• 作成日 : 2025年4月25日

資金調達のプロセスは?ラウンドごとの違いや特徴、期間などを解説

資金調達プロセスは企業が投資家から資金を獲得するための一連の手順のことです。事業計画の策定から投資家との交渉、デューデリジェンスを経て最終的な資金調達が完了しますが、各ラウンドによっても特徴が異なります。

本記事では、資金調達プロセスの全体像や期間、押さえておくべきポイントについて詳しく解説します。

資金調達プロセスの全体像

企業の成長段階に応じて資金調達の具体的な手法は異なりますが、共通する大事なポイントもあります。まずはこの各ラウンドに共通する要点を整理しましたので、資金調達の一連の流れを確認しておきましょう。

事業計画の策定

まずは自社がこれから取り組む事業について、具体的な計画を立てます。資金調達はあくまでそのための手段であり、資金調達の成功がゴールではありません。仮に出資を受けられても肝心の事業がうまく軌道に乗らなければ意味がありません。

そこでターゲット市場の規模や競合の状況などを分析し、自社がどのような価値を提供できるのか、想定される課題やその解決策、そして売上や収益性の予測を行いましょう。

また、その内容は希望的観測となってはならず、データや根拠に基づいて論理的に今後の見込みを見出すことが重要です。

投資家向けの資料作成

事業計画を踏まえて投資家向けの資料を作成します。

中心となるのはピッチデッキ(プレゼン用のスライド資料のようなイメージ)で、事業の概要、解決する課題、市場規模、ビジネスモデル、チーム構成、競合との差別化などを簡潔にわかりやすく示すことを意識します。

ピッチデッキにおいて重要なのは、簡潔に自社の将来性・成長性をアピールすることです。10枚から15枚程度のスライドで構成し、投資家の興味を引くような内容に仕上げましょう。詳細にすべての情報を載せるのではなく、要点を視覚的にわかりやすく示すことも大切です。

投資家のリストアップ

すべての投資家が自社に合うとは限りません。そのため、自社の属する業界に対する知見の深さ、投資ステージや投資実績などを総合的に考慮したうえで、自社にふさわしい投資家を選定しましょう。自社に関連する分野での投資実績の有無で優先的にリストアップすると効率的です。

投資家へのアプローチ

リストアップした投資家にアプローチをかけるとき、直接的なコンタクトを取る、紹介を通じてコンタクトを取るという2つのパターンがあります。特に、共通の知人や既存の投資家からの紹介を受けたほうが成功率は高くなる傾向です。

また、初回のコンタクトでは、簡潔に事業概要と資金調達の目的を伝え、関心を示してくれた投資家に対し、ピッチの機会を設けましょう。

投資条件の交渉

前向きに話が進めば、投資条件の交渉段階に入ります。主な交渉材料は、企業価値、投資金額、株式の種類と権利の内容などがあり、投資価値とのバランスを考えて条件を定めていく必要があります。

また、長期的な影響も考慮することが大事です。ビジネスモデルによるものの、一般的には過半数の持ち株比率を維持することが推奨されます。

さまざまな視点で評価し、条件を吟味していく必要があるため、この段階では法律や財務の専門家のサポートを受けることが望ましいでしょう。

投資家によるデューデリジェンス

条件面で大枠の合意が得られた後、投資家は投資リスクを詳細に把握するため「デューデリジェンス」を実施します。

デューデリジェンスでは、財務・法務・知的財産・人事・技術など多岐にわたる要素において詳細な検証が行われます。企業側は情報開示の準備を整え、質問に対しては迅速かつ誠実に対応しましょう。

デューデリジェンスの向き合い方や結果次第では、条件変更や契約破棄もあり得るため、円滑なコミュニケーションを心がけることが大切です。

投資契約の締結

デューデリジェンスが問題なく完了すれば、投資契約を締結します。

契約書には、投資金額や株式の種類と数、投資家の権利と義務などのほか、両者で話し合って定めた事項などが明記されます。契約書の内容は弁護士などの専門家にレビューを依頼し、特に将来の事業展開や今後の資金調達に影響を与える可能性がある条項については、注意深く精査していきましょう。契約締結後に出資金が払い込まれ、資金調達のプロセスが完了します。

ラウンドごとの資金調達プロセスの違い

企業の成長過程を区分する「ラウンド」と呼ばれる概念があります。

「ステージ」や「フェーズ」といった表現がされることもありますが、ここでは以下の区分に従い資金調達のプロセスの違いを紹介します。

  • シードラウンド
  • シリーズA
  • シリーズB
  • シリーズC以降

最終的には自社の状況に合わせて取り組むことが重要ですが、各ラウンドならではの傾向がありますので、以下の4つを理解しておくと今後の資金調達戦略も立てやすくなります。

