- 作成日 : 2025年4月25日
資金調達コストを安く抑える方法は?低金利な融資先ランキングも紹介
資金調達を進めるためにもコストが必要ですが、低金利の融資を活用する、短期間の返済計画を立てるといった、工夫を凝らすことでコストを抑えることも可能です。本記事ではその方法について解説し、比較的低金利で借りられる融資先などもご紹介します。ぜひ資金調達の際の参考にしてください。
目次
資金調達コストとは
資金調達コストとは、企業が事業資金を外部から調達する際に発生する各種費用のことです。企業はこの資金調達コストを正確に把握し、適切な手段を選択することが、経営の安定を図るうえで重要となります。
金利に基づくコストの計算方法
融資により資金調達を行うと想定した場合、最も注視すべき点は金利コスト(利息)です。金利コストは、基本的に①元金、②金利、③返済期間の3つの要素から成り立ち、次の算式から金額を求めることができます。
ただ、返済方法によって最終的なコストは変わってきます。毎回の支払金額が一定となる「元利均等返済」の場合、返済額が一定のため計画を立てやすいという利点がある一方、支払金額のうち元金が一定となる「元金均等返済」の方が総コストを抑えられるという利点があります。
例えば、1,000万円の借入を行い、返済期間3年、金利3%、1年あたりの返済回数を12回とした場合、元利均等返済では利息「469,233円」となりますが元金均等返済では利息「462,500円」という結果になります。
資金調達コストに含まれるのは金利だけではない
融資により資金調達を行う場合、主なコストとして「金利」の負担が発生しますが、実際には他にも次のようなコストが発生します。
- 事務手数料(融資実行時に一度だけ発生する手数料、借入額に応じて発生する)
- 信用保証料(信用保証協会などの保証を利用する場合、借入額や企業の信用力に応じて発生する)
- 担保設定にかかる費用(不動産担保などを設定する場合の登記費用、司法書士報酬など)
なお、資金調達は融資する方法もありますが、いずれも一定のコストが発生します。例えば、社債発行や株式発行の際には発行手数料が生じ、その発行した有価証券に対する管理費用も発生します。
資金調達コストを安く抑える方法
資金調達コストを抑えることができれば、長期的な視点での収益性改善、財務体質の強化につながります。そのために検討したい基本的な手法が、「低金利の融資を活用する」「金利引き下げの交渉を行う」「短期間での返済を計画する」の3つです。
低金利の融資を活用する
金融機関の違いだけでなく、同じ金融機関であっても利用するサービスによって、金利は異なります。一律で同じ金利が設定されているわけではないため、融資で資金調達を進めるならできるだけ低金利の融資を活用しましょう。
例えば、後述するように日本政策金融公庫や地方自治体が運用する制度融資などは比較的金利が低い傾向です。民間の金融機関でも低金利のサービスを展開しているケースはありますが、借りやすくする代わりに金利が高く設定されたビジネスローンを展開していることもあります。
銀行との交渉で金利引き下げを狙う
あらかじめ決められた金利で融資が実行されることもあれば、銀行などの金融機関との交渉によって金利の引き下げが可能なケースもあります。
交渉成功のためのポイントとしては以下の点が挙げられます。
- 複数の金融機関から見積もりを取得する
- 事業計画書や月次決算書などを開示して自社の状況を理解してもらうとともに、返済能力の高さをアピールする
- 可能であれば担保や保証人を提供する
ただし、担保や保証人の提供に関しては別途手数料が発生する可能性があります。計画通り返済できなかったときのリスクが大きくなるため、慎重な判断が求められるでしょう。
短期間での返済を計画する
融資においては借入期間の長さが資金調達コストに大きく影響します。一般的に、借入期間が短いほど金利優遇を受けやすいうえ、総支払利息の削減にもつながります。
例えば、1,000万円に対し金利3%で借入れる場合、返済期間が3年だと利息が「462,500円」になりますが、返済期間が6年だと利息が「912,500円」となります(元金均等とした場合)。
このように総支払金額に差が生じるため、キャッシュフローに余裕があるなら返済期間を短く設定してコスト削減を狙うとよいでしょう。
また、繰上返済をすることができれば、収益が予想を上回った場合に柔軟に返済してコストを削減することもできます。ただし、繰上返済に手数料が発生するケースもあるため、そのコストにも注意が必要です。
低金利で事業資金を借りやすい融資先ランキング
一般的な傾向をもとに、金利が低い順に融資先をまとめました。融資を検討する際の参考にしてください。ただし、実際の金利や条件は経済状況や企業個別の信用力によって変動するため、その点も留意しましょう。
1. 政府系金融公庫
政府系金融機関は低金利で融資を受けやすく、特に日本政策金融公庫は創業支援や小規模事業者向けの融資メニューが充実しています。民間金融機関と比較すると金利面で有利な条件を設定している場合があります。
※2025年3月時点の中小企業事業では、基準利率1.95%~、特別利率1.05%~
政府系金融機関の強みとしては、創業間もない企業や提供できる担保・保証人がない場合でも融資を受けやすい点が挙げられます。また、財務状況の急激な悪化や災害で緊急の資金調達が必要になった企業に向けて融資制度が設けられることもあります。他の金融機関からの融資が難しい状況という場合は、まず日本政策金融公庫などの利用を検討しましょう。
ただし、事業計画の妥当性や返済能力の審査は厳格に行われるため、綿密な事業計画の準備をすることが大切です。
2. 地方自治体(制度融資)
