• 更新日 : 2025年11月18日

創業融資の申し込み期限はいつまで?事業開始後何年以内?

日本政策金融公庫の創業融資は、いつまでに申し込むべきなのでしょうか。創業後の特定のタイミングを過ぎると、利用できなくなるため注意が必要です。

日本政策金融公庫の創業融資の申し込みは、原則として事業開始後2回目の税務申告を終えるまでに行う必要があります。そのため、創業から何年以内という期間ではなく、決算の回数が基準となります。

この記事では、日本政策金融公庫の制度を中心に、創業融資を申請できる具体的な期間や、起業家が知っておくべきポイントを詳しく解説します。

そもそも創業融資とは?

創業融資とは、主に日本政策金融公庫が新たに事業を始める方や事業開始後間もない方を対象に行う貸付制度です。民間の金融機関では実績がないと融資を受けるのが難しい一方、公庫の創業融資は事業計画や将来性を評価して資金を供給する点で、創業者にとって大きな支えとなります。

創業融資の申し込み期限はいつまで?

日本政策金融公庫の創業融資は、事業を開始してから2回目の税務申告を終えるまでが対象です。創業後何年以内という区切りではなく、正確には「決算期を2回経過するまで」、もしくは「税務申告を2回終えるまで」と理解してください。

例えば、4月1日に創業し3月決算の法人の場合、利用できるのは約2年弱の期間です。この期間を過ぎてしまうと、創業融資ではなく一般の事業資金融資として扱われ、審査基準が変わる点に注意が必要です。

参考:創業融資のご案内|日本政策金融公庫

新創業融資制度は廃止

多くの創業者に利用された「新創業融資制度」は、2024年3月末で廃止され、「新規開業・スタートアップ支援資金」という制度に統合されています。この変更により、従来求められていた自己資金の要件(創業資金総額の10分の1)は撤廃されています。

制度の概要

「新規開業・スタートアップ支援資金」の主な内容は以下のとおりです。

項目内容
対象者新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金:20年以内(据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(据置期間5年以内)
担保・保証人原則として不要
金利(利率)融資制度、返済期間、担保の有無などにより変動

※最新情報は公式ホームページを参照ください。

特に、女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)が起業する場合には、さらに有利な条件が適用される関連制度もあります。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫
女性、若者/シニア起業家支援資金|日本政策金融公庫

申込期間は税務申告が基準になる

申込期間の基準となる事業開始のタイミングは、法人の場合は設立登記日、個人事業主の場合は開業届の提出日が一般的です。そして、期間の終わりは2回目の税務申告、つまり決算を終えるまでと明確に定められています。創業から何年以内といった曖昧なものではなく、税務申告の回数が客観的な基準です。

【法人の場合】

  • 事例:2025年4月1日に会社を設立(3月決算)
  • 事業開始日:2025年4月1日(設立登記日)
  • 1回目の決算・申告:2026年3月末
  • 2回目の決算・申告:2027年3月末
  • 申込期限:2027年3月末の税務申告を終えるまで

この場合、実質的な申込期間は創業から約2年間となります。

【個人事業主の場合】

個人事業主の事業年度は、暦年(1月1日~12月31日)で固定されています。

  • 事例:2025年4月1日に開業届を提出
  • 事業開始日:2025年4月1日(開業日)
  • 1回目の確定申告:2026年3月15日まで(2025年分の申告)
  • 2回目の確定申告:2027年3月15日まで(2026年分の申告)
  • 申込期限:2027年3月15日までに2026年分の確定申告を終えるまで

開業時期によっては、申込期間が1年強と短くなるケースもあるため、早めの準備が求められます。

創業融資の期限を過ぎてしまった場合

もし2回目の税務申告を終えてしまった場合、日本政策金融公庫の創業融資は利用できません。その場合は、日本政策金融公庫の「一般貸付」や、民間金融機関の事業資金融資(プロパー融資や信用保証協会付き融資)が選択肢となります。ただし、これらの融資は創業融資と異なり、過去の事業実績や決算内容がより厳しく評価される傾向にあります。

創業融資の返済期間はいつまで?

