• 作成日 : 2025年8月19日

日本政策金融公庫の面談ガイド|質問例・必要書類・準備について解説

創業融資を検討する際、多くの起業希望者が利用するのが日本政策金融公庫です。融資審査の中でも重要なのが「面談」です。準備不足で臨めば、たとえ計画内容が優れていても融資が見送られることもあります。

この記事では、面談の目的や流れ、よく聞かれる質問例や必要書類などを解説します。

日本政策金融公庫の融資面談とは

日本政策金融公庫で創業融資を受けるには、原則として担当者との面談が行われます。この面談では、形式的なやり取りではなく、事業計画の信頼性や申込者の熱意を確認します。ここでは面談の目的と重要性について解説します。

書類では伝わらない情報を補うための審査

特に創業融資では、これまでの経営実績が存在しないため、過去の決算書などがありません。したがって、提出書類のみで融資判断を下すには限界があるのが現実です。そこで実施されるのが、申込者本人との面談です。事業内容や資金の使途について、書類に記載された情報がどれほど、調査分析され、また経験値などが実態に即しているかを直接対話を通じて確認します。また、面談では申込者の人柄や、事業に対する理解度、将来への意欲も評価対象となります。これは、金融機関として返済の見通しや長期的な事業の安定性を見極めるための重要な判断材料となります。

事業計画の理解と信頼性を確認するための場

面談では、提出された創業計画書の内容について、担当者からさまざまな質問が投げかけられます。たとえば、「なぜこの事業を始めるのか」「売上や経費の予測に根拠はあるか」といった基本的なことから、「競合との差別化は何か」「資金調達の具体的手段はどうか」など、事業の実現可能性や将来性に踏み込んだ内容まで問われます。申込者が自らの言葉で矛盾なく答えられるかどうかが大きな判断ポイントになります。

対話を通じて人物像と計画の整合性を見極める

担当者は面談の中で、計画書に記された数字や方針だけでなく、申込者の振る舞いや話し方、姿勢などから総合的に評価を行います。通帳を確認して自己資金の出所を確認したり、許認可証や重要な契約書などの資料を突き合わせたりして、申込内容に偽りがないかもチェックされます。また、受け答えの丁寧さや筋の通った説明力も見られており、事業に対する真剣度や準備状況が評価されるのです。書類審査と同等、あるいはそれ以上に重要なプロセスである理由がここにあります。

日本政策金融公庫の面談で確認されるポイント

日本政策金融公庫の面談では、提出書類の内容確認だけでなく、申込者の理解度や人物像、資金の準備状況までを幅広くチェックされます。

事業計画の理解度

面談において基本的な確認項目のひとつが、事業計画書の内容を申込者自身が正しく理解しているかどうかです。創業計画は自身のビジネスの将来を描くものであり、その計画を自分の言葉で説明できるかが重視されます。担当者から「この数字の根拠は?」「なぜこの市場を選んだのか?」などの質問がなされた際に、準備していた内容と一貫した回答ができることが求められます。計画書を第三者が作成しただけで、中身を把握していないような状態は好ましくありません。

計画の現実性と整合性

次に見られるのが、計画の実現性や矛盾がないかという点です。たとえば、売上や利益の予測が非現実的な場合や、コストの算出根拠が曖昧な場合には、面談で詳細な説明を求められます。また、設備資金・運転資金の使い道が計画と合致しているか、必要な許認可や準備が整っているかといった、具体的な実行力の裏付けも評価に影響します。さらに、業界相場との比較も行われます。したがって、数字だけでなく、計画全体の論理性や数字と数字の整合性が重視されます。

自己資金の内容と資金使途の妥当性

以前は創業資金総額の1/10以上の自己資金が要件とされていましたが、この要件は2023年4月に撤廃されました。ただし、自己資金の有無やその形成経緯は、事業への準備状況を示す指標として現在も審査で重視される傾向にあります。

面談では、提出された預金通帳の原本をもとに、自己資金の額とその形成経緯が詳しく確認されます。直近で高額の入金があった場合や、短期間で急に増えた預金については、その出所や背景を丁寧に説明する必要があります。不透明な資金の流入があると、融資の信頼性が損なわれる可能性もあるため、誠実な対応が求められます。

