• 作成日 : 2025年9月16日

焼き芋屋を開業するには?本当に儲かる?失敗しない始め方や営業許可などを解説

冬の風物詩として愛される焼き芋。その甘い香りと素朴な美味しさから、「自分の焼き芋屋を開業したい」と考える方が増えています。しかし、焼き芋屋の成功のためには、周到な準備と戦略的な視点が不可欠です。

この記事では、焼き芋屋のリアルな年収や具体的な始め方、営業許可や必要な機材の選定、さらには成功の確率を高めるためのポイントまで詳しく解説します。

焼き芋屋の開業は儲かる?

焼き芋屋の開業を検討する際、誰もが気になるのは収益性です。ここでは、具体的な年収の目安から、多くの人が陥りがちな失敗の要因まで、事業の現実的な側面を掘り下げます。

焼き芋屋の想定年収

焼き芋屋は儲かるという話を耳にすることもありますが、その収益構造を正しく理解することが大切です。

例えば、1本400円の焼き芋を1日に100本販売した場合、日商は4万円になります。月に20日稼働すると月商は80万円です。さつまいもの原価を25%(20万円)、燃料費、包材費、出店料、車両維持費などのその他経費を25%(20万円)と仮定すると、月の利益は40万円程度と見込めます。

この場合、焼き芋屋の年収は480万円前後と試算できます。もちろん、これはあくまで一例です。販売価格や販売数、出店する場所によって収益は大きく変動します。

焼き芋屋の経営が失敗しやすいと言われる理由

手軽に始められるイメージとは裏腹に、焼き芋屋の経営に失敗する事例も少なくありません。主な原因は、天候や季節による売上の不安定さです。

当然ながら寒い季節は売れ行きが好調ですが、夏場の売上をどう確保するかは大きな課題となります。また、周辺でのライバルの出現や、天候不順によるさつまいもの品質が安定しないといった、自分ではコントロールしにくい外部要因も事業に影響を与えます。

焼き芋屋を開業するまでのステップ

焼き芋屋を開業するためには、思いつきで行動するのではなく、段階を踏んで着実に準備を進めることが大切です。ここでは、焼き芋屋を開業するための具体的な手順を7つのステップに分けて解説します。

1. 事業計画の策定

まず、どのような焼き芋屋にしたいのか、お店のコンセプトを明確にします。高級路線でいくのか、手軽さを売りにするのか。ターゲットとする顧客はファミリー層か、あるいは若者か。

コンセプトが決まれば、提供する商品の種類、価格設定、移動販売か固定店舗かといった販売スタイルなど、事業の骨格が見えてきます。この段階で事業全体の方向性を定めることが、後の様々な判断の基準となります。

2. 資金調達

事業計画に基づき、必要な開業資金を算出します。主な初期費用は、移動販売の場合の車両購入・改造費、店舗取得費、焼き芋屋の機材の購入費、そして当面の運転資金です。

自己資金で不足する場合は、日本政策金融公庫の創業融資などを検討します。詳細な資金計画を立てることが、事業の安定運営に直結します。

3. 営業形態の決定

焼き芋屋の営業形態は、主に移動販売(キッチンカー)と固定店舗の2つに大別されます。

移動販売は出店場所を柔軟に変えられるのが強みですが、天候に左右されやすい側面もあります。一方、固定店舗は天候の影響を受けにくく、顧客からの信頼を得やすいですが、家賃などの固定費がかかります。自身のコンセプトや資金計画に合わせて、最適な形態を選択しましょう。

4. 営業許可の取得

食品を扱うため、固定店舗では焼き芋屋の営業許可は必須です。移動販売(キッチンカー)でも営業許可が必要となるケースがあります。

その場合には、営業施設ごとに食品衛生責任者の資格を持つ者を1名置く必要があります。この資格は、地域の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで取得可能です。

次に、営業形態に応じた許可を保健所で取得します。

  • 移動販売(キッチンカー)
    出店場所を管轄する各保健所から、食品営業自動車の許可を取得するのが一般的です。
  • 固定店舗
    地域によっては、飲食店営業許可以外にも、菓子製造業の許可が必要になる場合があります。

また、2021年6月からはHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理も制度化されており、衛生管理計画の策定と記録が求められます。

