- 作成日 : 2025年7月3日
柔道整復師として開業するには?必要な許認可や開業の流れを解説
柔道整復師として自身の施術所(整骨院・接骨院)を開業することは、多くの資格取得者にとって大きな目標の一つです。自身の理想とする施術を提供し、地域医療に貢献できる一方で、経営者としての責任も伴います。
この記事では、柔道整復師として開業を目指す方々に向けて、必要な資格や手続き、資金計画、開業までの流れ、そして成功のためのポイントを解説します。
目次
柔道整復師として開業するのに必要な資格
柔道整復師として施術所を開設し、業として施術を行うためには、国家資格である「柔道整復師免許」が必須です。
柔道整復師としての国家資格
【取得方法】
高校卒業後、文部科学大臣指定の学校または都道府県知事指定の柔道整復師養成施設(専門学校や短大は3年制、大学は4年制が一般的です)で3年以上必要な知識と技能を修得し、国家試験に合格する必要があります。
【役割】
この資格がなければ、柔道整復術(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷に対する非観血的療法)を業として行うことは法律で認められていません。
開業にあたり、柔道整復師免許以外に特別な経営資格は法律上要求されませんが、後述する施術所の開設手続きは必要です。
柔道整復師として開業するのに必要な許認可
柔道整復師が施術所を開設する際には、法的な手続きが必要です。主に以下の届出が求められます。
施術所の開設届
- 届出先
施術所の所在地を管轄する保健所(地域によっては都道府県や市区町村の担当部署) - 届出時期
開設後10日以内(ただし、事前に構造設備等が基準に適合しているか相談することが望ましい) - 内容
施術所の名称、所在地、開設者の氏名・住所、業務に従事する柔道整復師の氏名、構造設備の概要などを届け出ます。 - 注意点
施術所の構造設備(待合室、施術室の面積、換気、採光、消毒設備など)や衛生管理に関する基準を満たしている必要があります。施術所開設届提出時には、柔道整復師免許証の写しや施術所の平面図等の書類も必要です。事前に保健所に確認し、指導を受けることが重要です。
保険(療養費)の取扱いに関する手続き(受領委任)
- 目的
健康保険を使った施術(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷)を行い、患者負担分以外の費用(療養費)を保険者に請求するために必要な手続きです。 - 届出先
施術所の所在地を管轄する地方厚生(支)局および都道府県 - 内容
「受領委任の取扱い」に関する申出(同意書を含む)を行います。これにより、患者から委任を受け、施術所が代わりに療養費を保険者に請求できるようになります。 - 注意点
各種添付資料が必要となります。手続きには時間がかかる場合があるため、開業スケジュールに合わせて早めに準備を進める必要があります。また、保険請求に関するルール(算定基準、広告の制限等)を遵守する必要があります。
その他(該当する場合)
- 法人設立の場合
法務局への法人登記等が必要です。 - 個人事業主の場合
税務署への開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)等が必要です。
従業員を雇用する場合には、税務署をはじめ、社会保険や労働保険の手続きがあります。
柔道整復師として開業するのに必要な資金
開業には、初期費用と運転資金の二種類の資金が必要です。具体的な金額は、立地、規模、設備の内容によって大きく変動します。
初期費用
目安
小規模な施術所でも数百万円、設備や内装にこだわると1,000万円を超えるケースも少なくありません。
運転資金
開業後、事業が軌道に乗るまでの間、収入がなくても支払う必要のある費用です。最低でも3ヶ月~6ヶ月分は準備しておくことが推奨されます。
資金調達の方法
- 自己資金
最も基本となる資金。融資を受ける際にも、自己資金の割合は審査に影響します。法人の場合には資本金の調達となります。 - 日本政策金融公庫からの融資
新規開業者向けの融資制度があり、民間金融機関より有利な条件で借りられる可能性があります。 - 民間金融機関(銀行・信用金庫)からの融資
事業計画の実現性や担保・保証人が求められることが多いです。 - リース
高額な医療機器などを購入せず、リース契約で導入する方法。初期費用を抑えられます。 - 補助金・助成金
国や地方自治体が提供する創業支援の補助金・助成金を活用できる場合があります。要件を確認し、積極的に申請を検討しましょう。
柔道整復師として開業する流れ
開業準備は多岐にわたります。計画的に進めることが重要です。
- コンセプト・事業計画の策定
どのような施術所にするか(理念、ターゲット層、提供サービス、差別化戦略)、収支計画、資金計画を具体的に立てます。これは融資申請にも不可欠です。 - 資金調達
自己資金の確認と、融資や補助金の申請準備・実行。 - 物件選定・契約
