- 作成日 : 2025年5月1日
自動車販売(中古車販売)には許可が必要!中古車販売店開業までの流れを解説
自動車販売では、どのような許認可が必要なのかを知りたい方もいるでしょう。自動車を販売するには、古物商許可や自動車リサイクル法許可など、複数の許認可を得る必要があります。
この記事では、中古車販売で必要な許認可の種類や手続きの流れを解説します。これから自動車販売業で独立したい方はぜひ参考にしてください。
目次
自動車販売業とは
自動車販売業とは、自動車を個人などに販売して利益を得る事業で、主に新車を扱う企業と中古車を扱う企業があります。
日本の新車の流通網は、自動車メーカーによって組織されてきました。自動車産業は量産型であるため、販売体制の整備が欠かせないためです。
新車販売業は、ディーラーと業販店の2種類があります。ディーラーはメーカーの傘下にあるケースが多く、通常は1社のメーカーの車のみ取り扱います。業販店は自動車修理などを行ってきた会社が参入することが多いため、複数のメーカーの車を取り扱うのが特徴です。
自動車販売業のなかには、中古車専門の業者も存在します。中古車業界は従来オークションを通じた取り引きがメインでしたが、近年は卸売業者が個人から買い取って直接小売りをするトレンドが見られます。
中古車販売店の業務内容
中古車販売店における業務内容を解説します。販売以外にも仕入れや整備、アフターメンテナンスなどさまざまな業務があります。
仕入れ
中古車販売をする場合、まずは仕入れとして中古車を購入し、売り物である商品を手に入れることが必要です。仕入れ方法として、自動車業界のオークション(オートオークション)や中古車買い取りなどがあります。
オートオークションは、中古車の市場のような存在で、販売会社同士が購入したり、売却したりする場所です。中古車買い取りをして販売するケースが増えてきてはいますが、中古車の仕入れではオートオークションも依然として多くの割合を占めています。
会社の規模によっては、営業や販売の担当者でも商品の仕入れに関与するケースもあります。
値付け
購入した中古車を、商品として売る際の価格設定を行います。お客様が購入可能な値段であり、なおかつ会社に利益が出るようにする必要があります。また、仕入れから販売するまでのメンテナンスの工数や費用も、価格に反映させなくてはなりません。
どの程度の価格なら購入してもらえるのかを判断するには、中古車市場に関する知識や経験が必要です。新しく入った従業員では難しいため、上司や先輩社員の指導が欠かせません。
販売
営業職・販売職での中心となる業務です。お客様に中古車を購入していただくために、接客を行います。
中古車は新車より安いとはいえ、数十万円・数百万円とお客様にとっては高額な買い物です。仕入れ・値付け・販売を通して、中古車や関連商品に関する知識を身に付けて接客をしないと、売買契約を結ぶことは簡単ではありません。
整備・点検
広い意味ではアフターメンテナンスに含まれますが、整備・点検は中古車販売で非常に重要です。新車を購入する場合よりも、中古車を購入する場合のほうが、車の状態を気にするお客様が多く見られます。
整備・点検をしっかり行うことにより、購入された車に大きな故障が発生する前に、早期発見ができるようにすることも重要な仕事です。
アフターメンテナンス
アフターメンテナンスは、中古車を販売した後の車検や故障修理といった作業です。これらの作業を通じ、お客様とは定期的な付き合いになるため、良好な関係を構築することが重要です。
直近で購入された方だけでなく、過去に購入された方がアフターメンテナンスを利用されることも想定されるため、バッティングしてしまい対応しかねる場合もあるでしょう。すべての依頼に対応を考える際には、リソースを確保する手段もあわせて考えておかなくてはなりません。
書類作成などバックオフィス業務
中古車の取り引きに必要な事務処理を行います。伝票を作成する場合、商品の種類・数量・取引先の社名はすべて正確に記入しなくてはなりません。ミスが発生すると、会社の信用や営業活動に大きなマイナスとなり、会社の経理・財務にも影響がおよびます。
営業・販売事務員は、受注内容と伝票の内容を慎重にチェックし、正確に処理することが重要です。場合によっては、複数人によるチェックも必要となります。
保険代理店業務
中古車販売店は、保険会社との損害保険代理店委託契約に基づき、自動車保険代理店としての業務を行うこともあります。具体的には以下の業務です。
- 保険契約の締結
- 保険料の領収・返還
- 保険契約の変更・解約などの届出の受付
- 保険料領収証の発行や交付、保険証券の交付
- 契約満期の管理など保険契約の維持・管理
- 事故通知の受付、保険会社への報告
- 保険金請求手続きのサポート
- 保険契約書を保険会社に送付するなどの事務作業
中古車販売店を開業するための許可・登録
中古車販売店として開業するために必要となる、許可や登録制度について解説します。
古物商許可
古物商許可申請とは、古物(中古品)を取り扱う業態を運営する際に、必須となる申請です。中古車以外でも、古物を売買・交換したり、委託販売などをしたりする場合には取得が欠かせません。
