーキングスペースは、多種多様な事業者と交流する機会が多い。
    ・賃貸オフィスは自社のスタッフのみで利用するため外部との交流はあまりない。

シェアオフィスとの違い

シェアオフィスとは、一つの場所を複数の会社でシェア(共有)する形態のオフィスのことです。共有スペースである点では、コワーキングスペースと共通していますが、シェアオフィスが作業環境としての快適性や独立性を重視する傾向があるのに対し、コワーキングスペースは利用者間の交流を重視する点が異なります。

コワーキングスペースは、もともと個人事業主やフリーランスなどさまざまな職種の方たちが交流・協業するスペースとして利用されてきたという経緯があります。そのため、座席を自由に選べるフリーアドレス形式が多く、利用者間でコミュニケーションを取りやすいという特性があります。

バーチャルオフィスとの違い

バーチャルオフィスとは、物理的に事業用のスペースを貸し出すわけではなく、事業用の住所などを貸し出すサービスのことです。バーチャルオフィスの所在地でも法人登記も可能であり、自宅で仕事をしていても対外的に住所を公表したくないときにバーチャルオフィスに登録すると何かと便利です。バーチャルオフィスが仮想的な要素が含まれているのに対し、コワーキングスペースは物理的な要素であるという点が異なります。

コワーキングスペースで法人登記をするメリット

コワーキングスペースで法人登記は可能であり、登記することでさまざまなメリットがあります。

コストを抑えて起業できる

コワーキングスペースで法人登記をすれば、賃貸事務所を借りるよりも大幅に初期費用を抑えられる点がメリットです。事務所を賃貸する場合、契約時の費用や毎月の賃料だけでなく、ビジネスに必要な設備をすべて自分で用意する必要があります。

一方、コワーキングスペースであれば、デスクなど事務作業をする設備は揃っているため、利用料金を支払えばすぐに事業を開始することが可能です。コストを削減しながら、起業しやすい点がコワーキングスペースの大きなメリットと言えるでしょう。

信用度の高い住所で登記ができる

コワーキングスペースの多くはビジネスエリアとして人気の高い場所や、都心の一等地とされる場所で運営しています。その住所で法人登記し、名刺やホームページに記載することで、「一等地に本拠地を構える会社」として好印象を与え、企業イメージのアップにつながるでしょう。さらに、取引先から信用を得やすくなり、取引もスムーズに運ぶ可能性があります。

ビジネスの幅が広がる

前述でも触れていますが、コワーキングスペースにはさまざまな職種の方たちが集まるため、多くの方と知り合う機会もあり、人脈を広げることができます。法人登記をしておくことで、フリーランス・個人事業主よりも信用度が上がり、取引に至る可能性も高まるでしょう。ビジネスチャンスを獲得できる機会が増え、仕事の幅がさらに広がることもメリットの一つです。

個人情報やプライバシーを守れる

前述でも触れていますが、自宅を拠点にしてビジネスを始める場合、コワーキングスペースで法人登記をすることで、自宅の住所を公表せずに済むという点がメリットです。自宅の住所で法人登記する場合、プライバシーやセキュリティの点で心配になる方もいらっしゃいますが、コワーキングスペースの住所で登記しておくことで、大切な個人情報を守れます。

郵便物の受け取りが可能な場合も

コワーキングスペースによっては「郵便物の受け取りサービス」を提供しているところもあります。会員向けに個別の郵便ポストが用意されていることで、自社ビルや賃貸オフィスを用意しなくても郵便物を受け取ることが可能です。

さらに、一部のコワーキングスペースでは受付スタッフが郵便物や宅配便を代行で受け取り、保管まで対応するサービスを提供しています。再配達の手間を省くことができるため、不在時でも安心です。郵便物や宅配物を管理するコワーキングスペースであれば、複数拠点を設けていても問題なくビジネスを継続できるでしょう。

コワーキングスペースでの法人登記に向いている事業者

コワーキングスペースの法人登記に向いているのは、次のような方です。

  • 少人数で広いスペースを必要としていない
  • 個人事業主や副業をしている
  • 人脈を作りたい
  • ノマドワーカーとして拠点を変えながら働きたい

それぞれ、詳しくみていきましょう。

少人数で広いスペースを必要としていない

コワーキングスペースは、プログラマーやシステムエンジニアなど、広いスペースを使わずに仕事ができる人に向いています。会議室を利用できるコワーキングスペースを選べば、来客と打ち合わせをするときも便利です。例えば、自宅がにビジネスの拠点があり、打ち合わせや移動時間などに作業スペースを確保したい場合もコワーキングスペースが向いています。

個人事業主や副業をしている

個人事業主や副業でビジネスを行っている方にも、コワーキングスペースの法人登記が向いています。設備や作業スペースも整い、初期費用を抑えながら会社を設立することが可能です。例えば、同業者と知り合うこともあるため、情報交換をすることもできるでしょう。異業種の人とのコミュニケーションにおいては、これまで発想しえなかったビジネスのアイデアが生まれる可能性もあります。

人脈を作りたい

コワーキングスペースはさまざまな業種・職種の人が利用しており、通常ではなかなか出会う機会がない人と出会える可能性があります。そのため、人脈を広げてビジネスチャンスのきっかけをつかみたい人に向いているでしょう。

コワーキングスペースによっては利用者同士がコミュニケーションをとれるよう、セミナーや勉強会、イベントを開催しているところもあります。これらを利用すれば、幅広い人脈を作れるでしょう。

