• 作成日 : 2025年5月15日

ハウスクリーニング開業に創業融資は必要?メリットや補助金も解説

ハウスクリーニングの創業融資は、開業資金を確保するための重要な資金調達手段です。設備費や広告費を自己資金だけでまかなうのが難しい場合、融資を活用することで事業のスタートをスムーズに進められます。

本記事では、創業融資の必要性や種類、審査のポイント、助成金との併用方法について詳しく解説します。

ハウスクリーニングの開業には創業融資が必要?

ハウスクリーニングの創業融資は、開業資金を確保するための選択肢のひとつです。事業を開始するには、設備費や車両費広告宣伝費など200万〜400万円の初期投資が必要とされ、多くの事業者にとって全額自己資金で賄うのは容易ではありません。そのため、融資を活用することで資金繰りを安定させ、スムーズな開業が可能になります。

そもそも創業融資とは、新規開業者向けの資金調達制度で、公的機関や金融機関が提供する低利融資が主流です。自己資金を補う手段として有効ですが、借入には審査があり、事業計画や返済能力が問われます。

ハウスクリーニングで創業融資を活用するメリット

創業融資の活用には以下のようなメリットがあります。

資金調達の幅が広がる

自己資金の制約を超えた設備投資が可能となり、高品質な清掃機器や業務用車両の導入、十分な運転資金の確保が実現します。その結果、サービス品質の向上と安定的な事業運営の基盤を構築できるのはメリットといえます。

事業計画の精緻化

融資を受けるためには、事業計画を作成する必要があります。事業計画書の作成を通して目標や売上見込み、リスク対策などを具体的に検討するきっかけが生まれ、計画が一層洗練されます。より実現可能性・持続可能性が高い計画の構築に寄与するでしょう。

社会的信用力の向上

金融機関から融資を受けられたという事実は、事業の信頼性を示す材料のひとつです。将来的に別の融資や取引先との商談を進める際にも有利に働く場合があります。

ハウスクリーニングで活用できる創業融資の種類

ハウスクリーニング事業の開業資金調達に際しては、複数の融資制度から事業規模や返済計画に最適なものを選択することが重要です。以下に代表的な融資制度を紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は国の全額出資による公的金融機関であり、中小企業および創業間もない事業者支援を担っています。創業者向けの融資制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」は、無担保・無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)までの融資を受けられるのが特徴です。

また、女性や若者、シニアの創業者や廃業歴などがあって創業に再チャレンジする方など、対象者に特化した融資制度もあり、対象に当てはまる場合はより有利な利率で融資を受けることも可能です。

参考:日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金

地方銀行・信用金庫

地方銀行や信用金庫は、地域の中小企業を積極的に支援する金融機関として知られています。地域密着型の金融機関ということもあり、ハウスクリーニング事業のように地域と直接接するビジネスモデルとの相性が良いケースが多いです。

特に、すでに地元の銀行で口座を開設しており、取引実績がある場合は、融資の審査過程でプラスに働くことがあります。まずは相談窓口で、ハウスクリーニング業の開業計画や事業目標をしっかり伝えるところからスタートしましょう。

地方自治体(制度融資)

地方自治体では、地域経済の振興や創業支援を目的として、独自の制度融資を提供している場合があります。低金利で融資を受けられたり、保証料を一部補助してくれたりするなど、創業者にとって有利な特典がある点が特徴です。

ただし各自治体が独自に実施しているため、対象地域、事業内容、融資枠、補助内容が異なります。拠点となる地域の自治体や商工会議所の公式情報を確認し、最新の支援制度について情報収集することが大切です。

ハウスクリーニングで創業融資を成功させるポイント

創業融資の審査は、融資機関が「この事業は将来的に返済能力があるか」を見極めるために行います。特に事業実績がない段階での創業融資は、書類の内容や自己資金の有無が審査を左右する要因となるため、入念な準備が必要です。

