- 更新日 : 2025年9月4日
大学生が起業する方法は?メリットや起業家として成功するポイントも解説!
女性やシニア世代の起業家と並んで、最近増えているのが大学生の起業です。在学中から起業セミナーや実際の成功例を勉強し、なかには在学中に起業する方もいるようです。
本記事では、大学生が起業するメリット・デメリット、資金調達の方法、成功のポイントなどを解説します。
目次
大学生の起業に成功した事例
大学生として起業し、社会課題の解決や新たな価値創出に挑戦し成功を収めた若き起業家たちがいます。ここでは、4名の事例をご紹介します。
株式会社ユーグレナ 出雲充氏
出雲充氏は、東京大学在学中にバングラデシュで見た栄養問題に衝撃を受け、ミドリムシ(ユーグレナ)による社会貢献を決意しました。2005年に学生仲間と共に株式会社ユーグレナを設立し、世界初となるミドリムシの食用屋外大量培養に成功しました。
その後は食品・化粧品からバイオ燃料まで事業を拡大し、創業7年後には東証マザーズ上場、さらに東証一部にも上場するなど、日本のバイオベンチャーを牽引する存在となっています。
株式会社Gunosy 福島良典氏
福島良典氏は東京大学大学院在学中、情報収集やAI分野の研究を生かし、同級生と共にニュースアプリ「Gunosy」を開発しました。趣味的なスタートながら、需要拡大と投資家の協力を得て2012年に法人化しています。
独自のアルゴリズムで厳選した情報配信サービスとして高い人気を集め、設立からわずか2年余りで東証マザーズへの上場を果たしました。今なおIT業界での新たな挑戦を続けています。
ラクスル株式会社 松本恭攝氏
松本恭攝氏は大学卒業後、大手コンサルティング会社を経て2009年にラクスル株式会社を創業しました。印刷業界の稼働率の低さに着目し、印刷機の「シェアリング・エコノミー」という新たなビジネスモデルを構築しました。
小規模な比較サイトから始め、ユーザーと印刷会社をつなぐネット印刷事業を拡大させ、2018年には上場を実現しています。デジタルとアナログを融合した新しい仕組みで業界に革新をもたらしました。
メルカリ株式会社 山田進太郎氏
山田進太郎氏は早稲田大学在学中から複数のITサービス開発に取り組み、ITベンチャーの現場で実績を積みました。世界でも通用するビジネスを目指し、2013年にフリマアプリ「メルカリ」を創業しました。
スマートフォンの普及を背景に、個人間取引のハードルを下げる斬新なユーザー体験で爆発的な成長を遂げました。創業から5年で東証マザーズ上場、その後はアメリカ進出も果たし、日本を代表するユニコーン企業といえるでしょう。
大学生の起業におすすめ起業アイデア
大学生の起業でおすすめのアイデアは、以下のとおりです。
- IT・Webサービス
- 物販・EC事業
- 地域の特性を活かした事業
ここから、各事業の内容を解説します。
IT・Webサービス
IT・Webサービス事業は、初期費用が比較的少なく始めやすい点が魅力です。例えばブログ、アフィリエイト、WebアプリやSNSプラットフォームなど、学生自身の課題や興味をもとにしたサービスの開発が可能です。
自分が「欲しい」と思う機能やサービスを形にしやすく、PythonやWordPress、ノーコードツールの活用で未経験からでも挑戦できます。また、少人数でもチームを組んで分担でき、運営次第で大きな収益化も目指せるでしょう。
物販・EC事業
物販・EC事業は、BASEやShopify、メルカリShopsなどのプラットフォームを活用することで、大学生でもスモールスタートが可能です。アパレルやアクセサリーの自作販売、中古品の仕入れ・販売、特産品のオンライン販売などさまざまなジャンルで挑戦できます。
低コストで開設できる点や、仕入れ・在庫管理・マーケティングの経験が積めるのもポイントです。自身の趣味や人脈、SNSを活かして差別化もしやすい分野といえます。