地方自治体が運用する制度融資は、地域経済の振興を目的として設計された融資であり、低金利かつその他のコストを抑えた資金調達が可能です。
業種や事業内容によっては優遇措置が設けられていることもあり、地域の課題とされている問題に取り組む場合や雇用創出につながる事業などは優遇措置が手厚い傾向にあります。また、制度融資を利用する際は地元の商工会議所や商工会に相談すると、適切な制度の選定から申込みまでサポートを受けられます。
3. 地方銀行
地方銀行は、メガバンクと比較して地域に密着した営業を展開しているため、地元企業との関係性構築に注力しているのが特徴です。そのため、事業内容や経営者の人柄も含めた総合的な判断で融資を行うことがあります。
金利水準は政府系金融機関や制度融資より高めの傾向ですが、メガバンクと比較すると柔軟な対応が期待できるでしょう。
また、オンラインバンキングの普及に伴い、インターネット申込専用の低金利プランを提供する地方銀行も存在します。銀行の特色が異なっているため、お近くの銀行を詳細を調べて比較検討を行うとよいでしょう。
4. 信用金庫
信用金庫は特定の地域内で活動する中小企業の支援に注力する傾向にあり、地域特性に応じた独自の融資制度を展開していることがあります。
金利水準は地方銀行より高めとなるケースもありますが、地域内での知名度や信頼関係が構築できている企業に対しては、柔軟な融資判断が行われることも期待できるでしょう。
また、商工会議所や商工会と連携した融資制度を展開している信用金庫もあり、これらの推薦を受けることで金利優遇が適用されるケースもあります。地域で展開されている制度をよく確認しましょう。
5. ノンバンク
ノンバンクとは、消費者金融やクレジットカード会社などが提供するビジネスローンが該当します。審査のスピードが早く、柔軟性が高いことが特徴であり、最短即日の融資が可能なケースもあります。
そこで、急な資金需要があるなど特別の事情がある場合に利用を検討してもよいですが、他の融資先と比べて金利が高い傾向にあるため、平時における資金調達としてはあまり積極的に利用されていない模様です。金利負担を考慮すると、短期的な資金需要に限定して活用し、できるだけ早期の返済を行うことが望ましいでしょう。
資金調達コストを安く抑える場合の注意点
資金調達コストを抑制することは経営上大事なことですが、表面的な金利の低さだけを追求していると思わぬ失敗を起こす可能性があります。そこで低コストでの資金調達を目指す際には以下の点を意識しておいてください。
低金利な融資ほど審査が厳しくなる
一般的に、低金利で提供される融資ほど審査基準は厳格になる傾向があります。低金利は企業側に有利な条件である反面、金融機関にとってはリスクが高くなるためです。そこで、金利などの条件がよいケースでは財務状況や事業計画の精査がより厳しく徹底的に行われるものと考えておきましょう。
また、審査期間が長期化する可能性もあるため、資金需要が急を要する場合だと対応できないこともあります。
変動金利と固定金利のリスクを理解する
融資を検討する際には、金利タイプの選択にも注目しましょう。金利には、「変動金利」と「固定金利」があり、これらは経済環境や借入期間によって有利不利が変わるため、借入時点における表面的な数字だけを見ていたのでは適切な評価ができません。
- 変動金利:市場金利の変動に連動して金利が見直される。一般的に当初の金利水準は固定金利より低く設定されているため、短期的な借入や金利上昇の可能性が低く、経済環境においては有利となりやすい。一方で、将来的な金利上昇の可能性を秘めており返済負担が増大するリスクがある。
- 固定金利:借入期間を通じて金利が変わらないため返済計画が立てやすく、経営の安定性に寄与する。特に長期の設備投資資金などでは安心感が大きい。ただし、一般的に変動金利より高い水準に設定されており、機会損失が生じる可能性もある。
市場金利の動向を分析して将来的な金利変動リスクを見極めることが大切です。専門家の意見を参考医慎重に判断しましょう。
借入期間が長くなると総コストが増える
借入期間の設定は総コストに直接的な影響を与える要素ですので、資金調達の際には特に注意しなくてはなりません。
一般的に、借入期間が長くなるほど毎月の返済負担は軽減される一方、支払利息の総額は増加します。そのため、短期返済が可能な資金力があるなら、短期借入が有利といえるでしょう。
ただし、資金使途と返済期間の整合性にも意識することが重要です。例えば、工場建設のように長期にわたる設備投資資金を単に「金利が低い」という理由だけで短期借入で調達すると、返済期限ごとに借り換えが発生し、その都度審査や手数料などが発生します。
また、景気変動や金融情勢の変化によって、借り換え時に条件が悪化する恐れもあります。そこで資金の使途に応じた適切な借入期間を考えましょう。基本的に短期の借入は運転資金のような一時的な資金需要に、長期の借入は設備投資のような高額となる資金需要に対応させましょう。
コストに注意して調達先の選定・交渉をしよう
資金調達のコストを適切に管理することは、融資をよく利用する企業にとって重要なことです。金利の低い政府系金融機関や制度融資を活用しつつ、返済期間・返済方法の最適化、変動金利・固定金利の適切な評価を行うなど、コスト抑制に努めることが求められます。
ただし、低金利など好条件の融資の場合、審査も厳格になることもあるため、資金繰り計画や事業計画の精度を高めておくことが望ましいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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