- 更新日 : 2023年9月14日
LLCとは?合同会社の意味や株式会社との明確な違いを徹底解説!
2006年5月1日の会社法改正により廃止された有限会社に代わって誕生した合同会社。LLC(エルエルシー)とも称される合同会社については、聞いたことはあっても具体的にどのような会社形態なのかわからないという人が多いかもしれません。本記事では、LLCの意味やメリット、株式会社とLLCの違いなどを含め、LLCの基礎知識について解説します。
目次
LLCとは?
合同会社(LLC)はLimited Liability Companyの略で、2006年の会社法改正により誕生した会社形態です。アメリカの各州が定めるLLCをモデルにして導入されたもので、日本版LLCとも呼ばれています。一般的に合同会社とLLCは同じ意味として使われています。LLCは近年増加を続けており、2020年の年間設立件数は3万3,000社に達しています。
LLCは、主に個人起業家や小規模事業者によって設立される一方、Apple、Google、AmazonといったメガIT企業の日本法人としても設立されています。
LLCと株式会社の違い
合同会社(LLC)と株式会社にはどのような違いがあるのでしょうか。会社形態として日本でもっとも多い株式会社ではなく、あえてLLCという会社形態が選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。LLCと株式会社には、それぞれメリットとデメリットがありますが、LLCについては、設立費用が安い、決算公告の必要がない、役員重任登記が不要、剰余金分配の制限がないといったメリットがあります。なお、LLCのメリットとデメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
会社の所有者と経営者が同一か
LLCと株式会社の最大の違いは、会社の所有者と経営者が同一か否かという点です。株式会社では、資本を出資する株主が会社の所有者で、経営は株主から委任された取締役が行うのが基本です。これを「所有と経営の分離」と呼びます。なお、日本の中小企業の多くは、経営者が会社のオーナーでもある「オーナー企業」ですが、これはあくまでも例外であると考えてください。
一方、LLCは、出資する人、つまり会社の所有者と経営者が同一であるのが原則です。そのため、LLCは株式会社に比べて経営の意思決定のスピードが速いという特徴があります。また、株式会社に比べて経営の自由度が高いのもLLCの特徴です。それゆえ、個人起業家の多くがLLCという会社形態で起業しているのです。
役員の任期があるか
役員の任期の有無もLLCと株式会社の大きな違いです。株式会社の場合、役員の任期は非公開の株式譲渡制限株式会社で最長10年です。また、多くの株式会社は役員の任期を2年と定めています。いずれも役員の任期が満了して重任(再任)する場合、改めて登記が必要です。登記の手続きは煩雑で、登録免許税などのコストもかかります。さらに登記をし忘れていたり放置していたりすると、過料が課せられる可能性があります。
一方、LLCでは役員の任期がありません。LLCでは会社の所有者と経営者が同一であり、株式会社のように会社の所有者が経営者に経営を委任する関係になく、そもそも任期を設ける必要がないからです。さらに言えば、LLCには「役員」という役職自体が存在しません。
決算公告が必要か
決算公告の必要性の有無もLLCと株式会社の違いです。会社法は株式会社に対して、定時株主総会の終了後遅滞なく会社が定款に定めた方法によって公告し、財務諸表を開示することを求めています。株式会社は毎年決算終了後、決算内容を官報や日刊新聞、あるいは自社ホームページなどに掲載して公表しなければならないのです。この決算公告を怠った場合、会社法の規定により株式会社の代表者に100万円以下の過料が課せされる可能性があります。
一方、LLCには決算公告は求められていません。よって、LLCでは決算公告にかかる煩雑な手続きや、公告掲載にかかる費用を負担する必要がありません。一方で、資本金の減少、吸収合併などの組織再編、解散などの際には公告する必要があります。
有限責任を負う社員だけで構成される有限会社は別物
LLCは有限会社とどう違うのでしょうか。2006年の会社法改正により有限会社は廃止され、それ以前に設立された有限会社は特例有限会社として存続する形になりました。有限会社は、社員が会社に対して出資金額を限度とする責任を負うだけで、会社債権者に対しては責任を負わないタイプの会社形態です。
LLCも、社員が会社に対して出資金額を限度とする責任を負うだけで、会社債権者に対しては責任を負わない「有限責任」であることは同じですが、有限会社では任意で監査役を選任できた点と、有限会社で求められていた最低資本金300万円がLLCでは不要である点が異なります。いずれにせよ、現在は有限会社を新たに設立できないため、スモールスタートで会社を設立する場合にはLLCがおすすめです。
LLCと株式会社はどちらを設立した方が良い?
