• 更新日 : 2025年9月3日

法人登記の費用の相場は?会社別や専門家、自分で行う場合の違い

法人登記(会社設立登記)を考えたとき、多くの方が気になるのが「費用は一体いくらかかるのか?」ということではないでしょうか。会社の形態や手続きの方法によって、費用は変わります。

この記事では、法人登記にかかる費用の総額や内訳、株式会社と合同会社の違い、自分で手続きする場合と司法書士などの専門家に依頼する場合の費用の比較、そして費用を抑えるポイントまで、わかりやすく解説します。

法人登記にかかる費用の相場

法人登記の費用は、主に「法定費用」「専門家への代行報酬」「その他費用」の3つで構成されます。法定費用は会社を設立する際に必ず国に納める費用で、会社の形態によって金額が決まっています。

会社設立に必ずかかる「法定費用」

法定費用は、法人登記手続きで法務局や公証役場へ支払う手数料であり、誰が手続きをしても同じ金額がかかります。主な内訳は、登録免許税、定款の認証手数料、定款に貼付する収入印紙代の3つです。

登録免許税

登録免許税は、設立登記を法務局に申請する際にかかる税金です。税額は会社の資本金の額に税率をかけて計算しますが、最低金額が定められています。

  • 株式会社:資本金額の0.7%(最低15万円)
  • 合同会社:資本金額の0.7%(最低6万円)

例えば、資本金が1,000万円の株式会社であれば資本金額の0.7%は7万円ですが、登録免許税は最低金額の15万円を納めることになります。

出典:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

定款の認証手数料

定款(ていかん)とは、会社のルールを定めた書類で、「会社の憲法」とも呼ばれます。株式会社を設立する場合、作成した定款が正当な手続きで作成されたことを公証役場で証明してもらう「定款認証」が求められます。

  • 株式会社:資本金の額に応じて3万円~5万円
  • 合同会社:定款認証は不要

株式会社の定款認証には資本金額に応じて手数料がかかり、100万円未満の場合3万円、100万円以上300万円未満の場合4万円、300万円以上の場合5万円となります。合同会社の場合はこの認証手続きが不要なため、その分の費用を抑えられます。

出典:公証事務|日本公証人連合会

定款用の収入印紙代

作成した定款が紙の文書である場合、収入印紙を貼付しなければなりません。

後述しますが、定款を電子データで作成する「電子定款」で認証を受ければ、この4万円の印紙代はかかりません。印紙税法により、電子文書には課税されないためです。これは株式会社、合同会社どちらの場合でも同様です。

専門家に依頼する場合の「代行報酬」

法人登記の手続きは複雑なため、司法書士や行政書士といった専門家に依頼するケースも少なくありません。その際に支払うのが代行報酬です。

報酬額は事務所や依頼する業務の範囲によってさまざまですが、一般的には5万円~15万円程度が相場とされています。

この報酬には、書類作成の代行だけでなく、手続きに関する相談や公証役場・法務局とのやりとりも含まれることが多いでしょう。専門家に依頼すると費用はかかりますが、時間と手間を大幅に削減でき、書類の不備といったリスクを避けられる利点があります。

会社の実印作成などの「その他費用」

法定費用や専門家への報酬以外にも、会社を設立するためにはいくつか準備すべきものがあり、それぞれに費用がかかります。

法人印鑑の作成費用

会社の実印(代表者印)、銀行印、角印の3本を用意するのが一般的です。費用は素材によって異なり、3本セットで5,000円~3万円程度が目安となります。

会社設立後の各種証明書の取得費用

登記が完了すると、法務局で会社の登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書を取得できるようになります。金融機関での口座開設や各種契約で必要となり、1通あたり数百円の手数料がかかります。

資本金

設立費用とは性質が異なりますが、会社設立時に準備する元手となるお金です。法律上は1円から設立できますが、事業を運営していくための運転資金として、少なくとも3ヶ月分程度を用意するのが一般的とされています。

これらの費用もふまえて、全体の資金計画を立てることが大切です。

 【会社形態別】株式会社と合同会社の法人登記費用の違い

会社の形態として代表的な株式会社と合同会社では、設立時の法人登記費用が異なります。大きな違いは、定款認証の有無と登録免許税の最低金額です。総額では合同会社の方が安く設立できます。

