• 更新日 : 2025年9月3日

法人登記の必要書類とは?会社の形態別やダウンロード先一覧

法人登記には、会社の設立時だけでなく、住所や役員の変更時にも目的別の必要書類が求められます。書類は株式会社や合同会社といった会社の形態によって異なります。その多くは法務局のWebサイトからダウンロードできますが、どの書類を準備すればよいか迷う方も少なくありません。

この記事では、会社設立から住所・役員変更までの法人登記に必要な書類を、会社別に一覧でわかりやすく解説します。書類の入手先や作成のポイント、自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の違いにも触れていきますので、これから手続きを始める方はぜひ参考にしてください。

法人登記で必要になる書類とは?

法人登記を申請するには、まず、その目的と会社の形態に応じた書類一式を不備なくそろえる必要があります。とくに会社設立の場面では、準備する書類が多く、一つでも欠けると手続きが進められません。

ここでは、会社設立の中心となる株式会社と合同会社を例に、それぞれの登記で必要になる書類を一覧で確認し、各書類の役割について詳しく解説します。

株式会社と合同会社の必要書類一覧

株式会社と合同会社の設立登記では、共通する書類もありますが、定款の扱いや役員の証明書類などに違いがあります。

書類名株式会社合同会社
登記申請書
登録免許税納付用台紙
定款○(公証人の認証が必要)○(認証は不要)
就任承諾書○(取締役・監査役など)○(代表社員など)
印鑑証明書○(取締役全員)○(業務執行社員全員)
資本金の払込証明書
印鑑届書
登記すべき事項を記録した媒体
発起人の同意書△(必要な場合)

登記申請書

登記申請書は、法人登記を申請するための中心的な書類です。会社の商号(名称)、本店所在地、事業目的、資本金の額、役員の氏名といった、登記すべき事項を記載します。様式は法務局のWebサイトからダウンロードできます。

登録免許税納付用台紙

登録免許税納付用台紙は、法人登記の際に納める国税「登録免許税」分の収入印紙を貼り付けるための台紙(A4の白紙など)です。設立時の登録免許税は、株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円です。この台紙に収入印紙を貼り、申請書とともに提出します。

定款

定款は「会社の憲法」ともいわれる、会社の組織や運営に関する最も基本的なルールを定めた書類です。事業目的や役員の任期、株式や社員に関する規定などを記載します。株式会社の場合は、作成後に公証役場で認証を受ける手続きが必須ですが、合同会社では認証は不要です。

就任承諾書

就任承諾書は、選任された取締役や代表社員などが、その役職に就くことを承諾した意思を示すための書類です。就任する役員本人の記名・押印が必要になります。

印鑑証明書

添付する印鑑証明書は、会社のものではなく、取締役に就任する個人のものです。市区町村役場で発行された、3か月以内のものを準備します。株式会社では取締役全員、合同会社では業務執行社員全員の印鑑証明書が必要です。

資本金の払込証明書

資本金の払込証明書は、出資者から資本金が確かに払込まれたことを証明するための書類です。決まった書式はありませんが、払込金額の総額などを記載した書面と、発起人代表の個人口座の通帳コピー(表紙、支店名などがわかるページ、入金履歴のページ)を合綴して作成します。

印鑑届書

印鑑届書は、会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類です。この届出により、会社の印鑑証明書が発行できるようになります。通常、会社の設立登記と同時に提出します。

登記すべき事項を記録した媒体

登記申請書に記載する内容のうち、「登記すべき事項」については、オンラインで提出する方法が主流となっており、XML形式のデータをインターネット経由で法務局に送信します。かつて使用されていたCD‑Rなどの物理媒体による提出は、現在では原則として推奨されていません。

発起人の同意書

株式会社の設立において、定款で本店所在地を最小行政区画(例:「東京都千代田区」)までしか定めていない場合などに、発起人全員の同意で具体的な地番(例:「東京都千代田区〇〇一丁目1番1号」)を決めたことを証明するために添付する書類です。

法人登記の必要書類のダウンロード先と作成ポイント

法人登記の必要書類をそろえるにあたり、どこで入手し、どのように作成すればよいのでしょうか。とくに申請書や定款、議事録などは、記載内容に不備があると登記申請が受理されないため、作成には注意が求められます。

