- 更新日 : 2025年11月25日
法人登記は郵送でできる?申請方法や封筒の書き方、必要書類を解説
法人登記は、法務局の窓口へ行かずに郵送で申請を完結させることが可能です。そのため、遠隔地にいても、日中の業務が多忙でも、会社の設立や役員変更などの手続きを進められます。
しかし、郵送ならではの書類の準備や封筒の書き方にはルールがあり、これを誤ると手続きが滞る原因になりかねません。
この記事では、郵送による法人登記の具体的な手順、必要書類、日数、費用、そして注意点まで、企業の担当者が直面する課題をふまえてわかりやすく解説します。
目次
そもそも法人登記は郵送で申請できる?
法人登記の申請は、法務局の窓口持参、オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)、そして郵送の3つの方法から選べます。郵送の場合は、申請書類が法務局に配達された日(配達日)が「申請日」として扱われます。
郵送による登記申請は、法務局へ直接出向く必要がないため、時間や場所の制約を受けずに手続きを進められる方法です。特に、法務局が遠方にある場合や、日中の業務で時間が確保しにくい経営者、バックオフィス担当者にとって有効な選択肢となるでしょう。
郵送申請のメリット・デメリット
郵送申請には利便性がある一方で、注意すべき点もあります。メリットとデメリットを理解し、自社に合った方法を選択しましょう。
- 法務局へ出向く時間と交通費を削減できる
- 24時間いつでも発送手続きが可能
- 全国どこからでも申請できる
- 書類に不備があった場合、修正に時間がかかる
- 郵送途中の紛失や遅延のリスクがある
- 申請から登記完了まで、窓口や適切なオンライン手続に比べ長くなる傾向がある
郵送の際は、紛失リスクを避けるため、普通郵便ではなく、配達状況が追跡できる、レターパックや簡易書留などの方法で提出しましょう。
法人登記を郵送で申請する際の必要書類
郵送で会社設立の法人登記を行う場合、会社形態(株式会社・合同会社)で必要書類が異なります。最新の様式・記載例は法務局ウェブサイト(商業・法人登記の申請書様式)で確認するか、司法書士など専門家に相談しましょう。
また、設立登記では「定款」の取扱いが株式会社と合同会社で異なります。株式会社の場合は公証人認証が必要で、合同会社は不要です。合同会社は、株式会社と異なり定款の認証が不要なため、設立費用と手間を抑えられます。
1. 株式会社を設立する場合
| 必要書類 | 補足 |
|---|---|
| 登記申請書 | 会社の基本情報(商号・本店所在地・目的・資本金・役員構成等)を記載する主たる申請書 |
| 登記すべき事項 | 申請書への記載に代えて、CD-R等の電磁的記録媒体で提出可 |
| 登録免許税納付用台紙 | 資本金の0.7%(最低15万円)の収入印紙を貼付(申請者側で消印は不要) |
| 定款 | 公証役場で認証済みの定款 |
| 発起人の同意書 | 発起人全員が定款内容を承諾したことを証する書面 |
| 設立時代表取締役を選定したことを証する書面 | 取締役会設置会社では、取締役会議事録として提出。取締役会非設置会社では発起人決定書または取締役全員の書面決議で代替可 |
| 設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書 | 各役員が就任を承諾したことを証する書面。就任日・署名押印を明記 |
| 印鑑証明書 | 設立時取締役・監査役等の本人確認書類。取締役会非設置会社では全取締役の印鑑証明書が必要な場合あり |
| 本人確認証明書 | 設立時監査役を選任した場合には、設立時監査役について、住民票記載事項証明書、運転免許証のコピー |
| 設立時取締役(及び設立時監査役)の調査報告書及びその附属書類 | 会社法第28条各号に規定する定めが定款に定められている場合に限る |
| 払込みを証する書面 | 発起人の口座に資本金が振り込まれた事実を証明。通帳コピーや振込明細書等で可 |
| 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書 | 現物出資がある場合に必要 |
| 委任状 | 代理人に申請を委任した場合のみ必要 |
- 各種申請書様式一覧
商業・法人登記の申請書様式|法務局 - 株式会社設立登記申請書(書式・記載例)
【記載例】株式会社設立登記申請書|法務局
株式会社設立登記申請書|法務局 - 印鑑届書
登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式|法務局
2. 合同会社を設立する場合