地域の特性を活かした事業
地域の特性を活かした事業とは、大学や地元の人脈・資源を使い、地域活性化や特産品開発・販売、観光支援イベントなどを展開することが一般的です。例えば、地元産の食品や工芸品を使ったビジネスモデル、空きスペースを活用したコミュニティイベント、商店街と連携した学生イベントなどが挙げられます。
地域貢献や社会的意義を重視しやすく、自治体との連帯や支援制度を活用できる点がメリットです。
大学生の起業はやめとけ・うざいと言われる理由
学生起業には夢や可能性がある一方で、厳しい現実も存在します。実際に始めてみると、学業との両立やスキル不足、資金面の課題など、想像以上に多くの壁に直面します。ここでは、大学生の起業が「やめとけ」「うざい」と言われる主な理由を解説します。
学業との両立が困難
大学生が起業に取り組むと、学業やサークル活動との時間調整が難しくなり、成績や単位取得に支障が出るリスクがあります。ビジネスへの注力が増すと、学業が疎かになり、最悪の場合は留年や卒業できない事態も起こり得るでしょう。そのため、起業と学業を両立するための計画性が必須です。
経験・スキル不足
社会人経験がない大学生は、ビジネス知識やマネジメント能力が不足していることが多く、実務や市場分析、人材マネジメントなど幅広いスキルが求められます。実際、知識不足が壁となる場面が多く、基礎が身についていないまま事業を進めてしまうリスクも散見されます。
資金調達や信用の課題
大学生は一般的に自己資金が少なく、実績や信用力が低いため、銀行や投資家からの資金調達が困難です。クラウドファンディングなど新たな手法も利用されますが、必ず資金が集まるわけではありません。小規模で始める工夫や信頼の積み上げが不可欠です。
周囲からの理解・協力の得にくさ
学生起業は社会的認知度が低く、家族や友人、大学関係者から十分な理解や協力を得にくい場合があります。特に、学業を疎かにしているとみられることや、自己主張が強すぎると「意識高い系」や「うざい」と受け取られることもあります。
現実的成功率の低さと理想とのギャップ
メディアで話題になる成功例はごく一部で、多くの学生起業は失敗や撤退しています。生存バイアスによって「簡単に成功できる」と錯誤しがちですが、実際には地道な努力や計画性が欠かせません。理想と現実のギャップに直面しやすい点も課題です。
大学生が起業のノウハウを習得する方法
起業するためにはまず、起業のノウハウを身に付ける必要があります。大学生がノウハウを習得する方法をいくつか紹介しましょう。
起業サークルに入る
起業サークルとは、起業を志す方々が集って勉強会を開催したり、起業活動のイベントに参加したりするサークルのことです。民間はもとより、学内に起業サークルがある大学も数多くあり、サークル活動を通じて在学中からノウハウを身に付けられます。
ビジネスコンテストに出場する
企業にとっても、新しいビジネスプランの発掘は望ましいことです。一般企業や地方自治体などが主体となって、参加者の起業コンセプトを競い合わせる「ビジネスコンテスト」というものがあります。参加資格はコンテストによりさまざまですが、提案したビジネスプランが認められれば、実際に起業するための資金を提供してもらえるケースもあります。
セミナーや勉強会に参加する
起業を考えている方をターゲットにした、起業のノウハウを提供するセミナーや勉強会が開催されています。特に、講師が経営者の方であれば、実務上の生きたノウハウをダイレクトに学べます。ただ、無料で受講できるセミナーや勉強会は限られており、費用負担が発生することもあります。
先輩起業家の成功例を参考にする
実際に成功している生きたノウハウを知りたいのであれば、サークルやセミナーを通じて知り合った先輩起業家の話を聞くのも一つの方法です。ともすれば机上の空論になりかねない学習を、より実務的なものとして捉えられるでしょう。
大学生が会社設立をするメリットは?