以下では、成功につながるポイントを解説します。

自己資金をしっかり準備する

金融機関は「自己資金の額」を、融資希望者の創業に対する熱意や資金管理能力の指標として評価します。一般的に、総事業費の20〜30%程度の自己資金があると審査が通りやすくなるといわれているため、その金額を目安にできるだけ多く準備しておきましょう。

事業計画書に売上の見通しを明記する

融資を受ける際には、具体的な売上予測とその根拠を示すことが不可欠です。ターゲットとするエリアの家族構成や世帯数のデータ、競合他社の価格帯やサービス内容、さらに自社の差別化ポイントなどを踏まえ、説得力のある数字を提示しましょう。

事業の信頼性を高める

過去の清掃業務経験や関連資格の取得などは、事業の信頼性を裏付ける要素のひとつです。また、顧客候補や先行受注の契約書がある場合は、融資申込時に提出することで、より具体的な将来の収益見込みを示せます。こうした準備が、創業融資の審査を有利に進めるカギとなるでしょう。

ハウスクリーニングで創業融資を受ける流れ

ハウスクリーニング事業で創業融資を受ける際は、主に以下の流れで進行します。

  1. 事業計画の策定
  2. 必要書類の準備
  3. 融資機関への相談・申込み
  4. 審査
  5. 融資実行

この一連の流れは、通常1〜2ヶ月程度を要します。日本政策金融公庫の場合は、申込みから融資実行まで約3〜4週間かかることが一般的です。

創業融資に必要な書類

日本政策金融公庫から創業融資を受ける場合、以下の書類が必要です。

  • 借入申込書・創業計画書(日本政策金融公庫のホームページからダウンロード可能)
  • 代表者の運転免許証の写し
  • 履歴事項全部証明書もしくは登記簿謄本(法人の場合)
  • 許認可証の写し(必要な業種のみ)
  • 確定申告書類または決算書

そのほか必要に応じて、以下の書類も用意しましょう。

  • 自己資金が確認できる資料(預金通帳、定期預金、有価証券等)
  • 代表者個人の通帳の写し
  • 法人名義の通帳の写し(法人の場合)
  • 設備資金の見積書
  • 創業のために支払済みの領収書(みなし自己資金として認められる場合あり)
  • 事業関連書類
  • 創業動機書
  • 取扱商品・サービスの根拠資料
  • 取引を証する資料
  • 創業計画書の売上、売上原価、経費の計算に用いた資料
  • 資金繰り表(3年分)
  • 返済予定表
  • 不動産関連書類
  • 代表者自宅の賃貸契約書の写し
  • 代表者自宅の登記簿謄本の写し
  • 事務所の賃貸契約書の写し
  • 事務所の登記簿謄本の写し
  • 不動産の登記簿謄本
  • 勤務時の収入などが確認できる資料(源泉徴収票や確定申告書)
  • 公共料金の支払状況が確認できる資料(6ヶ月分)
  • 借入金の毎月の返済額、借入残高が確認できる資料
  • 固定資産税課税明細書と領収書(自宅が持家の場合)
  • 営業許可書、認可証、資格・免許を証明するもの(必要な業種の場合)

ハウスクリーニングの事業計画書(創業計画書)の書き方

ハウスクリーニング開業において、説得力のある事業計画書を作成することは創業融資を成功させるうえで非常に重要です。ここでは日本政策金融公庫の創業計画書を例に、作成のポイントを紹介します。

創業の動機・目的

開業を決意した背景や業界選択の理由を、具体的に記載します。過去の経験や見込み客の存在など、客観的な根拠や準備状況を示すことで計画性をアピールしましょう。

経営者の略歴・職歴

ハウスクリーニングに関連する経験やスキルについて、詳細を記載するとともに事業展開にどう活かせるかを絡めてアピールにつなげます。勤務していた会社名・部署名・役職や担当業務内容を明記しましょう。可能であれば具体的な数字を用いて記載すると、信頼度向上が期待できます。

取扱商品・サービス

ハウスクリーニングで提供するサービス内容をできるだけ詳細に説明します。キッチンや浴室、エアコン、フロア清掃など、提供範囲は幅広いため、業務ごとに明記するのが望ましいでしょう。競合他社とどのように差別化を図るのか、料金設定や品質管理の方針も合わせて記載すると説得力が増します。

