- 作成日 : 2025年4月24日
起業時の創業融資の種類とは?制度の違いや自己資金の目安を解説
起業時の創業融資は、新事業立ち上げに必要な資金を支援する制度です。起業に際して資金調達は最初の一歩であり、実際にどのような制度があるのか、審査を通すためのポイントなどを押さえておく必要があります。
本記事では、日本政策金融公庫や自治体、銀行それぞれの特徴や自己資金の目安を解説します。
目次
創業融資には何種類ある?
創業融資は、起業時の資金調達をサポートするために用意された融資制度です。起業時は売上が安定せず、運転資金や設備資金などの初期コストを確保する必要があります。そのため、金融機関や自治体、政府系金融機関が創業期の資金不足を補う制度を整備している状況です。
ここでは、代表的な創業融資の種類と特徴を紹介し、資金調達の方向性を検討する際の参考となるポイントを解説します。
創業融資には、大きく分けて以下の4種類があります。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫は、政府100%出資の金融機関です。民間銀行よりも低金利かつ、担保や保証人がなくても融資を受けられる可能性がある点が大きな特徴といえます。
代表的な制度としては、「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」などが用意されており、創業者の状況や事業内容に応じて選択できます。
地方自治体による「制度融資」
制度融資は、地方自治体が金融機関や信用保証協会と連携して行う融資制度です。自治体による利子補給や信用保証料補助などのメリットがあります。
地域経済の活性化を目的としているため、地域限定の支援策が多く、自治体によって融資限度額や金利負担の軽減措置が異なります。
銀行からの融資、ビジネスローン
銀行は、プロパー融資や信用保証付き融資など、多彩な金融商品を提供しています。しかし、創業時はまだ事業実績が乏しいため、審査が厳しくなる傾向があります。特にプロパー融資は審査難易度が高いといえるでしょう。
一方で、銀行系のビジネスローンは比較的スピーディーに融資判断が行われる場合がありますが、その分金利が高めに設定されることが多く、返済負担が重くなるリスクも考慮が必要です。
融資型クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の投資家から資金を集める仕組みです。株式型やファンド型などさまざまなタイプがありますが、融資型は一般的に事業者が金利を払って資金を借りる形態を取ります。
融資型クラウドファンディングは、銀行融資より審査基準がやや緩やかでスピーディーに資金を確保できるケースもある一方、金利は民間金融機関以上に高くなる場合もあり、返済負担をよく検討することが大切です。
日本政策金融公庫の創業融資の種類
日本政策金融公庫は、国が出資・運営する政策金融機関として、多くの創業者にとって身近で利用しやすい選択肢となっています。起業時に必要な設備投資や運転資金を、比較的低い金利で融資してもらえるだけでなく、担保・保証人の提供が不要となるケースもあるため、初めての起業家にとっても大きな後押しとなるでしょう。
ここでは、代表的な融資制度を解説し、活用にあたってのポイントを紹介します。
新規開業資金
新規開業資金は、起業を目指す方や事業開始後おおむね7年以内の事業者を対象とした融資制度です。
設備資金・運転資金として幅広く利用でき、融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円)となっています。2024年4月以降は自己資金要件が撤廃され、これまで以上に利用のハードルが下がりました。
返済期間は用途によって異なりますが、運転資金であれば5~7年程度、設備資金なら10年程度の長期返済が可能とされることが多いです。金利は比較的低水準に設定されており、固定金利・変動金利いずれの選択肢も存在します。
- 融資対象:起業予定者、事業開始後7年以内
- 用途:設備資金・運転資金
- 金利:低金利(固定・変動の選択可能)
- 融資限度額:最大7,200万円(運転資金は4,800万円)
- 連帯保証・担保:必要に応じて協議(無担保・無保証人で利用できるケースあり)
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも、うち据置期間5年)
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、女性や35歳未満の若者、または55歳以上のシニア層を対象とする特別枠です。それぞれのライフステージや社会的背景を考慮し、年齢・性別の要件を満たすことで、より低い金利での融資を検討できるメリットがあります。
- 融資対象:女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニア
- 用途:設備資金・運転資金(基本的な枠組みは新規開業資金に準じる)
- 金利:特別利率(低金利優遇)
- 融資限度額:新規開業資金と同等(最大7,200万円が目安)
- 連帯保証・担保:必要に応じて協議(無担保・無保証人で利用できるケースあり)
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも、うち据置期間5年)
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
廃業歴があるなど再挑戦を目指す起業家向けの融資制度。特別な利率や柔軟な返済条件が設定されており、新たな挑戦を後押しする仕組み。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)は、過去に廃業や事業の失敗を経験した方など、再度起業を目指す方を対象とした融資制度です。特別な利率や柔軟な返済条件が設定されており、新たな挑戦を後押しする仕組みになっています
- 融資対象:過去に廃業や事業失敗歴がある創業希望者
- 用途:設備資金・運転資金
- 金利:特別利率(低金利優遇)
- 融資限度額:同等(最大7,200万円が目安)
- 連帯保証・担保:必要に応じて協議(無担保・無保証人で利用できるケースあり)
- 返済期間:設備資金20年以内、運転資金15年以内(いずれも、うち据置期間5年)
地方自治体による「制度融資」の種類
地方自治体による制度融資は、金利の低減や保証料補助など、自治体独自のサポートを受けられる点が魅力といえます。