ノマドワーカーとして拠点を変えながら働きたい

遊牧民のように定期的に仕事の場所を変えながら働くノマドワーカーとして働きたい方も、コワーキングスペースでの登記が適しています。場所にとらわれず自由に仕事ができる働き方を実現するには、固定のオフィスを持たず柔軟に移転ができるコワーキングスペースの利用があっているでしょう。登記が可能ならノマドワーカーとして拠点を変えながらも正式な事業所を持つことが可能です。

一般的な賃貸オフィスを転々とする場合、通信環境やその他設備に関する契約締結などに手間がかかってしまいます。その点、コワーキングスペースであれば、通信環境がすでに整っており、手続きの負担が少ないため、契約の煩雑さを心配する必要がありません。

コワーキングスペースで法人登記する手続きや費用

コワーキングスペースで法人登記する手続きは、一般的な会社設立と同じです。

ここでは、法人登記の手続きと費用について解説します。

法人登記の手続き

コワーキングスペースで法人登記をする手順は、次のとおりです。

  • 会社の基本情報を定める
  • 法人の実印を作成する
  • 定款を作成・認証を受ける
  • 出資金(資本金)を払い込む
  • 登記申請書類を作成して法務局に申請する

まず、社名や事業目的など会社の基本情報を決定します。法人登記の申請をするときに必要な法人の代表社印(会社実印)も、この段階で作成しておきましょう。

会社設立では、会社のルールとなる定款の作成が必要です。株式会社の場合は、これに認証を受けなければなりません。

出資金(資本金)を払い込んだあと、登記申請書を法務局に申請したら手続きは完了です。

法人登記の費用

法人登記には登録免許税が必要になり、金額は法人の種類により変わります。

種類ごとの金額は、次のとおりです。

  • 株式会社:「資本金の額×0.7%」(15万円に満たないときは、1件あたり15万円)
  • 合同会社:「資本金の額×0.7%」(6万円に満たないときは、1件あたり6万円)
  • 合名会社・合資会社:1件につき6万円

株式会社を設立する場合は、最低でも15万円かかります。

事業に適したコワーキングスペースの選び方

コワーキングスペースを選ぶ際は、まず自分に必要なものは何かを確認し、次の点を判断基準にしましょう。

  • 立地
  • 利用可能時間
  • 設備の充実度
  • 料金プランは予算に合うか
  • セキュリティ体制は万全か

立地は、駅から近いなどの利便性を考えて選びましょう。また、コワーキングスペースの営業時間は各施設で異なります。利用したい時間に合わせてコワーキングスペースを選ぶことが大切です。

仕事に必要な設備は備わっているかも確認しておきましょう。Wi-Fiが安定して接続できることも重要です。

コワーキングスペースの料金体系は、主に月額制や1時間単位・1日単位のドロップインがあります。施設によって料金体系が異なるため、予算や利用状況に合わせて選びましょう。

なお、法人登記する場合はオプションとして用意されていることが多く、その場合は追加料金が必要になります。事前に確認しておきましょう。

また、セキュリティ体制のチェックも大切です。不審者の侵入を防ぐ物理的セキュリティや、情報漏洩を防止するネットワークセキュリティへの対策が十分に行われているか、忘れずに確認してください。

コワーキングスペースで法人登記する際の注意点

コワーキングスペースで法人登記をする際、次の点に注意が必要です。

  • 賃貸オフィスに比べると信用度が落ちる
  • 銀行口座を開設できない可能性がある
  • 許認可が取得できない可能性が高い

賃貸オフィスに比べると信用度が落ちる

コワーキングスペースは、一般的な賃貸オフィスに比べると信用度が落ちる傾向にあるため注意が必要です。賃貸オフィスだと契約の際に審査が行われていますが、コワーキングスペースだと審査なしに安価で借りられるためです。

また、多数の企業が同一住所を共有していることに対し取引先が不信感を持つ可能性もゼロではありません。特に情報漏洩に気を遣っている企業だと、その傾向は強まるでしょう。ただ、これはあくまで可能性の問題であり、必ず信用面を来するわけではありません。

銀行口座を開設できない可能性がある

「信用度が落ちる」という注意点に関連して、、法人口座を開設しにくい、金融機関から融資を受けにくいという点にも注意が必要です。

詐欺、マネーロンダリングなどの犯罪防止のため厳しく審査基準を設けている銀行の場合、「コワーキングスペースは実態の把握が難しい」と評価され、口座開設などが拒否される可能性があるのです。

事業計画書や財務資料を充実させるなど事業所以外の要素で会社の実態や信頼性を示すことができるのが良しとされていますが。審査の厳しい都市銀行などの利用を考えているのであれば要注意です。

許認可が取得できない可能性が高い

人材派遣業や不動産業など、コワーキングスペースだと許認可が得られない業種があることにも注意しましょう。事務所の独立性や一定以上の面積を有していることなど、法令上、事務所に対し特定の要件を求めているケースもあります。

そのためコワーキングスペースを利用するときは、これから始めようとしている業種の許認可要件をよく確認しておきましょう。許認可が得られないと営業を始められませんので、事前に行政書士や行政の窓口で相談しておくことをおすすめします。

コワーキングスペースの法人登記はさまざまなメリットがある

コワーキングスペースの法人登記は可能であり、コストを抑えて起業できるなどさまざまなメリットがあります。「広いスペースを必要とせず、手軽に起業したい」「人脈を作りたい」といった人に向いています。

ただし、コワーキングスペースは、賃貸オフィスに比べると信用度が落ちることがあり、また、法人登記をすることで、コワーキングスペースの月額料金以外に追加費用がかかる場合があるといった点には注意が必要です。

なにより「コワーキングスペースでの営業が法令上可能か」という点は注視しないといけません。許認可の取得が必要な特定の業種だと、使用する事務所に一定の要件が課されていることもあり、コワーキングスペースが使えないケースがあります。


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