- 作成日 : 2025年2月20日
年収1,000万円で法人化すべき?しない方が良いケースも解説
年収が1,000万円の場合は法人化すべきなのでしょうか?個人事業主の所得が1,000万円を超えた場合は、法人化を検討するタイミングだといえます。
本記事では、年収1,000万円の場合に法人化すべきかどうか、法人化することでどうなるのか、法人化した方が良いケースについて解説します。
目次
年収1,000万円で法人化すべき?
個人事業主の所得が1,000万円を超える場合には、法人化を検討するタイミングだといえます。法人化の目安には、所得税率と法人税率の違いと消費税の課税事業者になるかという2点を理解することが重要です。
所得税と法人税は、所得が増えるにつれて税率も高くなる仕組みになっています。たとえば、法人化していない場合で所得1,000万円のときは、最高で33%が適用されます。
そのほか復興所得税や住民税、事業税も課され、納税額は所得の約3割です。
一方、法人の場合は所得税の代わりに法人税が課されます。法人税の税率は、最高でも23.2%です。そのため、所得1,000万円の法人では、地方法人税や法人住民税、事業税、特別地方事業税などを合計しても所得の26%程度となります(東京都特別区内)。
また、消費税の課税事業者の観点で見ると、個人事業の売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の納税義務が生じます。法人化しておけば、設立後2年間は消費税の納税義務がない免税事業者となれるため、約200万円近くの節税が可能です。
以上のような理由から、年収1,000万円を超える場合には法人化した方が良いとされています。
年収1,000万円で法人化するとどうなる?
法人化することによる変化について解説します。代表的な変化としては、次の6つが挙げられます。
- 法人設立に費用がかかる
- 法人住民税の納税が必要になる
- 家族への給与を経費にできる
- 社会保険料への加入が必要
- 社会的信用が高くなる
- 有限責任になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法人設立に費用がかかる
法人化する際には、さまざまな費用がかかることは理解しておきましょう。会社を設立するためには、定款の作成や会社の登記などが必要です。
たとえば、登録免許税だけでも株式会社の場合は15万円程度、合同会社の場合でも6万円前後を支払わなければなりません。
あわせて、資本金も必要です。法律上、資本金1円以上でも会社設立は可能です。しかし、会社の信用などを考えると資本金数百万円程度が望ましいでしょう。
法人住民税の納税が必要になる
法人化すると、法人住民税の納税が必要です。法人住民税は法人税割と均等割の2つに分かれている、地方自治体に納める税金です。
個人事業主で赤字になった場合、所得税と住民税は0円となりますが、法人は赤字であっても法人住民税の均等割を7万円納付しなければならない点には注意しましょう。
家族への給与を経費にできる
法人化すると、経費として計上できる項目が増えます。経費に計上できる範囲が広がることは、節税につながるためメリットといえます。
経費として計上できるものは、次のとおりです。
- 住宅費(社宅制度を利用した場合)
- 経営者本人の給与・賞与・退職金
- 生命保険料や社会保険料(生命保険料は法人が契約者の場合)
- 福利厚生費用
- 健康診断費用 など
社会保険への加入が必要
法人化した場合、社会保険への加入が必要です。法人を設立した場合、社会保険への加入は義務となるため、必ず加入しなければなりません。そのため、一人会社でも社会保険料(健康保険と厚生年金保険)の負担が生じます。
なお、社会保険料は原則会社と個人の折半です。
社会的信用が高くなる
法人化すると個人事業主のときよりも社会的信用度が上がる点はメリットです。法人化には、商号(社名)や資本金などの企業情報を法務局に提出して商業登記する必要があります。登記内容は誰でも確認できるため、結果的に社会的信用度の向上につながります。
企業や金融機関によっては、個人事業主との取引を嫌う場合もあり、法人化することで事業拡大の糸口にもなるでしょう。
有限責任になる
法人化することで、個人事業主のときよりも責任の範囲が限定されます。個人事業主の場合は、すべて自身で負わなければなりません。
しかし、法人の場合は有限責任となるため、経営者は出資金額に応じた分の責任だけを負うことになります。ただし、経営者が連帯保証人になるなどした場合は返済債務が個人資産まで及ぶため注意してください。
年収1,000万円で法人化した方が良いケース
年収1,000万円で法人化した方が良いケースについて解説します。法人化した方が良いケースは、次の2つです。