では、大学生のうちに起業することのメリットは何でしょうか?その理由をいくつか挙げてみましょう。
費用を抑えて起業できる
起業にはある程度まとまった準備資金が必要になります。それだけに、余計な出費は抑えたいものです。大学内を本店としてしまえば、一般的な企業のように本店機能を持ったオフィスを、コストをかけてわざわざ設置する必要はありません。
また起業のノウハウについても、サークルやビジネスコンテスト、卒業生の成功体験などを通して学ぶことで、元手をかけることなくノウハウが身に付くというメリットがあります。
より高度な知識を手に入れやすい環境にある
経営学部や経済学部のある大学であれば、講義やゼミなどで教授からより高度な経営理論などを時間をかけて直接学べます。
アイデアが面白いだけではビジネスは成功しません。学問のレベルで市場原理を理解しておくことも、起業するための重要な知識になります。
失敗しても「ガクチカ」になる
一旦就職した後に起業して失敗した場合、リカバリーするためには相当の苦労が必要です。その点、大学生であれば「就職」という選択肢を残しつつ、並行して起業の準備ができます。起業に失敗しても「就職」という選択肢もありますので、思い切リった起業プランを実行できるでしょう。
ノウハウさえあれば、サラリーマンとして就業した後、副業での起業も可能です。
大学生が会社設立をするデメリットは?
大学生であることはメリットばかりではありません。起業する際のデメリットについて解説します。
資金調達が難しい
学内で活動する分にはさほど気にならなくても、いざ実際に起業する際に必要になるのが準備資金や当面の運転資金です。
会社法の改正で「資本金1円」の法人設立が認められるようになったことから、以前より起業はしやすくなっています。しかし、個人事業主でも法人でも、事業が軌道に乗るまでに要する準備資金や運転資金は必要でしょう。
安定した一定額以上の収入が見込めない大学生は、金融機関から多額の融資を受けることは難しいでしょう。
学業が疎かになる
起業を夢見る大学生にとって、将来に向かって努力するのは楽しいことでしょう。しかし、楽し過ぎるあまり本業である学業が疎かになってしまう可能性があります。
大学は出席しなければ単位がもらえず、定められた単位数を揃えなければ卒業することはできません。大学に通うことすら忘れて、起業に没頭してしまうことがないよう、メリハリを持って学習してください。
親の扶養から外れる可能性がある
大学生が会社を設立し、年収が一定基準(目安として年収103万円や130万円など)を超えると、親の扶養の対象外となる可能性が高まります。扶養から外れると、自身で国民健康保険への加入や年金保険料の負担が必要になり、税金面でも親の所得控除(扶養控除)がなくなるのがデメリットです。さらに、企業側の確定申告を行う必要があり、税務手続きや会計管理などの負担も大きくなります。
大学生でもできる資金調達のやり方は?
大学在学中に起業する際に、避けては通れないのが資金調達です。先にも述べましたが、大学生が多額の銀行融資を受けるのは難しいでしょう。大学生でもできる資金調達の方法をご紹介します。
日本政策金融公庫の融資制度の活用
民間の金融機関で大学生が融資を受けることは難しいかもしれません。しかし、政府系金融機関の日本政策金融公庫が行っている「新規開業・スタートアップ支援資金」を活用する方法があります。新たに事業を始めようとする方を対象に、起業支援を目的とした制度です。
融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)であり、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、担保や保証人も原則不要となっていますので、大学生が起業する際、運転資金の調達方法としては使いやすい制度です。
新規開業・スタートアップ支援資金について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。
※日本政策金融公庫の新創業融資制度は、令和6年3月31日をもって取り扱いを終了しています。
詳しくは「日本政策金融公庫」のホームページを参考にしてください。
クラウドファンディングの活用
資金調達方法の一つとして、最近注目されているのが「クラウドファンディング」です。
「こういうことをしたいので資金援助をお願いします!」と呼び掛けると、その意志に賛同してくれる方が資金援助をしてくれる、といった仕組みです。自分のやりたいことを明確にアピールできれば、目標額以上の資金を調達可能です。
助成金・補助金の活用