創業融資の返済期間は、資金の使い道によって異なります。日本政策金融公庫の場合、運転資金は原則10年以内、設備資金は最長20年以内(いずれも据置期間最大5年)が基準です。

また、廃業歴等があり創業に再チャレンジする再挑戦支援関連では、運転資金は15年以内と、より長期の返済期間となっています。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫
新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)|日本政策金融公庫

創業融資の審査や入金はいつまでかかる?

申し込みから面談を経て審査結果が通知されるまでには、一般的に2〜3週間程度かかります。その後、契約書類を返送してから入金までの所要日数は、通常おおむね1週間です。書類に不備があったり、面談の日程が合わなかったりすると、さらに時間を要することもあります。

創業融資はいつ申し込むのがベストタイミング?

創業融資は、期限内であればいつでも申し込めますが、事業の状況によって有利・不利が生まれることがあります。どのタイミングで申し込むのが最適か、それぞれのメリット・デメリットをふまえて検討しましょう。

創業前の申し込み(プレローン)

事業を開始する前に融資を申し込む方法です。会社設立前や開業届を出す前に資金を確保できるため、安心して事業をスタートできます。創業前の融資の申し込みは、開業資金の不足を心配することなく、店舗の賃貸借契約や設備投資、商品の仕入れなどを計画的に進められるメリットがあります。

一方で、事業実績が全くない状態での審査となるため、事業計画の実現可能性や自己資金の準備状況が評価の中心となります。そのため、計画に具体性や説得力が欠けていると、厳しく指摘される可能性が高まります。

創業直後の申し込み

会社設立や開業届提出後、すぐに申し込むタイミングです。事業が動き出しているため、計画の具体性が増します。創業直後の申し込みのメリットは、店舗の賃貸借契約や仕入先との交渉といった実際の事業活動を示せることにあります。これにより、事業計画が単なる机上の空論ではないと証明でき、内容に説得力を持たせやすくなるでしょう。

ただし注意点として、創業直後は事業の立ち上げで最も多忙な時期です。その中で融資申込のための書類準備や面談対策を並行して進めなければならず、経営者の負担が大きくなる可能性があります。

事業計画の精度を高めるなら創業後がおすすめ

最もおすすめなのは「創業後1~3ヶ月程度経過したタイミング」です。なぜなら、この時期には事業を実際に稼働したからこそ見えてくる具体的な課題や数値を、事業計画に反映できるからです。 例えば、「想定していた客層と実際の顧客層が違った」「予想以上に見積依頼が多く、対応人員が不足している」といったリアルな情報を面談で伝えられれば、融資担当者も計画の実現性を高く評価してくれるでしょう。

日本政策金融公庫以外の創業融資と申込期間

資金調達の選択肢は日本政策金融公庫だけではありません。地方自治体の制度融資や、民間金融機関が提供する融資制度もあります。

制度融資(信用保証協会付き融資)

地方自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度です。自治体が利子の一部を負担(利子補給)してくれるなど、創業者に有利な条件が設定されている場合があります。

ただし、日本政策金融公庫に比べて審査に関わる機関が多いため、手続きに時間がかかる傾向があります。

申込期間は、「事業開始後」といった条件が設けられていることが多く、具体的な期間は各自治体の制度によって異なります。例えば東京都では「創業から5年未満」が対象となる制度があります。地方自治体により1年未満など異なる場合がありますので、よく確認しましょう。

参照:東京都中小企業制度融資『創業』|東京都創業NET

民間金融機関のプロパー融資

銀行や信用金庫などが、信用保証協会の保証を付けずに直接融資を行うのが「プロパー融資」です。 実績のない創業者へのプロパー融資は、金融機関にとってリスクが高いため、審査のハードルは極めて高いのが実情です。通常は、事業を開始して一定の実績、少なくとも2~3期分の黒字決算を積んでからでないと、検討の対象となるのは難しいでしょう。

創業融資の申し込み手順

日本政策金融公庫の創業融資は、申し込みから入金まで全体で約1ヶ月から1ヶ月半が目安です。各段階での準備を丁寧に進めることが、融資の実現に繋がります。

1. 事前相談と情報収集

まずは、日本政策金融公庫の窓口に電話するか、直接訪問して相談することから始めます。これは必須ではありませんが、融資制度の詳しい内容や、自身の事業が対象になるか、どのような準備が必要かを確認できるため、一度相談しておくとその後の手続きが円滑になります。