人柄と事業への熱意

面談では、書類では判断しきれない申込者の人柄や、事業に対する姿勢も重要な評価項目です。たとえば、丁寧な受け答え、論理的な説明、適切なマナーや清潔感のある身だしなみなどが、担当者の印象を大きく左右します。また、事業にかける想いや、これまでの準備状況について問われた際に、現実的かつ前向きな回答ができれば、熱意が伝わりやすくなります。こうした要素は事業計画書では見えにくいため、面談で初めて評価される重要な側面といえるでしょう。

日本政策金融公庫の面談の場所と形式

ここでは、面談の実施場所や形式、出席者、持参書類などの基本事項について解説します。

面談は各地の支店で実施されるのが基本

面談は、原則として日本政策金融公庫の各支店にて行われます。申込者の所在地を考慮して、最寄りの支店へ訪問する形が一般的です。インターネット経由で融資を申し込んだ場合でも、担当者から後日電話等で連絡が入り、面談の日時と場所が指定されます。支店には1~2名の融資担当者が同席し、申込者は原則として1名で対応します。創業に係る融資においては、事業の責任を負う代表者本人が面談に出席することが求められており、代理人の代行は基本的に認められていません。

事業予定地での訪問面談や例外的なオンライン対応も可能

支店以外での面談が行われるケースもあります。たとえば開業予定の飲食店や小売店の現地にて、担当者が訪問し、事業環境を確認しながらヒアリングすることがあります。このような訪問型の面談は、特に設備投資を伴うケースや現地の確認が重要な場合に実施される傾向があります。この「訪問面談」とは別に、「現地調査」もあります。

また、近年ではオンライン環境の整備に伴い、一部の地域や事情によってはビデオ通話によるオンライン面談にも対応しています。例外的な場合には、担当者に相談することで柔軟な対応も可能です。ただし、現在も原則は対面での面談が基本であり、特段の事情がない限りは指定された支店に出向く必要があります。

面談時の同席の可否

面談には基本的に代表者本人が出席しますが、必要に応じて創業メンバーの役員や顧問税理士が同席することも認められています。不安がある場合には、面談前に担当者へ相談することで、同席の可否や手続きについて確認できます。同席者がいる場合でも、主に説明を行うのは申込者本人であるため、自身で事業内容や計画を把握しておくことが大切です。

同席者への過度な依存状態がわかると逆効果となります。面談は、代表者の経営能力を評価する場であることを忘れないようにしましょう。

日本政策金融公庫の面談の所要時間と進行

ここでは、面談の平均的な所要時間と、当日の進行の流れについて解説します。

面談の平均時間

通常、日本政策金融公庫の面談時間は30〜40分程度です。事業内容が明確で、資料に不備がない場合には30分以内で終了するケースもあります。一方、提出書類の内容に不明点が多い場合や、計画の整合性について詳しい説明が必要となる場合には、面談が1時間程度に延びることもあります。ただし、よほど複雑な案件でない限り、面談が長時間に及ぶことは稀です。申込者としては、必要な内容を簡潔にまとめ、限られた時間内に的確に伝える意識を持っておくと安心です。

質疑応答形式で進行する

面談は、基本的に質疑応答形式で進められます。担当者はあらかじめ提出された創業計画書や必要資料をもとに、創業動機や経歴から事業内容や資金の使途、自己資金の金額や出所、リスクを含めた今後の見通しなどについて多角的に質問してきます。申込者はそれに対して自分の言葉で説明し、必要であれば追加の資料を提示して補足します。このやり取りを通じて、担当者は計画に対する理解を深め、不明な点を解消していきます。

さらに質疑応答においては同席者の代理回答に依存していないかなども見られます。

面談終了後に審査が続く

面談が終わっても、その場で融資の可否が告げられることはありません。面談内容を含めた全体の審査は、公庫内部でさらに行われます。実地調査や信用情報の確認といった審査プロセスを経て、後日あらためて審査結果が通知される流れとなります。面談当日は最終判断ではなく、審査の一部として真剣に取り組む姿勢が大切です。

日本政策金融公庫の面談までに準備する書類

日本政策金融公庫の創業融資を受けるにあたり、面談時にはさまざまな書類の原本や控えを持参する必要があります。以下が代表的な持参書類です。

  • 創業計画書(控え)
    日本政策金融公庫の所定フォーマットに記入した事業計画書。申込内容の説明時に使用します。
  • 借入申込書の控え
    提出済みの申込書類の控え。面談では申込額や条件について再確認が行われる場合があります。
  • 本人確認書類(原本)
    運転免許証やマイナンバーカードなど。本人確認のため、必ず顔写真付きのものを持参します。
  • 預金通帳の原本
    自己資金の証明として、普段使用している預金口座の通帳原本が必要です。入出金履歴が見られます。
  • 許認可証の写しまたは原本
    飲食業や美容業など、開業に許認可が必要な業種の場合は必ず提示が求められます。
  • 見積書・契約書類
    設備投資や物件契約に関する見積書や賃貸借契約書など。資金の使途説明に必要となることがあります。

