- 更新日 : 2025年11月7日
食堂の経営は難しい?飲食で必要な資格や開業・経営の知識を解説
定食屋や食堂などの経営は難しいと考える人も多いです。しかし、正しい経営の知識を持ち、飲食店経営で成功している経営者が多いのも事実です。ここでは、食堂など飲食店の開業・経営に向いている人や必要な資格、失敗しないための経営の知識などについて詳しく解説します。
目次
食堂・定食屋の経営は難しいと言われる理由
「定食屋や食堂などの経営は難しそう」と考える人も多いです。なぜ食堂の経営は難しいと言われるのでしょうか。その理由について見ていきましょう。
ライバルや競合店が多い
食堂・定食屋の経営が難しいと言われる理由のひとつに、ライバルや競合店が多いことが挙げられます。ライバルや競合店が多いことでお客の奪い合いが生じ、見込んでいた収入が得られなくなります。
食堂・定食屋を経営する場合は、必ず事前に開店予定場所の周辺にライバル店や競合店がないか確認し、ライバル店や競合店が多い場合は、開店場所を考え直す必要があります。また、ライバル店や競合店にはない、独自のメニューやサービスを導入して他店と差別化を図ることも、生き残るためには重要です。
人材の確保が難しい
今は、どの業種でも人材の確保が難しくなっています。もちろん、飲食店も人材の確保が難しく、お店が回らなくなって失敗するケースもあります。
人材の確保が難しい理由としては、そもそも労働人口が減少していることや、人件費の高騰があります。多くの飲食店では、アルバイトやパートの時給などを上げることができず、人材がほかの業種に逃げてしまいます。
人材をうまく確保するためには、年齢や国籍など採用する層を広げたり、SNSを使うなどして求人や広告の方法を改めたりすることが重要です。また、人材の確保が難しい場合は、人材が見つかるまでの間は家族経営で乗り切ることも考えましょう。
在庫ロスが発生するリスク
食堂・定食屋を経営していると、売れ残りや賞味期限切れなどにより、在庫ロスが発生するリスクがあります。在庫ロスの原因としては、材料の仕入れをしすぎた、在庫の管理ができていなかったというものがあります。
在庫ロスをなくすためには、原価計算を行ったり、在庫管理用や在庫管理用のソフトを導入したりして、リアルタイムで在庫を正しく確認する方法を確立する必要があります。
食堂・定食屋オーナーの年収の目安は?
食堂の経営が軌道に乗った場合、オーナーの年収は一般的に300万円~600万円程度が目安とされています。これは個人経営の1店舗から得られる利益(所得)を想定したものです。
もちろん、この金額は売上から食材費、人件費、家賃などの経費をすべて差し引いて、最終的に手元に残る利益額です。そのため、立地や店舗の規模、原価管理や人員配置といった経営手腕によって大きく変動します。
繁盛店となり、高い利益率を維持できれば年収1,000万円以上を目指すことも十分に可能です。まずは安定した経営基盤を築き、着実に利益を生み出す構造を作ることが最初の目標となります。
食堂・定食屋の開業に必要な資金
15坪程度の小規模な食堂を開業する場合、必要な資金は総額で800万円~1,500万円程度が目安です。この開業資金は、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2つで構成されます。
初期費用(イニシャルコスト):目安600万円~1,200万円
初期費用は、店舗という「ハコ」を用意し、営業できる状態にするために一度だけかかる費用です。特に、厨房設備が残っている「居抜き物件」を選ぶか、何もない「スケルトン物件」を選ぶかで大きく変動します。
- 物件取得費(100万~200万円)
保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃など、物件を契約するために必要な費用です。 - 内外装工事費(300万~600万円)
お店のコンセプトに合わせたデザインの設計・施工費用です。電気・ガス・水道・空調などの工事も含まれます。居抜き物件をうまく活用すれば、この費用を大幅に圧縮できます。 - 厨房設備費(150万~300万円)
コンロ、シンク、冷蔵・冷凍庫、フライヤー、食洗機、炊飯器など、調理に必要な設備一式の費用です。中古品やリースを検討することもコスト削減に繋がります。 - その他備品費(50万~100万円)
