• 更新日 : 2025年8月4日

トランクルーム経営の基礎知識|儲からないって本当?初期費用や収益、失敗しないためのポイントも解説

土地活用方法のひとつが、コンテナを収納スペースとして貸し出し、賃料を得るトランクルーム経営です。オーナー自身でも運営できますが、倉庫業者や不動産賃貸業者に貸し出し、運営を任せる方法もあります。今回は、トランクルーム経営の基礎知識や初期費用、失敗しないためのポイントなどを解説します。土地活用を検討している方は必見です。

トランクルーム経営とは

トランクルーム経営とは、コンテナハウスという建物を収納スペースとして貸し出して、賃料を得る事業のことです。土地活用のひとつであり、倉庫事業として運営します。

トランクルームは屋外型と屋内型の2種類

トランクルーム経営を始めるうえでは、まずは2つのタイプについて理解しましょう。

トランクルームには、屋外型と屋内型の2つがあります。エリアの特徴やニーズなどに合わせて、タイプを選びましょう。

タイプ特徴メリットデメリット
屋外型更地にコンテナを設置するタイプ。郊外でよく見られる。初期費用があまりかからない。温度や湿度調整が難しい。

エリアによっては、コンテナを設置できない。

屋内型建物内に各室に倉庫を割り当てるタイプ。都心や市の中心部でよく見られる。温度や湿度調整がしやすい。

さまざまなニーズに応えやすい。

初期費用が高くなることが多い。

トランクルームとレンタル収納の違い

トランクルームとレンタル収納の大きな違いは、提供するサービス形態の違いです。

トランクルームは、場所を貸すのではなく荷物を預かるサービスです。トランクルームの管理者は利用者から荷物を預かり、責任を持って保管することで対価を得ます。利用者との契約は寄託契約となり、基本的には倉庫業者などがトランクルームの経営を行っています。管理側が利用者に荷物を引き渡す際などには、立ち合いをすることが多いです。

一方、レンタル収納は荷物の預かりではなく、保管などをする場所(スペース)を貸すサービスです。利用者と不動産賃貸契約を結ぶのが一般的で、基本的には不動産業者などがレンタル収納の経営を行っています。利用者は保管場所に自由に出入りができ、管理側の立ち合いは不要です。

トランクルーム経営は儲からないって本当?

以下では、トランクルームの市場規模や利回りについて解説します。

トランクルームの市場規模

トランクルームの市場規模は拡大しており、今後の成長も期待されています。

株式会社キュラーズが実施した「トランクルーム市場(屋内・屋外含む)に関する市場規模と成長予測に関する2025年度調査」によると、2008年に272億円だったトランクルームの市場規模は、2024年に848億円まで拡大しました。2030年には1,271億円に達する見込みです。

また、全国のトランクルーム店舗数は14,860店舗まで拡大し、ファミリーレストランの店舗数を超えたとのことです。トランクルームがいかに日常的な存在になっているのかが分かります。

このように、トランクルーム経営は高い将来性が見込まれるでしょう。

参考:トランクルーム市場、16年連続成長で850億円規模に|キュラーズトランクルーム

トランクルーム経営の利回りと収益性

トランクルーム経営の利回りは、一般的に15〜25%程度とされています。マンションやアパート経営の利回りが5〜10%程度であることを考えると、比較的利回りが高いのが特徴です。

トランクルーム経営は、マンションやアパート経営と比べて初期費用やランニングコストが安く済む傾向にあります。

しかし、1室あたりでは、単価がそこまで高くないためマンションやアパート経営と比較すると、大幅に稼ぐことは難しいです。

トランクルーム経営に成功するためには、いかに高い利回りを実現できるかがポイントです。

トランクルームの経営方式

トランクルームの経営方式には、以下の3つがあります。

  •  事業用定期借地方式(土地貸し)
  • リースバック方式(一括借り上げ)
  • 業務委託方式

それぞれ、運営・管理主体や収入を得る仕組みなどが異なります。管理の手間や収益を左右するため、3つの経営方式を理解し、ニーズに合うものを選ぶことが大切です。

ここでは、それぞれの経営方式のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

事業用定期借地方式(土地貸し)

