- 作成日 : 2024年10月4日
自営業者が資金調達をすべきケースは?融資制度や補助金など調達方法を解説
資金調達とは個人事業主、フリーランス、会社経営者などの方が事業に必要な資金を融資などで賄うことです。特に開業・起業したばかりの時期は融資の審査が厳しくなるケースも多いので、複数の方法があることを押さえておきましょう。
この記事では、自営業者の方が選択できる資金調達の方法や調達先の選び方、注意点などについて詳しく解説します。
目次
自営業者が資金調達をすべきケース
自営業者が資金調達を検討すべきケースはいくつかあります。こちらでは資金調達が必要とされる代表的なシーンとして、開業時と事業拡大時の2つのパターンについて見ていきましょう。
開業時
新たに事業を開始する際は初期費用や当面の運転資金としてまとまったお金が必要です。店舗や事務所の開設費用、設備投資、広告費用などをカバーするため、開業時に資金調達を検討する必要があります。また、運転資金については数カ月間無収入でも事業が継続できる程度の額を用意しておくことが望ましいでしょう。
事業拡大時
事業が順調に成長している場合、さらなる拡大のために資金が必要となることがあります。新たなスタッフの雇用や設備の拡充、マーケティング活動の強化など、成長戦略に合わせて資金調達をするケースもあり得るでしょう。逆に業績が低迷し当面の運転資金を確保するために資金調達をせざるを得なくなる場合もあります。
自営業者におすすめの資金調達の方法
ここからは自営業者の方に向いている資金調達の方法と、それぞれの特徴について詳しくご紹介します。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫の創業融資は、創業時の初期資金を調達するために多くの事業者が利用している公的融資制度の一つです。融資額は数百万円から数千万円に及ぶ場合もあり、実現性が高いビジネスモデルで開業される方、事業計画が定まっている方ほど有利な条件での借入れが期待できます。
創業融資は、新たに事業を始める方が無担保や無保証での融資が利用可能です。利率に関しても0.65%引き下げといったメリットがあり、特に創業直後の資金繰りに不安がある方におすすめです。
さらに、日本政策金融公庫ではさまざまな支援制度があり、創業者向けに専門的なアドバイスやサポートも提供しているので、資金調達だけでなく事業運営全般の支援も受けられます。
銀行や信用金庫などからの融資
銀行や信用金庫では自営業者向けの融資商品を多く提供しています。融資額や金利は事業の信用力や実績、その金融機関の決まりによって異なります。一方で審査があるため、確実に資金が調達できるとは限らない点にも注意しましょう。
とりわけ信用金庫では地域密着型のサポートが期待できるため、地域のネットワークを活用した経営支援も受けやすいのが特徴です。地域の特性に応じた柔軟な融資条件が提示されることあるので、地元の中小企業を積極的に支援する姿勢が強い傾向となっています。特に新規事業立ち上げの際には銀行や信用金庫の融資を検討することで、事業の安定化を図ることが可能です。
補助金や助成金などの活用
補助金や助成金は返済の必要がないため、資金調達後のリスクを抑えることができます。国や自治体が提供する補助金は特定の業種や事業内容に応じたものが多く、申請の際には詳細な事業計画書が必要です。
特に環境保護や地域振興、IT化推進などの分野においては、高額な補助金が支給されることがあります。ただし、こうした分野では競争率も高く、申請のための条件を満たすためには、入念な事前準備とタイムリーな対応力が求められます。
助成金は事業の拡大や新規事業への挑戦を支援するものであり、事業の成長に伴う資金不足を補う手段として非常に有効です。
クラウドファンディングの活用
クラウドファンディングはインターネット上で出資金を集める方法で、特に独自性の高いアイデアや社会的意義のあるプロジェクトに向いています。クラウドファンディングのプラットフォームを通じて事業内容やビジョンを公開し、共感した人々から支援を受ける形式です。
クラウドファンディングは資金調達だけでなく、事業のPRや顧客との関係構築にも役立ちます。事業の初期段階での市場テストの場としても機能するため、事業の方向性を検討する際の参考にもなるでしょう。
クラウドファンディングによる資金調達に成功するためには、魅力的なプロジェクト説明とリターン設定が重要です。このような取り組みによって、支援者との信頼関係を築くことができます。
ビジネスローンの活用
ビジネスローンは、法人や個人事業主が事業資金を借入れるための手段で、銀行やノンバンク(消費者金融や信販会社など)が提供しています。このローンは、開業資金や運転資金、設備資金などに利用されることが一般的です。
ビジネスローンの主な特徴は、比較的迅速な審査と融資スピードです。多くのビジネスローンは、最短即日から数日以内に融資が可能であり、急な資金需要に対応できます。また、無担保・無保証で利用できる商品が多く、審査のハードルが低い点も魅力です。
しかし、ビジネスローンは金利が高めに設定されていることが多く、返済計画をしっかりと立てることが重要です。金利は通常、1.8%から18%程度であり、返済が長期化すると利息負担が増える可能性があります。そのため、資金の用途や返済能力を十分に考慮し、計画的に利用することが求められるでしょう。