取引先・取引関係

ハウスクリーニング業の場合、個人宅だけでなく、オフィスや店舗、マンション管理会社などが取引先となり得ます。すでに具体的な取引先がある場合は、相手先の名称や所在地、取引条件などを示し、安定的な売上見込みがあることをアピールしてください。

従業員計画

当面の従業員数や採用方法、必要なスキルなどを計画的に示します。ハウスクリーニングは人手が重要な業態であり、どのように人材を確保し、育成していくかを明確にしておくと、融資担当者にも好印象です。

借入状況

すでに他の借入金がある場合は、残高や返済計画を正確に記載しましょう。新規借入とあわせ、負担が過大にならないか、金融機関は慎重にチェックします。隠さずに正直に記載することが信頼獲得につながります。

必要資金と調達方法

開業時に必要な設備投資・車両購入費・広告宣伝費などを項目別に合計し、自己資金や融資希望額とのバランスを示します。たとえば「総額300万円のうち、自己資金100万円・融資希望200万円」といった形です。また、資金使途を明確にしておくことも求められます。

収支計画・資金繰り計画

収支計画は、根拠のある数字を用いて作成します。売上予測は現実的な顧客数と単価から算出し、固定費変動費を明確に区分しましょう。月別の詳細な収支計画を作成し、黒字化の時期を示すことが大切です。資金繰り表は少なくとも3年分作成し、返済計画との整合性を確認しましょう。

ハウスクリーニングの事業計画書(創業計画書)テンプレート

事業計画書をスムーズに作成するためには、テンプレートの活用が便利です。以下のURLで公開されているテンプレートは、業界別のポイント解説もあり、初心者でも比較的取り組みやすい構成となっています。自社に合うようカスタマイズしてご利用ください。

また、事業計画書の書き方については以下の記事で詳しく解説しています。

ハウスクリーニングの創業融資で経費になるものと仕訳

ハウスクリーニングで創業融資を受けた場合、返済元金そのものは経費に計上できないことに注意が必要です。ただし、融資に際して発生する費用に関しては経費計上が可能です。

経費にできる主な創業融資関連の費用と勘定項目、以下のとおりです。

借入時の保証料

借入時に信用保証協会へ支払う保証料は、「支払手数料」として経費計上できます。借入期間全体にわたって分割して処理するケースが一般的です。

印紙代

融資契約書に貼付する印紙代は、「租税公課」に分類されます。融資時に経費として計上します。

利息

借入金の返済にかかる利息部分は「支払利息」として毎月の経費に計上可能です。返済期日の都度または月次決算のタイミングで処理するといいでしょう。

いずれの場合も、領収書や契約書の控えなどを保管しておく必要があります。適切な仕訳処理と証憑の管理は、税務申告や経営管理の基本です。

ハウスクリーニングで創業融資を受ける際の注意点

創業融資は開業資金を確保するうえで非常に心強い存在ですが、一方で返済義務がある借入金であることを忘れてはなりません。融資を受けた後も計画通りに返済を続け、事業を軌道に乗せるためには、以下の点に注意が必要です。

自己資金の準備・証明方法

日本政策金融公庫の融資を受けるには、最低限総事業費の10%以上の自己資金を準備することが望ましいとされていますが、金融機関の融資などではそれ以上必要になるケースが一般的です。融資希望額に対し、自己資金20~30%程度は用意しておきたいところです。自己資金は日頃から銀行口座に積み立て、通帳で継続的に確認できる状態が望ましいでしょう。

タンス預金は自己資金として認められないため、注意が必要です。融資直前に一時的に入金された「見せ金」は自己資金にはならず、逆にリスクになるため避けるべきといえます。

創業融資は事業計画書の重要度が高い

創業融資では事業実績がないため、金融機関は「事業計画書の中身」と「自己資金の有無」を特に重視します。事業の将来性をいかに数値化し、具体的なマーケティング戦略やリスク対策を示せるかが融資の成否を決めるといっても過言ではありません。必要に応じて中小企業診断士や税理士、行政書士などの専門家に相談し、書類の精度を高めましょう。

