- 更新日 : 2024年5月17日
印鑑届出書とは?提出時の書き方や必要な印鑑の種類について
印鑑届出書とは、会社の実印を登録(または登録した印鑑の変更)するために提出する書類です。会社設立にあたって印章を作り、「印鑑届出書」という書類を作成し、これを法務局に提出することで会社実印として使えるようになります。当記事では、この印鑑届出書の提出が必要になる場面や書き方について説明します。
目次
「印鑑届出書」とは
印鑑届出書とは会社や法印の実印を法務局に届け出るための書類です。会社の代表者名や社名が掘られた印章を法務局に登録します。
登録された印鑑は「丸印」「代表者印」などと呼ばれ、会社の実印として使うことができるようになります。
一般的には会社の代表者(社長)が印鑑届出書を提出します。代表者が複数いる場合は1人が提出するほか、それぞれが印鑑届出書を提出して代表者印を作ることも可能です。ただし、同じ印鑑を登録することはできず、別々の印鑑を作らなければなりません。
印鑑届出書の役割
印鑑届出書を提出することで、印影(印鑑の朱肉の跡)や会社名・屋号、住所、代表者の役職、氏名、生年月日などの情報が法務局に登録されます。そのため、登録された印鑑の印影を持つ印章(はんこそのもの)がその法人の所有する物であることを証明することが可能です。個人が市区町村役場に印鑑登録をして実印を作るのと同様です。また、実印を押した書類の信用性を確保することもできます。
届け出をした代表者印は代表取締役を変更するときや企業買収を行うとき、株券を発行するとき、官公庁への入札を行うとき、銀行融資を受けるとき、そのほか重要な契約や手続きを行うときなど、さまざまな場面で使います。
印鑑届出書が必要な印鑑の種類
会社で使う印鑑にもいろいろな種類があります。用途に応じて呼び方や登録手続きの有無・やり方が異なり、次のように整理することができます。
登録手続が必要な印鑑 | |
---|---|
代表者印 | 印鑑届出書で法務局に届けられた印鑑。丸印、会社実印、法人実印とも呼ばれる。 |
法務局に印鑑届書を提出する必要がある。 | |
銀行印 | 口座開設や入出金などの銀行手続きに用いられる印鑑。 |
銀行への届け出が必要。手続の詳細は取引先の銀行によって異なる。 |
登録手続が必要ない印鑑 | |
---|---|
社印 | 印鑑届書を提出していない印鑑。印影が四角く「角印」とも呼ばれる。認印のような役割で、見積書や請求書、領収書などに用いられる。 |
役職印 | 代表者の代理となる役職者の印鑑。主に社内の稟議書などに用いられる。 |
認印 | 印鑑届書を提出していない印鑑。社印とは別に社内で使う認印として作られる場合もある。 |
ゴム印 | 会社名や住所が掘られた印鑑。郵便物の宛名など会社の情報を表記する際に使われる。 |
印鑑届出書の提出が必要となる場面
それでは印鑑届出書はどのような場面で提出すればよいのでしょうか。どのタイミングで届け出る必要があるのでしょうか。ここからは印鑑届出書の提出が必要となる場面について見ていきましょう。
なお、登録した情報を変更する場合は「改印届書」として提出しますが、書類のフォーマットは印鑑届書と同じです。
会社を設立するとき
前述の通り、法人を設立する際には印鑑を作って法務局に届け出ることで代表者印を作ることができます。以前は商業登記法第20条で印鑑届出書の提出が義務付けられていました。
(印鑑の提出)
第20条
1 登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。
2 前項の規定は、委任による代理人によつて登記の申請をする場合には、委任をした者又はその代表者について適用する。
3 前二項の規定は、会社の支店の所在地においてする登記の申請については、適用しない。
ただし、2021年2月15日に上記の条文は削除されているため、今は登記をオンラインで申請する場合、印鑑届出書の提出は任意となっています。一方で現在でも印鑑届出書の提出については商業登記規則に記載されています。
(印鑑の提出等)
第九条印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面をもつてしなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる印鑑を提出する者は、その書面にそれぞれ当該各号に定める事項(以下「被証明事項」という。)のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、押印(第五項第二号イ、第四号イ及び第六号イの場合において、当該各号の印鑑を提出する者が押印するときは、当該登記所に提出している印鑑に係るものに限る。)しなければならない。
