- 作成日 : 2025年3月21日
調剤薬局の許認可とは?要件や申請方法、個人の場合を解説
調剤薬局を開業する際は、薬局開設許可申請や保険薬局指定の手続きが必要です。さらに、店舗管理者には薬剤師の資格が必要であり、取り扱う薬剤によって必要な申請もあります。
許可申請は個人事業主でもできますが、提出書類が異なる点に注意が必要です。
本記事では、調剤薬局の開業で必要な許可や手続き、注意点などを解説します。
目次
調剤薬局の開業に必要な許認可一覧
調剤薬局を開業する場合、薬局開設許可と保険薬局指定が必要になるほか、取り扱う薬剤によっては薬局製剤製造販売業などの申請が必要です。
ここでは、調剤薬局の開業に必要な許可や資格などを解説します。
調剤薬局の開業に必要な許認可
調剤薬局を開業する際は、次の許可が必要です。
- 薬局開設許可
- 保険薬局指定
薬局開設許可は、所在地の都道府県知事に申請して取得します。保険薬局指定とは、公的医療保険の適用を受ける調剤を行う薬局として厚生局に指定されることです。
許可の取得には時間がかかるため、開業日を決めたら手続きの期間を逆算し、必要書類を揃えるなど早めに準備を始めましょう。
また、指定された薬局製剤を販売するためには、薬局ごとに薬局製剤の製造販売承認、製造販売業許可、製造業許可が必要となります。
調剤薬局の開業に必要な資格
調剤薬局の開業には、薬剤師の資格が必要です。しかし、開業する経営者自身が資格を取得する必要はなく、店舗管理者に資格があれば調剤薬局を開業できます。
そのため、自身が薬剤師の資格を持たなくても開業できますが、資格を持つ人材を雇用しなければならず、人件費がかかるため、より高い売上を上げる必要があるでしょう。
公費指定を受けるために必要な申請
公費指定を受ける場合も、指定医療に応じて申請が必要です。公費指定医療は、国や地方自治体の費用負担で患者に提供される医療を指します。
国または地方自治体から受給者証等の交付を受けた患者が、その公費の指定を受けた医療機関や調剤薬局を利用するという仕組みです。
代表的な指定手続きは、以下のとおりです。どの指定を受けるかは、経営者の意向に基づきます。
- 生活保護法等指定医療機関申請
- 生活保護法等指定介護機関申請
- 居宅療養管理指導等の指定申請
- 労災保険指定薬局申請
調剤薬局とドラッグストアとの許認可の違い
調剤薬局とドラッグストアは、主に販売している商品と、医師の処方箋に基づいて薬を調剤できるかどうかという点が異なります。調剤薬局には薬剤師が常駐し、調剤作業や服薬指導をしているのに対し、ドラッグストアは調剤作業を行わず、一般用医薬品や日用品、食品などを販売する施設です。コンビニのようなイメージで価格も比較的安く、薬を買わない場合でも多く利用されています。
ドラッグストアの開業には必ず店舗販売業許可が必要なほか、販売する商品に応じて必要な許可等があります。
従来はそれぞれ異なる店舗として運営されていましたが、近年は調剤薬局を併設しているドラッグストアも少なくありません。
個人事業主でも調剤薬局の許可申請ができる?
調剤薬局は、法人のほか個人事業主でも許可申請は可能です。許可申請を法人に限るという要件はなく、個人事業主も申請して許可を受けることができます。
許可申請で法人と個人事業主で異なるのは、提出書類だけです。許可申請の提出書類に履歴事項全部証明書がありますが、個人事業主は登記をしないため、提出の必要はありません。
個人事業主は複雑な設立手続きが不要な点で、法人よりも開業しやすいでしょう。
調剤薬局の許認可申請の手続き
調剤薬局を開業する手続きでは、薬局開設許可と保険薬局指定の2つが必要です。
それぞれの手続きを解説します。
薬局開設許可の申請
薬局開設許可は、次の要件を満たした上で、薬局の所在地を管轄する保健所に申請を行います。
- 設備要件
- 人的要件
- 体制要件
設備要件では、薬局の構造設備が法令に適合していることが必要です。
(一例)
- 換気が十分に行われ、清潔である
- 外観から薬局であることが明確である
- 面積は、おおむね19.8平方メートル以上
人的要件には、薬局の開設申請者や役員の欠格事由が定められています。
(一例)
- 過去3年以内に許可取り消し、禁錮以上の刑の執行を受けていない
- 過去2年以内に麻薬や毒物などの薬事に関する法令に違反していない
- 薬事法や麻薬及び向精神薬取締法などに違反していない
体制要件では、業務を行う体制が法令に適合していることが求められています。
(一例)
- 薬局の開店時間内は、常時、調剤に従事する薬剤師が勤務している
- 1日当たりの薬剤師が不在になる時間は、一定の時間を超えないこと
要件の詳細については、申請前に薬局の所在地を管轄する保健所へ確認しましょう。
薬局開設許可申請書を提出する前に、内装工事に対する保健所の検査が必要です。そのため、遅くとも開業予定日の半年前までには開業場所や物件を決めて薬局の平面図を完成させ、内装工事に入る前に管轄の保健所に相談します。問題がなければ工事に着工し、申請書を提出するという流れです。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は、次のとおりです。
- 図面類(付近の見取図・建物の配置図・薬局の平面図)