株式会社の設立費用の目安は約20万円から

株式会社を設立する場合の法定費用は、最低でも合計で約20万円かかります。電子定款を利用しない場合は、さらに4万円が上乗せされます。

費用の種類金額(目安)備考
定款の認証手数料3万円~5万円資本金の額による
定款用の収入印紙代4万円(紙の場合)電子定款なら0円
登録免許税最低15万円資本金の0.7%
合計(電子定款利用時)約20万円~

合同会社の設立費用の目安は約6万円から

合同会社は定款認証が不要なため、株式会社に比べて費用を抑えられます。法定費用は登録免許税の最低6万円のみで設立することも可能です。

費用の種類金額(目安)備考
定款の認証手数料0円不要
定款用の収入印紙代4万円(紙の場合)電子定款なら0円
登録免許税最低6万円資本金の0.7%
合計(電子定款利用時)約6万円~

どちらの会社形態を選ぶべきか

費用面だけを見ると合同会社に利点がありますが、選択は費用だけで決めるものではありません。株式会社は株式発行による資金調達がしやすく、社会的信用度も高い傾向にあります。一方、合同会社は経営の自由度が高く、意思決定が迅速に行えるのが特長です。

事業の規模や将来の展望、資金調達の計画などを総合的に考えて、自社に合った会社形態を選ぶようにしましょう。

法人登記費用は自分と専門家への依頼でどう違う?

法人登記は、自分で手続きを進める方法と、司法書士や行政書士などの専門家に依頼する方法があります。費用はもちろん、手間や時間、正確性の観点からそれぞれの長所と短所を理解しておくことが大切です。

自分で法人登記する場合の費用と流れ

自分で法人登記を行う最大の利点は、専門家への代行報酬がかからない点です。法定費用と印鑑作成などの実費のみで設立できるため、費用をできるだけ抑えたい場合に適しています。

ただし、定款の作成から必要書類の準備、公証役場や法務局での手続きまで、すべて自分で行わなければなりません。手続きには専門的な知識が求められる場面もあり、書類に不備があれば何度も修正のために足を運ぶことになりかねません。

時間的な余裕があり、手続き自体を経験してみたい方に向いている方法といえるでしょう。

司法書士や行政書士に依頼する場合の費用相場とメリット

専門家に依頼する場合、法定費用に加えて5万円~15万円程度の代行報酬がかかります。費用は増えますが、それに見合うだけの利点があります。

時間と手間の節約

専門家に依頼する大きな利点は、時間と手間を大幅に削減できる点でしょう。定款の作成から公証役場での認証、法務局への登記申請まで、複雑な手続きをすべて任せられます。これにより、経営者は本来注力すべき事業計画の策定や資金調達といった準備に集中できます。

正確性と確実性の確保

法人登記の手続きには専門的な知識が求められ、書類に少しでも不備があると受理されず、修正のために何度も法務局へ足を運ぶことになりかねません。専門家が手続きを代行することで、こうしたミスを防ぎ、スムーズで確実な会社設立ができます。登記が遅れる心配がないのは安心材料です。

電子定款の活用による費用節約

多くの専門家は電子定款の作成に対応しています。電子定款を利用すると、紙の定款で必要になる収入印紙代4万円が不要になります。専門家への代行報酬を支払ったとしても、結果的に自分で紙の定款を使って設立するより、総額が安くなるケースも珍しくありません。

とくに、設立を急いでいる方や、手続きの正確性を求める方にとっては、専門家への依頼が有効な選択肢となります。

依頼できる専門家(司法書士・行政書士)の役割の違い

会社設立を依頼できる専門家には、主に司法書士と行政書士がいます。どちらも書類作成の専門家ですが、対応できる業務範囲に違いがあります。

  • 行政書士:定款の作成や認証手続きの代理など、法務局に提出する「前」の段階の書類作成を代行します。
  • 司法書士:行政書士の業務範囲に加えて、法務局への設立「登記申請」の代理まで行えます。

登記申請の代理は司法書士の独占業務です。そのため、会社設立手続きを最後まで一貫して任せたい場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。行政書士に依頼した場合は、登記申請の部分は自分で行うか、提携している司法書士に引き継ぐ形になります。

