• 更新日 : 2025年8月29日

法人登記(商業登記・会社登記)とは?必要書類・自分でやる方法【簡単解説】

法人登記とは、法人の各種情報(例:社名、商号・所在地・代表者の氏名・事業の目的など)を、法務局に登録し、一般に開示できるようにするための作業のことです。

法人登記の際には、登録免許税の支払いが必要ですが、申請手続きは司法書士に依頼せず自分で行うことも可能です。

本記事では、「株式会社」と、「合同会社」の設立登記を中心に、その手続きをわかりやすく解説します。

法人登記(商業登記・会社登記)とは?

法人登記は、法務局においては「商業・法人登記」と記載されます。商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社などに関わる信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に促すための制度です。

商法には、登記申請によって商業登記簿に登記することが明記されており、登記の後でなければ第三者に対抗できないことが記されています。

また、会社法の第49条には、「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」とあるように、商業登記の手続きを終えないと株式会社として成立しません。

商業登記を行うと、登記した法務局から登記事項証明書が発行されます。この登記事項証明書(いわゆる登記簿)は、会社が正式に登記を行ったという証拠になるものです。

商業登記の目的は?

商業登記は、株式会社や合同会社を法的に設立するために不可欠ですが、実務上、この手続きを経て得られる登記事項証明書が多くの手続きで求められます。

例えば、会社として取引を開始するには、法人口座が必要です。一般的に金融機関においては、法人口座開設の際にその法人の登記事項証明書や印鑑証明書などの提出をしなくてはなりません。

金融機関で融資を受ける場合や国の補助金を申請する場合、許認可や入札の手続きなどは、登記事項証明書の添付が必要となるケースが少なくありません。さらに、大きな取引や新規の取引を開始する際には、登記事項証明書が必要な場合があります。

取引先が登記事項証明書で公示されている会社の重要事項を把握することは、その後の取引を円滑に行うための第一歩といえるでしょう。

商業登記・法人登記の違いは?

一般的に商業登記と会社登記は、ほぼ同じような意味合いで使われます。設立した「会社」を登記するという意味で、商業登記ではなく、慣習的に「会社登記」と呼ぶことがあります。

商業登記は、下記のような営利を目的とする会社(株式会社や合同会社など)について、法人登記はこれら会社以外のNPO法人や一般社団法人などの非営利法人について、それぞれその名称や所在地、役員の氏名などを公示するための制度のことを指します。

株式会社や合同会社の登記は、厳密には「商業登記」に含まれます。

登記の種類対象となるもの
商業登記株式会社、合名会社、合資会社、合同会社
法人登記会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人など

しかしながら、このような区別をせずに商業登記と法人登記を同じような意味で使っているケースがよく見受けられます。

法人登記(商業登記・会社登記)の手続きの流れ

では、商業登記を行うまでの手続きの流れについて説明します。商業登記は、以下の手順で行います。

1. 会社の設立方法を決める

会社の設立方法は、発起設立と募集設立の2種類です。

発起設立とは、会社設立に際し、発行する株式の全部を発起人が引き受ける方法です。これに対し、募集設立とは、設立に際して、発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りは他から引受人を募る方法を指します。

株式会社の場合、設立者(発起人)のみが出資する「発起設立」が一般的です。ここでは発起設立を前提に解説します。

2. 定款を作成して認証を受ける

定款の「款(かん)」とは、法律の条文の条項や箇条書きを意味するものです。定款とは会社の基本的な規則であり、つまり会社のプロフィールに相当します。定款には、絶対的記載事項として、必ず記載しなければならない事項が次のように定められています。

定款の絶対的記載事項

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価値またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所