- 薬局構造設備の概要
- 業務体制概要書
- 薬剤師または登録販売者一覧表
- 事業内容書
- 登記事項証明書(法人のみ)
- 役員の業務分掌表
- 勤務表
- 管理者の雇用証明書
- 勤務薬剤師・販売従事者の雇用証明書
- 体制省令で求められている指針・手順書
- 薬剤師免許の原本
- 販売従事者登録証の原本
- 水質検査結果原本
保険薬局の指定申請
調剤に保険を適用するには、薬剤開設許可と合わせて保険薬局の指定も必要です。
内装工事に対して保健所の検査を受けたあと、薬局開設許可証が送られてきます。受け取ったらすぐに管轄の厚生局に「保険薬局指定申請書」を提出し、審査を受けます。審査に通ると、翌月の1日から保険薬局として開業できるという流れです。
保険薬局の指定は原則として毎月1日付になるため、開業を予定している月の1日に指定を受けられるように申請を進めていきましょう。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は、次のとおりです。
- 薬局開設許可申請書(写し)
- 管理薬剤師以外の保険薬剤師の氏名及び登録の記号・番号を記載した書類
- 薬剤師の人数を記載した書類
- 法人登記簿謄本(写し・法人のみ)
- 土地建物登記簿謄本または賃貸借契約書(写し)
- 開設者、管理薬剤師、保険薬剤師の本人確認書類の写し
- 周辺図
- 平面図
- 雑居ビル等に薬局を開設する場合は、同一建物内のテナント名がわかる書類
参考:厚生労働省 薬局開設又は医薬品販売業の許可等の申請時の添付書類について
参考:東京都保健医療局 薬局開設許可申請書
調剤薬局の許可申請にかかる費用
調剤薬局の許可申請にかかる費用は、申請手続きにかかる費用と、開業自体にかかる費用に分けられます。
それぞれの費用についてみていきましょう。
許可申請の手続きにかかる費用
薬局開設許可申請の手数料は、3万4,100円です。窓口で現金で支払います。許可の有効期間は6年で、有効期間終了後も継続して営業するときは、期間満了前に許可更新の手続きを行います。更新の手数料は、1万2,700円です。
そのほか、許可証の書換え交付・再交付申請の際に手数料がかかります。
申請に手数料が必要なのは薬局開設許可のみで、保険指定の申請には手数料がかかりません。
開業にかかる費用
調剤薬局の開業には、設備費用や開業費、運転資金などがかかります。
店舗を借りて開業する場合の費用の内訳と金額の目安は、次のとおりです。
- 月々の賃借料:10万〜30万円
- 保証金:賃借料の2〜10ヶ月分
- 仲介料:賃借料の1ヶ月分
- 内装工事費:約300万~500万円
- 運転資金:150万~300万円
- 薬品仕入れ:100万円
- 求人広告費:15万円
賃借物件や内装にかける費用で差はありますが、1,000万円以上の資金は必要になるでしょう。
人件費が必要になる場合は、さらに高額になります。
調剤薬局の許認可に関する注意点
調剤薬局の許可を受ける際は、いくつかの注意点があります。許可には期限があること、許可が下りない場合があるという点です。また、許可を受けても、許可が取り消される場合もあります。
ここでは、調剤薬局の許可に関する注意点を解説します。
許可取得後に必要な手続き
許可取得後も、必要に応じて手続きが発生するため、注意が必要です。薬局開設許可の有効期間は6年で、許可の有効期間の終了後も継続して営業するときは、期間満了前に更新の手続きをしなければなりません。更新の通知は来ない場合が多いため、忘れないようにしましょう。
更新の手続きは立入検査が行われる場合もあり、遅くとも有効期間が満了する1ヶ月前には提出することが望ましいとされています。
許可が下りない場合
薬局開設許可申請には設備・人的・体制の3つの要件があり、これらの要件を満たさないと許可は下りません。調剤や医薬品の販売に必要な構造設備が整い、体制の要件が整備されていること、申請者に欠格事由がないことが必要です。
スムーズな許可を受けるためには、不明な点など管轄の保健所に相談しながら進めるとよいでしょう。
許可が取り消される場合
申請の許可が下りたあとでも、薬剤師の責務に違反した場合は許可が取り消される場合があります。薬剤師には店舗の実地管理義務や副作用等の報告義務などが課せられており、これらの義務に違反した場合は、許可の取消または業務停止の処分を受けることになります。
薬剤師の責任に関する裁判例では調剤過誤による事例が多く、調剤を担当した薬剤師だけでなく、管理者や責任者も法的責任を問われたケースもあります。
調剤薬局の開業の手続きは早めに開始しよう
調剤薬局の開業には薬局開設許可と保険薬局指定が必要であり、手続きには時間がかかります。まずは開業の時期を決め、申請にかかる期間を逆算して余裕をもったスケジュールを立てましょう。
許可申請では、事前に保健所に相談し、要件に沿った内装工事の検査を受けなければなりません。設備のほか、体制要件や欠格事由も定められています。しっかりと確認し、手続きに漏れのないように準備しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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