経済産業省、中小企業庁の「IT導入補助金」や、各都道府県の「地方創生起業支援事業」など、国や地方公共団体が起業家に対してさまざまな支援事業を行っています。
一般的に、これらの助成金、補助金は必ずもらえるわけではありません。綿密で実現可能な事業計画に対して助成するものです。申請するにあたっての注意点として、事業に対する明確なビジョンと熱意を持って積極的にアピールしていくことが大切です。
助成金・補助金について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。
エンジェル投資家・VCからの出資
大学生でも独自のビジネスアイデアや成長性あるプランを持っていれば、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けることが可能です。エンジェル投資家は個人で起業初期に資金や知見を提供し、VCはファンドとしてスタートアップに出資します。
近年は学生向けの投資プログラムやピッチイベントも増えており、実績ある事業プランには数百万円~数千万円規模の出資例もあります。挑戦する価値のある現実的な資金調達手段です。
大学生の起業後の成功率やリアルな年収
大学生の起業は注目を集めている一方、その成功率や年収は一様ではありません。起業後に継続できる割合や収入は、事業の内容や規模によって大きく異なります。ここでは、大学生起業の生存率や実際の年収レンジについて解説します。
大学生起業後の成功率
大学生だけに限定した具体的成功率の統計データは現時点で存在しません。中小企業白書によると、起業後5年の企業生存率は約81.7%、10年後は26.1%です。つまり5年以内に約18.3%、10年以内に約73.9%が廃業しています。この生存率は主要先進国の中でも高い水準ですが、初めての起業ではやや低くなる傾向です。
経済産業省の調査によれば、2024年10月時点で「大学発ベンチャー」は5,074社と過去最高を更新しました。前年より約19%増加しており、大学生による起業熱が高まっています。
参考:経済産業省 令和6年度大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました(速報)
大学生起業家の年収レンジ
大学生起業家の年収は非常に幅広く、事業規模やビジネスモデルによって大きく異なります。現実的なレンジとしては、月数万円(年間30〜50万円)程度の副業型から、400万〜500万円台の安定収入層、さらに少数ながら数千万円以上を得る成功例も存在します。
本格的な事業拡大があれば、年収1,000万円超も現実的ですが、多くは学業との両立の中で副業規模にとどまるケースが主流です。
大学生が起業を成功させるためのポイントは?
将来の起業を夢見るのであれば必ず成功させたいものです。最後に、大学生が起業を成功させるためのポイントを挙げてみます。
顧客の課題を解決する アイデアが必須
当たり前の話ですが、皆がやっていることを同じようにやっては誰の目にもとまりません。一般消費者も企業も、求めているのは「独創的なアイデア」です。
起業を考えるにあたって、セールスポイントとなる「独創性」がその事業にあるのか?新しいビジネスプランとして受け入れられるか?について客観的に考えてみましょう。
最初は小規模で仮説検証する
まずはその事業を小規模で始めてみて、消費者からどれだけのレスポンスがあるのか確認するところから始めましょう。いきなり大規模で始めて失敗してしまうとリカバリーに苦労しますし、借金を背負っただけ、という結果にもなりかねません。
知識を得る努力を怠らない
仕事ですから、自分が身に付ける情報は常に最新でなければなりません。IT技術の進化に対応したビジネスプランの展開、専門家として習得すべき専門知識など、覚えなければならない情報は常に更新されています。プロとして知識を得る努力は怠らないようにしましょう。
大学生起業家として事業アイデアを形にしましょう
大学生の起業には、大きな可能性と同時に多くの課題も伴います。成功例を学びながら、現実的な成功率や年収、リスクを正しく理解することが重要です。独創的な起業アイデアや資金調達方法を模索し、学業との両立を意識した計画的な挑戦が、成功への近道となるでしょう。
社会に出てしまった方に比べ、大学生には「就職」と「起業」という2つの選択肢を並行して続けることができる、という利点があります。失敗を恐れず目標に向かって思い切ったチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
なお、企業や会社設立の方法について具体的に知りたい方は、以下のリンクを参照してください。
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