会社を設立する場合、合同会社(LLC)と株式会社のどちらを選ぶべきでしょうか。事業内容や事業計画、あるいは資金調達の必要性や増資の予定、業務提携やM&Aの可能性など、考慮すべきファクターは少なくありません。ここからは、長期的な経営計画という観点から両者を比較検討する前に、あくまでも起業というスタート地点において、LLCと株式会社のどちらを選ぶべきか、ケース別にまとめてみます。
信用度の高い会社を設立するなら株式会社がおすすめ
信用度の高い会社を設立したい場合には株式会社がおすすめです。LLCは一般的に株式会社に比べて次のようなイメージを持たれがちです。
- 資本が少ない
- 事業規模が小さい
- 社会的信用が低い
- 信頼性が低い
また、取引先によってはLLCでは取引してもらえなかったり、人材を採用する際に応募者からLLCに対してネガティブな印象を持たれたりする可能性もあります。
加えて、金融機関から資金を借り入れたり、増資を行ったりする際にも株式会社の方が有利です。株式会社であれば新株発行による資金調達が可能ですが、LLCでは不可能です。さらに、将来的に会社の上場を目指しているなら、そもそもLLCは上場できないためおすすめできません。
一般論として、株式会社はLLCより社会的信用が高いとされており、営業やマーケティングの観点から見てもLLCより有利です。
設立費用を安く抑えたいならLLCがおすすめ
一方、会社の設立費用を安く抑えたい場合にはLLCがおすすめです。株式会社の場合、会社設立時に公証役場で定款の認証を受ける必要があり、3万円~5万円の認証料が必要です。また、登録免許税の最低額は株式会社では15万円ですが、LLCでは6万円です。設立費用をトータルで見た場合、株式会社が最低25万円程度であるのに対し、LLCは最低10万円程度で済みます。LLCであれば、株式会社よりも15万円も安く設立できるのです。
さらに、上述のようにLLCでは決算公告を行う必要がないため、多くの株式会社が負担を強いられている官報等への掲載料を支払う必要もありません。
一般論として、低コストでスモールスタートし、その後のオペレーションも低コストで行いたいというケースでは、LLC一択になるでしょう。
LLCについて理解してメリットを活用しよう
以上、合同会社(LLC)に関する基礎知識について解説しました。LLCと株式会社、それぞれにメリットとデメリットがあります。一般論として、スモールスタートで起業する場合にはLLC、最初から本格的に起業する場合には株式会社がおすすめです。いずれにせよ、顧客や市場といった経営環境に合わせて、ベストな会社形態を選んでください。なお、LLCで起業したとしても、後から必要に応じて株式会社へ組織変更することも可能です。
よくある質問
LLCとは?
LLCはLimited Liability Companyの略で、2006年の会社法改正により誕生した会社形態です。アメリカのLLCをモデルにして導入されたもので、一般的には合同会社と呼ばれています。詳しくはこちらをご覧ください。
LLCと株式会社の最大の違いは?
LLCと株式会社の最大の違いは、会社の所有者と経営者が同一か否かです。株式会社では、会社の所有者と経営者が同一ではなく、分離しているのが原則ですが、LLCでは会社の所有者と経営者が同一です。詳しくはこちらをご覧ください。
LLCで会社設立するメリットは?
LLCで会社設立するメリットは、会社設立費用を株式会社よりも安く抑えられることです。株式会社で必要とされる定款認証が不要で、登録免許税も安く抑えられます。トータルで15万円ほど安く設立できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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