古物商許可申請は、店舗の所在地を管轄する警察署で手続きを行います。店舗がない場合は経営者の所在地を管轄する警察署です。
申請なしで古物の取り扱いをすると無許可営業になるため、必ず申請を済ませましょう。
自動車リサイクル法引取業登録
中古車販売業では、自動車の売買だけでなく、廃車の引取も行うケースがあります。その場合には、自動車リサイクル法引取業の登録が必要です。
登録をするには、自身が住む地域の役場あるいは保健所の自動車リサイクル担当窓口で申請をします。申請の際、法人なら登記事項証明書、個人事業主では住民票の写しを求められるケースが多いため、前もって用意しておきましょう。
自動車リサイクルシステムの登録
中古自動車の引取や解体、部品取りなどを行う場合には、自動車リサイクルシステムへの登録および自治体への登録と許可も行う必要があります。自動車リサイクルシステムとは、自動車リサイクル法に関連する方が利用する情報システムを統括しているサイトです。
引取業者、フロン類回収業者、解体業者などは、自動車リサイクルシステム登録の手続きを済ませることが必要となります。
オークション会員登録
中古車販売店では、仕入れのルートを複数持っておくことが重要です。1つだけではそのルートでの仕入れがうまくいかなくなった際に、仕入れができず経営危機になることがあります。
車両の仕入れにおいて、重要になるのがオートオークションです。オートオークションに参加するには入会手続きが必要で、入会には実務実績が必要になるケースもあるため注意しましょう。
保険代理店としての登録
自動車の購入時には、自賠責保険への加入も必須です。中古車販売店において自賠責保険の代理店としての役割も提供することにより、お客様の手続きの負担を削減し、また店舗への信頼感を高めることもできます。
代理店として登録するには試験に合格しなくてはならないため、簡単ではありません。しかし、代理店になると保険販売時のマージンを得られる場合もあり、さらなる収益化にもつながるメリットもあります。
古物商許可取得の流れ
古物商許可を取得する流れを解説します。
事前準備
古物商許可を取得するには、まず書類の準備が必要です。個人か法人かで必要書類は異なるため、どのような書類が必要かを確認しておきましょう。
法人 |
|
---|---|
個人 |
|
書類は、作成から3ヶ月以内であることが必要です。3ヶ月を過ぎると無効になるため、書類を入手したらあまり時間をおかずに手続きを進めましょう。
手続きの手順
古物商許可申請の手順は、以下のとおりです。
- 警察署に事前相談をする
- 古物許可申請の必要書類を準備する
- 古物許可申請書を作成する
- 古物商許可申請書の副本を作成する
- 警察署に古物商許可申請の予約を入れる
- 警察署に古物許可申請書を提出
- 古物商許可証の審査を受ける
- 「古物商許可証」の交付を受ける
まずは事業所を管轄する警察署を訪れ、古物商担当者に事前相談をしましょう。ここで申請書や誓約書などの書類を入手します。
必要書類を揃え、古物商許可申請書を作成します。記入方法に関して疑問がある場合は、警察署に確認するのがおすすめです。
警察署に古物商許可申請の予約を入れて、予約日時に訪問して書類を提出します。審査が行われ、通過すると電話で連絡がきます。警察署で古物商許可証の交付を受けて完了です。
手数料や所要期間
古物商許可申請を行う場合、許可申請手数料として1万9,000円が必要です。その他に年会費や更新費などはないため、それほど大きな負担にはなりません。
一般的に申請後、40〜60日前後で古物商許可証が交付されます。すぐに取得できるわけではないため、事業を始めたい時期から逆算して準備を進めましょう。
自動車リサイクル法引取業登録の流れ
自動車リサイクル法引取業の登録方法は、各自治体で異なります。この記事では、東京都の場合で解説します。
事前準備
事業者登録・許可の申請書を準備します。業種によって申請書が異なりますので、間違えないように注意しましょう。
使用済み自動車の引き取りを行う場合、引取業の申請書を選びます。東京都のホームページにアクセスして、PDFファイルまたはExcelファイルを入手して記入しましょう。
Excelファイルであれば手書きで入力しなくても、キーボードで入力できます。申請の記入要領の書類には、法人・個人で必要な添付書類が記載されていますので、こちらも確認しましょう。
手続きの手順
作成した申請書と添付書類を、自治体の窓口に提出します。申請・届出の窓口は、事業所の所在地により異なるため、間違えないようにしましょう。
東京都23区・島しょ地域の場合は「東京都環境局 資源循環推進部 産業廃棄物対策課 審査担当 自動車リサイクル担当」が窓口です。場所は新宿区にある都庁第二本庁舎の19階です。
申請は予約制となっているため、電話で予約したうえで窓口を訪問しましょう。
手数料や所要期間
東京都の場合、新規登録申請の手数料として6,100円が必要です。申請後に庁舎内の銀行あるいは郵便局で納付する必要があるため、現金を用意しましょう。ちなみに、一度納付した申請手数料は、登録の拒否や申請の取り下げでも返還されません。
申請を提出してから後日、新しい登録通知書が郵送で交付されますので、受け取ればすべて完了です。
自動車リサイクルシステムの登録の流れ