シードラウンド

シードラウンドは、資金調達の第一段階です。事業がアイデア段階または初期の製品開発段階にある時期にあたります。

投資判断の基準はチームの質や市場機会に重点が置かれる傾向にあり、実績がまだ十分ではないため、創業メンバーの経歴や専門知識がチェックされます。

シードラウンドに資金を提供してくれるベンチャーキャピタルも存在しますが、一般的には起業者自身の個人的な資金から拠出したり、家族や親族のように関係性の近い身内を頼って資金を集めたりすることが多いです。

シリーズA

シリーズAは、製品・サービスの提供が始まってから本格的に事業が軌道に乗るまでの期間を意味し、初期の顧客獲得やユーザー基盤の構築が進み始めた段階を指します。

このラウンドにおける投資判断では、シードラウンドで得た資金によってプロダクトマーケットフィット(PMF:顧客のニーズを満たした製品・サービスが提供できている状態)が達成できているかどうかが重要です。十分な黒字はなくても、収益化が見える状態にまでは持っていきましょう。

シリーズB

シリーズBは事業の拡大期にあたる資金調達のフェーズです。

本格的に事業が動き始めて製品・サービスの認知も進んだ状態で、販売活動を拡大強化して事業規模を一気に拡大させていきます。順調に成果が出せて、ベンチャーキャピタルなど投資家からも高い評価を受けることができていれば、調達規模は億単位にも上るでしょう。

シリーズC以降

資金調達のラウンドはシリーズC、シリーズE、シリーズFと続きます。

ここまで進むと事業は軌道に乗り、経営も安定していると考えられるでしょう。それ以降は大規模な事業拡大や新市場への進出、あるいはM&Aのための資金調達ラウンドとなります。

また、調達規模は数億円、数十億円に達することもあり、IPOも視野に入れる段階となるでしょう。

資金調達のプロセスにかかる期間

資金調達のプロセスに所要する期間には、ラウンドの種類、企業の成熟度、市場環境など、複数の要因が影響します。状況により必要な期間も異なりますが、一般的な目安として、資金調達の準備開始から入金までに3カ月以上は要すると見込んでおきましょう。

例えば、シードラウンドの場合、プロセスが比較的シンプルなため、交渉がスムーズに進み、数日で完了するようなケースもあります。他方、シリーズA以降だと投資家とのコンタクトや交渉、デューデリジェンスなどのプロセスが複雑化し、半年以上かかるケースもあります。

資金調達プロセスをスムーズに進めるためのポイント

資金調達は、資金を獲得するだけでなく、長期的なパートナーシップを構築するプロセスでもあります。このプロセスを効果的に進めるためにはいくつかの重要なポイントを押さえておくことが肝要です。

資金調達の目的や金額を明確にする

資金調達を始める前に「なぜ資金が必要なのか?」「どのように資金を使うのか?」を明確にすることが重要です。

ただ単に「成長のため」と漠然と定めるのではなく、具体的な使途と、それによって達成できる成果を数値目標とともに示しましょう。調達金額の設定は、事業ステージに合ったビジネスプランの実行に必要な資金と、次のマイルストーン達成までの期間を考慮します。

完成度の高いピッチ資料を準備する

ピッチ資料は投資家に対して自社の魅力や成長可能性を伝えるための重要なツールです。以下の点を考えて作成しましょう。

  • 投資家が重視する情報を簡潔にわかりやすくまとめる
    事業概要、課題と解決策、ビジネスモデル、市場の規模と成長性、競合分析、チーム構成などの情報をまとめる。
  • 最新情報を反映させる
    定期的にアップデートし、トラクション(事業の進捗状況)や財務データなどの最新情報を盛り込む。
  • 第三者からのフィードバックをもらう
    メンターや経験者など第三者からフィードバックを受け、修正を繰り返しながらブラッシュアップしていく。

また、ピッチの練習も重要です。チーム内やアドバイザーの前で実践し、伝えたいメッセージが明確に伝えられるように磨き上げていきましょう。

交渉やデューデリジェンスを円滑に進める

デューデリジェンスを効率的に進めるため、事前に必要書類(財務諸表、契約書、知的財産関連の資料など)を整理することはもちろん、あらかじめ専門家に依頼して潜在的な問題点を把握・対応しておくことが重要です。

特に、知的財産権の問題や過去の契約上の制約など法的な課題があるときは早期に解決しておきましょう。

成長ステージに合った資金調達を進めよう

資金調達には綿密な準備が不可欠です。まずは事業の強みと将来性を明確に示す計画書を作り、投資家が求める資料を丁寧に準備することから始めましょう。

また、投資家選びも重要で、自社の事業にマッチする相手を見極めることが大切です。また調査段階から情報提供を積極的に行い、信頼関係を築くことも心がけましょう。

各資金調達ステージの特徴を理解することも大事です。成長段階に合った準備を進めることが資金調達の成功へとつながります。


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