参考:各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の面談でよくある質問例

日本政策金融公庫の融資面談では、申込者の計画の信頼性や返済能力を判断するために多角的な質問が行われます。主に「創業動機や経験」「事業計画」「資金と返済計画」に関する質問が中心です。

創業の動機や経験に関する質問

「なぜこの事業を始めようと思ったのか?」という問いはほぼ必ず聞かれます。前職での経験や課題意識を踏まえて、自分がその事業に取り組む必然性や社会的意義を具体的に語ると説得力が増します。また、「この業種での経験は?」「関連資格は保有しているか?」といった質問にも備え、自身の準備や知識を伝えましょう。未経験である場合も、市場調査や支援体制など信頼を補う要素を用意しておくと効果的です。事業に集中できる環境かを確認する意図で、「ご家族の協力は得られていますか」といった形で、事業を支える生活基盤について質問されることがあります。

事業内容・計画に関する質問

「何を売るのか」「営業場所はどこか」といった基本的な情報に加え、「競合との差別化はどう図るのか」「売上や経費の見込みは妥当か」など、計画の具体性と実現性を確認されます。想定売上の根拠として、「1日○人来店、客単価○円」といった創業計画書作成時に試算した資料を用意しておくとよいでしょう。また、取引先や仕入先の見込み、販路・集客方法も質問されるため、ビジネスモデル全体を整理し、第三者にわかりやすく説明できることが求められます。

資金計画・返済に関する質問

「資金を何に使うか」「希望額の根拠は?」「自己資金はいくらか」など、お金に関する質問はとても重視されます。通帳の履歴に関する質問もあるため、入金の経緯も説明できるようにしておきましょう。また、「返済が難しくなった場合の対応」については、経費削減や収入補填策など現実的な対処案を伝えると信頼性が高まります。必要に応じて、他の借入との関係性についても整理しておくことが大切です。

日本政策金融公庫の面談後の流れ

面談が終わると、審査は最終段階に進みます。ここでは、審査結果の通知から契約、融資金の入金、そして返済開始までの流れを紹介します。

審査結果の通知と契約手続き

面談後、通常1〜2週間以内に審査結果の通知が届きます。連絡は可否に係わらず電話または郵送で行われ、承認の場合は契約書類一式が送付されます。内容を確認し、署名・押印のうえ速やかに返送しましょう。遅れると融資の実行も遅れます。否認時は電話連絡があり、簡単な理由説明がなされる場合もあります。

否決された場合に再申請を行うまでの期間について、公庫の公式なルールはありません。ただし、審査で指摘された問題点を改善し、事業計画を十分に練り直すためには一定の期間内に中に改善の証拠を整えることが必要となるため、一般的には半年程度の期間を空けることが推奨されるケースが多いです。

なお、日本公庫電子契約サービスにより、書面でなくweb上にて融資契約手続きを進めることも可能です。

参考:日本公庫電子契約サービスのご案内|日本政策金融公庫

融資金の受け取りと返済開始

契約が成立すれば、数営業日以内に融資金が指定口座に入金されます。全体としては、面談から着金まで20日前後を見込むのが一般的です。入金後は返済が始まります。通常は翌月以降に毎月一定額を自動引き落としで返済する「月賦返済」(口座振替)が基本です。また、据置期間のあるものについては元金返済開始が猶予されます。残高不足による延滞を防ぐため、返済予定表を確認し、口座管理を徹底しましょう。計画的な返済は今後の信用にもつながります。

面談に向けて万全の準備を整え、信頼を得よう

日本政策金融公庫の面談は、創業時の融資を受ける上で大切な審査の一部であり、申込者の姿勢や事業計画への理解が問われます。面談では、事業の実現可能性、資金の使い道、自己資金の背景、返済の見通しなどを具体的に聞かれるため、事前に回答を整理しておくことが欠かせません。創業計画書の内容をしっかりと把握し、自分の言葉で説明できるよう準備しましょう。また、服装や言葉遣いなど、第一印象も評価に影響します。計画的な準備と誠実な対応で、融資を成功させましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事