ここでは代表的な事例として、東京・大阪・札幌における制度融資を紹介します。
女性・若者・シニア創業サポート事業(東京都)
東京都では、女性や若年層(39歳以下)、シニア(55歳以上)が創業する場合に特化した融資を受けられます。
対象は都内での創業を予定している、もしくは創業後5年未満(女性の場合は7年未満)など一定の条件を満たす事業者です。信用保証料や利子の一部を補助する仕組みがあり、初期費用が大きくなりがちな起業当初の負担を軽減します。実際の利用には、都が指定する創業セミナーの受講や、事業計画書の作成・提出などの手続きが必要です。
開業・スタートアップ応援資金(大阪府)
大阪府が実施する制度融資である「開業・スタートアップ応援資金」では、府内における新たな事業立ち上げを支援する「開業資金」と、地域支援ネットワークと連携した「地域支援ネットワーク型」の2つに分かれています。
一定の範囲で利子補給や信用保証料補助が行われるため、銀行の一般的な融資よりも低コストで資金調達が可能になる場合があります。大阪府では商工会議所や産業支援機関とも連携しており、ビジネスモデルのブラッシュアップ相談などのサポート体制も整えられているのが特徴です。
創業・雇用創出支援資金(札幌市)
札幌市が提供する制度融資「創業・雇用創出支援資金」は、札幌市内で創業を考えている、あるいは創業後5年未満の中小企業者が利用対象です。
特に雇用の創出や地域経済の活性化につながるビジネスを優遇する枠組みが設けられており、融資限度額や利率の面で有利な条件が設定されています。市内の起業家向け支援団体や商工会議所と連携し、実質的な経営アドバイスや創業支援セミナーも開催されているため、融資と経営知識の両面でバックアップを受けられる点が特徴です。
銀行からの創業融資の種類
銀行からの創業融資は、主要な資金調達手段のひとつです。特に事業規模が大きい場合や、実績の少ない創業期でも安定的に資金を確保したい場合には魅力的な選択肢となります。
しかし、銀行はリスク管理を徹底しており、厳格な審査を行うことが多いため審査難易度は高いといえます。ここでは銀行における融資の種類と、その特徴を解説します。
プロパー融資
プロパー融資とは、信用保証協会の保証を利用せず、銀行がリスクを直接負担する形の融資です。銀行としては貸し倒れリスクが高いため、事業計画の確実性や自己資金の額、実績、担保など、さまざまな要素を入念にチェックします。
プロパー融資は審査難易度が高い反面、融資金額が大きくなるケースもあり、事業成長を目指す上で十分な資金を調達できる可能性があります。一定の資産や過去の経営実績を示せる方に向いた方法といえます。
信用保証付融資
信用保証付融資は、信用保証協会の保証を付けることで銀行のリスクを軽減する仕組みになっており、創業者でも比較的利用しやすい融資です。
信用保証協会は各都道府県にあり、中小企業者や小規模事業者の資金繰りを支援しています。創業時はまだ経営実績がほとんどないため、保証協会のサポートを受けられるかどうかが大きなポイントとなります。保証協会に保証料を支払う必要があり、その分金利負担に上乗せされる形になりますが、自治体によっては保証料の補助を受けられる場合もあるため、地方自治体の制度融資と併せて検討するとよいでしょう。
不動産担保融資
不動産を担保に差し入れることで、銀行のリスクを下げ、大きな融資を受けやすくする方法です。
自宅や事業用不動産を持っている場合は、融資枠の上限を高く設定してもらえる可能性があります。ただし、不動産評価額に見合わない高額融資を受けることは難しく、万一返済が滞った場合に担保不動産を失うリスクも考慮しなければなりません。また、創業者の場合は不動産の評価次第で融資額に大きな差が出るため、事業計画書とともに担保価値をどの程度見込めるかが重要です。
ビジネスローン
ビジネスローンは、銀行や一部のノンバンクが提供する事業者向けローン商品です。プロパー融資ほど審査が厳しくなく、比較的迅速に借入ができるメリットがあります。
融資限度額がプロパー融資よりも低く、数百万〜1,000万円程度までが一般的です。金利は高めに設定される傾向があるため、総返済額が大きくならないよう注意する必要があります。
カードローン
銀行や消費者金融などが提供するカードローンは、個人が限度額の範囲内で自由にお金を引き出せる商品です。ただし、事業資金としての利用を明確に認めていない場合もあり、契約時の約款や利用規約をしっかり確認する必要があります。
金利は比較的高めであるため、長期的な資金調達手段としては向きません。急場の資金繰りや少額の経費支払いなどで一時的に活用するケースが多いでしょう。事業用カードローンを取り扱う金融機関もありますが、創業時は審査が厳しくなる傾向があります。
創業融資の際の自己資金の目安は?
創業融資を受けるにあたって、自己資金は審査で重視されるポイントです。日本政策金融公庫の新創業融資制度では創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要とされていますが、一般的には創業資金総額の2~3割程度を自己資金として用意しておくと望ましいといえます。
もし自己資金が少ない場合でも、しっかりとした事業計画と収益性の根拠を示すことで融資を受けられる可能性はあります。ただし、自己資金が多いほど金融機関の安心感が高まるため、できるだけ自己資金を確保しておく方が有利です。
創業融資の審査に通るための事業計画書の書き方
事業計画書(創業計画書)は、創業時の融資審査ではかなり重視されます。明確なビジネスモデルや市場分析、売上予測、収支計画、返済計画などを具体的に示し、事業の将来性と実現可能性を訴える必要があります。
下記リンクでは業種別テンプレートや書き方のヒントを多数紹介しているので、ぜひダウンロードして活用してください。
創業融資にはさまざまな種類がある
創業融資には、日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資、銀行融資、融資型クラウドファンディングなど多彩な選択肢があります。
事業規模や用途、地域性、自己資金の状況によって適した融資制度は異なるため、それぞれの特徴を理解し、自身の事業モデルに合った制度を選ぶことが大切です。事業計画をしっかり作り、専門家や支援機関のサポートを活用して、創業時の資金調達をスムーズに進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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