事業用定期借地方式(土地貸し)は、所有する土地を一定期間トランクルーム事業者に貸し出し、地代を得る方法です。

土地を貸し出すのみで、実際の経営は行いません。運営の手間がかからないのはメリットです。一方、収入として入るのは地代のみであり、賃料収入を得られないのはデメリットと言えます。

空いている土地を活用したいが、運営に時間や労力をかけたくない方におすすめの方式です。

リースバック方式(一括借り上げ)

リースバック方式は、所有する土地にコンテナハウスを建設し、完成したトランクルームを専門企業に借り上げてもらう方法です。一括借り上げ方式とも呼ばれます。

土地やコンテナの名義はオーナーになりますが、運営の主体は専門企業です。そのため、運営の手間はかかりません。また、トランクルームが空室であったとしても、運営を行う専門企業から安定的な収入を得られるというメリットもあります。

ただし、1室あたりの手数料が割高になりやすく、賃料収入が減ってしまう点には注意が必要です。

業務委託方式

業務委託方式は、管理や集客といった業務を専門業者に依頼する方式です。コンテナハウスの所有者と経営主体はオーナーであり、実際の業務のすべて、あるいは一部を業者に委託します。

業務の負担を減らしながらトランクルーム経営を行えるのがメリットです。また、経営自体はオーナーが行うため、経営に挑戦したい方にも適しています。

しかし、オーナーが空室リスクを負うため、経営に失敗してしまうリスクがあります。さらに、業者に対してある程度の手数料を支払わなければならず、売上がそのままオーナーに入るわけではないのが難点です。

トランクルーム経営を始めるまでの流れ・手続き

トランクルーム経営を始める際の流れは以下のとおりです。

  1. トランクルーム事業者の選定
  2. マーケットや現地調査
  3. 事業者からのプラン提案・契約
  4. 建築確認申請手続き
  5. 着工・施工
  6. 倉庫業登録
  7. 竣工・運用開始

まずは、事業者に相談し、どの経営方式を選ぶかを決めましょう。複数の事業者に相談し、予算やニーズに合ったプランを提案してくれる事業者を選定することが大切です。

マーケットや現地調査は事業者が行ってくれます。調査後、事業者からプランが提案され、プランを決めたら施工会社と請負工事契約を締結しましょう。

また、着工前には、建築確認申請手続きを行う必要があります。建築確認申請手続きには2ヶ月程度かかる場合があるため、早めに動き出すことが大切です。

その後、2〜3週間程度で工事が完了し、運用を始められます。

トランクルーム経営の初期費用

トランクルーム経営でかかる初期費用の目安は、トータル約200〜800万円です。

トランクの広さや建設数によって、初期費用は大きく異なります。

内訳とそれぞれの費用目安は、以下のとおりです。

  • トランクルーム本体価格:1台あたり約60〜100万円
  • トランクルーム設置費用:約80〜100万円
  • 整地費用(屋外型の場合):1坪あたり約10,000〜14,000円
  • 水道・電気などのインフラ工事費用:約30万円
  • 防犯カメラ設置費用:約30万円
  • 看板設置費用:約15〜20万円

トランクルーム本体の価格はあまり高くありません。しかし、トランクルームを設置する際の基礎工事や設置工事費用、搬送費用などが必要であるため、工事費用がかかる点に注意しましょう。なお、設置数が多ければ多いほど、工事費用は割安になります。

トランクルーム経営にかかる税金

次に、トランクルーム経営にかかる税金について見ていきましょう。

固定資産税

トランクルーム経営にかかる税金として、まず挙げられるのが固定資産税です。固定資産税とは、所有している土地や家屋に対してかかる税金のことです。トランクルーム経営の場合、自分の土地の上で経営を行っているため、土地に対して固定資産税が課されます。

また、所有しているコンテナについても注意が必要です。コンテナの中でも、コンテナハウスのように建築基準法の規定に適合しないと設置できないものは、建築物とみなされます。建築物に対しては家屋として固定資産税の対象となるため、固定資産税の納付が必要です。

償却資産税

償却資産税とは、土地や家屋以外の固定資産(減価償却資産)に対してかかる税金のことです。コンテナ経営の場合、事業で使っている不動産以外の減価償却資産があれば、償却資産税がかかります。例えば、コンテナ(コンテナハウスのように建築物とみなされないもの)も減価償却資産に該当するので、償却資産税の対象です。