5. 出店場所の確保

特に移動販売において、出店場所は売上を大きく左右する重要な要素です。スーパーマーケットの軒先、イベント会場、オフィス街のランチタイム、住宅街などが候補となります。

場所を確保するには、土地や施設の管理者への直接交渉が必要です。人気の場所は競争が激しく、いわゆる縄張りのような暗黙のルールが存在することもあります。トラブルを避け、良好な関係を築くためにも、事前のリサーチと丁寧な交渉が重要です。

6. 芋の仕入れ先と焼き芋機材の選定

焼き芋の味を決定づけるさつまいもの品質は、お店の評価に直結します。信頼できる農家から直接仕入れたり、卸売市場で自身の目で確かめたりと、品質の良い芋を安定して確保できる仕入れルートを確立しましょう。

次に、焼き芋屋の機材を選定します。機材の性能が、焼き上がりの品質と作業効率に影響します。

  • ガス式
    現在の主流で、操作が比較的簡単です。
  • 薪・炭火式
    本格的な味わいを追求できますが、火の管理に手間がかかります。
  • 電気式
    安全性が高く煙も出ないため、イベント会場や屋内での出店に向いています。

それぞれの特徴を理解し、自分のコンセプトや出店場所に合った機材を選びましょう。

7. 宣伝活動

開業日が決まったら、SNSアカウントを開設して情報を発信し始めましょう。出店場所の告知やメニューの紹介、お店のこだわりなどを投稿し、オープン前からファンを作ることが効果的です。

地域住民への挨拶回りや、プレオープンイベントの開催も、口コミを生む良いきっかけになります。オープン当日に向けて、着実に期待感を高めていく仕掛け作りが、順調なスタートを切るための後押しとなります。

焼き芋屋の開業を成功に導くための戦略

開業準備を整えるだけでは十分ではありません。数ある競合の中から選ばれ、長く愛される店になるためには、独自の戦略と外部のサポートを上手に活用する視点が大切です。

他店との差別化で独自の強みを作る

焼き芋というシンプルな商品だからこそ、他店との差別化が成功の鍵を握ります。

ねっとり系やほくほく系といった食感の違いを打ち出したり、希少品種のブランド芋を扱ったりすることで専門性をアピールできます。また、冷やし焼き芋や焼き芋ブリュレ、焼き芋シェイクといったアレンジメニューの開発も有効です。商品の魅力を引き立てる、おしゃれなパッケージデザインも顧客の心を掴む要素になります。

SNS活用とオンライン販売で販路を拡大する

現代の集客において、InstagramやX(旧Twitter)といったSNSの活用は欠かせません。美味しそうな焼き芋の写真や動画、日々の出店情報、店主のこだわりなどを発信することで、顧客との継続的なつながりを深められます。

さらに、冷凍焼き芋のオンライン販売も新たな収益源となります。店舗や移動販売の商圏にとらわれず、全国に販路を広げることが可能です。

焼き芋屋の開業支援サービスを活用する

未経験からの開業に不安がある場合、焼き芋屋の開業支援サービスを利用するのも一つの手です。

開業支援サービスは、機材のレンタルや販売、芋の安定供給、経営ノウハウの提供まで行うフランチャイズや、専門のコンサルティングなどがあります。提供されるサポート内容や契約条件は様々なので、複数のサービスを比較検討し、自分の目指す方向性に合った支援先を見極めることが重要です。

計画的な準備で焼き芋屋の開業を成功させよう

焼き芋屋の開業は、比較的低い初期投資で始められる魅力的なビジネスですが、その裏には厳しい競争や売上の不安定さといった現実があります。儲かるという言葉だけを信じて安易に始めると、失敗する可能性は高まります。

成功のためには、入念な事業計画と、他店にはない独自の強みを作り出す戦略が不可欠です。本記事で解説した始め方のステップを着実に実行し、必要な営業許可の取得や機材選定を慎重に進めてください。

天候に左右されないための夏場のメニュー開発や、SNSを活用したファン作りなど、常に工夫を続ける姿勢が安定経営につながります。この記事が、あなたの焼き芋屋開業という夢を実現させるための、確かな一歩となれば幸いです。


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