• 作成日 : 2025年3月7日

無担保・無保証人で創業融資を受けられる?日本政策金融公庫の制度内容を解説

日本政策金融公庫の無担保・無保証人の創業融資は、担保や保証人なしで事業資金を借りられる制度です。要件を満たすことで担保および保証人なしで最大7,200万円まで借入れができます。

本記事では、「担保にできる資産がない」「保証人を付けたくない」という方向けの日本政策金融公庫の無担保・無保証人の創業融資について詳しく解説します。

日本政策金融公庫は無担保・無保証人の創業融資を実施

日本政策金融公庫の「無担保・無保証人」の創業融資とは、事業開始時の必要資金を借りる際、担保と保証人を必要としない制度を指します。

創業間もない事業者に融資する場合、貸付リスクが高いため、多くの金融機関では担保または保証人を求めるのが一般的です。一方、日本政策金融公庫では、創業者の支援、ひいては経済活性化のために創業融資にも積極的に取り組んでおり、無担保・無保証人での融資も実施しています。

日本政策金融公庫が実施している創業融資の詳細は下記の記事でも解説しています。

無担保とは

無担保とは、融資を受ける際に不動産や有価証券などの担保の設定が不要な状態のことです。多くのケースにおいて金融機関は債権保全のために担保を求め、返済が困難なときは提供した不動産などを売却することで債権の回収を図ります。無担保であれば万が一返済ができなくなっても自宅やその他の不動産、あるいは有価証券などを失うリスクがありません。

ただし、無担保の場合は貸し手のリスクが大きいため、その分より厳しく借り手の返済能力や事業計画が審査されることが予想されます。

無保証人とは

無保証人とは、融資の返済について第三者による保証が不要な状態を意味します。

一般的な融資では、返済が困難になった場合に備えて保証人による連帯保証が求められます。担保を提供する場合は当該物件の範囲内でリスクを負うこととなりますが、保証人を付けたときは残債務を上限にその方が負担を負うこととなるため、よりリスクが大きくなると言えるでしょう。

創業融資の場合、会社代表者が会社の連帯保証人となるケースがあるため、事業が軌道に乗らず倒産してしまうと、代表者個人も共倒れしてしまう危険性があります。しかし、無保証人融資であればそのような心配がありません。

無担保・無保証人の創業融資の申込み方法

日本政策金融公庫での無担保・無保証人の創業融資は、事前相談から始まり、審査、融資実行までの流れで進んでいきます。申込みの際は、自分自身の事業計画や希望する融資条件に合わせて適切な制度を選択することが重要です。ポイントを押さえてスムーズな申込みを目指しましょう。

事前相談・融資制度の選択

創業融資の申込みで重要なのは「事前相談」です。日本政策金融公庫の支店窓口や電話での相談を通じて、自分自身の状況に最適な融資制度を探しましょう。

新規開業資金は原則として無担保・無保証人で利用可能ですが、審査によっては例外もあります。そこで事前相談では以下の事項についてチェックしておくことをおすすめします。

事前相談でチェックしておきたいこと
  • 事業立ち上げの準備状況や事業計画の内容
  • 必要な資金額と返済計画
  • 自己資金の額
  • 創業予定地や開業時期
  • 事業経験や資格の有無

これらの情報を提供するとともに、担当者からの質問に答えることで、適切な融資制度の提案を受けることができるでしょう。

必要書類の準備と提出

融資制度を選択できれば、次に必要書類の準備を進めましょう。準備物は状況次第で異なりますが、基本的には次のような書類を作成・収集することになるでしょう。

  • 借入申込書
  • 創業計画書
  • 企業概要書(創業計画書を提出する場合は不要)
  • パスポートまたは運転免許証
  • 許認可証(営業許可などが必要な事業の場合)
  • 直近2期分の確定申告書および決算書(すでに実績がある場合)
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本の原本(法人の場合)

特に創業計画書は、審査において重要な判断材料です。計画の実現可能性や収益性を具体的に示せるかどうかが、無担保・無保証人での融資成功に大きく寄与するでしょう。

また、提出前には書類の記載内容に不備がないか、必要事項が漏れなく記入されているかどうかも確認します。不明な点があるなら早めに担当者に確認しましょう。あるいは融資に詳しい税理士などの専門家を頼ることを検討するのも一つの手です。