この絶対的記載事項以外に、相対的記載事項、任意的記載事項などがありますが、絶対的記載事項の記載がなければ定款自体が無効です。

株式会社の場合には、作成した定款は公証人の認証を受けることで初めてその効力が生じます。合同会社の場合は、定款の作成は必要ですが、公証人による認証は不要です。

3. 出資金(資本金)の払込み

出資金の払込みについては、次の順序で実施し、登記に備えましょう。

出資金の払込み手順

  1. 払込預金口座を決定する
    会社成立前のため、払込口座は発起人の個人口座を利用します。会社成立後には、そのお金を会社の法人口座に振り替える必要があるため、会社成立後に取引を継続する金融機関の口座にしておくのが適切です。
  2. 出資金の振込みをする
    出資は、後述の振込みの証明のため、必ず振込みによって行います。通帳の残高だけでは証明として認められません。
  3. 払込みがあったことを証する書面を作成する
    振込みが完了すると、その通帳は出資金を払込んだ証明として使用します。通帳の所定部分をコピーし、「払込みがあったことを証する書面」を作成し、登記申請の添付資料とします。

4. 登記申請を行う

ここまでの手順をすべて行った後に、商業登記の申請を行うことになります。商業登記の申請を行った日が会社の「設立年月日」となるため、縁起をかつぐ形で申請日に「吉日」を選ぶ方もいます。

法人登記(商業登記・会社登記)の必要書類は?

商業登記を行う際に必要な書類は、会社の形態や役員構成によって異なりますが、以下の書類が基本的に必要です。

株式会社設立登記申請書

様式は、発起設立か募集設立か、取締役会を設置するかしないかなどで変わってきますが、作成そのものは難しいわけではありません。書式は、法務省の公式ホームページからダウンロードするか、法務局の窓口で直接入手できます。

登録免許税納付用台紙

登録免許税に相当する収入印紙は、登記申請書内に貼ることができますが、登録免許税納付用台紙には領収証書または収入印紙を貼る必要があります。なお、この「登録免許税納付用台紙」は、A4縦置きの白紙で代用することも可能です。

登録免許税は現金で納付し、金融機関から領収証書を受け、台紙に貼付したものを法務局に提出します。登録免許税額は、3万円以下の場合には収入印紙での納付が認められます。また実務上、3万円を超えても収入印紙で納付するケースもあります。

収入印紙を貼り付ける際は、用紙の右側に寄せて貼り付け、収入印紙は割印をせずに貼りましょう。

定款

商業登記において、設立申請時には会社の定款の添付が必要です。

会社の設立においては、書面での定款の場合、定款認証のための公証役場提出用、登記申請のための法務局提出用、会社設立後においての会社保管用と少なくとも3通の定款が必要です。書面保存の定款であっても、パソコンで作成した場合は元データも保管しておきましょう。

印鑑届出書

会社の実印を登録するための書類です。実印は個人でも必要ですが、法人でも実印が必要です(登記申請をオンラインで行うときは印鑑の提出は任意)。印鑑届出書の詳細は、以下を参考にしてください。

代表取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の代表取締役を選定したことを証する書面が必要です。発起設立の場合には発起人が設立時取締役を選任し、募集設立の場合には創立総会の決議によって設立時取締役を選任します。

代表取締役は、これら選任された取締役の中から選任され、就任を承諾する旨の「代表取締役就任承諾書」を作成します。

取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の取締役を選定したことを証する書面が求められます。就任承諾書の形式を取らなくても、創立総会などによる選任の決議書の記載をもって就任承諾書の添付に代えることも可能です。

その場合、「就任承諾書は設立時取締役選任決議書の記載を援用する」などと記載して提出します。

監査役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の監査役を選定したことを証する書面が必要です。取締役の就任承諾書と同様に、就任承諾書の形式を取らずに創立総会などでの選任の決議書を記載することで監査役の就任承諾書の添付に代えることができます。

