• 作成日 : 2025年7月24日

小売業に必要な許認可は?食品や中古品など業種ごとの一覧や取得までの流れを徹底解説

小売業と一口に言っても、取り扱う商品や販売形態によっては、国や自治体から許可や認可、届出が必要になる場合があります。

この記事では、小売業に必要な許認可について分かりやすく解説します。許認可の必要性を理解し、適切な手続きを行うことで、法令遵守意識が高く、信頼される店舗運営を目指しましょう。

小売業で許認可が不要なケース

一般的な小売業、つまり、特別な規制の対象となっていない完成品を仕入れて、そのまま消費者に販売する形態であれば、営業のための特別な許認可は必要ありません。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 既製品の衣料品、雑貨、文房具、書籍、家電製品などを仕入れて販売する店
  • メーカーから仕入れた包装済みの菓子類や飲料(酒類を除く)を販売する店
  • 一般的な家具や日用品を販売する店

これらの場合でも、開業にあたっては税務署への開業届の提出は必要で、店舗の規模や従業員数によっては社会保険や労働保険の手続きも求められます。また、建物の用途変更や大規模な改装を行う場合は、建築基準法や消防法に関連する手続きが必要になることがあります。

小売業で許認可が必要なケース

一方で、以下のような商品を取り扱う場合や、特定の販売・営業形態をとる場合には、それぞれの法律に基づいた許認可や届出が必要になります。これらは主に、国民の安全衛生、未成年者の保護、公正な取引の確保、盗品流通の防止といった公益的な目的から規制が設けられています。

取り扱う商品・サービスによるもの

  • 食品:生鮮食品の加工販売、店内調理、自家製食品の販売など
  • 酒類:全てのアルコール飲料の販売
  • 医薬品・医療機器・化粧品:風邪薬、コンタクトレンズ、手作り石鹸の販売など
  • 中古品(古物):リサイクル品、古着、中古ブランド品などの買取り・販売
  • 動物:ペット(哺乳類、鳥類、爬虫類)の販売
  • たばこ:紙巻きたばこ、加熱式たばこなどの販売
  • その他:法令で規制されている特定の商品

店舗の形態や販売・営業方法によるもの

  • 深夜営業:深夜0時以降に酒類を提供する飲食店形態
  • 通信販売:インターネットやカタログで特定の商品を広域に販売する場合
  • 移動販売:自動車などで移動して食品などを調理・販売する場合
  • 屋外広告物の設置:一定規模以上の看板を設置する場合

ご自身の事業計画がこれらのケースに該当しないか、慎重に確認することが重要です。

小売業で必要な許認可一覧

ここでは、小売業で必要となる可能性のある主な許認可を、取り扱う商品のカテゴリー別に紹介します。

1. 食品関係(食料品関係営業許可)

食品を取り扱う小売業は、衛生管理が特に重要視されるため、多くの許可が存在します。

許可の種類対象となる主な商品や販売形態主な申請・相談窓口
飲食店営業許可店内で調理した食品を提供し、飲食させる場合。テイクアウト専門店でも調理工程によっては必要。管轄の保健所
菓子製造業許可パン、ケーキ、クッキー、和菓子、焼き菓子などを製造して販売する場合。
そうざい製造業許可弁当、惣菜、サラダなどを製造して販売する場合。
食肉販売業許可食肉を包装せずに販売したり、店内で解体・カットして販売したりする場合。
魚介類販売業許可生鮮魚介類をそのまま、または下処理して販売する場合。
乳類販売業許可牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を販売する場合(常温保存可能なロングライフ牛乳や一部の乳製品を除く)。
食品の冷凍又は冷蔵業許可大量の冷凍・冷蔵食品を保管し、卸売・小売する場合。
氷雪販売業許可食用氷を製造または仕入れて販売する場合。
食品関係の許可のポイント
  • 施設基準:食品関係の許可では、営業所の構造や設備が衛生基準を満たしているかが厳しく審査されます。
  • 食品衛生責任者の設置:各営業所には、食品衛生責任者を置く必要があります。資格要件があるか、指定の講習会を受講する必要があります。

2. 酒類関係

酒類(アルコール度数1%以上の飲料)を販売するには、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から「酒類販売業免許」を受ける必要があります。

免許の種類対象となる主な商品や販売形態主な申請・相談窓口
一般酒類小売業免許店舗において、全ての品目の酒類を消費者に小売販売する場合。所轄の税務署
通信販売酒類小売業免許インターネットやカタログなどを利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象に酒類を通信販売する場合。国産酒の場合、製造委託者の年間製造量が一定数量以下であるなど、取り扱える品目に制限があります。
特殊酒類小売業免許酒類製造者が自身の製造した酒類を販売する場合や、企業の役員・従業員等特定の範囲に限定して酒類を販売する場合などに必要。
酒類関係の免許のポイント
  • 経営基礎要件:申請者や法人の役員が、過去に酒税法関連で処分を受けていないか、十分な経営能力があるかなどが審査されます。
  • 場所的要件:酒類の製造場や販売場、料理店等と同一の場所でないことなどが求められます。
  • 需給調整要件:新規に免許を取得する際に、周辺の酒類販売の状況などが考慮される場合があります。