この段階では、どのような事業を始めたいのか、大まかな事業の概要を伝えられるようにしておきましょう。

2. 申込書類の準備

相談後、または自身で必要性を判断した場合、申込書類の準備に取り掛かります。書類は公庫のウェブサイトからダウンロードするか、窓口で受け取ります。

主に必要となる書類は以下の通りです。

  • 借入申込書
  • 創業計画書
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)
  • 自己資金の証明資料
  • 設備投資の見積書
  • 不動産の賃貸借契約書
  • 許認可証の写し

これらの書類を不備なく揃えることが、審査をスムーズに進める第一歩です。

3. 面談

申込書類を提出してから1週間以内に、公庫の担当者から面談日程の調整連絡が入ります。面談は公庫の支店で行われ、所要時間は30分から1時間程度です。

面談では、提出した創業計画書の内容に沿って、主に以下の点について質問されます。

  • 創業動機
  • 事業経験
  • 商品・サービス
  • 取引先
  • 売上や利益の根拠
  • 資金の使い道
  • 自己資金

創業計画書の記載内容と矛盾がないよう、自分の言葉でしっかりと説明できるように準備してください。担当者は計画の実現可能性だけでなく、事業主としての人柄や信頼性も見ています。

4. 審査・契約

面談実施後、1週間から2週間ほどで審査結果が電話および郵送で通知されます。

無事に審査を通過すると、融資決定の通知とともに契約に必要な書類一式が送られてきます。契約書の内容をよく確認し、署名・捺印の上、必要な書類(印鑑証明書など)を添えて公庫に返送します。

5. 融資実行

公庫が返送された契約書類を確認後、数営業日で指定した銀行口座に融資金が振り込まれます。これで一連の手続きは完了です。

入金後は、創業計画書に記載した資金の使い道に沿って、事業の準備を進めていくことになります。翌月または翌々月から返済が始まりますので、資金管理をしっかりと行いましょう。

参考:創業予定の方|日本政策金融公庫

創業融資についてよくある質問

創業融資を検討する際には、他にも様々な疑問が生じます。

創業融資はいくら借りられる?

創業融資でいくら借りられるかは、事業計画の内容や自己資金の額によって大きく異なります。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、融資限度額は7,200万円、うち運転資金4,800万円と設定されています。

しかし、これはあくまで上限であり、創業当初から満額を借りられるケースは稀です。現実的には、事業に必要な設備資金や運転資金をまとめた事業計画書を示し、その内容を踏まえ妥当な金額が融資審査で決定されます。

自己資金なしでも融資は受けられる?

創業融資を自己資金なしで申し込むのは、現実的には困難です。制度上の自己資金要件が撤廃されましたが、審査では事業への熱意や準備状況を示すものとして自己資金の有無が重視されます。計画的に貯蓄した実績は、事業計画の信頼性を高めることにも繋がります。希望する融資額の少なくとも2〜3割程度の自己資金を用意することが、審査を通過するための一つの目安です。

返済不要の創業融資はある?

返済不要の創業融資は存在しません。融資は借入金であり、定められた期間内に返済する義務があります。返済不要の資金を希望する場合は、国や地方自治体が提供する補助金や助成金を検討しましょう。これらは特定の条件を満たすことで交付され、原則として返済の必要がありません。融資と補助金・助成金の違いを正しく理解し、自身の目的に合った制度を選択しましょう。

創業融資の期間を理解し、計画的に準備を進めよう

創業融資を成功させるには、申込期間を正しく把握することが重要です。日本政策金融公庫の場合、事業開始から2回目の税務申告を終えるまでという明確な期限があります。創業からの年数ではなく、決算・申告の回数が基準となるため、特に個人事業主の方は期間が短くなる可能性があり注意が必要です。

自社の決算期を正確に把握し、できるだけ早い段階から事業計画の策定や必要書類の準備に取りかかることが不可欠です。どのタイミングで申し込むのが最適かを見極め、専門家のアドバイスも活用しながら、計画的に資金調達を進めていきましょう。


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