- 作成日 : 2024年6月27日
学習塾の定款の書き方は?ひな形を基に事業目的の記載例・変更を解説
学習塾法人として学習塾を立ち上げる際には、定款の作成が必要です。定款とは会社の経営的なルールを定めた文書で、学習塾に特化した内容を定款に盛り込む必要があります。
この記事では、定款に記載すべき必須項目や書き方、電子申請について解説します。そのほか、テンプレートも紹介しますので、ぜひご活用ください。
目次
学習塾における定款とは?
定款とは、会社を設立する際に作成する必要がある重要な書類です。定款には、会社経営におけるルールがまとめてあります。記載内容としては、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の大きく3つがあり、それぞれ書き方が異なるのが特徴です。
- 絶対的記載事項:必ず記載しなければならない事項
- 相対的記載事項:記載していないと効力が生じない事項
- 任意的記載事項:会社が任意で記載できる事項
また、会社をすでに運営していて新たに経営を始める場合は定款変更が必要になるため、注意しましょう。
定款の必須項目(絶対的記載事項)
前述したように、絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。絶対的記載事項に記載漏れがあったり事業目的に違法行為を挙げていたりすると、定款そのものが無効になってしまいます。
株式会社における絶対記載事項は、以下の項目です。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
学習塾の定款作成から会社設立の流れ
実際に定款を作成してから会社を設立するまでの流れは、以下のようなステップで進行していきます。
- 会社の重要事項(商号や住所、事業目的など)を決定する
- 印鑑証明書(個人)を取得しておく
- 会社の代表印を作成する
- 定款を作成し、公証役場にて認証を受ける
- 資本金(出資金)の払い込みを行う
- 登記書類を作成する
- 登記を申請する(登記完了までは、約1週間)
取締役や発起人になる人は、定款や登記用書類に個人の実印を押印する必要があります。そのため、個人の印鑑証明書を取得しておきましょう。実印をまだ登録していない場合は、すぐに印鑑登録を行ってください。
会社の実印は法務局に登録するものです。四角や三角など、さまざまな形状がありますが、丸いものが主流です。会社の印鑑としては、実印のほかに銀行印、認印(角印)も作成しましょう。
なお、学習塾の開業に必要な資格はありません。そのため、原則誰でも開業できます。
学習塾の定款テンプレート・ひな形
定款を作成する場合には、業種に添った内容を定款へ盛り込む必要があります。どういった内容を盛り込めばよいかわからないという場合は、専用のテンプレート・ひな形の利用がおすすめです。専用のテンプレート・ひな形を用いれば、必要事項を押さえたうえで手軽に定款を作成できます。学習塾の定款を作成予定の人は、以下のテンプレート・ひな形をぜひご活用ください。
学習塾の定款の書き方
ひな形をもとに、定款に記載する内容や書き方のポイントを解説します。業界ならではの書き方などもあわせてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
商号
商号とは会社の社名のことです。株式会社の場合、商号に株式会社の文字を入れる必要があるため注意しましょう。
<記載例>
第○条 当会社は、○○株式会社と称する。
商号に使用できる文字は、法務省のサイト(以下リンク参照)で確認できます。漢字や平仮名、カタカナのほか、アルファベットやアラビア数字なども使用可能です。
なお、同じ住所に同じ商号の会社は登記できません。そのほか、有名企業と似ていて紛らわしい商号や、他社の商標権を侵害するような商号も避けるようにしましょう。
事業目的
事業目的の項目では、会社が行う事業を列挙します。最後の号に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」と書いておくと、関連分野に事業を少し広げたときでも定款変更をしなくてすみます。
学習塾の事業目的としては、以下のような内容を記載するとよいでしょう。
<記載例>
第○条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
学習塾の経営
学習教室の経営
学習塾の経営及び学習指導員の育成、派遣、運営
インターネット等のネットワークを利用した受験指導
インターネットでの宣伝広告事業
前各号に附帯する一切の事業
ほかにも、フランチャイズ経営する場合や教材の開発行為、学習塾のコンサルタントなどを行う予定がある場合は、次の事項も記載しておくとよいでしょう。
加盟店に対する経営指導
学習塾に関するコンサルタント業
教育教材の制作、販売
本店の所在地
本店の所在地とは、会社の本店所在地のことです。
<記載例>
第○条 当会社は、本店を○県○市に置く。
当会社は、○県○市○丁目○番○号に置く。
市町村、東京の23区など最小行政区画まで書くか、「○県○市○丁目○番○号」と住居表示まで書くか、のどちらかの書式で書きましょう。
発行可能株式総数
発行可能株式総数とは、当会社の発行可能株式総数のことです。
<記載例>
第○条 当会社の発行可能株式総数は○○株とする。
設立に際して出資される財産の価額
財産の価額には、設立時に出資される財産価額もしくは最低額を記載しましょう。これに付随して資本金の額や発行する株式の数、発行可能株式総数を書くこともあります。
1株の価格をいくらと設定するかは自由ですが、1株1万円や5万円とすることが多いようです。
<記載例>
第○条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金○○○万円とする。
発起人の氏名又は名称及び住所
発起人に関しては、発起人が引き受ける株数とあわせて書くことが一般的です。
<記載例>
第○条 当会社の発起人の氏名又は名称及び住所、割当てを受ける設立時発行株式の数、及び設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
○県○市○丁目○番○号