償却資産を所有している場合は、償却資産が所在している市区町村の課税事務所に、償却資産の申告と納税が必要です。

トランクルーム経営で失敗を避けるためのポイント

トランクルーム経営で失敗しないためには、以下のポイントに留意しましょう。

  • 市場調査・競合対策を怠らない
  • 税負担を見越した収支シミュレーションを行う
  • メンテナンスやセキュリティ対策・災害対策をしっかり行う
  • 建築確認申請が通るようなトランクルームを準備する

比較的利回りは高いトランクルーム経営ですが、需要の増加に伴い競合も増えており、競合に負けないよう工夫が必要です。

ここでは、トランクルーム経営で心がけたい4つのポイントを紹介します。

市場調査・競合対策を怠らない

トランクルーム経営で売上を上げるには、いかに空室を減らせるかが重要であり、集客に成功する必要があります。そのためには、徹底した市場調査や競合対策が欠かせません。

トランクルームの利用者としては、以下のようなものが考えられます。

  • 法人や団体
  • 荷物が多い家族層
  • 趣味用のスペースが欲しい方
  • 引越しや転勤のために荷物を一時的に預けたい方

オフィス街の近くであれば法人や団体の利用、住宅街の近くであれば家族層の利用など、エリアによってターゲットは異なります。まずはターゲットを正しく把握し、トランクルーム周辺の環境や需要を調査しましょう。ターゲットの需要が理解できれば、ニーズに合った設備やプランを導入できます。

また、近隣のトランクルームについて、価格や設備などを調査し、競合対策を行うことも重要です。競合調査を通して、ターゲットを具体的に理解できることもあります。

税負担を見越した収支シミュレーションを行う

トランクルーム経営に成功するためには、徹底した収支シミュレーションが必要です。

その際は、固定資産税の負担について考えなければなりません。税負担を考慮せずに収支シミュレーションを行うと、資金繰りに失敗してしまうリスクがあります。

空き家を取り壊してトランクルームを建設する場合、「住宅用地の軽減措置」が適用されなくなり、土地の固定資産税が上がります。なお、コンテナ自体にも固定資産税がかかるため、注意しましょう。

メンテナンスやセキュリティ対策・災害対策をしっかり行う

トランクルーム経営では、利用者から荷物を預かる以上、セキュリティ対策や災害対策を徹底する必要があります。

トランクルーム経営では、オーナーが倉庫事業者として登録し、寄託契約を結んで利用者に倉庫を貸します。そのため、オーナーが物品の保管や保全に責任を持たなければなりません。

盗難や破損、災害発生時のコンテナ損壊リスクなどに備えて、メンテナンスやセキュリティ対策、災害対策を行いましょう。

特にセキュリティ対策が十分でないと、利用者から敬遠されてしまい空室は増える可能性が高いでしょう。

建築確認申請が通るようなトランクルームを準備する

トランクルーム経営では、中古のトランクルームを購入するという方法もあります。その際は、建築確認申請が通るトランクルームを購入しましょう。

よくある失敗例として、海洋輸送用のコンテナを中古で購入してトランクルーム経営を始めようとしてしまう、というケースが挙げられます。以前は、規制が緩く、海洋輸送用コンテナでもトランクルームを経営できました。しかし、現在では建築確認申請が通るコンテナでないと、トランクルーム経営が認められません。

建築確認申請が通るコンテナを新しく建設するか、申請が通ることを確認したうえで中古のコンテナを購入する必要があります。

トランクルーム経営で土地を有効活用しよう

トランクルーム経営は、比較的利回りが高く、将来性もあるため、有効な土地活用方法のひとつです。屋外型と屋内型のどちらにするか、経営方式はどうするかを決めたうえで、トランクルーム経営を始めましょう。運営の手間を省きたい場合は、倉庫業者や不動産賃貸業者に貸し出したり、業務の一部を業者に委託したりするのがおすすめです。

トランクルーム経営に成功するためには、ターゲットのニーズに合ったプランを提供し、競合と差別化することが重要です。専門業者のアドバイスも受けながら、着実に準備を進めましょう。


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