| 必要書類 | 補足 |
|---|---|
| 登記申請書 | 会社の基本情報を記載する申請のメイン書類 |
| 登記すべき事項 | 申請書への記載に代えて、CD-R等の電磁的記録媒体で提出可 |
| 登録免許税納付用台紙 | 資本金の0.7%(最低6万円)の収入印紙を貼付(申請者側で消印は不要) |
| 定款 | 社員全員が作成・署名または記名押印したもの。 株式会社と異なり公証人による認証は不要 |
| 代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面 | 定款で未定の事項(例:本店所在地番地、代表社員の氏名等)を決定した旨を証する書面 |
| 代表社員の就任承諾書 | 代表社員が就任を承諾した旨を証する書面 |
| 登記事項証明書 | 法人が社員となる場合、その法人の登記事項証明書を添付 |
| 職務執行者の選任に関する書面 | 社員が法人の場合(例:他社が社員)で、その社員法人が実際に行う業務を執行する者を定める場合に必要 |
| 職務執行者の就任承諾書 | 職務執行者が就任を承諾したことを証する書面 |
| 払込みがあったことを証する書面 | 具体的には、払込金受入証明書又は代表社員が作成した払込みを受けたことを証明する旨を記載した書面等が該当 |
| 資本金の額の計上に関する代表社員の証明書 | 現物出資がある場合に必要 |
| 委任状 | 代理人に申請を委任した場合のみ必要 |
- 各種申請書様式一覧
商業・法人登記の申請書様式|法務局 - 合同会社設立登記申請書(書式・記載例)
合同会社設立登記申請書|法務局
【記載例】合同会社設立登記申請書
原本還付を希望する場合
申請書に添付する書類は、原則として原本を提出する必要があります。そのため、議事録や許可書など、当事者が手元で原本を保管しておくべき書類については、原本の返却を求めることが可能です。
原本の還付を希望する場合は、原本をコピーした書面(複数枚にわたる場合は綴じたもの)に、申請書へ押印した本人が「原本と相違ありません。」と記載し、記名したものを添付してください。原本とコピーの双方を併せて提出する必要があります。
法人登記を郵送で申請する際の流れと手順は?
郵送による法人登記は、正しい手順に沿って進めることでスムーズに完了します。ここでは、書類の準備から登記完了の確認までを5つのステップに分けて解説します。
STEP1. 必要書類を準備する
まず、設立する会社形態(株式会社、合同会社など)に応じた必要書類をすべて揃えます。たとえば、株式会社では定款の公証人認証が必要ですが、合同会社では不要です。必要書類の一覧は法務局のウェブサイト「商業・法人登記の申請書様式」で最新版を確認するか、司法書士などの専門家に相談してください。
STEP2. 登記申請書を作成する
法務局のウェブサイトから該当する登記申請書の様式(テンプレート)をダウンロードし、必要事項を記入します。記載内容に誤りや欄外記載があると補正(修正)の対象となり、手続き完了までに時間がかかる可能性があります。記載例を参考に、正確に作成しましょう。
STEP3. 封筒を準備し、宛名や必要事項を記載する
書類一式が折らずに入る「角形2号」(A4サイズ対応)の封筒を準備します。表面には管轄の法務局の住所・名称を省略せず記載し、宛名に「〇〇法務局 御中」と記入します。
左下あたりには、朱書きで「登記申請書在中」と明記しましょう。裏面には、申請者(会社名・代表者名、または代理人名)、住所、日中連絡のつく電話番号を必ず記載してください。
STEP4. 書類一式を同封して郵送する
この封筒に、登記書類一式と返信用封筒を同封します。返信用封筒は「原本還付」や「登記完了通知」などの返送に使用されます。返信封筒を入れ忘れると、登記完了通知や原本返却が受け取れない場合があります。
郵送方法には、配達記録が残る方法(例:簡易書留、レターパックプラス等)を使うことを推奨します。普通郵便でも申請自体は可能ですが、万一の書類紛失や遅延時に証明ができず手続きが滞る可能性があります。
STEP5. 登記完了を確認する
申請書類が法務局に配達された日(配達日)が「申請日」として扱われます。登記完了までの期間は、通常1〜2週間程度です(法務局の繁忙期を除く)。完了予定日は各法務局のウェブサイト「登記完了予定日情報」で公示されています。予定日を過ぎたら、以下のいずれかで完了を確認します。
- 郵送した返信用封筒で「登記完了通知書」や「原本還付書類」が届く
- オンラインで登記事項証明書や印鑑証明書を請求
- 窓口で証明書を取得して内容を確認
登記申請の郵送方法と封筒の書き方は?
