• 更新日 : 2025年7月23日

【2025年改正対応】開業届の証明書が必要な時どうする?入手・控えの再発行方法を解説

2025年1月から、開業届の控えに押されていた収受印が廃止されました。これにより、個人事業主が提出事実を証明する手段が大きく変化しています。これまで銀行口座開設や補助金申請の際には、収受印付きの控えが「開業届の証明書」として利用されてきましたが、今後は別の方法で証明する必要があります。

本記事では、開業届の証明が求められる場面ごとの対応策や、収受印の代わりとなる証明手段、電子申請の活用方法について解説します。

開業届の証明書(控え)とは

開業届は、個人事業主が税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」のことです。その控え(提出者が保管する写し)は、事業を開始したことを証明する書類として重要な役割を果たしてきました。

法人の場合は登記簿謄本など公的な登録記録がありますが、個人事業主にはそれがないため、開業届の控えが開業の事実を示す唯一の公的書類と言っても過言ではありません。

例えば、屋号名義の銀行口座を開設する際や事業用クレジットカードの申し込み、事業資金の融資を受ける場合、小規模企業共済への加入手続きなど、各種場面で「開業届の証明書」として控えの提出や提示を求められることがあります。このように、開業届の控えは個人で事業を始めたことを第三者に示す大切な書類となってきました。

従来の運用:開業届の控え受領と収受印の仕組み

2025年以前の運用では、開業届を提出すると税務署から控えに受領印(収受日付印)を押してもらうことができました。窓口では開業届の原本とコピーを持参すれば、その場で収受印が押された控えを受け取れました。郵送でも、コピーと返信用封筒を同封すれば印が押された控えが返送され、証明書として保管できました。

一方、e-Taxで電子申請した場合には紙の控えは発行されず、代わりに「受信通知」がメッセージボックスに届き、提出の証拠となりました。以前は紙提出が主流で、収受印付きの控えを確実に入手・保管することが基本的な手続きとされていました。

2025年制度改正:収受印廃止と開業届控え運用の変更

令和7年(2025年)1月から、税務署に提出する各種書類の控えに対する押印が廃止され、これまで一般的だった「収受印付きの開業届控え」は発行されなくなりました。この制度改正は、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化を推進する流れの一環とされています。控えの取り扱いが大きく変わったことで、今後は証明書としての機能を自分でどのように確保するかがポイントとなります。

開業届の控えに収受印が押されない仕組みに変更

2025年以降、開業届を紙で提出した場合でも、控えに収受印は一切押されなくなりました。従来のように、税務署窓口で原本と控えを持参したとしても、返却される控えに印が入ることはありません。郵送で提出した場合も同様で、返信用封筒とともに控えを送付しても、押印された控えは返ってこないことになります。現在は経過措置として、提出日付と税務署名が記載されたリーフレットが返送されることがありますが、将来的にはそのリーフレットも廃止される可能性があります。

制度変更の背景は行政のデジタル化方針

この運用変更の背景には、国税に関する手続きや業務の在り方の抜本的な見直し(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX))があります。e-Taxの利用者は年々増加しており、税務署側としても書類管理や受付の効率化を求められる状況にあります。このため、控えへの押印という手間のかかる対応を廃止する判断がなされました。

今後は提出者が証明方法を自ら用意する必要がある

収受印がなくなったことで、開業届の提出日や提出済みの証明をどう残すかが課題となります。これまでは収受印付き控えがその役割を果たしていましたが、今後は提出者が自ら提出記録を残す必要があります。e-Taxを利用すれば受信通知という電子データが得られ、それが証明になります。紙で提出する場合は、提出日を自身で記録したうえで、提出済みの控えや税務署からの返送書類を保管しておくことが、今後の証明手段として有効とされます。

収受印廃止後に開業届の提出を証明する3つの方法

開業届の控えに収受印が押されなくなったことで、提出した事実をどう証明すればよいかという疑問が多く寄せられています。

国税庁ではこの点に対応するため複数の代替手段を用意しており、状況に応じて有効な方法を選ぶことができます。ここでは、収受印の代わりとして使える3つの方法について解説します。

(1)e-Taxによる受信通知と電子申請等証明書

e-Taxを利用して開業届を電子申請した場合、提出後すぐに「受信通知」がメッセージボックスに届きます。この通知には、申請者の氏名や受付番号、受付日時などが記載されており、それ自体が開業届の提出を証明する記録として使うことができます。受信通知を必要に応じて印刷して保管しておくと便利です。期間を経過するとメッセージボックスから削除されますので注意してください。

より正式な証明書が必要な場合には、「電子申請等証明書」の交付をe-Tax上から請求できます。これは、提出した事実を税務署が証明する公式な文書で、無料で発行されます。PDF形式で交付されるこの証明書は、銀行や自治体への提出資料としても十分に有効です。発行を受けるにはマイナンバーカードによる本人確認が必要となりますが、収受印付きの控えが不要となった今、安心して提出履歴を証明する手段として活用できます。