食器や調理器具、テーブル、椅子、レジ(POSシステム)、ユニフォーム、看板など、営業に必要な備品を揃える費用です。
運転資金(ランニングコスト):目安200万円~300万円
運転資金は、開業直後の売上が安定しない時期を乗り越えるための、いわば「経営の生命線」です。赤字でも経営を続けられるよう、必ず用意しておきましょう。
最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の経費をまかなえる金額が理想です。
これらの資金計画は、事業計画書を作成する段階で具体的に詰めていきます。自己資金で不足する分は、日本政策金融公庫の創業融資などを活用するのが一般的です。
魅力的な食堂・定食屋経営の事例
食堂・定食屋の経営には、リスクもありますが、リスクを克服して成功しているお店は多いです。ここでは、魅力的な食堂・定食屋経営の事例をご紹介します。
1日1メニューの定食屋「未来食堂」
未来食堂は、東京都千代田区で経営している食堂です。ライバル店との差別化を図るためにさまざまな試みを行っており、その1つが「1日1メニュー」です。
未来食堂のメニューは1日に1種類のみです。日替わりで1つの料理を提供しています。さらに、週末になると、次の週に出すメニューをお客様と相談しながら決めています。お客様と一体となってメニューを考えることで、家族的な雰囲気を作ることができます。
また、気分や体調に合わせて献立を変えることができる「あつらえ」や、50分のお手伝いで一食もらえる「ただめし」と「まかない」など独自のシステムを導入し、ライバル店との差別化を図っています。
参考:未来食堂
ファミレス&ダイニング 「里山 transit」
ファミレス&ダイニング 「里山 transit」は、千葉県佐倉市にある飲食店です。お店の大きな特徴のひとつが、地元の食材を使った料理を提供していることです。佐倉や地域の農家から野菜などを仕入れ、佐倉きのこ園しいたけステーキなど、地元を前面に出した名前の料理を提供しています。
地域の魅力を発信することで、地元の住民はもちろんのこと、佐倉市に興味がある人、観光に来た人などにもアピールすることができ、ライバル店との差別化も図っています。
参考:里山 transit
食堂・定食屋を経営する利点・メリットは?
次に、食堂・定食屋を経営する利点やメリットを見ていきましょう。
お客様に直接お礼を言ってもらえる
食堂・定食屋を経営するメリットのひとつに、お客様に直接お礼を言ってもらえることがあります。料理を提供したお客様から「おいしかったよ」や「ありがとう」など、直接お礼を言われることで、経営者や従業員のモチベーションアップにつながります。
「食」のニーズはなくならない
飲食店の経営で大きいのが、需要がなくならないということです。食べることは人が生きていくために必要不可欠であるため、「食」のニーズはなくなることはありません。固定客がつく人気店になれば、安定した売上や利益を得ることができます。
子供やファミリー、幅広い層で人気がある
飲食店にはさまざまなジャンルがありますが、食堂・定食屋は子供やファミリーなど幅広い層に人気があります。休日などに家族で食事に来たり、平日に会社員がランチに来たりと、さまざまなニーズがあるため、顧客を獲得しやすくなります。
事業に関する費用は経費にできる
食堂・定食屋を個人経営する際に気になるのが、税金のことです。売上が多くなると、納める税額も多くなります。 一方で、専門誌の購入や経営セミナーの参加費など、事業に関する費用はすべて経費にすることができるので、節税も可能です。
食堂・定食屋を経営するために必要な知識
食堂・定食屋の経営を成功させるためには、身に付けておいたほうがよい知識がいくつかあります。代表的なものとして、次の3点があります。
店舗のコンセプトとターゲット
食堂・定食屋の経営には、店舗のコンセプトとターゲットに関する知識が必要です。
コンセプトとは構想のことで、ベースになる考え方とも言えます。例えば店主と顧客の対面式にするのか、大きなテーブルを置くのか、どのような料理を出すのかなど、店舗を構成するさまざまな要素の集合です。