コンセプトと予算に基づき、立地(駅からの距離、人通り、競合状況など)を調査し、物件を決定。賃貸契約を結びます。 - 内外装設計・施工
保健所の基準を確認しながら、設計業者・施工業者と打ち合わせ、工事を進めます。 - 医療機器・備品選定・購入
必要な機器や備品を選定し、購入またはリース契約を行います。 - 人材採用・教育(必要な場合)
受付スタッフや他の柔道整復師を採用する場合、求人活動と研修を行います。 - 各種届出・申請
保健所への開設届、地方厚生(支)局への受領委任の申出、税務署への開業届などを適切なタイミングで行います。 - 広告宣伝・集客活動
Webサイト、SNS、チラシ、地域への挨拶回り、プレオープンなどを実施します。 - 開業
すべての準備を整え、オープンを迎えます。
柔道整復師として開業するのに必要な書類
開業手続きには様々な書類が必要です。関係各所に事前に確認し、漏れなく準備しましょう。
※提出先や状況により必要書類は異なります。必ず事前に各担当窓口にご確認ください。
柔道整復師として開業するメリット・デメリット
開業には魅力的な側面と、乗り越えるべき課題があります。
メリット
- 自身の理想とする施術・サービスを提供できる
経営方針や治療方針を自由に決定でき、患者さん一人ひとりに合わせた最適なケアを追求できます。 - 収入アップの可能性がある
経営努力次第で、勤務時代よりも高い収入を得られる可能性があります。 - 働き方の自由度が高い
診療時間や休日を比較的自由に設定できます(ただし、経営が軌道に乗るまでは長時間労働になりがちです)。 - 地域医療への貢献と大きなやりがい
地域住民の健康を支え、患者さんからの感謝の言葉が直接的なモチベーションになります。 - 経営者としての成長
施術スキルだけでなく、マネジメント、マーケティング、財務など幅広い知識・経験が得られます。
デメリット
- 経営に関する全責任を負う
集客、資金繰り、人材管理、クレーム対応など、経営に関するすべての責任を自身で負う必要があります。 - 収入が不安定になるリスク
開業当初や経営状況によっては、収入が不安定になる可能性があります。 - 長時間労働になりやすい
特に開業当初は、施術に加えて経営業務もこなす必要があり、労働時間が長くなる傾向があります。 - 施術以外の業務負担が大きい
経営、経理、労務、集客、事務作業など、本来の施術以外の業務に多くの時間を割く必要があります。 - 競合の存在
整骨院・接骨院の数は多く、競争が激しい地域もあります。差別化戦略が不可欠です。 - 社会的信用・福利厚生
柔道整復師と比較して、ローンの審査が厳しくなる傾向があります。
柔道整復師として開業する注意点
開業を成功させ、安定した経営を続けるためには、以下の点に注意が必要です。
綿密な事業計画と資金計画
「なんとなく」での開業は失敗のもとです。ターゲット層、提供価値、収支予測、資金調達方法などを具体的に計画し、リスクも考慮に入れましょう。
立地選定の重要性
ターゲットとする患者層がアクセスしやすいか、周辺の人口構成、競合の状況などを十分に調査し、慎重に物件を選びましょう。視認性も重要です。
競合との差別化戦略
なぜ患者さんが他の院ではなく、あなたの院を選ぶのか? 技術(得意な施術、専門分野)、設備、サービス、雰囲気、接遇などで明確な強みを打ち出しましょう。
集客・マーケティング戦略の構築と実行
開業前から開業後まで、継続的な集客活動が必要です。Webサイト、SNS、インターネット広告、ポスティング、地域イベントへの参加など、ターゲット層に合わせた効果的な方法を組み合わせましょう。口コミも重要です。
法令・ルールの遵守
柔道整復師法に基づく広告規制(決められた広告以外の禁止など)、療養費の不正請求防止など、関連法規や保険請求のルールを正しく理解し、遵守することが絶対条件です。コンプライアンス意識を高く持ちましょう。
資金管理の徹底
どんぶり勘定では経営はできません。日々の売上・経費管理、資金繰りの把握を徹底し、計画的な経営を心がけましょう。システム化したり、税理士など専門家の活用したりすることも有効です。
継続的な学習とスキルアップ
医療技術は日々進歩します。セミナーや勉強会に参加するなど、常に最新の知識・技術を学び、施術の質を高め続ける努力が必要です。経営に関する学習も同様に重要です。
資格を活かして柔道整復師としての開業を目指そう
この記事では、柔道整復師として開業するために必要な資格、許認可、資金計画、開業までの流れ、そして成功のための注意点について概要を解説しました。
開業準備は多岐にわたりますが、綿密な事業計画と資金計画、適切な立地選定、競合との差別化、集客戦略、法令遵守、そして継続的な学習とスキルアップが成功の鍵となります。この記事で解説したポイントを参考に、ご自身の状況に合わせて具体的な計画を立て、専門家の力も借りながら、開業準備を進めることをお勧めします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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