- 事業拡大を検討しているとき
- 従業員を採用するとき
事業拡大を検討しているとき
事業拡大を検討している場合には、法人化を検討しましょう。取引や仕入などを行う際の相手先の基準として、法人のみとの取引を設けている場合があります。
法人化で社会的信用度が向上すれば、これらの企業や取引先と事業を拡大する機会が得られる可能性が高まります。また、法人化すると、法人向けの助成金や補助金を申請することも可能です。
そのほか、取引のあるクライアントから法人化を求められた場合も、法人化を検討すると良いでしょう。
従業員を採用するとき
事業拡大にともない、従業員の採用を検討している場合も法人化がおすすめです。応募者からすると法人化していると労働環境が整っていると感じられるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
また、法人は社会保険への加入が義務です。社会保険では手厚い保障を受けられるため、応募者にとってもメリットとなります。
年収1,000万円で法人化しない方が良いケース
年収1,000万円で法人化しない方が良いケースを紹介します。次のようなケースでは、法人化しない方が良いかもしれません。
- 節税効果が少ないとき
- 経営方針を自分で決めたいとき
デメリットとなるポイントもしっかりと把握して、法人化すべきかどうか検討しましょう。
節税効果が少ないとき
法人になると税金面で有利になるため、安易に法人化する企業も存在します。しかし、実際には法人化してもあまり節税効果を得られないようなケースもあるため注意が必要です。
前述したように、個人事業主の税金は所得税で所得が高くなるほど支払う税金が多くなります。いっぽうの法人は法人税です。年間所得800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.20%を乗じて計算します。
税金を計算する際に用いられるのは、所得(利益)である点に注意しましょう。
つまり、売上自体は多くても経費がかかっていて利益が少ない場合、個人事業主のままでいる方が税率は低いです。経費などを除いた所得(利益)が高い場合には、法人の方が税率を一定に抑えられるため有利になります。
経営方針を自分で決めたいとき
経営方針を自分で決めたい場合が当てはまります。個人事業主では、事業方針を自分で自由に決められます。しかし、法人化すると代表者が自由に経営方針を決められません。
法人では経営方針について、出資者や他の役員など他者の意見が入ります。時には、意見が食い違ってトラブルになることもあるでしょう。法人化しても、経営方針の自由度を奪われて好きにできないことを嫌うのであれば、法人化はしない方が良いでしょう。
年収1,000万円で法人化する流れや手続き
年収1,000万円で法人化する流れや手続きについて解説します。主な流れは、次のとおりです。
- 会社概要の決定
- 定款の作成・認証
- 資本金の払い込み
- 登記申請書類の作成
会社設立後の手続き
会社設立後の手続きとしては、税務署で法人税等に関する届出を行う必要があります。
そのほか、次のような手続きも必要です。
会社設立にかかる期間や日数は、次のとおりです。
- 株式会社:3週間程度
- 合同会社:2週間程度
会社設立の流れ・作り方については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
法人化に役立つひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、法人化や法人登記に役立つひな形・テンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
年収1,000万で法人化すると得られるメリットも多い
年収1,000万で法人化すべきかどうかは、所得が1,000万円を超えているかが1つの目安となります。法人化した場合には法人税がかかりますが、最高でも23.2%です。いっぽうで個人事業主の場合には所得が増えるにつれて税率も高くなり、最高で45%が適用されます。
法人化によるメリットとしては、社会的信用の向上や経費範囲の拡大などが挙げられます。ただし、社会保険への加入や法人設立にコストがかかる点などには注意が必要です。
法人化するかどうかは、今一度自身の所得を計算してみてください。本記事で紹介した内容を参考にし、節税効果や得られるメリットが大きいのであれば、法人化を検討してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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