無担保・無保証人の創業融資の審査に通過するポイント

無担保・無保証人の創業融資は、金融機関にとってリスクが高い融資です。そのため、審査は厳格に行われ、通過するためには十分な準備と説得力のある事業計画が必要です。審査に通過するポイントは、以下の通りです。

現実的な返済計画の立案

返済計画は融資審査において特に重視される要素です。金融機関は、借り手が確実に返済できるかどうかを慎重に評価します。現実的かつ具体的な計画を立案するポイントは、以下の通りまとめています。

現実的かつ具体的な計画を立案するポイント
  • 市場分析と競合状況の詳細な記述
  • 具体的な販売戦略とマーケティング計画
  • 実現可能性の高い収支予測の提示
  • リスク分析と対策の明記

また、返済シミュレーションのパターンを複数用意し、最悪のケースが起きても返済ができることを示しておきましょう。

創業融資総額の2割以上の自己資金

創業時には、必要資金の3割程度備えておくことが一般的に推奨されています。しかし、日本政策金融公庫の創業融資の場合、他の要素で高評価を受けていれば自己資金が少なくても融資を受けることは可能です。形式的な要件として自己資金割合は定められておらず、仮に必要資金の1割を切っていたとしても申込みはでき、融資に成功する可能性もゼロではありません。

ただし、次のように平均的には2割程度を用意している企業が多いとされているため、この割合を目安に考えましょう。

公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査(「新規開業実態調査」)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度となっています。

引用元:日本政策金融公庫「よくあるご質問 創業をお考えの方」

事業経験や専門知識のアピール

創業する事業分野での経験や関連する資格は、事業の成功可能性を高める要素としてプラスに評価されます。以下の点を振り返りながら具体的にアピールしましょう。

  • 前職での実務経験
  • 独立開業に向けた研修受講歴
  • 関連する資格や免許
  • 専門的な技術やノウハウ

未経験での創業であれば、市場調査や研修計画など知識・経験を補うための具体的な取り組みを示すことが重要です。

市場分析と販売戦略の提示

市場分析とその結果に基づく販売戦略も重要な判断材料となります。以下の点を意識しておくとよいでしょう。

市場分析とその結果に基づく販売戦略
  • 市場規模・成長率・競合状況を数字で示す
  • 年齢や性別、職業などからターゲット顧客を明確に定める
  • 主な競合他社の強み・弱み、自社がどのように差別化するのかを示す
  • オンライン、実店舗など、どのような方法で商品やサービスを提供するか説明する
  • 市場規模や競合状況、自社の強みを踏まえて売上を予測する

競合との差別化や顧客獲得の方法を具体的に提示することは、事業の実現可能性や成長性のアピールにつながります。

無担保・無保証人の創業融資が返済不能でも踏み倒しは危険

担保や保証人がなくても、返済不能になった場合の踏み倒しを安易に考えてはいけません。個人信用情報機関に事故情報が記録されたことで、今後の借入が難しくなる、または金融機関からの強制執行によって資産が差し押さえられる可能性もあります。

経営者個人への悪影響がなくても、金融機関や取引先からの信用を失い、ビジネスチャンスが制限されてしまう危険性も生じるでしょう。この事態を防げるよう、無担保・無保証人の創業融資に成功したとしても責任ある対応が不可欠です。

銀行や信用保証協会にも無担保・無保証人の融資制度がある

日本政策金融公庫以外、例えば信用保証協会を通じて銀行から無担保・無保証人の融資を受けることも不可能ではありません。ただし、いつでも・どの銀行でも対応しているとは限りません。

各金融機関、本店のある自治体などの情報を調べて、無担保・無保証人で借入ができるのかを確認しておきましょう。なお「無保証人」とあっても、第三者による保証が不要という意味であり、経営者保証が必要となるケースもあるため要注意です。

また、自治体との連携で創業者向けの制度が用意されていることもあるため、個別に調査することをおすすめします。

無担保・無保証人の創業融資をうまく活用しよう

創業時の資金調達において、担保や保証人が不要な創業融資制度は、新規事業に挑戦する方の強い味方となるでしょう。特に、日本政策金融公庫の新規開業資金は多くの方が利用できるよう、設計されています。

事前の入念な準備が成功へのカギです。専門家にフォローしてもらいながら創業計画書を策定し、的確に自社のアピール要素を伝えることが重要です。有効活用しながら事業を軌道に乗せるよう努めましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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