資金使途の明確化

融資を受ける際には、資金の使途を明確に申請しなければなりません。設備資金と運転資金を混同して使用すると、場合によっては申請した目的とは異なる用途に資金を使用したとみなされ「資金使途違反」と判定される場合があります。

資金使途違反とみなされると一括返済を求められるほか、追加の融資が受けられない可能性が高くなります。また信用保証協会の保証付き融資のケースでは、その後の保証付き融資が利用できなくなるリスクもあるでしょう。

公庫や金融機関は用途変更を非常に厳しくチェックするため、運転資金・設備投資などの用途を厳密に区分し、申請内容と実際の使用が一致するように管理しましょう。

資金繰り管理の徹底

ハウスクリーニング業は、季節による需要の変動が大きいことが知られています。エアコンクリーニングは夏前に需要が集中し、年末は大掃除の依頼が増える一方、閑散期も存在します。こうしたピークとオフシーズンの差を想定したうえで、キャッシュ・フローを綿密に計算し、資金不足に陥らないよう管理することが重要です。

資金ショートの防止

創業初期は想定外の支出が起きやすい時期です。車両の修理費や人件費の上昇、広告効果が薄かった場合の追加宣伝費など、臨機応変に対応できる資金的な余裕を持つ必要があります。少なくとも3ヶ月分の運転資金を手元に置いておくと、突発的な支出にも柔軟に対応でき、資金がショートするリスクを抑えられるでしょう。

ハウスクリーニングで利用できる助成金・補助金

創業融資以外にも、事業をスタートさせる際に活用できる助成金や補助金が存在します。ただし、申請期間や要件が厳格に定められているので、最新情報を確認して手続きを進めることが大切です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は中小企業庁が実施する制度で、小規模事業者の販路開拓や業務効率化などを支援する補助金です。通常枠の場合は上限50万円(補助率2/3)が一般的ですが、創業後3年以内の小規模事業者が申し込める創業型の場合は上限200万円、特例要件を満たすと最大250万円の補助が受けられます。

対象になる経費は広報費や機械装置等費、ウェブサイト関連費、委託・外注費などがあります。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入して業務の効率化を図る際に活用できる補助制度です。ハウスクリーニング業の場合でも、顧客管理システムやスケジュール管理ツールの導入、ネット予約システムなどが対象となり得ます。

最大450万円(補助率最大4/5)が認められる場合もあるため、一気に経営のDX化を進めたい場合におすすめです。

人材開発支援助成金

厚生労働省所管の人材開発支援助成金は、従業員向けの研修や教育訓練を実施した事業主に対して支給される助成金です。ハウスクリーニングでは、専門的な清掃技術や接客マナーに関する研修などが該当する可能性があります。

ただし、活用できる事業主や受給支援対象になる訓練にはさまざまな要件があるため、事前に詳細を確認しておくようにしましょう。

地方自治体の助成金・補助金

地方自治体によっては、地域の創業支援や商業活性化を目的とした助成金制度を設けている場合があります。大阪府の「小規模事業経営支援事業」や、東京都の「創業助成金」、京都府綾部市の「チャレンジショップ支援事業補助金」などが代表例です。

対象となる事業や支援内容は自治体ごとに異なるため、所在地の市区町村や都道府県の情報を確認し、要件を満たす場合は積極的に申請を検討しましょう。

創業融資とともに補助金・助成金も活用しよう

ハウスクリーニングの開業には、設備費や広告費、車両の導入など多くの資金が必要です。創業融資を活用しながら助成金や補助金を適切に取り入れることで、事業の負担を軽減できます。

ただし、補助金は後払いが原則で、開業資金としては使えません。まずは自己資金や融資で費用を賄い、事業の成長を見据えて活用することが重要です。

開業前には、事業計画をしっかりと作り込み、利用できる制度の詳細を確認しておきましょう。適切な資金計画で、安定したスタートを目指してください。


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