役員の印鑑証明書

設立時に取締役個人の印鑑証明書が必要となります。印鑑証明書とは、印鑑が市役所などに登録されている実印であることを証明するための書類です。

実印とは、市役所などに申請をして受理をされている印鑑のことを指します。ただし、印鑑証明書の有効期限は発行日から3ヶ月です。有効期限を事前に確認しましょう。

出資金(資本金)の払込証明書

先述のように、出資金を振り込んだ証明書(通帳のコピー)を作成して出資金の払込証明書として、添付します。これらの必要書類を作成し、法務局に申請を行うことにより、審査を経て登記事項証明書の発行が可能です。

法人登記(商業登記・会社登記)の申請方法

法人登記(商業登記・会社登記)の申請には、窓口で申請する方法、郵送で申請する方法、オンラインで申請する方法の3つがあります。

法務局の窓口で申請

法人登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局(登記所)で行います。管轄登記所で、指定の申請書の記載を行い、添付書類とともに窓口に提出します。窓口の場合、その場で申請受付が完了です。書類に不備がないか相談窓口で確認してもらえる場合もあり、安心感があります。

郵送

法人登記の申請は、郵送も可能です。郵送申請の場合、窓口提出と同様に、管轄登記所に申請書や添付書類を送付します。

記入漏れなどといった補正が必要な場合は、補正の申請書や添付書類も郵送できます。

申請書を郵送で提出する際は、到達を確認できる簡易書留やレターパックプラスなどを利用し、必ず連絡先を記載して提出しましょう。

オンライン

法人登記は、申請用総合ソフトを利用することでオンライン申請できます。申請用総合ソフトは、法務省の登記・供託オンライン申請システムで取り扱われているソフトウェアです。以下の流れでオンライン申請をします。

法人登記のオンライン申請手順

  1. 推奨環境を満たしているか確認する
  2. 登記・供託オンライン申請システムのユーザー登録を行う
  3. 登記・供託オンライン申請システムのページで申請用総合ソフトをダウンロードする
  4. 申請用総合ソフトにログインする
  5. 申請書情報を作成する
  6. 添付書類に電子署名を付与する
  7. 添付書類情報を添付する
  8. 申請書情報に電子署名を付与する
  9. 申請書情報を送信する
  10. 登録免許税を納付する
  11. 添付書面を提出する

オンライン申請の利用時間は、月曜日から金曜日までの8時30分から21時です(国民の祝日・休日,年末年始にあたる12月29日~1月3日を除く)。夕方以降も稼働しているため、日中に法務局へ出向く手間が省けるでしょう。登録免許税の納付もインターネットバンキングなどで対応可能です。

※オンラインの利用時間の詳細は、商業・法人登記のオンライン申請について|法務省のページをご覧ください。

登記申請から登記完了までは、いずれの方法でも数日から数週間とされています。そのため、余裕をもって申請をしましょう。

出典:商業・法人登記のオンライン申請について|法務省

法人登記(商業登記・会社登記)の後に取得するとよい書類

法人設立後は、銀行の法人口座の開設や借入契約、取引先との契約など、さまざまな手続きが発生します。

法人の手続きで提出を求められることが多いのは、登記事項証明書や印鑑証明書です。いずれも、法人登記が完了した段階で法務局の窓口やオンラインなどで取得でき、登記が完了すると法務局から登記事項証明書を取得することができます。

登記事項に変更が生じたときも商業登記が必要!

法人を設立するとき以外にも、さまざまなシーンに登記が必要です。具体的には以下のような場合です。

1. 目的変更や住所変更

会社の事業目的に変更があった場合や、会社の本店が移転に伴い住所が変更になった場合には、変更登記を行います。

2. 役員変更

役員が辞任した場合や、新しく役員が就任した場合など役員に変更があった場合、変更登記を行います。

3. 法人の解散時

会社の解散時にも登記が必要です。漏れがないよう確実に対応しましょう。

法人登記(商業登記・会社登記)をしないとどうなる?