親族・知人などからの借入れ
親族や知人からの借入れは金利や返済条件を柔軟に設定できる場合が多く、資金調達の負担を格段に軽減できる手段です。この方法の利点は信頼関係に基づいているため、金融機関からの融資に比べて手続きが必要なく審査も不要である点が大きなメリットといえます。また、親族や知人からの借入れは信用情報に影響を与えないため、他の融資との併用も可能です。
しかし、金銭の貸し借りはトラブルのもとになることもあるため、借入額や返済計画については事前に明確に取り決め、借用書を作成されることをおすすめします。これまで築いてきた関係を壊さないためにも、事前準備をしっかりと行ったうえで話し合うことでお互いの理解を深められるよう努めましょう。
自身に適した資金調達方法の選び方
自営業者が資金調達方法を選ぶ際には以下のようなポイントについて比較検討する必要があります。
金利や返済条件
低金利で返済期間が長いほど返済負担が軽くなるため、事業のキャッシュフローに影響を与えにくくなります。
資金調達のスピード
急な資金需要に対応する場合、素早く資金が調達できるカードローンや親族からの借入が適しています。
資金の用途や金額
高額な資金が必要な場合や長期的な資金需要がある場合は、銀行融資や日本政策金融公庫の創業融資が適しています。
リスク分散
複数の調達方法を組み合わせることで、資金繰りの安定を図ることが可能です。自身の事業計画に最も適した方法を選ぶことで、長期的な経営の安定を確保することにつながります。
自営業者が資金調達をする際の注意点
資金調達を成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。
返済計画をしっかりと立てる
資金調達を行う際には返済計画を十分に考慮することが不可欠です。返済の遅延や未払いは事業の信用に悪影響を及ぼすだけでなく、最悪の場合は経営破綻を招く恐れがあります。
借入金額だけでなく、月々の返済額が事業の収益に対して適切であるかを検討し、無理のない返済計画を立てましょう。
事業計画をしっかりと作成する
金融機関や投資家から資金を調達する際には、明確で現実的な事業計画が求められます。事業の目標や成長戦略、収支計画を具体的に示すことで、資金提供者に信頼感を与えることができるでしょう。
また、事業計画は自営業者自ら事業の進捗を確認し、目標に向けて適切な対策を講じるための重要なツールとなります。
リスクを分散する
資金調達方法は一つに絞らず複数の手段を組み合わせることで、リスクを分散させることが可能です。例えば、銀行融資とクラウドファンディングを組み合わせるといった方法があります。融資で確実に資金を確保しつつ、クラウドファンディングで出資を集めることで、さらなる投資や事業拡大が望めるでしょう。
また、複数の資金調達手段を利用することで金利負担を軽減し、資金繰りを安定させる効果も期待できます。
自営業者が資金繰りに悩んだ際の相談先
資金繰りに悩んだ際にはプロに相談することで適切な対策を取ることができるでしょう。悩んだ際に相談ができる窓口は以下のとおりです。
金融機関
銀行や信用金庫などの金融機関は資金繰りの相談に応じてくれる頼れるパートナーです。融資の条件緩和や返済スケジュールの見直し、追加融資の提案など、経済的な支援策を提示してくれることがあるでしょう。
また、専任の担当者が事業の状況に応じたアドバイスを提供してくれるので、資金繰りの改善に役立ちます。
商工会議所
商工会議所は、中小企業や自営業者向けに、経営相談や資金調達に関する支援を行っています。資金繰りの改善策や補助金・助成金の情報提供、専門家による無料相談など、幅広いサポートが受けられるのが特徴です。
また、商工会議所は地域に密着した支援を行っており、地域特有の経済状況や商流にも詳しい、的確なアドバイスが期待できます。
自治体の窓口
自治体の経済・産業部門や商工課でも、資金繰りに関する相談を受け付けています。地域の中小企業支援策や制度融資に関する情報を提供してくれるほか、経営改善に向けたアドバイスやセミナーの開催も行っています。また、自治体は国の支援策とも連携しているため、幅広い選択肢を提供してもらえるでしょう。
自分に合った方法で計画的に資金調達しよう
自営業者の方はさまざまな方法で資金調達ができます。銀行や信用金庫といった金融機関、日本政策金融公庫などの公的機関を利用して融資を受ける方法はもちろん、補助金制度やクラウドファンディングの返済負担のない手段を選ぶことも可能です。
さらには親族からお金を借りる、法人向けのカードローンを利用するなど、手軽にお金が借りられる方法もありますが、デメリットやリスクもあります。状況に応じてさまざまな方法を検討してみて、必要に応じて複数の手段を組み合わせてみましょう。
資金繰りに悩んだ場合は自分だけで抱え込まず各種機関や行政窓口で相談する、コンサルタントやプランナーなど専門的な知識が豊富なプロに助言を仰ぐのもおすすめです。ときには人の力も借り、資金をうまく調達するのも、自営業者や経営者に必要な素質の一つといえます。
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