代表者変更を行ったとき
代表者印は代表者の名前が記されていて、法務局にも代表者の氏名や生年月日を登録しなければなりません。
そのため、代表者が交代した場合は新しい印章を作成して、改印届書を提出する必要があります。また、代表者が変更になった場合は代表者変更の登記手続も行わなければなりません。商業登記規則第9条1項4号には以下のように記載されています。
(印鑑の提出等)
第九条 印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面をもつてしなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる印鑑を提出する者は、その書面にそれぞれ当該各号に定める事項(以下「被証明事項」という。)のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、押印(第五項第二号イ、第四号イ及び第六号イの場合において、当該各号の印鑑を提出する者が押印するときは、当該登記所に提出している印鑑に係るものに限る。)しなければならない。
(中略)
四 会社の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該会社の代表者の職務を行うべき者)
商号、本店、資格、氏名及び出生の年月日(当該代表者が法人である場合にあつては、氏名に代え、当該法人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所並びに当該会社の代表者の職務を行うべき者の氏名)
本社移転により法務局の管轄が変わるとき
印鑑届出書に記載された情報は管轄する法務局に登録されます。そのため、本社が移転して管轄する法務局が変更になった場合も改印届書の提出が必要となります。この場合は「管轄外本店移転」といって、本店移転の登記手続が必要となります。
なお、法務局の管轄内で移転する場合、改印届書の提出は不要です。
会社解散後、清算人が選ばれたとき
会社を解散させて清算人を選出した場合、これまでの経営者は辞任し、新たに清算人が代表者となります。この場合も印鑑届書を提出しなければなりません。
(印鑑の提出等)
第九条
(中略)
五 破産法(平成十六年法律第七十五号)の規定により会社につき選任された破産管財人若しくは保全管理人、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)の規定により会社につき選任された管財人若しくは保全管理人、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)の規定により選任された管財人若しくは保全管理人、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)の規定により会社につき選任された承認管財人若しくは保全管理人、保険業法(平成七年法律第百五号)第二百四十一条第一項の保険管理人又は預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第七十四条第一項の金融整理管財人若しくは同法第百二十六条の五第一項の預金保険機構(以下「管財人等」という。)(当該管財人等が法人である場合にあつては、当該管財人等の職務を行うべき者として指名された者)
商号、本店、資格、氏名及び出生の年月日(当該管財人等が法人である場合にあつては、氏名に代え、当該法人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所並びに当該指名された者の氏名)
商号や代表印を変更したとき
登録している代表者印の印章を変更した場合も改印届書を提出して新しい印影に登録を変更する必要があります。なお、商号変更の場合は届け出が義務とはなっていませんが、登録されている情報と実情が異なっているため、可能な限り速やかに改印届書を提出することが望ましいでしょう。
印鑑届書の書き方とルール
それでは印鑑届書はどのように書けばよいのでしょうか。ここからは画像も交えて印鑑届書の書き方について説明します。
記載するのは以下の項目です。
- 届け出する印鑑の印影…代表者印を押印
- 商号・名称…会社名を記入
- 本店・主たる事務所…本社の住所を記入
- 資格…代表者の資格について記入
- 氏名…代表者の氏名を記入
- 生年月日…代表者の生年月日を記入