自動車リサイクルシステムに登録する手順を解説します。
事前準備
自動車リサイクルシステムへの登録をするには、前もって自治体の登録・許可を得る必要があります。自動車リサイクル法引取業の登録を済ませてから、こちらのシステム登録を行います。
自動車リサイクルシステムの公式ホームページにアクセスし、各種約款・規約を読みましょう。申込書をAcrobatReaderで開くと文字入力が可能です。
添付書類として、自治体の引取登録通知書のコピー、銀行口座の自動払込利用申込書のコピーが必要です。
手続きの手順
ホームページから申込書の様式を入手して記入します。パソコン入力もしくはプリントアウトしてからの手書き入力が可能です。
申込書に必要事項をすべて記入し、添付書類とともに、以下の送付先まで郵送しましょう。
〒105-8691
東京都芝郵便局 私書箱第8号
公益財団法人自動車リサイクル促進センター
業者登録グループ
なお、申込書は郵送のみ受付可能で、宅配便は利用できません。
手数料や所要期間
申込書を郵送してから登録完了まで、数週間から1ヶ月程度かかります。開業日から逆算して余裕をもって手続きを済ませましょう。登録手数料はとくにかかりません。
なお、一度登録された情報をWeb上で変更することも可能です。部署名・担当者名・電話番号などが変更になった場合、公式ホームページにログインをして変更しましょう。
ただし、一部の情報はWeb上での変更ができません。その場合は変更の申込書を提出することが必要です。
オークション会員登録の流れ
オートオークションはいくつか存在しますが、この記事ではUSSオートオークションの場合で解説します。
事前準備
USSオートオークションは、入会条件を設定しています。以下の条件をクリアしているかをまず確認しましょう。
- 古物商許可証を受けてから1年以上が過ぎていること
- 適格請求書発行事業者として登録していること
- 常設の展示場と事務所があり、営業活動をしていること
- 連帯保証人を用意できること、またはSS会員制度の保証を受けられること
- 保証金10万円を預託できること
手続きの手順
USSオートオークションには複数の会員種類があり、通常はまず「現車オークション」の会員資格を取得する必要があります。
現車オークション会員として入会する手順は以下のとおりです。
- ホームページで入会資料を請求
- 届いた入会申込書を記入して送付
- 入会申込書を最寄り会場に提出
- 資格審査
- 審査結果の通知・案内
- 契約申込書の提出
- 入会保証金の振込
- 会員登録
- 会員カード・IDカード送付
入会が完了すると、全国で行われているUSSの現車オークション会場に参加できるようになります。
手数料や所要期間
入会申込書が先方に到着してから、初回の利用まで通常1ヶ月程度かかります。オークションで仕入れを始めたい時期から逆算して準備しましょう。申込には、保証金として10万円が必要です。
現車オークションの会員資格を取得すると、「専用端末オークション」および「インターネットオークション」にも申し込めるようになります。事業で必要な場合は申し込むのもよいでしょう。
保険代理店としての登録の流れ
保険代理店として登録するには、以下のステップで進めていきます。
- 代理店として登録したい損害保険会社を決める
- 損害保険会社が開催する研修や試験を受験し、合格する
- 損害保険会社と代理店委託契約を締結
- 財務局で代理店登録手続きし、審査と登録を完了させる
保険代理店登録は義務ではないものの、中古車販売会社で自賠責保険の手続きができると、顧客にとっては便利です。事業者としての信頼性を高めるためにも、登録を検討するのもよいでしょう。
中古車販売店を開業するまでのステップ
ここまで紹介してきてきた各種許認可や登録は、以下のような流れで進めていきます。
- 店舗の所在地を管轄する警察署の公安委員会に古物商許可申請を行う
- 自動車リサイクル法に基づく引取業や事業者登録を行う
- オートオークションに会員登録する
- 保険代理店やオートローンの代理店に登録する
- 税務署に開業届あるいは法人設立届出書などの提出をする
古物商許可申請から始め、自動車リサイクル法関連の登録、オートオークションなどへと進めていく流れです。
最後の税務署への届出も忘れてはなりません。個人事業主なら開業届や青色申告承認申請書などの提出が必要です。法人の場合、法人設立届出書、給与支払い事務所等の開設届出書などを提出します。
税務署へ申請しない場合、ペナルティが課せられる恐れがあるため、忘れずに手続きをしましょう。
自動車販売の許認可を得て事業を成功させよう
自動車販売の開業で必要な許認可、取得の流れや費用を解説してきました。古物商許可申請、自動車リサイクル関連など、さまざまな手続きを済ませなくてはなりません。
高額な費用が発生する手続きはありませんが、完了まで1ヶ月以上かかるケースがあります。すべて完了させるには数ヶ月かかるため、開業に間に合うように余裕を持って進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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