法人登記をしないと、会社として認められません。会社を設立するには法人登記が必要です。

法人登記後に所在地の変更など登記内容に変更があった場合は、変更が発生した日から2週間以内に変更登記申請をすることが定められています。変更登記を忘れる、または怠ると、代表者個人に対して100万円以下の過料が処される可能性もあるため、注意しましょう。

法人登記(商業登記・会社登記)にかかる費用の目安

会社設立にかかる法定費用(法律で定められた最低限の費用)は、株式会社と合同会社で異なります。とくに、定款認証の有無と登録免許税の金額が大きな違いとなります。

費用内訳株式会社合同会社備考
定款の認証※1
(公証人手数料)
30,000円~50,000円0円合同会社は認証不要。株式会社は資本金の額により変動。
定款貼付収入印紙代40,000円40,000円電子定款の利用で両社とも0円。
設立登記 登録免許税最低 150,000円最低 60,000円資本金の0.7%。最低額に満たない場合は最低額を納付。

※1 資本金の額に応じて、100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円であり、その他の場合は5万円となります。

※電子定款の場合には収入印紙は不要です。

商業登記にかかる詳細は、法人設立で最低限必要な費用と、株式会社・合同会社の違いをご参照してください。

法人登記(商業登記・会社登記)は司法書士に依頼できる?

司法書士は、登記申請の代理が主たる業務の国家資格です。また、司法書士は、登記の手続きだけでなく、定款の作成の相談にも対応できるため、自社に適切な手続きを進めることができます。

また、定款の作成や認証を含めて、依頼の範囲や、会社の規模などによっても費用は異なります。そのため、司法書士に依頼を検討する場合、事前に相談し、見積りを取ることが不可欠です。

法人登記(商業登記・会社登記)の手続きでよくある質問(FAQ)

Q. 自宅の住所やバーチャルオフィスで登記できますか?

  • 可能です。ただし、賃貸物件の場合は、契約で法人の住所利用が禁止されていないか確認が必要です。また、融資や許認可の種類によっては、バーチャルオフィスが認められないケースもあるため、事前に確認しましょう。

Q. 会社の実印はいつまでに準備すればいいですか?

  • 登記申請書類に押印する必要があるため、法務局へ申請する前までに必ず準備が必要です。印鑑の作成には数日かかる場合もあるため、会社の基本事項が決まった段階で早めに発注することをおすすめします。

Q. 登記申請後に書類の不備(補正)を指摘されたらどうすればいい?

  • 法務局から電話で連絡が入ります。指摘された箇所を修正し、指定された期間内に再度提出(持参または郵送)します。軽微な修正であれば、法務局の窓口で担当者の指示に従って訂正できる場合もあります。焦らず、丁寧に対応しましょう。

Q. 資本金は1円でも本当に大丈夫?いくらにするのが一般的?

  • 法律上、資本金1円でも会社は設立できます。しかし、資本金は会社の体力や信用度を示す指標でもあります。事業開始後の運転資金(3ヶ月~半年分)を目安に設定するのが一般的です。また、許認可によっては一定額以上の資本金が要件となる場合があるので注意が必要です。

法人登記(商業登記・会社登記)は意外と簡単にできる!

商業登記を難しく考える方もいるかもしれませんが、一つずつ確認しながら進めていくことで、案外簡単に感じられるかもしれません。

法務局の担当者に相談しながら、時間に余裕を持って準備を進めると、必要な書類もスムーズに整理することができます。また、登記審査中に補正が求められる場合でも、法務局から連絡が入るため安心です。

費用をかけて専門家に依頼する前に、自分で手続きを進めてみるのも、これからのビジネスを動かすうえで貴重な経験になるでしょう。

よくある質問

商業登記とはなんですか?

商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社等に係る信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に資するための制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記と法人登記はどう違う?

商業登記は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社等を対象として、法人登記はこれら会社以外の法人を対象として、それぞれ商号や所在地、役員の氏名などを公示する制度のことを言います。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記にかかる費用とは?

細かな費用を除き、登記費用として主なものは登録免許税(最低150,000円)であり、司法書士に依頼した場合は別途、報酬が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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