ここでは、法人登記に必要な書類の主な入手先である法務局のWebサイトの活用方法と、重要な書類を作成する際のポイントを解説します。

法務局サイトでの申請書ダウンロード方法

設立登記や変更登記に使用する各種申請書のテンプレートは、法務局のWebサイトから無料でダウンロードできます。

入手先 商業・法人登記の申請書様式|法務局

上記ページにアクセスし、「株式会社設立登記申請書」や「合同会社設立登記申請書」、「株式会社変更登記申請書(役員の変更)」など、ご自身の目的に合った様式を選びましょう。Word形式とPDF形式があり、記載例もあわせて掲載されているため、作成時の参考になります。

定款作成のポイント

定款は会社の根幹をなす書類であり、作成には慎重さが求められます。とくに「事業目的」の記載は重要です。将来的に行う可能性のある事業も幅広く記載しておくことで、後から目的変更の登記を行う手間と費用を省けます。

ただし、事業目的が多すぎると会社の事業内容が不明確になるため、バランスも考えましょう。

また、紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、PDFで作成する「電子定款」であれば印紙代はかかりません。

議事録作成のポイント

本店移転や役員変更などの変更登記では、その決定が株主総会や取締役会で正規の手続きを経て行われたことを証明するため、議事録の提出が必要です。議事録には、以下の項目を正確に記載しなくてはなりません。

  • 開催日時と場所
  • 議事の経過の要領とその結果
  • 出席した役員の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事録作成者の氏名

決議内容が明確にわかるように記録し、法律で定められた署名者が記名・押印します。

法人登記を専門家(司法書士)が代行する書類と手続き

法人登記の手続きは、自分で行う方法と、司法書士などの専門家に依頼する方法があります。

司法書士に法人登記を依頼すると、法律の知識が求められる以下のような書類の作成や、関連する手続きのほとんどを任せることができます。

  • 定款の作成と電子認証:
    会社の基本ルールである定款を、法的に不備のない形で作成してくれます。また、電子定款での認証に対応している場合が多く、印紙代4万円が不要になります。
  • 登記申請書の作成:
    法務局に提出する中心的な書類である登記申請書を作成します。
  • 議事録などの作成:
    本店移転や役員変更などで必要になる、株主総会議事録や取締役会議事録なども作成してくれます。
  • その他添付書類の作成:
    資本金の額の計上に関する証明書など、登記に必要となるさまざまな書類を準備します。
  • 法務局への登記申請:
    作成した書類一式を、代理人として法務局へ提出する手続きまで行います。

これらの手続きを専門家に任せることで、書類の不備による手戻りを防ぎ、ご自身は事業の準備に集中できるのが最大のメリットです。

専門家に依頼しても自分で準備が必要な書類

専門家に依頼した場合でも、ご自身で取得・準備しなくてはならない書類もあります。これらを早めにそろえておくと、手続き全体がスムーズに進みます。

  • 発起人・役員全員の印鑑証明書:
    市区町村役場で取得します。発行後3か月以内のものが必要です。
  • 会社の代表者印(実印):
    登記申請の前に作成しておく必要があります。
  • 資本金の払込みを証明するもの:
    資本金を振り込んだ、発起人個人の通帳のコピーなどです。

基本的には、「個人の身分を証明するもの」や「会社の実印そのもの」、「実際のお金の動きを示すもの」は、ご自身で準備すると理解しておくとよいでしょう。

費用・時間・正確性で比較する判断基準

最終的にどちらの方法を選ぶかは、費用、時間、正確性のどれを重視するかで判断します。

比較項目自分で手続きする場合専門家に依頼する場合
費用司法書士報酬がかからず安価(ただし、電子定款にできず印紙代4万円がかかる場合も)登録免許税などの実費に加えて報酬が必要
時間・手間書類準備や調査に多くの時間がかかる複雑な書類作成や申請手続きの手間が省け、本業に集中できる
正確性書類不備のリスクがある専門家が対応するため、確実性が高い

少しでも費用を抑えたい、手続きを学ぶ経験をしたいという方は自分で、時間を節約して確実性をとりたい方は専門家への依頼が向いているといえます。

住所・役員変更の法人登記で必要な書類

会社の設立後も、登記事項に変更が生じた場合は、その都度、変更登記が必要です。とくに発生頻度の高い「本店移転(住所変更)」と「役員変更」は、変更日から2週間以内に登記申請を行わなくてはならず、怠ると過料の対象になることもあるため注意が必要です。