3. 医薬品・化粧品関係

医薬品や化粧品を販売するには、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律)に基づく許可を取得することが求められます。

許可・届出の種類対象となる主な商品や販売形態主な申請・相談窓口
医薬品販売業許可風邪薬、鎮痛剤などの一般用医薬品を販売する場合。取り扱う医薬品のリスク区分に応じて、薬剤師や登録販売者の配置、情報提供体制などが求められます。都道府県の薬務主管、保健所など(地域による)
高度管理医療機器等販売業・貸与業許可コンタクトレンズ、一部の家庭用治療器など、副作用や機能障害が生じた場合の人体へのリスクが高い医療機器を販売・貸与する場合。
管理医療機器販売業・貸与業届出家庭用マッサージ器、補聴器、電子体温計など、高度管理医療機器以外の管理医療機器を販売・貸与する場合に必要(許可ではなく届出)。
化粧品製造販売業許可自社ブランドの化粧品を企画・製造し、市場に流通させる責任を負う場合に必要。品質管理(GQP)や製造販売後安全管理(GVP)の体制が求められます。都道府県の薬務主管など(地域による)
化粧品製造業許可化粧品を実際に製造する場合に必要。
医薬品・化粧品関係の許可・届出のポイント
  • 人的要件:特に医薬品販売業では、薬剤師や登録販売者の常駐が不可欠です。
  • 構造設備基準:医薬品や医療機器を適切に保管・陳列するための設備(鍵のかかる陳列設備など)が必要です。
  • 化粧品の輸入:海外から化粧品を輸入して販売する場合、日本の成分基準に適合しているか確認し、多くの場合、製造販売業許可が必要になります。

4. 中古品関係

リサイクルショップや古着屋、中古ブランド品店、中古書店、中古CD・DVD店など、一度使用された物品や新品でも使用のために取引された物品、これらの物品に幾分の手入れをした物品(これらを「古物」といいます)を買い取って販売したり、交換したり、委託を受けて販売したりする営業(古物営業)を行う場合に必要です。

許可の種類対象となる主な商品や販売形態主な申請・相談窓口
古物商許可中古品を仕入れて販売する、買い取って修理して販売する、中古品を別の物と交換する、中古品の売買をあっせんするなどの場合に必要。

インターネットオークションサイトの運営者や、そこで継続的に売買を行う個人も対象となることがあります。

主たる営業所の所在地を管轄する警察署(公安委員会)
中古品関係の許可のポイント
  • 営業所の設置:営業の本拠となる営業所が必要です。
  • 管理者の選任:営業所ごとに、業務を適正に実施するための責任者として「管理者」を選任する必要があります。
  • 欠格事由:申請者や管理者が、過去に特定の犯罪で罰金刑以上に処せられたり、古物営業法違反で許可を取り消されたりした場合などは、許可が受けられないことがあります。
  • 品目の選択:申請時に、取り扱う古物の区分(13品目)を選択します。
  • 三大義務:古物商には、「取引相手の確認義務」「不正品の申告義務」「帳簿等への記録義務」が課せられます。

5. その他

上記以外にも、取り扱う商品やサービス、営業形態によって以下のような許認可や届出が必要になることがあります。

許認可・届出の種類対象となる主な商品や販売形態主な申請・相談窓口
動物取扱業登録ペット(哺乳類、鳥類、爬虫類)の販売、保管、貸出し、訓練、展示などを行う場合に必要。事業所・業種ごとに登録が必要。事業所の所在地を管轄する動物愛護相談センター、保健所など
たばこ小売販売業許可製造たばこを販売する場合に必要。財務大臣の許可が必要で、営業所と申請者の距離や、予定地の周辺の状況などが審査されます。日本たばこ産業株式会社(JT)の営業所、財務局
深夜酒類提供飲食店営業開始届出バーや居酒屋などで、深夜0時以降も酒類を提供する場合に必要(飲食店営業許可とは別に必要)。主食と認められる食事を提供している場合は不要な場合もあります。営業所の所在地を管轄する警察署
屋外広告物許可店舗の看板や広告塔、広告板、のぼり、立看板などを設置する場合、その大きさや場所、表示内容によっては、屋外広告物法や各自治体の条例に基づき許可が必要になることがあります。市区町村の担当課(都市計画課、建築指導課など)
防火対象物使用開始届(または設置届)店舗の建物や内装工事によっては、消防法に基づき、消防署への届出や検査が必要になります。特に不特定多数の人が出入りする小売店では、消防用設備の設置や避難経路の確保が重要です。管轄の消防署
理容所・美容所開設検査確認済証ネイルサロンやまつ毛エクステンションサロンを併設する場合など、理容・美容行為を行う場合は、それぞれの開設手続きが必要です。管轄の保健所
特定計量器の定期検査食肉や惣菜の量り売りなどで使用する「はかり(特定計量器)」が、正確に計量できる状態であるかを定期的に検査を受ける義務があります(許認可とは異なりますが、遵守事項です)。計量検定所、特定市町村