- 会社法人等番号…会社法人等番号を記入
- 印鑑カードの引き継ぎ…詳しくは後述
- 届出人欄…届出人の氏名、住所を記入し個人の実印を押印する
以上の情報を正確に記載しましょう。以下で特に注意していただきたい点を説明します。
左上の欄に「代表者印」を押印する
印鑑届書において、最も重要な部分といっても過言ではありません。ここに届け出る印鑑を押印することで、印影を法務局に登録することができます。かすれがあるなど鮮明に押印されていない場合は正確に登録されない、届け出が受理されない場合もあります。はっきり・くっきりと印影が残るよう押印しましょう。
商号・印鑑提出者の資格
「資格」の欄には印鑑提出者=代表者の役職を記入します。「代表取締役」「取締役」「代表理事」「理事」のいずれか該当するものに丸を付けましょう。該当する役職がない場合は括弧内に役職名を記載します。例えば合同会社で役職が「代表社員」であれば、括弧内に代表社員と記載します。
印鑑カードの引き継ぎ
迷うのは印鑑カードの引き継ぎでしょう。印鑑カードとは印鑑登録された後に発行されるカードのことで、印鑑証明書の交付手続きに必要となります。新しく会社を設立して印鑑を届け出るのであれば、「印鑑カードは引き継がない」にチェックを入れます。会社の代表者変更などを出す場合は、「印鑑カードを引き継ぐ」にチェックを入れ、印鑑カード番号と前任者の氏名を記載することで、印鑑カードを引き継ぐことができます。
印鑑届書を提出する際の注意点
印鑑届書の作成自体はそれほど難しいものではありません。しかし、提出する際には注意点もいくつかあります。
代表者本人が個人の実印を届け出る場合
印鑑届書を代表者本人が提出する場合は、届出人の欄の「印鑑提出者本人」にチェックを入れた上で、本人の住所と氏名を記載します。隣には個人の実印を押印し、提出の際には発行後3カ月以内の印鑑証明書(個人の実印のもの)を提出する必要があります。
実印を持っていない場合は、まず市区町村役場で個人の実印の印鑑登録手続を行うところから始めましょう。
代理人が届け出る場合
代理人が手続きをする場合は、届出人の欄の「代理人」にチェックを入れて、代理人の住所と氏名を記載します。実印の押印の欄には本人の実印を押印します。代理人の実印は押印する必要はありません。同様に本人の印鑑証明書(発行後3カ月以内)を添付して提出します。
「委任状」の欄には委任した日付と本人の住所、氏名を記入し、実印を押印します。
合同会社で代表社員が法人の場合
印鑑の届け出ができるのは個人のみです。一方で合同会社の場合は法人が代表社員になることもあります。その場合、職務執行者が法人の代表者であれば、職務執行者の氏名・住所を記載し、右下の押印欄には法人の代表者印を押印します。
また、代表者についての資格証明書および法人の印鑑証明書(どちらも発行後3カ月以内のもの)も必要で、法人の印鑑登録をしていない場合は、職務執行者の印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)が必要となります。
職務執行者が法人の代表者以外の場合は、職務執行者になる人の氏名を記載し、右下には職務執行者の印鑑(認印も可)を押印します。
オンライン申請する場合
前述の通り、2021年2月15日に商業登記法第20条が削除され、オンラインで会社登記申請を行う場合、印鑑届出書の提出は任意となりました。しかし、会社を経営する上で代表者印を使う機会は多々あるため、印鑑届出書を提出されることをおすすめします。
オンラインで登記申請を行う場合、印鑑届出書に関してもオンラインで一括して行うことが可能です。詳しい手順は法務省のホームページに記載されています。
参考:オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)|法務省
会社を設立する際には印鑑届出書の手続きも忘れずに
代表者印は代表取締役の変更や企業買収、株券の発行、官公庁への入札、融資、そのほか重要な契約や手続きを行う際に使用し、数ある会社の印鑑の中でも、最も重要な位置付けになります。
法務局に実印として登録することで代表者印の信頼性が担保されるため、オンライン申請で登記する場合であっても登録手続しておくことが望ましいでしょう。そのためにも、今回ご紹介した印鑑届出書の基礎知識や提出する場面、書き方などの理解を深めることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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