• 作成日 : 2025年3月27日

バンドは法人化すべき?メリット・注意点、方法を解説

バンドを組んでいる活動中のミュージシャンの多くは、個人事業主として活動されていることでしょう。仕事がコンスタントに入り、安定した収入を得られるようになったタイミングで法人化を検討してみてもいいかもしれません。

本記事では、バンドを法人化するメリットおよび注意点、法人化する方法をメインに解説します。

バンドの法人化を検討すべきケース

法人化とは株式会社や合同会社などの法人を設立し、その法人が事業を営むようにすることです。法人化の詳しい流れや個人事業主との違いについては以下の記事でさらに詳しくご紹介します。

法人化すべきかどうかを検討する一つの基準は所得(売上から経費や控除を差し引いたもの=利益)です。個人事業主は毎年所得税を支払わなければなりません。税額が所得額に応じて決まる累進課税が取り入れられています。詳細は以下の通りです。

課税される所得金額税率
1,000円~1,949,000円まで5%
1,950,000円~3,299,000円まで10%
3,300,000円~6,949,000円まで20%
6,950,000円~8,999,000円まで23%
9,000,000円~17,999,000円まで33%
18,000,000円~39,999,000円まで40%
40,000,000円 以上45%

引用元:国税庁|所得税の税率 をもとに作成

一方、法人の場合は法人税を支払います。税率は原則として23.2%(資本金1億円以下の普通法人などの所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)です。

年間所得が900万円までであれば法人税よりも所得税の税率のほうが低くなっています。しかし、900万円を超えると所得税よりも法人税のほうが税率が下回ります。そのため、年間所得が900万円を超えた方は個人事業主として活動するよりも、法人として活動したほうが税金を抑えられるでしょう。

また、芸能事務所やプロダクションに所属するよりも、事務所を立ち上げたほうが自身に合った活動がしやすくなります。以下でご紹介するメリットに魅力を感じられる方は、個人事務所の設立を検討してみるのもいいかもしれません。

バンドを法人化するメリット

バンド活動を法人化することで、以下のようなメリットが得られます。

税金が安くなる

前述の通り、所得が増えたら所得税よりもむしろ法人税を支払うほうが税金を安く抑えられる可能性があります。おおむね年間所得が900万円を超えたら法人化も検討してみられることをおすすめします。

社会的信用が向上する

個人よりも、一つの組織として事業を展開している法人のほうが、社会的信用は高い傾向です。法人化することで、金融機関などからの融資やスタッフの雇用、仕事獲得が、有利に働く可能性があります。

収入が増える可能性がある

現在芸能事務所やプロダクションなどに所属して活動されている場合、依頼元から出演料などが一旦所属事務所やプロダクションに振り込まれ、マージンが引かれた状態でアーティストに支払われるのが一般的です。独立して個人事務所を立ち上げれば、マージンが差し引かれることがないため、手元に入る収入が増加する可能性があります。ただし、法人化する場合には法人税の支払いや経費の管理が必要になるため、トータルでの収入増減については抜け漏れなく確認し、慎重に検討しましょう。

制約が少なくなり、活動がしやすくなる

芸能事務所やプロダクションに所属している場合、事務所が獲得した仕事をこなすことになります。中には自分にとってやりたくない仕事を振られるケース、仕事が多すぎて忙殺されてしまうケースもあるかもしれません。個人事務所で活動する場合、仕事を選びやすくなるため、ご自身が思い描くバンド活動が実現できる期待も高まります。

バンドを法人化するときの注意点

以上のようにバンドの法人化はメリットがある一方で、注意しなくてはならない点もあります。以下の点を踏まえて、バンドを法人化するかどうか検討することが重要です。

設立するのに手続きが必要

詳しくは後述の法人化する方法・流れの項でご説明しますが、法人を設立するためにはさまざまな必要書類を作成し手続きが必要です。検討し決定すべき事項も複数あるため、特に日頃から忙しい方にとっては負担を感じる可能性があります。そのため、手続きがスムーズに済むよう、すき間時間を有効活用しながら書類の準備を計画的に行いましょう。

設立費用がかかる

法人を設立するためには定款の認証費用や商業登記手続きの際に支払う登録免許税などがかかります。さらに手続きを司法書士などに依頼する場合、その報酬も必要です。依頼先によって負担する金額が異なりますが、株式会社を設立するのであれば20万~25万円程度が目安です。

自分でマネジメントしなければならない

芸能事務所やプロダクション所属とは異なり、法人化して個人事務所を立ち上げて活動を行う場合、直接依頼元との交渉やスケジュール管理といったマネジメント業務を自分で担います。もし、ご自身の業務量が多くなった場合は、専任のスタッフを雇うことも視野に入れましょう。

仕事が減る可能性がある

個人事務所で活動する場合、仕事を獲得するために営業活動も自分で行わなければなりません。芸能事務所やプロダクションの看板(ブランド)を使うことはできないため、思うように仕事が獲得できない可能性もあります。独立をしようとする際には、仕事を取れるだけの実力があるのか、営業活動の仕組みを理解したうえで人脈が確立できているか、事務所に所属していなくても十分な収入が得られる見込があるかどうか、今一度考えてみましょう。

バンドを法人化する方法・流れ

先ほどもご紹介したように、法人を設立するためにはさまざまな準備をし、手続きを行わなければなりません。最後に法人設立の流れを見ていきましょう。

会社の基本事項を決める

まずは会社名や事業目的、本店の所在地、資本金の額、株式の数などの会社の概要を決めましょう。事業内容や収支の詳細といった事業計画を立てることも重要です。

定款を作成し認証を受ける

定款とは会社の基本的なルールを記載した憲法のようなものです。上記で決めた会社名や事業目的、本店の所在地などの事項を書面にまとめます。定款を作成したら公証役場で認証を受ける必要があります。

法人設立登記を行う

定款が完成したら資本金を払い込み、登記申請書、登録免許税の収入印紙を貼付した台紙、登記すべき事項、定款(紙または電子定款)、取締役の就任承諾書、払込証明書、印鑑(改印)届出書などの必要書類を作成し、法務局で法人設立登記手続きを行います。

法人名義の銀行口座を開設する

法務局で登記申請が承認されたら新しい法人として発足できます。承認後にまず行うことは、法人名義の銀行口座の開設です。これによってご自身の個人用口座と別でお金の管理ができるようになります。法人名義の口座は、税務申告や業績を把握する際などに活用できるでしょう。

社会保険の加入手続きを行う

法人を設立した場合、健康保険・介護保険、厚生年金保険雇用保険は、それぞれ被保険者としての加入条件を確認することが必要です。また、労災保険については、非正規雇用も含めてすべての労働者が加入することになります。

法人化の流れや各種手続きについては以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。

※法人化の全体的な流れ

※定款の作成方法

※法人登記手続き

法人口座の開設

社会保険の加入手続き

メリット・デメリットを把握してバンドの法人化を検討しよう

個人事務所を設立して法人化することで、税金を抑えられる、社会的信用度が高まる、仕事の自由度が高くなるなどのメリットがあります。一方で、法人化をする場合、手続きの手間や設立費用がかかる、自分たちでマネジメントや営業活動をしなければならないといった負担が生じます。

法人化してバンド活動を続けていくのであれば、本記事でご紹介した内容をご参考に、さらに独立しても仕事が獲得できるのか、安定した収入を確保できるのかといった点もシミュレーションすることをおすすめします。ご自身の置かれている状況を踏まえて、今後の方針を決めることが大切です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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