発起人 ○○ ○○ 普通株式○○○株 金○○万円
○県○市○丁目○番○号
発起人 □□ □□ 普通株式○○○株 金○○万円
学習塾の「事業目的」の考え方や記載例
ここでは、定款に記載する事業目的の考え方や記載例、注意点について解説します。事業目的とは、会社を設立するにあたって何を事業とするのかを具体的に示したものです。また、事業目的は登記簿にも記載されるため、どのような活動をするかは社会に正しく伝える必要があります。
事業目的では、適法性・営利性・明確性を押さえて設定することが重要です。事業目的は取引の安全性の確保を大きな目的として作成されます。そのため、取引相手や融資先からの信頼を得られるような内容にする必要があります。
そのほか、記載する事業数に上限はありません。将来行う可能性のある事業がある場合は、そちらもあわせて記載するとよいでしょう。ただし、とりあえず多く書くことは避けるべきです。前述したように、定款は登記簿にも記されます。事業目的があまりにも多い場合、取引先や金融機関から怪しまれる可能性があるため注意しましょう。
ケース別:事業目的の記載例
学習塾は、塾の経営以外にも教材の制作や販売など、提供するサービスに応じてさまざまな業態に分類されます。以下、学習塾の業態別の例や記載例を見ていきましょう。
学習塾の経営だけを行うのであれば、学習塾の経営だけで問題ありません。ほかにも、教材の制作・販売行為、学習塾のコンサルタントなどを行う予定がある場合は、それらの事項も記載しておくようにしましょう。
業態例 | 事業目的の例 |
---|---|
学習塾の経営 | 学習塾の経営 |
学習塾に附帯する事業 | 教育教材の制作、販売 |
インターネットでの宣伝広告事業 | |
学習塾に関するコンサルタント業 | |
加盟店に対する経営指導 |
事業目的の変更方法
一度決めた事業目的を変更(追加・削除も)することも可能です。その場合は、変更登記の手続きを行いましょう。
事業目的を変更する場合は、変更登記申請書の登記すべき事項にて、すべての事業目的をあらめて記載します。変更部分の目的だけではない点には注意が必要です。
申請書を作成できたら、あらめて登録免許税30,000円を支払い変更登記を行います。役所への届出が必要になる場合もあるため注意しましょう。
なお、株式会社が事業目的を変更する場合は、定款変更のための株主総会特別決議が必要です。議事録に決議内容を記載しなければならないため、その点も忘れずに行いましょう。
学習塾の定款を電子申請するには
定款には紙定款と電子定款の2種類が存在します。両者の違いは、次の2点です。
- 作成・保存媒体
- 費用
まず、紙定款は紙で印刷したものに捺印をして作成・保存するのに対し、電子定款はPDF化したファイルに電子署名をしてデータで保存するという違いがあります。
また、紙定款は役場で認証を受ける際に収入印紙代(4万円)がかかるのに対し、電子定款は収入印紙代が不要です。電子定款はオンラインで手続きが完了するため、定款作成にあたっての手間が少ないのが魅力といえるでしょう。
電子定款を作成して、会社設立にかかる手間や費用を抑えたい人は、「マネーフォワード クラウド会社設立」サービスをぜひご活用ください。
学習塾の設立は定款作成から始めよう
学習塾を立ち上げる際は、定款作成の作成が必要です。定款は会社経営におけるルールをまとめたものであるため、事前にどういった会社にしたいのかを把握しておくようにしましょう。
また、定款を作成する場合は、学習塾の商号や事業目的など、必ず記載しなければならない絶対的記載事項が存在します。これらを記載する際にも学習塾ならではの内容に仕上げる必要があります。この記事で紹介したことを参考に適切な定款を作成できるようになりましょう。
定款について知りたいという人は、次の記事が参考になります。
また、学習塾を設立しようと検討中の人には、学習塾開業のポイントや経営のコツ、事業計画書や創業計画書のテンプレートをまとめた次の記事が役立つでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
財産引継書とは?書き方・雛形を紹介
会社設立の際に不動産などで現物出資を行う場合、財産引継書の作成が必要です。財産引継書には、該当する財産の概要や価額を記載します。財産引継書は重要な書類であるため、正しく記載しなければなりません。この記事では、財産引継書の書き方や注意点につい…
詳しくみる社会福祉法人とはどんな法人か?制度と事業の内容を解説
老人ホームやデイサービスの会社に多い「社会福祉法人」という法人格。 ここではこの社会福祉法人について定めた制度と、社会福祉法人の定義とも言える「社会福祉事業」について解説するとともに、平成29年4月から施行される制度改革についても概観します…
詳しくみる現物出資とは?会社設立で失敗しないための仕訳例やメリット・デメリットを解説
会社設立の際、現金の出資が少額な場合に検討するもののひとつとして現物出資があります。車や不動産、営業権など手持ちの資産を出資することで、資本金を大きくすることができます。会社設立にあたり最低資本金規制が撤廃されたとはいえ、資本金の大きさが会…
詳しくみる中小企業向けの定款の作成方法!種類や書き方、記載方法を紹介
中小企業向けの定款とは、中小企業の設立に際して会社の基本的なルールを定めた文書です。法人格を付与できたり、会社の統率がスムーズにできたりする点でも必要になります。株式会社と合同会社、一般社団法人によって、記載する項目が異なるため、考慮してお…
詳しくみる資本金が実際にはないのは違法?すぐに使ってもいい?
会社は設立時に株式を発行し、資本金を用意する必要があります。では、この資本金は戻ってくるお金なのでしょうか。また、すぐ引き出すことができる、使っていいお金なのでしょうか。さらに、資本金が足りない場合、見せ金でいいのかなどの疑問もあるでしょう…
詳しくみる【まとめ】鳥取県で会社設立する流れ・費用を抑える方法
鳥取県での会社設立をはじめ、日本で株式会社や合同会社を設立する際は、主に【①無料の会社設立サービスを利用して自分で進める、②専門家である税理士や司法書士に依頼する、または③法務局のサイトを参照しながら自分で手続きを行う】という3つの主な方法…
詳しくみる