コンセプトはターゲットに合ったものでなければなりません。ターゲットが一人客なのか家族層なのかで、店の構造や提供する料理などが変わってきます。食堂・定食屋の経営を成功させるためには、店舗のコンセプトとターゲットを明確にすることが重要です。
利益率やコストを把握する力
食堂・定食屋の経営は、ただ豪華な料理を提供すればよいというものではありません。経営を成功させるためには、利益を上げなければなりません。
利益を上げるうえで重要となるのが、利益率やコストを把握する力です。儲けるためにはどれだけの利益が必要なのか、コストはどれだけにすればよいのか、どのコストが削減できるのかなど、利益率やコストを具体的に把握する力をつけることで、飲食店を成功・成長させるための方向性や改善策を見つけることができます。
競合店の分析
飲食店を成功させるためには、競合店に勝たなければいけません。そのため、競合店の分析は必要不可欠です。競合店がどのような独自性を持っているのか、サービスや料理のメニューはどのようになっているのかなどを分析し、自店舗に足りない部分があれば、改善する必要があります。
競合店を分析し、自店舗のサービスなどを改善していくことで、ライバル店との競争に勝ち残っていくことができます。

食堂・定食屋の経営に必要な資格
食堂・定食屋を経営しようと思っても、すぐにできるものではありません。なぜなら、食堂・定食屋を経営するには、必要な資格を取得しなければならないからです。必要な資格には、次のようなものがあります。
食品衛生責任者
飲食店の経営には、食品衛生責任者の設置が必要です。食品衛生責任者とは、料理などの食品の作業環境において、衛生面を管理する責任者のことです。経営者の指示に従ったり、意見を述べたりして、衛生管理を行います。
食品衛生責任者になるためには、次の要件のいずれかを満たす必要があります。
- 食品衛生監視員や食品衛生管理者の資格要件を満たす者
- 調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士と畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律に規定する食鳥処理衛生管理者等
- 都道府県知事等が行う講習会又は都道府県知事等が適正と認める講習会(食品衛生責任者養成講習会)を受講した者
参考: 食品衛生責任者について|大阪府
防火管理者
防火管理者とは、多くの人が出入りする建物などで、火災による被害が出ないように管理する人のことです。飲食店の経営にも原則、防火管理者の設置は必要です(客席数などに応じて、対象外のケースもあります。)。防火管理者の資格は、客席数や延べ床面積に応じて「甲種」と「乙種」とに区分されます。
防火管理者になるためには、次の要件のいずれかを満たす必要があります。
防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること
防火管理上必要な「知識・技能」を有していること
調理師免許はあると尚よい
調理師免許とは、調理師法により、食に関する専門知識や調理技術を有することが認められる資格です。資格がある人を調理師と呼びます。
調理師免許は、飲食店の経営に必ず必要ということはありません。しかし、食の安全性を確保し、おいしい料理を提供するためにも、調理師免許はあったほうがよいでしょう。
【ジャンル別】飲食店開業向けの事業計画書テンプレート(無料)

こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
必要な知識や資格を身に付け食堂・定食屋経営を成功させよう!
食堂・定食屋経営を成功に導くには、料理やサービスに独自性を持たせたり、ライバル店との差別化を図ったりする必要があります。
そのためには、「店舗のコンセプトとターゲット」「利益率やコストを把握する力」といった経営に必要な知識や、「食品衛生責任者」「防火管理者」などの経営に必要な資格を取得しなければいけません。必要な知識や資格をしっかりと身に付け、食堂・定食屋経営を成功させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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