郵送申請の成否を分けるのが、正しい郵送方法の選択と封筒の書き方です。ここでは、具体的な方法と記載例を解説します。
おすすめの郵送方法:レターパックか簡易書留
登記申請のような重要書類の郵送には、配達状況を追跡できる方法が適しています。
| 郵送方法 | 特徴 |
|---|---|
| レターパックプラス(赤) |
|
| 簡易書留 |
|
これらの方法で送ることで、「送った」「届いていない」というトラブルを防ぐことにつながります。
参照:レターパック|日本郵便 、書留|日本郵便
封筒(表・裏)の具体的な書き方
登記申請書類を郵送する封筒は、誰が・どこへ・何を送ったのかが明確にわかるように記載します。封筒は、A4サイズの書類を折らずに入れられる角形2号(A4対応)を使用します。
- 宛先住所:管轄法務局の住所を正式名称で省略せずに記載
- 宛名:「〇〇法務局 商業・法人登記部門 御中」
※部門名が不明な場合は「〇〇法務局 御中」で可 - 朱書き:左下に赤字で「登記申請書在中」と明記
- 差出人情報:申請者(会社または代表者)の郵便番号・住所・氏名を記載
- 連絡先:日中に連絡が取れる電話番号を明記( 軽微な補正(修正)連絡を受けやすくなります)
返信用封筒は必要?書き方と切手代
登記完了後に、返却を依頼する書類(原本還付した書類など)や、完了をお知らせする書類を受け取るために返信用封筒の同封が必要です。
準備する封筒は、A4用紙が折らずに入る「角形2号」などが適しています。封筒の表面には、宛先として自社の郵便番号、住所、会社名を正確に記載しておきましょう。
貼付する切手の金額は、返送される書類の重さをふまえて計算します。もし重さが判断できない場合は、少し多めの金額の切手を貼っておくと料金不足を防げるので安心です。
また、返送してもらう書類の重要度に応じて、普通郵便だけでなく簡易書留などを選択することも可能です。その場合は、簡易書留分の料金を含めた切手を忘れずに貼りましょう。
これらの書類の返却を希望する場合は、申請書類一式と一緒に、宛名を書いて切手を貼った返信用封筒を忘れずに同封してください。
法人登記申請書の郵送先はどこ?
登記申請書は、どの法務局に送ってもよいわけではありません。提出先を間違えると、書類が返送されてしまい、大幅な時間のロスにつながります。
郵送先は会社の本店所在地を管轄する法務局
法人登記の申請先は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局(登記所)です。これは、商業登記法第4条および登記令第3条に基づく基本ルールです。
例えば、本店を東京都千代田区に置く場合は、東京法務局(本局)が管轄となります。現在の住所地や申請者の住所地ではない点に注意しましょう。
管轄法務局の調べ方
管轄の法務局は、法務局のウェブサイトで簡単に調べられます。本店を置く予定の市区町村を選択することで、担当の法務局の名称、住所、連絡先がわかります。郵送前に必ずウェブサイトで正しい送付先を確認してください。
参照:管轄のご案内|法務局
法人登記の郵送申請にかかる期間と費用は?