許認可の名称や要件は、法改正や自治体の条例によって変更されることがあります。また、同一の許認可であっても、営業所の所在地を管轄する自治体によって、申請手続きの細部や必要書類が異なる場合があります。必ず、最新の情報を管轄の行政機関や行政書士などの専門家にご確認ください。

小売業の許認可取得の流れ

許認可の種類によって詳細は異なりますが、一般的な取得の流れと押さえておくべきポイントは以下の通りです。

1. 事前調査・相談

  • 自分の事業内容(取り扱い商品、販売方法など)を明確にし、どの許認可が必要になるのかをリストアップします。
  • 必要な許認可の申請窓口(保健所、警察署、税務署、都道府県・市区町村役所など)を調べます。
  • 各許認可の人的要件(資格、経験、欠格事由など)、物的要件(施設の広さ、設備、構造など)、財産的要件などを詳細に確認します。
  • 多くの行政窓口では、申請前の相談に応じてくれます。図面や計画を持参し、具体的なアドバイスを受けることで、手戻りを防ぎ、スムーズな申請につながります。

2. 申請書類の準備

  • 申請書、営業計画書、営業所の図面(平面図、案内図など)、登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)、資格を証明する書類、誓約書など、許認可ごとに定められた書類を収集・作成します。
  • 書類に不備があると、受理されなかったり、審査が長引いたりする原因になります。記入漏れや誤りがないか、提出前に何度も確認しましょう。

3. 人的要件・物的要件の充足

  • 人的要件:例えば、食品衛生責任者の資格取得、古物商の管理者の選任など、必要な人員を確保し、要件を満たします。
  • 物的要件:店舗のレイアウトや内装工事が、許認可の基準に適合するように準備します。工事着工前に図面段階で行政に確認してもらうことが賢明です。

4. 申請

  • 準備した申請書類一式を、管轄の行政窓口に提出します。
  • 申請手数料が必要な場合は、この時点で納付します。

5. 審査・検査

  • 提出された書類に基づいて、行政機関による審査が行われます。
  • 多くの場合、書類審査に加えて、担当官による営業所の現地調査・検査が行われます。
  • 施設や設備が申請通りか、基準を満たしているかが確認されます。指摘事項があれば、改善して再検査を受ける必要があります。

6. 許可証(免許証・登録証など)の交付

  • 審査・検査をクリアすると、許可証などが交付され、晴れて営業を開始できます。
  • 許可証は、店舗の見やすい場所に掲示することが義務付けられている場合が多いです。

7. 更新手続き・変更手続き

  • 許認可には有効期限が定められているものが多く、期限が切れる前に更新手続きが必要です。
  • 申請内容に変更があった場合は、速やかに変更届を提出する必要があります。

小売業の許認可取得にかかる費用と期間の目安

許認可取得にかかる費用と期間は、その種類や内容、営業所の状況、専門家に依頼するかどうかによって大きく変動します。

費用

  • 申請手数料:数千円から数万円程度
  • 書類取得費用:住民票、登記事項証明書などの発行手数料
  • 設備投資費用:施設基準を満たすための内外装工事費、厨房設備費など
  • 専門家への報酬:行政書士などに申請代行を依頼する場合、別途報酬が発生

期間

申請から許可が下りるまでの期間は、行政庁によって標準処理期間が定められています。おおよその目安は、以下の通りです。

  • 古物商許可:約40日~2ヶ月程度
  • 飲食店営業許可:約2週間~1ヶ月程度
  • 酒類販売業免許:約2ヶ月~3ヶ月程度

小売業の許認可取得の準備を進めましょう

小売業における許認可は、一見複雑で面倒に感じるかもしれません。しかし、これらは消費者の安全を守り、公正な取引を確保し、ひいてはご自身の事業の信頼性を高めるために不可欠なルールです。

開業準備の早い段階から、どのような商品を取り扱い、どのような形態で販売するのかを具体的に計画し、必要な許認可をリストアップすることが成功への第一歩です。そして、不明な点や不安なことがあれば、自己判断せずに、必ず管轄の行政機関や専門家に相談しましょう。


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