ここでは、住所変更と役員変更の登記で必要になる主な書類と、自分で手続きする際の注意点を解説します。

本店移転(住所変更)登記の必要書類

オフィスの移転などで本店所在地が変わった場合の手続きです。移転先が同じ法務局の管轄内か管轄外かで、登録免許税や手続きが異なります。

  • 変更登記申請書
  • 株主総会議事録:定款に記載された市区町村が変わる場合に必要です。
  • 取締役会議事録または取締役の決定書:具体的な移転場所と移転日を決定したことを証明します。
  • 委任状:代理人(司法書士など)に依頼する場合に必要です。

登録免許税は管轄内移転なら3万円、管轄外移転なら移転前と移転後の法務局に申請が必要なため合計6万円がかかります。

入手先商業・法人登記の申請書様式|法務局

役員変更登記の必要書類

役員の就任、辞任、重任(再任)、死亡などがあった場合の手続きです。状況に応じて添付書類が異なります。

  • 変更登記申請書
  • 株主総会議事録:役員を選任または解任した場合に必要です。
  • 就任承諾書:新たに就任する役員が、就任を承諾したことを証明します。
  • 辞任届:役員が自らの意思で辞任した場合に必要です。
  • 印鑑証明書または本人確認書類:就任する役員の状況に応じて必要です。

役員には任期があり、任期満了後も同じ人が役員を続ける「重任」の場合でも、変更登記が必要です。

出典:株式会社変更登記申請書(役員の変更)|法務局

自分で行う場合の注意点

変更登記を自分で行う場合、最も注意したいのが「登記すべき期間」と「登録免許税」です。前述のとおり、変更が生じた日から2週間以内に申請しなくてはなりません。

また、登録免許税の金額は登記の種類によって決まっています。金額を間違えて収入印紙を貼付すると、手続きが滞る原因になります。事前に法務局のWebサイトで正しい税額を確認するか、法務局の相談窓口で確認してから申請するとよいでしょう。

法人登記の申請方法と完了までの流れ

必要書類がすべて用意できたら、いよいよ法務局へ登記申請を行います。申請方法にはいくつかの選択肢があり、完了までにかかる期間も知っておくと、その後のスケジュールが立てやすくなります。

ここでは、主な申請方法の種類と、申請から登記が完了するまでの大まかな流れを解説します。

申請方法は3種類(窓口・郵送・オンライン)

法人登記の申請方法は、主に以下の3つです。

  • 窓口申請:
    本店所在地を管轄する法務局の窓口へ、書類一式を直接持参する方法です。書類に軽微な不備があれば、その場で補正できる場合があります。
  • 郵送申請:
    書類一式を封筒に入れ、書留郵便で法務局へ送付する方法です。法務局へ出向く必要がないため、遠方の場合に便利です。
  • オンライン申請:
    法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で申請する方法です。専用ソフトの導入や電子署名の準備が必要ですが、登録免許税が割引される場合があります。制度の適用条件は各自治体により異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

申請から登記完了までの期間の目安

法務局に登記申請書を提出した日が「会社設立日(または変更日)」となります。その後、法務局での審査が行われ、問題がなければ登記が完了します。

申請から登記完了までの期間は、法務局の混雑状況などによって変動しますが、一般的には1週間から2週間程度が目安です。

登記が完了すると、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書を取得できるようになります。これらの書類は、法人口座の開設や税務署への届出など、事業開始後のさまざまな手続きで必要になります。

法人登記の必要書類を理解し適切な手続きを

法人登記は、会社の設立や運営における重要な法的手続きです。その第一歩は、目的に合った必要書類を正確に把握し、不備なく準備することから始まります。株式会社や合同会社の設立、あるいは本店移転や役員変更など、それぞれの場面で求められる書類は異なります。

今回解説した書類の一覧や入手方法、作成のポイントをふまえることで、手続きの見通しを立てやすくなるのではないでしょうか。自分で手続きする場合も、専門家に依頼する場合も、正しい知識を持つことが円滑な会社運営につながります。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選択し、着実に手続きを進めていきましょう。


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