(2)申告書等閲覧サービスを使った提出記録の確認

紙で開業届を提出し、控えを受け取らなかった、あるいは紛失してしまった場合には、「申告書等閲覧サービス」を活用する方法もあります。このサービスでは、自分が過去に提出した開業届の内容を税務署の窓口で閲覧することが可能です。利用にあたっては、運転免許証やマイナンバーカードなど本人確認書類を提示する必要があります。

閲覧時には書類のコピーをもらうことはできませんが、スマートフォンなどでの写真撮影や、内容の手書き記録が認められています。内容や提出日付を確認する目的であれば十分な手段と言えるでしょう。すぐに証明が必要な場合や、提出した事実の確認だけで問題がないケースにおいては、このサービスが手軽な解決策となります。

(3)保有個人情報開示請求による開業届控えの再発行

どうしても開業届の正式な控えが必要な場合には、「保有個人情報の開示請求」を行い、税務署に対して正式な写しの交付を申請する方法があります。この手続きでは、所定の申請書に必要事項を記入し、本人確認書類を添付したうえで提出します。手数料として収入印紙300円分(オンライン請求では200円)が必要になります。

交付申請を行ってから30日以内で決定通知が届き、その後、窓口で受け取るか、郵送で送ってもらうかを選べます。郵送を希望する場合は、返信用封筒と郵送料が別途必要です。再発行される控えには収受印は付きませんが、税務署が保有する正式な記録の写しであり、行政機関や金融機関などで公的な証明書として通用します。時間と手間はかかるものの、確実な方法として覚えておくと安心です。

開業届の控えや写しが必要な場面での対応は?

開業届の提出後、控えやその写しを求められる場面は数多く存在します。事業に関する手続きを行う場面では、事業の実態を証明するために「開業届の証明書」の提示を求められることがあります。2025年から収受印が廃止されたことで、従来と同じ対応ができない場合もありますが、正しく準備すれば問題なく対応できます。ここでは、実際に開業届控えの提出が必要となるケースごとに、制度変更後の適切な対応方法を紹介します。

銀行で屋号口座を開設する場合

個人事業主がビジネス用の屋号付き口座を銀行で開設する際、開業届の控え提出を求められることが一般的です。これまでは収受印の押された開業届控えが証明資料として使われていましたが、2025年1月以降は紙提出でも控えに収受印が押されなくなりました。しかし、銀行側もこの制度変更を把握しており、控えに押印がないことは問題視されないケースが多くなっています。開業届の写しを提示しつつ、「税務署の運用変更により、現在は控えに印が押されない」と説明すればスムーズに対応してもらえるでしょう。

さらに安心感を高めたい場合は、e-Taxで提出した場合の受信通知や、電子申請等証明書を併せて提出することで、開業届の提出事実をより明確に証明することができます。電子申請等証明書は税務署長名で発行される公的な書類であるため、金融機関にも十分な信用力を持つ資料と認められやすく、確実性を重視する場面で有効です。

事業ローンの申請や公的支援制度を利用する場合

融資や補助金といった公的支援制度を利用する際にも、開業届の控え提出を求められることがあります。日本政策金融公庫の創業融資や、自治体の助成金・補助金制度など、事業の存在を公的に示す必要がある場面では、提出書類の信頼性が重視されます。開業届の控えに収受印がない場合でも、電子申請等証明書や受信通知の写しなど、制度変更後に対応した証明資料を用意することで問題なく対応が可能です。

また、補助金の申請要項などに「税務署の受付印がある開業届の写し」などと明記されている場合には、制度変更の趣旨を説明し、代替書類として電子申請等証明書を提出することが望ましいです。制度変更を把握していない窓口担当者に対しては、国税庁の公式発表などの情報を提示し、収受印の廃止が全国的な取り扱いであることを理解してもらえるよう説明することが求められます。

本人が保存している提出控えとあわせて、「保有個人情報開示請求」によって開業届の写しを取得する方法も有効です。いずれにしても、確実に提出事実が示せる資料をそろえることが大切です。

その他のケース:クレジットカード発行、共済加入、契約時など

ビジネス用クレジットカードの申請、小規模企業共済への加入、キャッシュレス決済サービスの導入、税理士との契約などの場面でも、開業届の控えの提出が求められることがあります。これらの手続きも基本的には、収受印のある控えがあればよりスムーズですが、制度変更後は収受印なしの写しで対応せざるを得ません。

その場合も、制度改正の内容を相手先に説明したうえで、必要に応じて電子申請等証明書を提出するか、受信通知の写しをあわせて提示することで対応可能です。共済制度など一部の公的制度では、制度変更に応じた新たな取扱いルールが公開されていることもありますので、提出書類の条件について不安がある場合には、事前に問い合わせて確認しておくと安心です。

