- 更新日 : 2024年6月19日
創業計画書とは?記入例と書き方をわかりやすく解説【テンプレート・記入例つき】
創業にあたって融資を受ける場合には創業計画書を提出する必要があります。創業計画書には、創業の動機や経営者の略歴、取扱商品・サービス、取引先、借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通しなどを漏れなく記載しなくてはなりません。
そこでこの記事では、創業計画書の書き方と融資を受けるためのポイントを、記入例をもとに解説します。創業計画書の書き方に迷っている方はぜひ参考にしてください。
※創業計画書のテンプレートをお探しで当記事を訪れられた方は、こちらもご活用ください
創業にあたって融資を受けない場合、あるいは公庫や制度融資以外の融資を受ける場合は、上記のテンプレートをご活用ください。
目次
創業計画書とは?
創業計画書とは、創業時に金融機関から融資を受けるために作成する計画にかかわる資料のことです。具体的には、創業の動機・経営者の略歴から、必要な資金と調達方法・事業の見通しなど会社の概略や収支・損益計画などをまとめたものです。融資のための参考資料となるため、事実に基づいた根拠ある計画を作成する必要があります。
また、創業計画書は、主に金融機関に提出するものですが、自社の強み・弱みや、競合・市場などについて改めて認識することができるため、自社にとっても価値のある資料にもなります。
創業計画書の書き方は?
創業計画書の書き方と各項目のポイントを解説します。
創業の動機
この項目は創業計画書の冒頭という、もっとも目につく場所にあります。創業に対する熱い想いや真剣さをしっかりと伝えましょう。金融機関の融資担当者の多くは、創業に対する想いの強さや真剣さが、事業を成功させようとする意思の強さに関係すると考えます。
書くにあたってまず重要なのは、どこかから借りてきた表現ではなく、自分自身の言葉で書くことです。どこにでもあるようなありきたりな表現では、創業に対する熱意を疑われかねません。また、どのような準備をしてきたか、利益以外に実現したいことは何か、といったことについても記載すれば説得力が増すでしょう。
創業計画書本紙の記入欄が小さければ、別紙にまとめるのも良いでしょう。ただし、書きすぎるとかえって伝わりにくくなるため、A4用紙1枚くらいに収めましょう。
経営者の略歴等
この項目では、今回創業する事業と関連する経験があるのか、経営者として必要な知識・経験はあるのか、事業に関連する特許や資格などを持っているかが問われています。事業に関連する経験や知識・資格・特許があれば、事業成功の確率は高まると見込まれるからです。
関連する経験・知識・資格・特許のすべてを具体的に書きましょう。関連する経験などが少ない場合は、少しでも重なるものを書くようにします。たとえば、創業する事業の分野自体は経験がなくても、法人相手の事業であれば、勤務時代の法人営業に関する経験は記載すると良いでしょう。
ただし、内容については嘘のないように心がけましょう。融資担当者は帝国データバンクや東京商工リサーチなどを通じて信用情報や社内情報を調査します。調査結果と食い違う内容が記載されていれば、計画書全体に対する信憑性を大きく損なってしまいます。
取扱商品・サービス
この項目は、取り扱う商品・サービスがどれだけ具体的に検討されているかが問われます。販売ターゲットや立地条件に合わせた内容になっていることがしっかり説明されるのとともに、セールスポイント(競合との違い)がどれだけ説得力を持って書かれるかが重要です。競合との差別化は事業の将来を占ううえで大きな判断材料になると、多くの融資担当者は考えています。
セールスポイントは、抽象的な表現は避け、読んだ人が具体的にイメージできる表現を心がけましょう。また、集客の手段や顧客にリピートしてもらうための施策もしっかりと記述します。融資担当者は事業の専門家ではありませんので、専門用語を多用しないことについても留意しましょう。
取引先・取引関係等
販売先や仕入先がどれだけ具体的になっているかを問う項目です。販売先、仕入先が具体的であれば、事業計画書の数値の裏付けになり、事業計画の数値の信憑性が増します。
すでに決まっていれば、「創業へ向けて十分な準備をしている」と評価されるため、創業計画書の記入前に、決められるものはできる限り決めてしまいましょう。
販売先が法人ではなく一般消費者の場合には、ターゲットとする顧客の年齢や性別、趣味・嗜好・職業・年収、家族構成などをできる限り明確に記載します。もしまだ明確になっていないのなら、この機会に明確にしておくことをおすすめします。
また、この項の「取引先」と、上の「取扱商品・サービス」の「セールスポイント」や「販売ターゲット・販売戦略」「競合・市場など企業を取り巻く環境」は、内容が互いに関連してきます。しっかりと整合性があるようにしておきましょう。
従業員
従業員を雇用する予定であれば、その人数と内訳を記載します。正社員・パート・アルバイトにかかわらず記載しましょう。従業員の有無は、ビジネスモデルによってはその成否や、人件費の支払いによる事業の資金繰りに影響するため、しっかりとした人員計画があるかをチェックされます。
借入の状況
創業者本人の、事業資金や生活資金の借入状況を問う項目です。記入内容に基づいて個人の固定支出が算出され、固定支出が少ないほど返済が滞るリスクが少ないと判断されます。
借入は、事業資金のみならず、住宅ローンや自動車ローン、カードローンなどがすべて含まれます。それぞれの借入残高と年間返済額を記入しましょう。融資担当者は信用情報を照会しますので、記入内容と照会内容が食い違う場合には、担当者の信用を失いかねません。漏れなく間違いのないよう、しっかりと記入することが大切です。
必要な資金と調達方法