 会社設立費用は1円でも可能?資本金と費用の関係

「資本金1円で会社が作れる」と聞いたことがあるかもしれません。法律上はたしかに可能ですが、資本金は設立費用とは別のものです。事業を円滑に進めるためには、資本金の額も慎重に考える必要があります。

資本金1円で会社を設立するメリットとデメリット

資本金1円で会社を設立できるのは、2006年の会社法施行によって最低資本金制度が廃止されたためです。ただし、建設業・宅建業など一部の業種では、許認可の要件として一定の資本金額が求められるケースもあるため、事前の確認が必要です。

しかし、デメリットも少なくありません。資本金は会社の体力や信用度を示す指標のひとつです。資本金が1円だと、金融機関からの融資が受けにくくなったり、取引先から信用を得られなかったりするおそれがあります。また、設立後すぐに事業の運転資金が尽きてしまう事態も考えられます。

事業に必要な運転資金としての資本金の考え方

資本金は、設立直後の運転資金として機能します。売上が安定して入金されるまでの間の、事務所の家賃、人件費、仕入れ費用などをまかなうためのお金です。

一般的には、事業が軌道に乗るまでの期間を考慮し、「初期費用+運転資金の3ヶ月分」程度を資本金の目安とすることが多いようです。例えば、毎月の運転資金が50万円かかるなら、150万円程度を準備しておくと安心でしょう。許認可が必要な事業では、一定額以上の資本金が要件となっている場合もあるため、事前の確認が欠かせません。

法人登記の費用を賢く抑える3つの方法

法人登記の費用は、工夫しだいで安く抑えることができます。とくに法定費用の一部は、手続きの方法を変えるだけで節約が可能です。ここでは、誰でも取り組みやすい3つの方法を紹介します。

電子定款を利用して印紙代4万円を節約する

最も効果的な節約方法が、電子定款の活用です。前述のとおり、紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、PDFなどの電子データで作成した電子定款には印紙代がかかりません。

自分で電子定款を作成するには、ICカードリーダーライタや専用ソフトの導入が必要で、数千円から1万円程度の初期投資がかかります。しかし、それでも印紙代4万円をまるごと節約できるのは大きなメリットです。

専門家に依頼する場合、多くは電子定款で対応してくれるため、追加費用なしでこの恩恵を受けられます。

オンラインの会社設立サービスを活用する

近年、マネーフォワード クラウド会社設立といった、Webサイト上で必要事項を入力するだけで、会社設立に必要な書類を自動で作成してくれるオンラインサービスが増えています。

これらのサービスは、数千円程度の利用料、あるいは無料で提供されているものもあります。多くは電子定款に対応しており、司法書士などの専門家と提携して登記申請までサポートしてくれるサービスも少なくありません。専門家に直接依頼するよりも費用を抑えつつ、自分で一から書類を作成する手間を省けるという、バランスのとれた方法といえるでしょう。

マネーフォワード クラウド会社設立|株式会社マネーフォワード

創業時に利用できる補助金や助成金を探す

国や地方自治体は、創業者を支援するためのさまざまな補助金や助成金制度を用意しています。これらの制度を活用すれば、会社設立にかかった費用の一部が補助されることがあります。

例えば、特定の地域で起業する場合や、女性や若者が起業する場合などを対象とした制度があります。申請には事業計画書の提出などが求められ、手続きは簡単ではありませんが、返済不要の資金を得られるのは大きな魅力です。日本政策金融公庫や、各自治体の商工課などで情報を集めてみましょう。

関連:個人事業主・フリーランスを支援する助成金・補助金・給付金・支援金まとめ

法人登記の費用を理解し、計画的な会社設立を

法人登記にかかる費用は、会社の未来への最初の投資です。設立する会社形態によって、必ず発生する法定費用が異なります。株式会社の場合は最低でも約20万円、合同会社の場合は約6万円が目安となります。

費用を抑えたい場合は、自分で手続きを行う選択肢もありますが、時間や手間、正確性を考慮すると、司法書士や行政書士といった専門家に依頼するのも有効な手段です。専門家への報酬はかかりますが、電子定款の活用で法定費用を安くできる場合もあります。

ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選択し、スムーズな会社設立を実現しましょう。


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