いずれのケースでも、最も重要なのは、収受印がなくても「開業届が正式に提出されたものであること」を適切に証明する手段を用意しておくことです。電子的な証明書や公式な通知書を活用すれば、多くの提出先で従来の控えと同様に扱ってもらえるようになっています。制度変更を正しく理解し、それに合わせて資料を準備すれば、これまでと同様に各種手続きを問題なく進めることができます。

開業届をオンラインで電子申請する方法(e-Tax利用)

開業届を提出するにあたって、2025年以降は電子申請(e-Tax)の利用がますます注目されています。収受印の廃止により、紙提出の控えが証明として使いづらくなった今、自宅で完結できる電子申請は便利な手段です。ここでは、初めての方でも安心して使えるよう、e-Taxを用いた開業届の提出手順を解説します。

ステップ1:マイナンバーカードやICカードリーダーの準備

まず、e-Taxで開業届を提出するには、マイナンバーカードが基本的に必要になります。このカードに内蔵されている電子証明書を使って、e-Taxにログインし、電子署名を行うためです。パソコンを使用する場合は、マイナンバーカードに対応したICカードリーダーの用意も求められます。スマートフォンでも、対応アプリを使用すれば読み取りが可能です。もしマイナンバーカードを所持していない場合でも、税務署で「利用者識別番号」と暗証番号を取得すれば、ID・パスワード方式でログインはできます。ただし、電子申請等証明書を取得するためには、マイナンバーカード方式が必要になりますので、できるだけマイナンバーカードの利用をおすすめします。

ステップ2:e-Taxにアクセスしてログイン

事前準備が整ったら、国税庁のe-Taxソフト(Web版)にアクセスします。初めての方は、画面の案内に従って利用者識別番号(ID)を取得し、アカウントを作成してください。すでにIDをお持ちの場合や、マイナンバーカードでログインできる環境がある場合は、そのままログインが可能です。ログイン後は、トップページにある「申告・申請・納税」メニューから、「個人事業の開業・廃業等届出書」の入力フォームを選びます。このフォームが、電子的に開業届を提出するための専用画面です。

ステップ3:開業届の必要事項を入力する

フォームに進んだら、氏名、住所、生年月日、職業、開業日、事業内容、屋号などの情報を入力していきます。基本的には紙の開業届と同じ項目で構成されているため、あらかじめ内容を整理しておけばスムーズに進められます。青色申告を希望する場合は、申請欄で「する」を選択することを忘れないようにしましょう。通常は添付書類は必要ありませんが、税務署から指示があった場合には、案内に従ってファイルを添付してください。すべての入力内容を確認したら、送信に進みます。

ステップ4:電子署名の付与と受信通知の保存

開業届の入力が完了したら、マイナンバーカードを使って電子署名を付け、データを送信します。送信が正常に完了すると、e-Taxのメッセージボックスに「受信通知」が届きます。この通知には提出者の情報や受付番号、提出日時などが記載されており、正式な提出記録として保存しておくことが大切です。受信通知はダウンロードできますので、必ず自身のパソコンに保存しておきましょう。証明資料として将来必要になる可能性もあるため、バックアップの保管をおすすめします。

電子申請等証明書の取得方法

より公的な証明が必要な場面では、「電子申請等証明書」を取得することも検討しましょう。これは、e-Taxで行った電子申請の事実を税務署が正式に証明する文書であり、申請者の名義と提出日時などが明記されたPDFファイルとして交付されます。e-Taxのメッセージボックスから請求でき、手数料はかかりません。申請後しばらくすると、電子的にダウンロードできる形式で受け取ることができます。この証明書は、銀行口座開設や補助金申請など、正式な提出記録が必要な場面で役立ちます。

収受印廃止後も対応できるよう、開業届の証明と提出方法を知っておこう

開業届は、個人事業を始めたことを示す大切な書類です。2025年から控えへの収受印が廃止され、証明の方法が変わりましたが、e-Taxの受信通知や電子申請等証明書、税務署の閲覧や個人情報開示請求を活用すれば、これまでと同様に証明が可能です。屋号付き口座の開設や融資申請といった場面でも、こうした代替手段で対応できます。これからは自分で提出記録を残す意識を持ち、適切な方法で備えておきましょう。

よくある質問

開業届の控えが必要になる場面とは?

屋号で銀行口座を作る場合や、法人用のクレジットカードを作る場合、事業資金の融資を受ける場合などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

開業届の控えを確認するには?

税務署の窓口に行けば、申告書等閲覧サービスにより、自分が過去に提出した開業届を無料で閲覧できます。詳しくはこちらをご覧ください。

開業届を再提出して控えをもらう方法も?

保有個人情報開示請求書を提出して開業届の控えをもらうには1カ月程度がかかることがありますが、開業届を再提出すればすぐに入手することができます。詳しくはこちらをご覧ください。


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