資金計画について記載するこの項目は、創業計画書の中でも最重要と言えるものです。特に、自己資金の有無と金額、調達資金全体における割合は、融資の判断に大きな影響を及ぼします。
自己資金は多いに越したことがありません。一般的に自己資金が多いほど経営が安定し、借入金が多ければ、業績が悪くなると返済に追われ、債務不履行のリスクがあるからです。自己資金の額は、事業を成功させたいという創業者の強い意志を示すアピールになることもあるでしょう。ただし、通帳などで客観的に証明しなければなりません。客観的な証明が難しいタンス預金などは、自己資金として認められませんので注意しましょう。
また、他人からお金を借りて通帳残高を増やす「見せ金」は、見せ金を見破る相当なノウハウが蓄積されている融資担当者にはまず通用しません。もし発覚した場合は、それが原因で融資が行われないことになるため、絶対にやめましょう。
自己資金以外の金額に関しても、設備費などなら見積もりを取り、店舗や物件の賃借料なら物件の資料を取り寄せるなどして、すべて根拠に基づいて記入します。
事業の見通し
創業直後と事業が安定した後で、どれぐらいの売上・原価・経費が見込まれ、どの程度の利益が確保されるかを示すための項目です。借入金の返済ができるかの判断に関わるため、しっかりとした記述が必要です。
記載する金額は、すべて根拠を示すことが必要です。たとえば、飲食店の月間売上高なら、「単価×席数×回転数×月間営業日」で計算し、それぞれの数字は同業他社の平均値などを用いることが必要です。創業者の過去の経験のみに基づく見通しや、根拠のない推測は金融機関に創業計画そのものに対する疑念を抱かせかねません。
また、算出された利益から、借入金の返済、税金・国民健康保険・国民年金や創業者の生活費の支払いをしなくてはなりません。利益の金額がこれらを十分払えるものとなっているか、しっかりと確認をしましょう。
創業計画書のテンプレート・フォーマットのダウンロード方法は?
創業計画書のテンプレートは、日本政策金融公庫から融資を受ける場合には、指定のテンプレートが公庫の公式サイトからダウンロードできるほか、各支店にも備え付けられています。
制度融資の場合には、指定のテンプレートは都道府県・市町村の商工課や、信用保証組合で入手できます。
創業にあたって融資を受けない場合、あるいは公庫や制度融資以外の融資を受ける場合は、以下のテンプレートをご活用ください。すべて無料でダウンロードいただけます。
【業種別】創業計画書の記入例・テンプレート集
マネーフォワードクラウド 会社設立「起業関連テンプレート集」で用意している、業種別の作成例・テンプレートをまとめています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
飲食店
美容室・サロン
整骨院・ジム
小売・物販・EC
IT・Web・フリーランス
介護・福祉
学童・保育・教育
医療
製造・建設・不動産
運送・自動車
農業・インフラ
宿泊・観光・エンタメ
人材業界・コンサル
NPO
その他の事業計画書・創業計画書
創業計画書以外で融資の審査に必要な書類は?
日本政策金融公庫の融資について、創業計画書以外に融資の申込みおよび面談で必要な書類は以下のとおりです。
融資の申込みに必要な書類
- 設備の見積書(設備資金の申し込みをする場合)
- 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
- 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(担保を設定する場合)
- 都道府県知事の「推薦書」または生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」(生活衛生関係の事業を営む方で一定の場合)
- 運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面)またはパスポート(顔写真・現住所等の記載のあるページ)
- 許認可証(許可・届出が必要な事業の場合)
- 日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)利用申込書(日本政策金融公庫の電子契約サービスを初めて利用して申込む場合)
- 送金先の預金通帳の写し(同上)
- 借入申込書(国民生活事業用)(郵送により申込む場合)
面談で必要となる書類
- 創業計画に関連する資料
- 資産・負債が分かる書類(事業の見通しの根拠資料、自己資金を証明する預金通帳、借入の状況を証明する残高証明書・返済予定表など)
創業融資の審査に通過するためのポイントは?
審査に通過するための最大のポイントは、創業計画書の信憑性、その中でも根拠のある「事業の見通し」です。
いくら経営者の経歴が輝かしくても、取扱商品・サービスが魅力的でも、自己資金が十分にあっても、事業の見通しが良くなかったり根拠が不明であったりすれば、ビジネスの継続性に疑念が出てくるからです。
そのため、創業計画書の作り込みに加えて、事業の見通しを説明するための万全な面談準備も欠かせません。また、税理士などの専門家に依頼して、客観的な計画になっているか、創業計画書の妥当性をチェックしてもらってもよいでしょう。
創業計画書は融資判断のプラスになるよう、説得力を持って書こう
創業時に融資を受ける場合に必要となる創業計画書。金融機関が融資の判断を行うための材料となるため、判断がプラスになるよう、説得力を持って書くことが大切です。
創業計画書の各項目の中でも特に重要なのは、創業の動機と経営者の略歴等、必要な資金と調達方法、事業の見通しです。根拠となる資料を用意するなど、万全の準備をして作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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