郵送申請を利用するにあたり、どのくらいの日数と費用がかかるのかを事前に把握しておくことは、事業計画を立てるうえで欠かせません。
申請から登記完了までの日数
郵送の場合、申請から登記が完了するまでの期間は、法務局に書類が到着してからおおむね1週間〜2週間が目安です。ただし、法務局の繁忙期(年末年始や連休前後など)や、申請内容に不備があった場合の補正期間はこれに含まれません。具体的な完了予定日は、各法務局のウェブサイトで公示されているため、申請前に確認しておくとよいでしょう。
必要な費用
法人登記にかかる費用は、大きく「登録免許税」と「その他諸経費」に分けられます。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 株式会社:資本金の0.7% (最低15万円) 合同会社:資本金の0.7% (最低6万円) | 資本金の額によって変動 |
| 郵送費 | 370〜600円程度 | レターパックライト(370円)またはレターパックプラス(600円)を利用。簡易書留の場合は「基本料金+350円」 |
| 返信用封筒 切手代 | 84〜210円程度 | 原本還付書類や登記完了通知の返送用封筒に貼付。書類量により変動。重要書類の場合は簡易書留で返送を依頼することも可能(+350円) |
| その他 | 登記事項証明書:600円/通 印鑑証明書:450円/通 | 登記完了後に交付請求可能 |
司法書士などの専門家に依頼する場合は、これらの実費に加えて専門家報酬が別途必要です。
郵送申請でやりがちな失敗例と対処法は?
郵送申請は便利ですが、対面でないからこその失敗も起こりがちです。ここでは、よくある失敗例とその対処法を紹介します。専門家に頼らず自分で手続きを行う方は特に注意してください。
収入印紙の扱いを誤る(自ら消印してしまう/貼付漏れ)
登録免許税として納める収入印紙には、自分で消印をしてはいけません。消印は法務局の担当者が行います。誤って消印してしまうと、その収入印紙は無効となり、再購入が必要になる可能性があります。絶対に消印はしないようにしましょう。
書類の不備や不足
最も多い失敗は、必要書類の不足や記載内容の誤りです。特に、役員の就任承諾書や印鑑証明書は、有効期限や記載内容の整合性を厳しくチェックされます。発送前に、法務局のウェブサイトにあるチェックリストなどを活用し、複数人でダブルチェックを行う体制が望ましいでしょう。
管轄法務局の間違い
本店所在地を管轄しない法務局へ誤って郵送してしまうケースです。この場合、申請は受け付けられず、書類一式が返送されてしまいます。必ず事前に法務局のウェブサイトで管轄を確認し、正しい宛先へ郵送してください。
補正(修正)対応の遅れ・誤対応
書類に不備があった場合、法務局から電話で連絡があり、補正を求められます。補正には、法務局の窓口に出向いて訂正する方法と、郵送で対応する方法(補正書を送るなど)があります。
郵送での補正はさらに時間がかかるため、軽微な修正であれば窓口に出向く方が早い場合もあります。法務局の担当者の指示に従い、迅速に対応しましょう。
法人登記の郵送申請まとめ
郵送による法人登記は、ポイントを押さえれば、時間や場所を選ばずに行える効率的な手続きです。登記申請を郵送で行う場合、まずは設立する会社の本店所在地を管轄する法務局を正確に調べ、登記の種類に応じた必要書類を漏れなく準備することが全ての基本となります。
書類が準備できたら、A4サイズ対応の封筒に「登記申請書在中」と朱書きし、配達記録が残る簡易書留やレターパックで送付しましょう。この記事で解説した手順と注意点を最終チェックリストとして活用し、スムーズな法人登記を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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